異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~SET-4~ (4/5)

 

 

いつの間にか夢をみた。

地平線の彼方まで広がる、草木萌える緑は朝方の空気と相まって良い薫りがする。

 

東の空は白み。

天には未だ、銀の星達や三日月が輝いている。

 

正に朝と夜の狭間、そこに自分が立っている。

両隣には我が愛しの姉妹が軍服を身に纏い、馬に跨がり地平線の彼方をただジッと見つめている。

 

右隣には優しくも厳しい姉が。

左隣には真っ直ぐでシッカリ者の妹が。

 

だがしかし、姉の顔はまるで曇りガラスの様にぼやけ見えない。

わかるのは自分と同じ銀髪。しかし、その色は黒に限りなく近かった。

 

一方、妹の顔はよく見えた。

キリッとした目鼻立ちは流石姉妹といったところだろうか。

 

しかしこちらは蜂蜜のような金髪。

髪型に至ってはショートカットの上に襟足だけ伸ばして結わえている。

そしてそれぞれ身の丈もある大剣と紅蓮の槍を携えていた。

 

そう、これから戦いが始まる。

この穏やかな空気が壊され、血生臭い戦いが今正に始まろうとしているのだ。

 

 

「……来た」

 

 

左隣から鈴の音みたいな声、妹が呟いた。

 

見れば紫色の霧が、地平線から這い寄る。その霧の中には、歪な角を持った顔のない黒い四肢を持った怪物がユラユラと歩いてくる。

 

姉はただ黙って剣を担ぐと、馬を走らせた。

それに釣られる様に妹も。

だけどこの闘いの結末は知っている。

そして、自分の意思とは関係なく馬を走らせようとしたその時。

 

 

俺は目を覚ました。

目を覚ますと、部屋は茜色に染まっていた。

 

どうやら、いつの間にかに寝てしまったらしい。

一応として着たスエットは、寝汗を吸い着心地を悪くしていた。

体が起きようとする気配はない。それ以前に動こうにも、すごく怠いのだ。

 

さっき見た夢、俺はあれを知っている。

知っているのだが、過去を思い返しても俺が馬に跨がり乗った記憶は全くない。

 

となると真実はただ一つ。

犯人は……お前だ。

 

スエットからネックレスを取り出すと、乱暴に振った。

 

 

「おい起きやがれ」

 

<なんだ何だ喧しい>

 

 

契約している蟻のモンスター、アーマイゼがペンダントから気だるそうな声で返事した。

 

 

「何なんだよあの夢は」

 

<夢……あぁ、過去に起こった記憶もとい記録だな>

 

「いや、夢事態の説明じゃなくて夢の内容を聞いてるんだが」

 

<言葉通りだよ主よ>

 

「ウェイ!?」

 

 

気付いた……いや、わかっていたことだ。

視点の違いこそあれ、シルバさんの記憶だということはほぼ確信していた。

それはそうと、超綺麗可愛いんだなシルバさんの妹。

 

そう言えば妹といったら天子ちゃんだけだったよな。でも天子ちゃんは妹といっても、部類は友の妹だ。強いて言うならば妹のようなもの……か。

シルバさんと同じで青碧色の瞳、どこか幼さがまだ抜けてないのはたぶん昔の記憶だからだろう。

 

髪は以外にも蜂蜜のような金色で、ショートカットなのだが襟足は以外に長く結んである。

あぁ、あんな妹が居れば俺はこんな据えた性格にならなかったも知れないな。

 

 

「銀、開けるぞ」

 

 

ドアの外からシルバさんの声がした。

何処かの幼馴染みとは違って、ちゃんとノックするのはさすがもうひとつの世界の俺と言ったとこだろうか。

 

 

「おっ、大丈夫だぞ」

 

 

そう返事をすると、シルバさんはゆっくりとドアを開けた。

 

 

「どうした?」

 

 

その手には俺がかけた毛布があり、たぶんそれを渡しに来たのだろう。

 

 

「いや、そのなんだ」

 

 

どうも歯切れが悪い。

照れてるのか、惚れたのか。

優しくされてコロッといっちゃったのか。

 

キャッホーイ!!

 

春だぁ春が来たぞ。

彼女居ない歴=年齢の呪縛から解放されるときが今ここにッッッ。

 

 

「ありが……」

 

 

よしきた、デレた。

シルバさんがデレたぞ。

 

キャッホーイ!!

 

イヤイヤでも待て、シルバさんと俺は同一人物な訳で恋愛感情は生まれない。

 

でもそれは俺の認識な訳で。

元々女の子のシルバさんにはもしかして適用されないのか?

 

愛してくれるなら俺も精一杯愛しようじゃないかという俺のスタンス。

 

今考えると騎士道に近いものがあるな。

そうか、それでか。

 

 

「……って、腹を出すな馬鹿者」

 

「ふへ?」

 

「何だどうした?そんな顔をして」

 

「いや、あの……」

 

「おおかた、いやらしい事を考えていたのであろう。不埒な」

 

 

おおん?

デレはデレは何処へ。

確かに胸に体積を持ってかれて、ヘソ出しみたいになってるけども。

 

今それを指摘されることか?

 

それに心までまた読まれただと!?

なんたることだ。

このシルバさん進化してやがる。

 

くそっ、アーマイゼはさっきっから黙りを決め込む。

シルバさんのデレは何処へやら。

 

 

「それよりも銀、馬を喚ぶ前にお腹が空いた……ケーキを食べようではないか」

 

 

実のところこれが目的なのではないかと考えてしまう。

 

 

「はいはい、ちょっと待ってろ今着替え……」

 

「まて銀」

 

スエットを脱ごうと手をかけたとき、シルバさんに呼び止められた。

俺としては寝汗で気持ち悪いから、早く着替えたいわけだが。

 

 

「なんだ?」

 

「なぜ着替える必要がある?」

 

「そりゃぁ、コーヒーを煎れるからだか?」

 

 

なんでこのお姫様は当たり前の事を聞くんだ?

 

 

「いやいや、別に着替えなくてもよかろう?コーヒーはその格好でも作れるではないか」

 

「はぁ」

 

 

と、ため息をつく。

まったく、このお姫様はなにもわかってない。

 

 

「いいかい、コーヒーと言うものは生き物なんだよ」

 

「あぁっ……」

 

 

まったく、コーヒーとは何か。まったく知らない素人はこれだから困る。

そんな人は缶コーヒだけでコーヒをわかったような口ぶりをするから青筋ものだ。

 

 

「それに……俺はウエイトレスの格好にならなければ80%コーヒの味が落ちる」

 

 

なにも知らない子にはコーヒの素晴らしさも交えてゆっくりと抗議する必要があるな……。

 

      

 

 

~Silvana Said~

 

      

 

 

知 っ た こ と か

 

 

 

 

~Gin Saido~

      

      

夜も更け、時計の針が天辺を過ぎた頃。

遅めの食事を終えた俺たちは、喫茶店のカウンター越しで腰を下ろす。

 

 

「ふむ、あれだけ語っていただけあって確かに味が違うな」

 

「だろ?」

 

 

少し無理して着たウエイトレス服。

予想通り、胸の部分に生地を持っていかれピッチリする。

 

女体化した俺は無駄にスタイルが良い。このピッチリムチムチ感がなんとも色っぽく感じるのは客観的な意見だ。決して自分の身体に欲情したわけではないと、改めて言っておく。

 

それにしてもコーヒーは格別である。食後の一服だと特に格別だ。

更にこれから一仕事するにあたっては、食後の睡魔を退けるのに丁度良い。

 

 

「さて銀。散々待たせたのだ、早くケーキを食べようではないか」

 

「そうだな」

 

 

シルバさんから犬耳と尻尾が生えてきて、ピョコピョコと動かしている……ように見える。やっぱり普段から訓練はするものだ。

昼間、ナチュラルに訓練の成果が見れたときはある種の感動を覚えたもの。フォークでチビチビと食べる様は、味を長く楽しみたいからであろう。3口で1つ目のケーキを食べ終えた俺をビックリした様子で見てきたのだから。

 

 

「それで何て言ったっけ……召喚だっけ?」

 

「……あ~うむ、そうだな、それでもよいぞ」

 

「へ?呼び方間違ってるの」

 

「いやいや、名称なんて飾りにすぎない。過程と結果さえ同じなら基本名称はある程度違っていてもよいのだぞ」

 

「そんなもんなのか」

 

「ふむ」

 

 

随分と大雑把だな……シルバさんの世界って。

 

これから俺たちがする召喚と言うのは、馬……バイクをシルバさんの世界から召喚することらしい。

らしいと言うのは聞いた話で、シルバさんの世界ではバイクと言うものは野生で群れなどを作っているらしい。

 

嘘っぽい話だ。だけど本当の事らしい。

やっとケーキを食べ終えたシルバさんは、着替えてくると言って、部屋から出ていった。

それから、ものの五分も経たない内に……

 

 

「おおっ」

 

 

……最初に出会った時に着ていた軍服を身に纏っていた。

 

 

明るいところ。

しかも普段生活しているところで改めて見てみると、例えも付かないほど綺麗だ。

 

 

「フフッ、どうだ銀」

 

 

そう言いながら、イタズラ気味な笑みを浮かべるその表情は何とも妖艶なものだ。

 

胸がない。

 

色気がない。

 

女っ気がない。

の三拍子を冠するシルバさんにあるまじき表情だ。

 

黙ってれば本当に良い女だと思うが、何だろう。

普段は行動と言動がプラスマイナスゼロな感じ?

 

そんなシルバさんなもんだから、このギャップは不覚にもドキッとしてしまう。

 

 

「ほれ、銀よ黙っていてはわからんぞ」

 

 

後ろで手を組み、ニヤニヤしてこっちを見ながらそう言う。

 

 

「あぁ、きれ……黙ってれば案外良いな」

 

 

それを聞いたシルバさんは深くため息をつき……

 

 

「やはり銀は女の一人にもに気の利いた言葉はかけられんか」

 

 

……心底残念そうな声をあげた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

場所はうって変わって鉄屑置き場。

 

      

“危険立入禁止”

 

 

そう書かれた看板を素通りして、俺達は鉄屑等の粗大ゴミの一時預かり所に来た。

これからこれ等の粗大ゴミは、発展途上国に寄付と言う名目で送りつけられる運命にある。

 

……というのをこの前、テレビのドキュメンタリーで見た。

 

月が欠け、灯りの乏しい夜は、お化けやモノノケの類いが出てきそうだ今は一人ではない。

軍服みたいな服を着た怪しい格好の女が前をグングン突き進んでいる。

 

 

「そういえばシルバさん」

 

「どうした」

 

「なんでここなんだよ」

 

「むっ、ここには媒介?媒体?が沢山あるのでな」

 

「え?」

 

「なんだ銀、まさか媒体が無いのに馬を喚ぶ気でいたのか。情けない」

 

 

歩きながらも、こんな会話をしている。

先程からシルバさんの機嫌は、ななめ-45°に傾いている。

 

つまり機嫌が悪いと言うことだか、なぜ急に悪くなったかは俺のせいである。

自業自得と言えばそれまでだし、今更どう取り繕って良いものか。

 

というのが現在の課題だ。

 

 

“気の効いた言葉”

 

 

アーマイゼ、何か良いアイデアはないか。

俺がそう問いかけると、服の中のペンダントが青白く一瞬輝き、返答が頭の中に帰ってくる。

 

 

『主よ、モンスターであるワシに、そのような事を聞く事態が間違いだぞ』

 

 

いやだってよ他に相談相手がいなくて……。

 

 

『そのくらい主の力で何とかしてみよ。そっちの方が面白いからな』

 

 

おい。まてよ。

 

 

『……』

 

 

おい……。

 

ダメだウンともスンとも答えないや。

 

にしても何故だろうか。ド直球に誉めたら、芸がないだの言われそうな気がしたから変化球を投げてみたつもりなのに。裏を書いたら、変なとこにボールが飛んでいったと。

 

はぁ。

 

憂鬱だな。

憂鬱だよまったく。

 

冬の終わりごろの空は澄んで星と月が良く見える。

それなのに俺の心の中は、こうも憂鬱とした気で満ち溢れているよ。

 

 

「ついたぞ銀」

 

 

とまぁ、なんの打開策も見当たらないまま。俺は召喚場所とされる、廃材所の開けた場所にやって来た。背丈よりも高い鉄屑や粗大ゴミが、円を描くように置かれている。

 

それ以外には何もない。

 

うっへ。

機嫌を損ねて職務放棄かこんちくしょうめ。

それを感じ取ったのかは知らないが。

 

シルバさんは開口一番こう唱えた。

 

 

「吹ケ夜風」

 

 

その調べが唱えられられると。

静かな夜に一陣の風が吹き込み、その風が地面を撫でた。

 

 

「なんだ、なんだこれ」

 

 

怪現象?

新しいモンスターの襲来?

何だよ一体。

 

はわわわわわっ。

 

 

俺が目を白黒させている間にも、シルバさんはそれに意を介せずに調べを紡ぎ続ける。

 

 

「我ガ名ノ元ニ、姿ヲ示セ」

 

 

すると、ぼんやりとだが。

風が通り抜けた辺りに、魔方陣のようなものが浮かび上がってきた。

 

 

 

「常世峠ヲ、我ハ行カン」

 

 

その幾何学的な模様は、ハッキリとしたものになる。

それはもう、アニメや映画なんかで起こりえる現象だ。

 

風は静かなものから段々と激しさを増す。

 

 

「ソノ名ノ元ニ、姿ヲ示セ」

 

 

その調べを紡ぎ唱えたとき。魔方陣は、鎧を纏うときに発するペンダントと同じ光を発光させた。

青白くて眩しい光が、辺りを昼間かと錯覚させる程に煌々と煌めく。

眩しさのあまりに俺は、光を直視できなかった。

 

 

「老練ナル風ヨ、我ニ力ヲ」

 

 

視線を反らす最中、俺は風に乗り何かが魔方陣の中心に降り立ったのを感じた。

質量的な何か。その場に何も無い筈なのに、俺は確かにその存在を感じる。

 

 

「来レ」

 

 

シルバさんの口調が一層と強くなった。

召喚の儀式が終盤に近いことを感じる。

 

ざわめき暴れ狂う風。

何もしていない筈なのに、真冬の夜に俺は額に一筋の汗が伝うのを感じた。

 

 

「馳セル良馬“ヴェイヤンティフ”」

 

 

とうとう吹き荒れる風は、辺りの廃材を巻き上げた。

ガラガラと不揃いの金属や、色んな物がぶつかる音。

それは、次第に魔方陣の方へと集まって行くのを肌で感じることができる。

 

 

「ソノ纏イシ武具ノ、イト相応シキニテ」

 

 

その言葉を合図に、風と光はより一層と激しさを増した。

 

 

「ぐっ」

 

 

だがそれは、ほんの一瞬だった。

鎧を纏うときに発する金属音よりも、質量を感じる音が辺りに響いた。

 

それを合図としたように、ようやく収まる光と風。

そのお陰で、ようやく触覚以外の情報で、いまの現状をようやく得ることが出来た。

 

視界に真っ先に入ってきた景色。

単刀直入に言えば、一台のバイクが未だ光が残る魔方陣の上に鎮座していた。

 

高く積み上げられた廃材の数々。

その総量が大分減っており、どこに消えたかは粗方予測はできる。

 

 

『やぁ、起きたか爺さん』

 

 

ペンダントからの声。

アーマイゼの声が無言のバイクに投げ掛けられた。

 

 

「グォン」

 

 

エンジンの一鳴り共に、何となくだが意味は分かる。

 

 

“ワシを呼んだと思ったら、ここはどこじゃ”

 

 

たしかにこんな意味だ。

言葉としてではなく、直接感情が頭の中に入ってくる感じ。

 

俺はその様子を、ただ黙って見る事しか出来ない。

 

老馬【ヴィヤンティフ】

シルバさんの盟友とも言える存在。

いく千もの戦場をこの相棒に跨がり、駆け抜けてきた。

 

というのがアーマイゼを通して俺に送られてきた知識だ。

実際どんな風に戦ってきたかは、実践をしない事には何とも言えない。

 

ただ言えること、それはコイツが雄だと言う事である。

 

雄ということは、擬人化イベント的なアクシデントが起こっても、俺が喜べないと言うこと。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

“主よなぜワシはこのような姿に……”

 

などと言って一糸纏わぬ姿で四つん這いでコチラを見つめる。

ヴィヤンティフは、幼女である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

なんてイベントがないわけだ。

何分、俺自身が女体化をしている訳だから擬人化があっても不思議ではない。

 

そう不思議ではない。

 

むしろ、なきにしもあらずだ。

何時ものごとく、話が逸れに逸れたが直す気はないから諦めてくれ。

 

お詫びとして、ひとまず周りの状況を一先ず説明する。

あれだけあった回りの屑鉄は、ゴッソリと無くなっていた。

 

物が片付いた分、廃材や鉄屑のあった場所がだだっ広い広場のようになっていた。

 

よし、説明終わり。

目の前に佇む待ちに待ったバイク。

 

馬、馬。

馬とかいっていたけれど、見た目は普通の……いや、ちょっと個性的なエアロやらパーツやらライトの形をしているバイクだ。

 

色はピアノブラック。

 

そこに銀色のラインが車体を駆け抜けるよう入っていて、タイプはネイキッド。

 

剥き出しのエンジンは男心を擽り、スマートなかにもしっかりとした重みを感じる作りだ。

 

 

「お……おぉ」

 

 

全身は歓喜に震える。

いやぁ、逢いたくて逢いたくて震える……なんて某歌詞にもあった様なシチュエーションだ。

 

 

「かっ、カッコイイ」

 

 

思わず、俺はバイクを撫でる。

グォーンと一鳴りのエンジン音。

 

 

“止せ主よ照れるじゃろ”

 

 

などと直接感情が頭の中に入ってくる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

いやぁ、この娘は本当に可愛いなハハハッ。

 

 

「もう。は、恥ずかしいから頭ナデナデしないでよ」

 

 

などと頭を撫でられているツインテールの幼女。

 

ヴィヤンティフは、訓練により産み出された俺の妄想の産物である。

 

その産物。

可愛い幼女は、顔を桜色にほんのりと染め照れを隠しながら起こっている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

“何なんじゃこの主は……”

 

『諦めてくれ爺よ、これが我が主だ』

 

 

二人の契約モンスター?の会話は耳に入ることはなく、右から左へ流れて行った。

 

 

「さて、銀よ今日は帰るか」

 

 

そう言うとシルバさんは、少し疲れたように言った。

 

 

「あ、あぁ」

 

 

それもそうか。

シルバさんはこんなんだけど一応は弱体化している訳だから。と、自分で納得しつつ俺はバイクに跨がる。

 

おぁ、なんかすごく久しぶりに感触だ。

それになんだか全身に力がミナギル感じがする。

 

グリップはまるで俺のために作られたようにシックリと手に収まり。

 

シートの固さも俺好み。

なんと言っても、ライトはとつても明るく前のバイク【ハリケーン号改39】と同じ……いやそれ以上の明るさだ。

 

補足で付け加えると、ハリケーン号改39とは俺が前に付けたバイクの名前だ。

 

しかし……あれ?なんか物足りない。

必要なパーツは全て目測では揃っている筈なのに。

 

何だろう。

この感覚は。

 

 

「どうだ銀よ私の馬は」

 

 

両手に腰を突き、無い胸を突き出しふんぞるシルバさん。

その顔からは若干の疲れの色が見える。

 

 

「文句無しに最高だ」

 

「そうであろう何たって最高の良馬だからの」

 

“そんなに持ち上げんでくれ、こそばゆいじゃろ”

 

 

ヴィヴィアンティフも何だか照れ臭そうだ。

 

 

「でもなんだろう」

 

「ん、どうした何か不満か」

 

「いや、不満って訳じゃないんだけど……」

 

「なんだ、歯切れが悪い」

 

「何かが足りない……気がするんだ」

 

 

「足りない……ね」

 

 

怒られると思ったけど、以外にもシルバさん難しい表情をして考えるしぐさを始めた。

 

 

「俺の思い過ごしだよきっと」

 

 

なんかいたたまれない。

せっかくのバイクに何かいちゃもんを付けてるみたいで、嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない。

 

 

『九十九神の魂だな、おそらくは』

 

 

いきなりのアーマイゼの乱入に、心臓の鼓動が跳ね上がる。

 

 

「九十九……あぁ、なるほど」

 

 

シルバさんもシルバさんで一人で勝手に納得する。

 

いやいやいや……今までイタリアっぽかったりしてたのに、何でいきなり和物の妖怪の話何だ?

      

というか、二人で勝手に話を進められると俺が置いてけぼりなわけだ。

 

当事者としてそれは明らかにおかしい。

いくら俺が解らない話だとしても、それは少し寂しい訳だ。

 

 

「九十九……なら神社とかか」

 

 

なんて、突拍子もないことしか言えない。

 

 

「銀よ、随分と変なことを言うものだな」

 

 

ごもっともですシルバさん。

自分でも“何言ってるんだよ俺”って、盛大に突っ込んだところです。

 

 

『この世界の神的概念の存在……だな』

 

 

アーマイゼも俺を気遣ってか補足説明を入れてくる。

 

 

「いや、この世界というかこの国だけどな」

 

「国もなにも銀の世界は複雑だぞ、もっとこう簡素にだな……」

 

「そんなの知ったことか、逆に聞くけどシルバさんの世界はそうなのかよ」

 

「ふむ、そうだが」

 

「そうだがって……本当かよ」

 

「あぁ、真だ。場所が変われば全く違う世界など信じられん」

 

「信じられん……って言われてもな」

 

 

軽くカルチャーショックを受けつつも、おれは再びバイクを眺める。

 

軽くエンジンを吹かすとグォンと一鳴。ヴィヤンティフはビックリしたらしい。

急にさわるでない、と少し怒られてしまった。

 

可愛いやつめ、あえて妄想はすまい。

さて、バイクも手に入ったことだし家に帰ろうか。

最近は物騒な事件も起きていることだし、変に巻き込まれるのも御免こうむる。

 

いや、でもあれだモンスター関連なら話は別だよ。

 

 

「銀、では帰るとするか」

 

「おぅ」

 

 

そう返事をすると、俺は再び辺りを見渡す。

なんだろう、視線を今感じたのは気のせいかな。

 

 

 

「どうした銀」

 

「いや、何でもないよただ誰かに見られてる気がして」

 

「ふむ……気のせいだろう」

 

 

シルバさんお墨付きをいただいたんだ、モンスター関連の気配じゃな……。

 

 

「よし、帰ろう」

 

「どうした、いきなり慌てて」

 

 

なんかね……こう言う雰囲気だと出そうじゃん。

 

幽霊が。

 

 

「帰ろったら急いで帰ろう。ほら」

 

 

そう言うと、バイクに跨がり後部をポンポンと叩く。

 

 

「ふむ」

 

 

そう言うとフワリと跨がるシルバさん。

そのか風に乗って良い匂いがしたのは内緒だ。

 

 

「捕まっててくれよ」

 

 

おぅっ、コイツは以外とパワーがあるな。

吹かすエンジンは、その音と相反し以外にも体を持っていかれるほどエネルギーに満ち溢れている。

 

以外とじゃじゃ馬ないか。

面白い、ワクワクしてきたじゃないか。

テンション上がると同時に、胸の鼓動は早くなる。

 

そして俺達は、暗い夜道を猛スピードで帰る。

 

 

 

 

 

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