異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件 作:バソルト
元停めてあった俺のバイクの停車位置に我が愛馬を停める。
「ありがとな」
そう言うとヴィアンティフは、グオンと一なり。
彼女なりの挨拶なのだろう。感情では無く、ただのエンジン音として聞こえた。
家に入ると、シルバさんは冷蔵庫を開ける。
「おっ、いい感じに漬かっておるではないか」
出掛けに作って置いたマリネは、シルバさんのご所望だ。
食べ忘れても……まあ、いけるだろうという考えのもとに作られた一品。
いわゆる魚のマリネではなく、ハムを使った本格派と自負するもの。
普段家庭で出された日には、大丈夫かと聞いてしまいそうになるほどだ。
結構おしゃれじゃないかなーなんて思ってみたり。
コテージの静かな空間で食べたら格別であろう。
感謝感謝である。
「ごはんはよそったか」
「ふむ」
「スープは飲むか」
「インスタントしかないぞ」
「かまうもんか」
「それでは」
「神のお恵みに感謝して……」
「だぁぁぁぁ嗚ぁぁぁぁぁぁぁ、いただきます」
西洋式なんて知ったことか。
俺はお腹が空いたんだ。
わるいがJAPANの作法をとらせてもらう。
少し体をビクつかせたシルバさんを尻目に、俺は箸を進める。
夜食を食べ終え、俺達は眠ることに。
「シルバさん、いま……モンスターの気配はするかい?」
「いや……しないがどうしたのだ銀、さっきから」
なんかさっきっから肌にまとわりつく様な、嫌な感じがする。
甘ったるい。砂糖をイタズラでカップ半分位で入れられたコーヒーを飲んだときのような。
胸焼けのような嫌な感じだ。
「気配がするんだ……嫌な気配が」
「ふむ」
と一言シルバさんが頷くと、考える素振りを見せる。
「力が体に馴染んでないからであろう、気のせいだ」
あっけらかんと言い、おやすみとだけ言って寝室へ入っていってしまった。
「おれも寝るか」
素直に寝れるかどうかは別として、接客業を営む身としては体は第一だ。
不摂生な生活をして体を壊したくない。
GIN SAID
女体化した俺は、良馬ヴィヤンティフに跨がり暗い林道をひたすら走る。
空には真っ赤で巨大な満月が己の存在を主張し。
空に耀く星星は、自分の世界のソレとは比べ物にならない程の量で月の存在感に負けてない。
単刀直入に言おう。
今夢を見ています。
毎度お馴染みになりつつある今の状況。
これと言って自分の意思通りに動けるわけではなく。
これと言って何の夢だかが解らない。
あるときには予知夢の様なもの。
またあるときには過去の記憶。
さて、今回は何の夢だろうか。
勝手に動く体とは対象に、思考は自由に働かせられる。
ただ漠然と、ヴィヤンティフの鼓動を息づかいを肌で感じ。
切り裂いてゆく風は、頬を通り髪を激しく靡かせる。
まるで自信が風と一体になったかのような感覚。
夜風は気持ち良く、駆ける景色は線となって視界を線が占領する。
今俺は何処へ向かっているのか。それはまだ解らない。
すごく明るいライトは不意に消え。
激しいエンジン音の代わりに、大地を転がるタイヤの音が大きくなる。
いや、それは違うか。
消えたエンジン音の代わりに、タイヤの音が目立ち始めただけであろう。
黒い線が不意に視界を遮った。今のは何だったんだろうか。
まぁどうすることも出来ないし、このままで良い。
なんてことを考えていると、視界が後方を向いた。
どうやら気づいたらしい。
それを見るや否や、ヴィヤンティフの走るスピードが一段と速くなる。。
逃げていることは、この瞬間確定した。
自分の普段やっていることを考えれば、当たり前の判断だがなぜか違和感を感じる。
さっき言ったが、今俺の見る夢は3タイプあることを覚えているだろうか。
ただの夢。
シルバさんの過去の記憶。
そして予知夢。
この三つの中で今回当てはまるのは、多分二番目。
多分というのはバイクにのって走っているのに揺れるものがない。
そう、胸の二つ山のことである。
胸の話も大事だが、本来あのシルバさんが逃げるなんて事は考えづらいからである。
あの人は、死ぬなら戦場で前のめりに……なんて事を素でやる人だ。
だとしたら何かを守るため……なのか?
そして、目が覚める。
結局なんの夢だったのか、皆目見当はつかないがこれだけは言える。
あの夢は悪夢だ。
現に今とても鬱屈した気分である。
目覚めの椋鳥コールよりも早く起きた朝。
今一応全裸であるが、もはや見慣れたものである。
べ、別に自分の体で欲情なんかするはず……
サラサラした銀色の美しい髪にスラッと伸びた綺麗な御御足
ポインポインの胸の山
……大変美しゅうございます。
~TEDUKA SAID~
夜も明け、朝日がブラインドの隙間から朝日が差し込む。
どうやら、うたた寝をしてしまったようだ。
事件がひと段落するまで家に帰らないのは、願掛けにも似たものである。
事件の進展は勿論残念ながら無い。
まどろみの中、目覚めにコーヒーを飲むため給湯室へ行くとそこには既に東条さんが居た。
「やぁ、おはよおう」
東条さんは家に帰ったようでスーツが昨日とは違う。
「まぁた居残ったのか」
「えぇ、そうよ」
心配そうに聞いてくる東条さん。
新人の頃はただウザッたいだっけに思っていたが今は丸くなった。
「あんまり無理はするなよ」
とだけ言うと、自分の席へ戻り書類の整理を始めた。
時間は出勤時間までだいぶ余裕のある時間だ。
私もコーヒーを飲んで頭を覚ましたら仕事にかかる。
それにしても……今回の事件、かなり複雑で強大な何かが絡んでいるようなそんな気配がする。
飛躍しすぎでいて考えすぎなのかもしれない。
だけど……私の勘は良く当たる。
コーヒーを飲み終えると、仕事を再開する。
最初の頃はこんなにも書類仕事が多かったのかと、驚愕したものだがもう慣れたもの。
だが、資料作成やら報告書等の作成は中々骨の折れるもので、こちらは慣れてもやりたくはないのが本音だ。
真の敵は机の上の書類で、その余力で戦う。
なんて昔の人たちは良く言ったものだ。
今だ慣れないパソコンを使いながら業務を進める。
その間にも、ちらほらと他の仕事仲間が出勤してくる。
「向、飯の時間だぞ」
不意に肩を叩かれる。
ビックリして振り返れば、そこには財布を持った東條さんがいた。
「えっ、もうそんな時間」
後の時計を見ると短針と長針が天辺で重なりあっており、昼時を告げていた。
「飯行くぞ」
と、東條さんからお昼の誘い。
愛さんが居た頃はよく三人で行ったものだ。
そういえば朝ごはんを食べるのを忘れていた。
「はい」
今日は親子丼を食べよう。
そう心の中で決めた私は、東條さんの後をついていく。
やはりお昼はうどんにすることにした。
私は、別のテーブルで食べる職員の話からある興味深い話を耳にした。
「……なぁ、知ってるかこの前起きた事件」
「あぁ、アレだろ」
早速署内は、あのおぞましい事件の話で持ちきりだ。
あの光景を見ずによくもあんなにのほほんと。
なんて思ったけれども、俄然無理な話であることは百も承知である。
そのため、怒鳴りつけたい気持ちをグッと押さえる。
あぁ、食欲が無くなってきた。
「そんなことより知ってるか」
「なんのだ」
「ほらあの、首塚」
「あぁ今朝被害届のでてた」
「昔ここいらで討ち死んだ武者達を祀ったあれか」
「そう、なんでもあいつらが壊してその祟りで……なんて噂があるんだよな」
「うわっこわいこわい」
そんなのがあってたまるか。
そうだいにツッコミを入れたい気持ちをグッと押さえ、残りのうどんを胃に流し込む。
残りの仕事をササッと終わらしたら、午後からは聞き込みだ。
地道な聞き込みこそ事件解決への近道。
なんて、お父さんの元部下の人が熱く語っていたのをフト思い出す。
「なぁ、向」
「ひ、ひゃい」
しまった……油断した。
東條さんは食事中は基本無口だから話しかけられることはないと、たかをくくってしまった。
「あまり無茶はするなよ」
そう言って、東條さんは残りのご飯を掻き込む。
「は、はい」
うなずくしかない。
だけど、この言葉は何故か私の心に深く突き刺さった。
午後になり、私は残りの仕事を全部やっつけ終わる。
銀の残したコーヒーを飲むと、一息つく。
昼間、食堂で話していた職員の言った通り現場付近の首塚は破壊されていた。
だからと言って亡くなった人の余罪を追求したところで償える筈もなく、参考資料としてファイルと一緒に閉じられる。
事件と事故両面で続けられている捜査。
事件性が高いものの、犯行時間特に怪しい情報は入ってきていない。
だとしたら普通の事件、事故ではない。
急にこの前のモンスターと銀の戦いを思い出して身震いする。
「そうか」
「ど、どうした急に大きな声だして」
ビックリした様子で、目の前の席に座る同僚がこちらを見る。
「いぇな、なんでもないです」
そうか、そうだなんで忘れていたのだろうか。
私は知っている。
この事件の中核を知る最も適任な人物を。
急いで残りの仕事やっつけ終わると、出掛け支度をはじめる。
「向」
行こう。そう思い鞄を手に取ったその時だった。
東條さんに呼び止められた私は何故か嫌な予感がした。
こんなタイミングで言うのもなんだが、自分の直感がホトホト嫌になって来る時がある。
「例の事件。上から事故処理せよと、お達しだ」
少し前だが予感がついていた。
だからと言って、納得はもちろんしない。
「なぜですか」
との私の返答にも、もう決まったことだ……と突っぱねられる。
組織に属してるものとして、上の決定には強力な権限があるために、従えざる負えない。
納得はしないのに、従うしかない。
刑事ドラマのように行くはずもない現実は、耐え難いジレンマを生む。
~GIN SAIO~
さて……今日は人が来る。
人と言ったが奴は人なのかと疑いたくなるが、紛う事無く人である。
遺伝子の異常。神の贈り物。
奴は在学中に様々な伝説を残し、俺と一緒に卒業した。
これから来るのは、その人で俺の悪友。
【柊 達哉】
女好きだが口下手で、その容姿からは信じがたいが年齢=彼女いない暦のどこか憎めないやつ。
確か最後に会ったのが、成人式の一日だけ。
その時は変わっている様子は無かったが、今はどうだろうか。
まさか彼女を拵えていた日には……オイワイシナクテハ。
なんてな。
でだ、ここで毎度おなじみのピンチだ。
エネルギー、足りるのか?
なるたけ女体化をしたまま過ごしたから、ゼロにはなっていない筈。
正直このまま出迎えても良いのだが、あまり親しい人を巻き込みたくない。
いや……説明しても信じてはもらえないであろう。
「ハッ」
気合を入れれば、体が青白い光に包まれて俺の体は本来在るべき姿に戻った。
久しぶりのこの体。
うん、なんか涙が出てきた。
久しぶり、本当に久しぶりだよおい。
最後に男になったのは何時だっけ?
確か一年ぐらい前の出来事だった気がするようなしないような……。
さてと、準備完了。
何も抜かりは無い。
くるなら来るがいい、寺生まれのTよ。
「ちーす」
「あひゃぁーっ」
ビックリしたマジビックリした……と言うかまったく気配を感じなかったぞ。
「なんだ……銀かよ」
さも当然のごとくスルーされた今のやり取り。
ありがたいちゃありがたいんだが、なんか寂しいぞ。
逆立つ短髪。こいつの特徴はこれだ十分だろう。
そのほかの特徴だぁ?
ワイルド系のイケメン。
はい、これにて説明終わり。
あ、後寺生まれでかわいい妹がいる。
「首から上が地面に埋まれば良いのに」
「あいかわらずだな銀」
「ったく、トモこそ……って天子ちゃん」
久しぶりの悪友との会話に花が咲こうとしたその時。
トモの後ろにはその妹、天子ちゃんが隠れるようにいた。
「こんにちは、銀お兄ちゃん」
じつに20時間ぶりの再会である。
柊兄妹との再開は何時以来だろうか。
カウンター席で二人と対面すると、少し大人びた二人。
昨日会ったはずなのに、久しぶりに会った感覚がする。
それにこの再会、どこか胸に来るものがある。
「しっかしトモよ、帰ってきたなら早く連絡くれれば良かったのに」
そう言いながらカフェオレとコーヒーを作る。
忘れているとは思うが、只今休業中な訳でBGMは流れていない。
使い慣れた器具が奏でる作業をその代わりに。
時間はゆっくりと時間は過ぎ去る。
「まぁ昨日帰ってきたんだ」
「って事は修行とやらは」
「バッチリ完了したぜ」
そう言いながらトモはブイサインするその顔は、どこか疲れているようで目の下に隈が出来ていた。
「ふーん、頭剃らないのか?」
昨日あれだけ元気だったのだからと、考えたが俺は奴の彼女じゃない訳で。
その言葉は胸にしまうことにした。
「イヤイヤイヤ宗派が違うから」
「んなの初めて知ったぞっと」
矢継ぎ早にコーヒーとカフェオレを渡すと俺も自分のを取り、天子ちゃんの隣に座ろうとしたら。
「よし待とうか」
悪友トモに阻止された。
あれ、こいつシスコンだったっけ?
ひきつった笑顔を浮かべながら、天子ちゃんはトモをグイグイと俺に押しつける。
「チョッ天子ちゃん」
正直いらない。
むしろ、迷惑だとは面と向かって言えない。
「えぇい、銀離れろよ」
「無理落ちる椅子から落ちるから」
「離せ天子理性が持たない」
「ちょっ、胸を揉むな胸を」
そう言いながら離れる俺。
今現在男の体ではあるが、なぜかすごく不快である。
何でだろうかと思ったが、女体化の名残であろうと一人で納得するしかない。
「というか何で胸を」
「なんてなくだ」
「おい」
こいつもしかして俺が女体化する事に気づいているんじゃないか。
そんな不安が一瞬頭を過ったが、そんなことはない。
あってほしくないと願うしか今はできない。
元の体に戻れるのは何時だろう。
そう、考えながら俺は悪友とその妹ととの会話をたのしむ。
辺りはすっかり暗くなり、何処からかカレーの匂いが漂ってきた。
店のカーテンを閉め、部屋の明かりを付けたが直ぐ様消した。
「えっ?」
少し呆けた普段は聞こえない、かわいい天子ちゃんの声が聞こえたが今の俺はそこまで気は回らない。
シルバさん、そうシルバさんだ。
シルバさんが今したよ冷蔵庫の前に。
あの席だと死角で幸いトモと天子ちゃん達には見えない。
だが、だがだ。
今がその最大のピンチだが。
万が一あの二人に見つかるとすごく面倒な事になる。
もう説明するしかないのか?
ははっ、この子はホームステイに来ているシルビアちゃんだよ
偽名とか使ってみたけど、騙しきる自信はないなこりゃぁ。
時は過ぎ、トモ達がバイクに乗って帰る姿を見送る。
「ふぅ、なんとか終わったか」
思わず安堵の溜め息、なんとか誤魔化しきれたけど心臓に悪いやこれ。
フラフラと見せに戻ると、シルバさんは見るからに不機嫌そうな顔をして俺をみる。
見ようによっては睨んでいるようにも見えるから厄介だ。
「おつかれ」
なんて言ってみるも、事態が好転する兆しは見えない。
それに凄く真面目な顔をして俺をみる。
「銀私はお腹が空いたぞ」
うん。
そんな怒ってなくて良かったよ。
俺達その後、冷蔵庫のカレーを温め夕飯にすることに。
後日談だが、中辛はシルバさんには辛かったようだ。