異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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04話 暴かれる蜘蛛の女王 ~1糸~(1/6)

 

どうも、しがない喫茶店店員です。

残りの休みも折り返して、今日を入れてあと三日と差し迫った。

 

目を覚ませば椋鳥の声は聞こえず、羽毛布団の傍らにはズボンが脱ぎ散らかっていた。

 

 

少しずつ覚醒する神経に、ぼやけた視界は段々と焦点が合うようになってくる。

 

 

おはよう。

どうも、内藤銀女体化バージョンが朝の12時をお知らせします。

 

 

おぼつかない足取りで洗面台に向かう。

 

 

顔を洗って、いよいよ目を覚まそうか。

鏡を除き込めば、改めて胸の谷間を目で捉え女体化した事実を改めて実感する。

 

龍みたいなモンスターや蝙蝠みたいなモンスター。

 

はたまた、牛や蛇や虎やカメレオン、エイ

 

コウロギはあぁ、人工か……が鏡から除いてはいないかと若干期待するのは今は昔の事だ。

 

おっと、デッキが無ければ食われるか。

 

 

前日は戦いもなく、なんとも平和な……いや、普段通りの生活を送ることが出来た。

 

女体化を除いて、だけど。

 

 

こんな日がいつまでも続けば良いと思うけど。

シルバさんの目的を果たすまでは、巡り廻ってこのままでいなければならない。

 

 

かといって、今はやることはない。

 

 

男物の私服に着替えて、何となく流れる雲を椅子に座りながら眺める。

あ、あの雲人の顔みたい。

 

 

何て思っていると、ノックをしながらシルバさんがドアを開けた。

 

 

「えぇい、オカンか」

 

 

そのツッコミにキョトンとしてか、シルバさんの眉間にシワがよる。

 

怖いですよ、シルバさん。

 

 

「ふむ、入るぞ」

 

 

察してか又は天然なのか、シルバさんは今更ながら有無を問う。

いや、遅いけども。

 

 

「どうしたんだいシルバさん」

 

「うむ、銀よ今日はアラクネの舘へ乗り込もうかと思う」

 

 

キリッとしたイケメンフェイスで、シルバさんがそう言うと。

 

これが闘気とでも言うのか。

その体からは肌が焼けそうな程の気が、ジリジリと感じられる。

 

 

何があったのだろうか。

 

藪から棒に言われても、こっちは体が出来上がっているわけではなく。

 

シルヴァーナ・カヴァリエーレと内藤銀は違う存在であり同一人物でもある。

そんな不思議で奇妙な関係。

 

 

つまり何が言いたいかと言うと、普段から戦闘準備バリバリの人とは違うんだと言うこと。

 

 

ここはもっとストーリー的に、フラッと行くような場所ではないと思う。

 

 

 

「銀よ、私は早くソナタを戦いの因果から解き放ちたいのだよ」

 

「いや、頼まれて巻き込まれたわけではないし」

 

 

一時のテンションに身を任せただけです。

 

なんて言えるわけではないが、俺がそう言うとシルバさんは少し少女の顔に戻る。

 

 

 

「でも、私は……私が戦えないのに銀をこのまま」

 

 

そこまで言いかけたシルバさんそれは違う。ちがうよ。

 

 

「大丈夫だよ、何たってシルバさんの力だからな」

 

 

不思議と核心めいて言えたその言葉。

 

 

まぁ、あれだ。

何とかするよ。

 

それにどうしたことだろうか?

 

シルバさんがあんな汐らしくなるなんて。

 

絶対何かある筈だ。

大方、実家から催促の連絡でも来たのだろう。

 

 

血の繋がった家族はもう居ないけれど、おやっさんに怒られるのはごめん被る。

 

それと同じだろう。多分。

 

 

 

「さてと銀、これら戦うべき相手の予習をするぞ」

 

 

キリッとしたイケメンフェイス。

眼鏡をかけているのはノリだろう。だってそれは俺のだから。

 

「むっ、度が入ってないな……オシャレか銀程度がオシャレ眼鏡か勿体ない」

 

 

「風避けだ風避け、バイクに乗るとき使うんだよ」

 

 

たかが眼鏡ひとつでエライ言われようだなこんちくしょう。

 

 

「どうだか」

 

「どうだかって……なんだよ?」

 

 

「絶対、あ、俺眼鏡掛けるとイケるかも……」

 

 

「してなかいから」

 

 

「どうだか」

 

 

そう言って腕を組み俺を見る目は、信じてはいないと語っていた。

 

 

話の脱線は何時もの事。

普段あまり親しい人以外とは、喋る事はおろか口数の少ない俺。

 

 

「アラクネとは……」

 

 

自覚はしているが、会話が思い付かなく思い付いても、もう内容が変わっているなんて良くあること。

 

 

話したいんだけど話せなく、まるで思考がブロックされたような。

口が糊でくっ付けられたような、そんな感覚は昔からあることだ。

 

 

「……つまりだ、とんだとばっちり……」

 

 

しかし、不思議とシルバさんとの会話は弾む。

同種……いやいや、同一人物だからであろうか。

 

 

「……って、おい聞いているのか銀」

 

 

「え?」

 

 

何か話してたっけ?

 

 

 

「え? ではないぞ、アラクネの餌食になる前にお主を……」

 

「聞いてました、はい」

 

 

ここは一か八か賭けに出る。

 

 

「ではアラクネの弱点は何処だ」

 

 

「……無い」

 

 

「チッ、正解だ」

 

 

危なかった危なかった。

って、え?

 

じゃくてんないの、くもさん。

 

蜘蛛さんは熱に弱いと思うけどモンスターに効果あるのか?

 

あぁ駄目だ手段がない。

 

刹那に終わる脳内会議を収集する傍らで。

シルバ先生による魔女アラクネの特徴等の講習は続く。

 

 

「アラクネの大事な注意すべき特徴なのだがこれは姿形に惑わされるなだな」

 

 

「どうしてだ」

 

 

「奴は少女から淑女まで幅広い姿を持っておる」

 

 

「おいおい女は切れないぜ」

 

「大丈夫、銀も今女の子だぞ」

 

そう言って親指を突き立てるシルバさん。

 

 

「泣くぞ」

 

「どうぞ」

 

「止めろよ」

 

「やだ」

 

「いいか本当に泣くぞ」

 

 

 

「次に、これは名前から想像出来るな。糸に注意せよだ」

 

 

「スルー!?」

 

 

蜘蛛の糸は滅茶苦茶固い。

もし体に絡まっても引きちぎろうとはせず、剣で切れ。

 

 

シルバさんはそう言うと“以上だ”といい無理やり授業を終わらせた。

 

「そうだ、銀」

 

「ん? どうした」

 

「今回は協力者がいる」

 

「協力者?」

 

 

居るなら早く言って欲しいものだ……というか俺要らないんじゃ。

 

「しかし、条件がある」

 

 

はて、条件とは何だろうか。

あれか、体を売れとか奉仕しろとかか。

 

 

「いやだ、男よりも女の喜びを先に知りたくない」

 

「馬鹿か」

 

 

北極よりも寒い冷めた目。

なんだ、まだ春は遠かったんだ。

 

「条件とは接触をしないことだ」

 

「つまり合うなと」

 

「そうだな、振り返るなと言っていたな」

 

「どこの宇宙刑事だ」

 

「なんのことなんだ?」

 

「いえ……こっちの話です」

 

 

時間は大分余る。

作戦実行は夜だ。

 

理由を訪ねてみようか迷ったが、考えあっての事だろうから無闇には言わない。

 

今日は天子ちゃんの所に行こうか。

そう思ってみたが、今日は平日。

天子ちゃんは学校のある日だ。

 

休みが続けば、曜日感覚が狂ってくるもので。

すっかり忘れていた。

 

 

兄の方は……と考えてみたが、昨日帰ってきたばかりでやることがあるだろう。

 

 

そう思考を張り巡らせてみたが……今俺、女じゃん。

 

窓ガラスに写る自分の姿を眺めながら。

 

あと数時間で、この姿ともお別れか。

 

 

などと考える。

決戦に向けて今自分がすべき事とは何だろうかと考えるが、何も思い付かない。

 

 

鍛えようにも時間がないし、エネルギーの無駄使いは避けるべきだろう。

 

 

でも、じっとなんてしてられない。

 

 

「シルバ……居ない」

 

 

助けを求めるも、そこにシルバーさんの気配もなく姿はなかった。

 

 

「シルバさんの気配が……消えた」

 

 

あぁ、駄目だ直ぐに終わっちゃったよ。

 

することはない。

鍛えようにも時間がないし。

シールドの練習をするにも、エネルギーの無駄使いは避けるべきだろう。

 

 

だとしたらすることはただ1つ。

真実がそうであるように。

すべき事はただ1つなのだ。

 

 

 

イメージトレーニング。

 

 

略してイメトレだ。

 

別に言い訳がましく二回言った訳ではない。

俺の力は昨日今日始まったもので、正直いうと使いこなせていない気がするのは解る。

 

 

明確な問題が見つからない訳で。

当然答えなんて見つけられる筈はない。

 

誰も居ない喫茶店で、俺はポツリと名前を呼ぶ。

 

 

 

「なぁ、アーマイゼ」

 

『呼んだか』

 

 

返事は直ぐだった。

 

 

こいつなら、解るかもしれない。

問題が……いや、答えが。

 

『主は強くなりたいのか?』

 

しかしそれは無駄であった。

アーマイゼの言葉は俺にとって意外な。

知りもしない情報を知ることになった。

 

 

「あぁ」

 

『だとしたら、今以上は望まぬことだな』

 

 

それは何回も聞いている事。

 

だけど、だけどなんとかしたいのが俺の心情である。

 

 

『仮契約の僅かな繋がりでは私の力は……っと』

 

 

しまったと言わんばかりに急に言葉を遮った。

アーマイゼの言葉からは、本契約と前にシルバさんが言ったことと矛盾する点がある。

 

 

 

「おい、アーマイゼ」

 

 

反応はない。

無視を決め込んでいるようだ。

 

となると、シルバさんは嘘を俺についていることになる。

その反応が何よりの証拠だ。

 

 

 

「これだけは聞かせてくれ……シルバさんは俺を落とし入れようとしているのか」

 

 

その言葉に反応するように。

目の前に激しい青白い光共に、アーマイゼが現れた。

 

 

「ふざけるな」

 

 

ズイッとアーマイゼの顔が、俺の眼前に迫る。

 

 

「シルヴァーナがあの娘がどう思いこの地に来たか……それなのに」

 

そう言いながら、アーマイゼの姿は薄らぎ別の形へと変化しようとする。

 

 

正直、その後の記憶はスッポリと抜け落ち。

気付けば夕刻が迫り外は暗くなっていた。

 

 

冬の終わり頃と言っても、日が落ちるのは早い。

立春が過ぎ去り、夜の時間が短くなってもだ。

 

 

 

戦いの時は真夜中。

時計を見れば、まだあと六時間ぐらいある。

 

 

「さて……どうしたものか」

 

 

アーマイゼの気配はない。

あんな激昂するアーマイゼは初めてだし、出来ればもう怒らせたくない。

 

だけど、アーマイゼのあの怒りようだ。

 

 

表情は分からないにしても、人のために怒れる人もそう思わせる人も俺は信じたいと思う。

 

 

なんか立ち入れない雰囲気があるよな……あの二人。

流石は歴戦の相棒なのかな。

 

こんな状態ではイメージトレーニングが出来る筈でもなく。

 

忘れているかもしれないが、現在女体化中である。

 

なので出かけることもままならなく。

着ていける服はピンクのフリフリか、ウエイトレスが変化したメイド服。

または、千束の服を勝手に拝借するしかない。

 

 

しかし、俺は諦めない。

 

 

替えのウエイトレスの服を無理矢理着て、その上からジャンパーを羽織る。

 

 

うん、タイはキツくて無理だから外す

腹も服が胸に持ってかれて出てしまっている。

 

だけどヨレヨレねスウェットよりマシだし。

ピンクのフリフリよりもメイド服よりもマシだ。

 

ズボンは……あれ?

 

 

「フンッ」

 

 

ズボンは……あれ?

 

 

 

「フンッ」

 

閉まらない?

 

 

ボタンが閉まらないよ姉さん。

 

たしかシルバさんとは胸以外は寸法が一緒な筈だ。

いや、シルバさんの方が少し尻が大きいか。

 

 

いや待て。

腰履きじゃなくて、腹まで……上がらない!?

 

 

……どうしよう

 

 

 

ヤバイ

 

ヤバイよこれじゃぁパンツが見える。

公開処刑以前にショピかれるよ。

 

てか、これよりシルバさんは尻がデカイんだよな。

 

 

 

まったく……男女で骨格が違うなんて初めて知ったよ。

 

明らかに履けない物に時間と労力を使う暇はない。

 

 

大人しく千束のを……借りる以前に履けるか心配になってきた。

 

 

「大人しく……メイド服着るか」

 

 

このメイド服は、なんか落ち着くんだよな。

趣味じゃないのに。

 

そう思いながら、俺の一人着せ替え人形ゴッコは幕を閉じた。

 

あぁ、胸を見ても何とも感じなくなった自分が怖い。

 

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