異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件 作:バソルト
全身を太い針で貫かれるという経験は、普通の生活をしていればまず無いだろう。
手元の剣は、腕に三本目の針が刺さった時に握る事を諦めた。
我が身を盾に……なんて、少し前の俺からすると天地がひっくり返る程の大事だ。
心境の変化に気がついた今。自分自身がビックリしている位である。とまぁ意識を旅立たせてみたものの、身体中血みどろ。こっちの方はもっと有り得ない状態だ。
「ふぅぅっ」
大きく息を吐き、動きの邪魔になる針を抜いて剣に変える。
足元には数本の同じ剣。
一つ一つ微妙に形を変えられるらしく、段々と平に大きく変えて行く。
「なんだ銀、私の心配はないのか?」
「こんなことで死ぬほど、柔な鍛え方してないだろ」
「ふん、つまらん」
そう言うと、背後からカランと針を落とす音が聞こえた。
止血は案の定済み。
今まで流血した量を考えると、頭がクラッとしてしまう。
身体に刺さる針は全て剣に変えた。
アラクネは待っている。
お約束といったら、それまでだが。なぜかは不明。
だけど幸運であり多分俺が死んだと勘違い……は無理がある予測だ。
黒檀色の体が微かに動いた。
動くことを認識したが、それは行動に移すには遅すぎた。
適当なシルバさんの複製した剣を掴むと、攻撃を逸らす事に成功した。
バチバチと剣から火花を散らし、アラクネの針は俺の肩を抉り抜く。
貫通した針の針尾には糸があった。
「ぐっ」
体を捻り糸を腱と骨で手繰る。
激痛が体を駆け巡る。
だが、掴んだ針を引っ張り今度はアラクネを手繰り寄せる。
痛い痛い痛い痛い痛い。
肩の肉はとうとうナマクラ刃で斬ったように裂け。
無理矢理掴んだ糸は、鎧を貫通して素手に食い込む。
だが手繰り寄せるアラクネは避けることは出来ない。
俺は空いた手で、剣を振るいアラクネを斬り伏せた。
全身の緊張状態が解け深い脱力感に苛まれ、口から安堵の吐息がもれる。
疲れて痛い。
肩が痛い腕が痛い。
痛みが今になって襲ってくる。
斬り伏せたアラクネから、エネルギーが流れ込んでくる。
それは眩く瞬き様子が違う。
今までの物と違うことは、とても分かりやすかった。
全身が満ち足りる。
そのエネルギーに体が歓喜しているのがわかる。
痛みは引き、傷口もみるみる内に塞いで行く。
「よくやったな……銀」
それはとても優しい声色だった。
「どうだい」
元祖どや顔に向かい、俺も同じ顔をしてみる。
俺としては、とても良くやった方だとおもう。
振り向くとシルバさんの背後は、確かに俺が守った跡があった。
それと死屍累々。
協力者がぶっ倒れていた。
「えっと……シルバさんこれは」
そんなシルバさんは俺を無視するように、エネルギーを流すアラクネを見据える。
「固有結界の維持を解かぬか……存在が保てなくなるぞ」
そして歩み寄ると、俺が生産した剣を引き抜き。
ゆっくりとした口調で問い掛けを続ける。
「聞かせてはくれぬか、姉上の友が何故このような事態を」
アラクネは答えない。
だが、霧が晴れるように周りの景色が元に戻った所を見ると意識はあるらしい。
「人を斬っておいて、随分な口じゃない」
アラクネからのエネルギー粒子は止んだ。
黒檀色の体は元のドレス姿に戻り、胸元からへそ辺りまでザックリと切れていた。
「禁を破った者にも言われる筋合いはない」
シルバさんがそう言うと、アラクネの表情は穏やかになり。
「フフッ、それもそうね」
とだけ言うとゆっくりと立ち上がる。
何かする気か。
二人の間に急いで隔たる。
「そんな怖い顔しなくても良いじゃない」
こいつ……仮面越しでも解るのか。
「ふん、まぁ良い」
そりゃぁそうか、アラクネが見ていたのはシルバさんだった。
戦いを終え、時が過ぎる。
だが、俺の胸を空ける穴の存在はまだ感じられる。
俺の事は後にでも出来るが、アラクネはどうにもならない。
抵抗はしたものの、この剣は命まで届くことはなく。
今もこうして目の前に立っているのだから。
辺りを見渡すアラクネ。
何かするのか?
今の俺は全快に戦えるから負ける気はしない。
なんなら固有結界だって張れる気がする。
アラクネは床を踏み、音を鳴らす。
すると、いつか見た結界の世界を修復する力に似た現象が起き。
廃墟のようになっていたボロボロの床は綺麗な大理石に戻った。
「あまり勝手な真似はするなよアラクネ」
「ふふっ、いつまでも汚くしておくのは嫌なのよ」
愛着でもわいたのだろうか。
しみじみと辺りを見渡すアラクネは、俺を指差した。
「随分と良いパートナーを見つけたじゃない」
「嫌味か?」
「酷っ」
クスッと笑いアラクネは続けて言う。
「まさか私をここまで追い込むなんて思いもしなかったわ」
「なら、随分と元気だな」
「あら、お喋りは好きな筈でしょ」
「ふん」
なんだろう、俺は蚊帳の外だな。
見るところ、最初に感じた危機感は感じられない。
なんなら鎧を脱いでしまいたい。
そんなことを感じ取ったのか、鎧は消え去ってしまい。
革ジャンinメイド服の姿に戻ってしまった。
手元の剣はそのままにして。
両手を上げ、攻撃の意思が無い事をアピールするように。
両目を閉じて話す。
「出来ればもう少し居たかったわね」
「それは無理だ、お主はこの世界での禁を破った」
頭の上を通過する会話に付いていけず。
シルバさんの言葉端には刺がある。
ただそれだけしか解らない。
「保護観察とかそんなのはないのか」
要はもう人を食らわずに生きていけば良いだけの話なのだから。
「銀よ、私が血を吸うのは知っておろう」
「あぁ」
「別段人を襲うこと事態悪いこと……いや、こやつ等に狙われるから不都合ではあるな」
存在を忘れていたが着物の協力者が居たのだった。
寝たフリでも、起きる様子でもなく。
まだ気を失っている。
「極端に減らしたり、理を変える事がいけないのだよ銀」
「要は殺戮と内部干渉が斬られる理由だと」
なんだろう、思ってたよりも緩いぞ。
シルバさんの世界の掟は。
「そう、たったそれだけの事を守れぬ者が多いのだがな」
言葉尻にため息を吐き。
そこからシルバさんの苦労が、かいまみえた気がした。
役所仕事も意外と大変そうなんだな。
俺としては、楽してお金を稼いで充実した毎日を過ごせれば万々歳だけど。
そうすると職もない、今のフリーターのような生活から脱却しなくてはならない。
一時期今の仕事を定職にしようが考えたが、おやっさんが許さなかった。
何でかは解らない。
だけど死にかけてから、何度も死にかけてから思ったこと。
いつ死んでも不条理だらけの生き地獄の今。
死んだって後悔は無いと思っていたがそれは大きな間違いだ。
シルバさんへの恩返しが大義名分だったが。
それ以外にまだ死にたくないと、名義ではなく純粋に。
ただ純粋に、生きたい。
そう思った。
シルバさんとアラクネはまだ話し合っている。
必死に帰ることを拒み、それを説得するのは一苦労であろう。
倒れる協力者に視線を置くと、狐の面と般若の面を被っている。
この狐の面見たことあるが、何処にでも有るような物だから見間違いだろう。
二人とも首元と手を見る限り、張りがある分若いのだろう。
「っぅ」
巫女服から見えたのは小降りだが形のいい片鱗だが、青い果実。
介抱ををダシにして触れるか?
イヤイヤ、ダメだぞ。
自分の理性に、自然とブレーキがかかる。
巨乳好きな俺だけど、ちょっと寄り道していこうかなんて。
気まぐれに惑わされてなるものか。
誰が見ているか解らない。
気を抜いて手を付けたら駄目だ。
今ここで手を出したら、社会から弾かれちゃいそうだ。
だけど、パワーを絞り出せ。
誰かが見ているからじゃない。
ハダカのままの欲望で突き進むのもアリじゃないか。
まだ甘くはない、青い果実でも。
瞳を静かに閉じ手を出せば。
もう少しで届くはず。
求めしあの頃の、情熱を。
高鳴る鼓動は暴れる。
ガムシャラだったあの頃の
今はほら、もう手の届くところに。
後なんか見ずに、甘い誘惑に流されていたんだ。
パワーを絞り出せ、ハダカのままの欲望で。
いざっ。
あぁ僕はちっぽだ。
普通は青い果実なんかダメでしょ。
だけど気が変わっちゃう。
あぁもう、勇気をねじり出せない。
今の見れると言う現実に、満足したから?
それとも、最後の良心が働いているのか?
今までは今までの、明からは明からの。
真新しい性癖を刻めばいい。
そうだ、新たな快感を届かせるこの思い。
葛藤いから逃げてた。
まじめさにさよならさ
まだ甘くはないけど、そそる青い果実でしょ。
敵意の無いアラクネとシルバさんの話し合いはもう、どうでも良くなった。
フラフラとシルバさんを素通りし、男の協力者を尻目に狐の面を被った協力者の前で屈む。
「大丈夫か?」
肩を揺すり果実の揺れを堪能する。
「大丈夫か?」
何回も。
「しっかりしろ」
何回も。
「戦いは終ったぞ」
何回も何回も。
青い果実の揺れ。
強いては着崩れる着物から見せる実を。
段々と溢れ出果実を凝視する。
「ん……気絶し……」
おぉ、喜びに満ち溢れた聖域よ
って言い過ぎだろうか?燃える
パッションは煮えたぎる業火へ
いけ、これまでの願いを現実へ
見え……見え……見え……。
「オハヨウゴザイマス」
くそっ、起きました。
くそっ、今は事態の収拾を最優先に。
決してこれまでの事を悟られるな。
死ぬ。社会的に。
そして変態のレッテルを初対面の人に張られてしまう。
それだけは嫌だ。
人間関係は初対面こそ最重要なのだ。
接客業で嫌というほどそれは理解している。
「The new propensity that you taught it
I cannot stop me when it will be a cousin that there is there. 」
「はい?」
「いや、すまない気がつきましたかお嬢さん」
紳士を目指す俺としては、果実を確認した以上この人を淑女としてもてなさなければ。
って、しまった。
見た目女体化状態なのに“お嬢さん”は無いよ。
でも間違ってはいない。
意識を混濁している今なら、どうとでも出来る。
「うん、大丈夫だよ銀お兄ちゃん」
「ふぁっ!?」
銀お兄ちゃん。
銀お兄ちゃん。
銀お兄ちゃん。
……銀お兄ちゃんって、言ったよなこの巫女さん。
いや待て、意識の混濁で訳の解らない事を言ってしまったに違いない。
落ち着け、クールになるんだ内藤銀よ。
「大丈夫かい……天子ちゃん」
ここひとつ鎌をかけてみよう。
第一印象は最悪だが、事態が事態なだけに状況の把握が最優先だ。
「あ、天子って誰かしら」
そういいながら巫女さんは手で首元を扇ぎながら座り直す。
「にゃはは、起きたかにゃ天子」
座り直した巫女さんの袴から声がしたと思ったら、黒猫がモソモソと出てきた。
「いや、お前誰だよ」
「にゃーは、タマだにゃ」
ここに来ての更なる新キャラに、俺はただ困惑する事しか出来なく。
正に言葉が出てこなかった。
その猫は黒い。
細くしなやかな四肢に艶のある毛並み。
品種に余り詳しくないため何猫かは解らないが。
金持ちの家に居そうな、ごくあり触れたただの猫。
そいつから声がした。
いや、聞き間違いだろう。
うん、いくら非常識が立て続けに起きたとしてもだ。
聞き間違えだとしてもこれは、疑惑の巫女天子ちゃんの股から声がしたことになる。
どんなアブノーマルプレイかと期待したが。
良く良く思い出してみれば、あれか。
アーマイゼと同じ原理だろう。
巫女天子ちゃん黒い猫耳つけてたし。
ケーキ屋の天子ちゃんも黒い猫耳つけてたような気がするし。
となると、この娘は天子ちゃんで確定だ。
本人はバレないと思ったのか、黒猫の首根っこを捕まえて上下に揺らし。
「なに、尼ね違うでしょこの格好は巫女よ巫女」
すごく説明口調で話してくれたのだから。
兄とは違い素直な所が天子ちゃんの良いところだ。
兄なんかと、なんで血が繋がっているのかがすごく不思議だ。
羨ましい……爆破四散して欲しいものだ。切実に。
ここは気付かないフリをしてあげるのが得策だろう。
隠すには何かしら理由があるわけだし。
それが何にしても、知ると言うことは剣にも盾にもなるのだから。
それに、今までの事を思い返しても悪いようにはしないだろうと。
そう信頼できるのだから。
シルバさんとアラクネは話を終えたようで俺たちの方を見ていた。
二人とも笑っているが、その笑みの裏に何か凶悪な物を感じた。
気のせいであって欲しいものだ。
「終ったのかい」
「うむ」
ここは先手必勝で話の流れを勝ち取るしかない。
「銀よそこを動くでないぞ」
「お、おう」
早くも計画は破綻。
考える間もなく動くしかなくなってしまう。
沢山複製したシルバさんの剣。
それは、シルバさんが持っているもの以外はアラクネの固有結界消滅と同時に消えていた。
「今から銀を元に戻す」
「と、言うことは」
「あぁ、戦いは終りだ」
ニヤリッと笑うシルバさん。
その顔は悪者の顔のような艶やかで、妖艶なもの。
不覚にも少しドキッとしてしまった。
「先ずは行程の説明をしよう……」
シルバさんの口から出たその行程。
それは耳を疑うような行程であった。
「先ずは銀のエネルギーをギリギリ生きられる程度以外全て頂く」
山賊もビックリな強奪量だ。
結構冗談じゃない量のエネルギーがある筈だぞ。
俺が調子に乗る程度のスゴい量が。
「次に騎士の力を返してもらう」
うん、それは当たり前か。
「そして無防備となった銀を残突する」
「えっ、何だって」
「銀に穴を開ける」
「よし待てよし待て」
「なんだ」
シルバさんは凄く不機嫌そうな顔で聞き返してくる。
「死ぬよね」
「一回死んだのだ、何回死のうと同じ事ではないか」
「イヤだよ」
「でないと……術に影響がでて体バーンだぞ」
剣を振り爆発する様をジェスチャーして見せる。
「マジで」
「マジもマジで大マジだ、秘術だから詳細は秘密だがな」
「秘密って……」
でもまぁ。
名残惜しいけど、これで女体化生活ともおさらばなんだ。
痛いくらいは……何とか。
「……仕方がない、仕方がないよな」
自分に言い聞かせるように。
「痛いのは同じさ」
必死に自分に言い聞かせる。
「優しく……してね」
もう涙目だ。
アラクネと戦う以上に緊張やら怖いやら。
「主らはそこで見ておれ」
おとなしくなったアラクネを筆頭に。
謎のままの新キャラ、タマ。
その飼い主の巫女、天子ちゃん。
そして……あぁ、起きたか。
トモがこちらを見ている。
首にシルバさんの吐息がかかる。
それが、体の一部分を強く刺激し強く脈打つ。
恥ずかしげもなく、シルバさんが俺に牙を突き立て様とした。
チクリと言う感覚。
何回も経験した。
その次は、シルバさんの柔らかい唇の感覚だ。
柔らかい唇。
柔らかい唇。
柔らかい唇の感覚がいくら待っても来ない。
あれ?