異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件 作:バソルト
天国とはこのような場所なのだろうか。災害に見舞われた様な、燃える街。黒煙が上がり、炎のカーテンがそこかしこから垂れ下がっている。
訂正だ。
ここは地獄。
こんな場所が天国であって良い筈はない。
全国の天国に行きたい人が見たら、絶望する光景だな。
それにここは、俺が縁のある光景だ。
夢の中の空間。
死んだら人は夢のなかに一生住まうと聞いたことがあるが本当だったみたいだ。
最近見るこの夢は、どこか変なもので。
まずはこの、荒廃した瓦礫と化した街から始まる。
それをまるで自分の意思ではないかのように進む。
街並みは、先程から代わり映えの無いもの。
正直いってこの先は銀髪巨乳の悲しい目をした女性と会って終わりだ。
それはもう何回も見なければならない、オープニング並みに暇だ。
「やぁ、久しぶり」
ここで普段なら、あった瞬間に目をさますのだが死んで夢のなかに一生住まう事となった今は関係の無いこと。
話し相手欲しさに、声をかけてみる事に 。
普段なら死んでもやらない。
だけど、死んだなら話は変わるのである。
しかし返ってきた言葉は、思いがけないものだった。
「俺…………か」
えらく長い溜めである。
しかも俺とか言っている時点で関わりたくない思いが沸き上がってくる。
だが待て、ここは夢もとい死後の世界。
これは死神か何かと考えれば、性別うんぬん関係無いのかもしれない。
昨今の死神は、黒い着物を着て刀のようなものを振り回して戦うものが主流だが。
俺はドクロの仮面に黒いフードを全身に被った。
シンメトリーを愛する息子を持つ陽気なオッサンのイメージである。
「いったい誰なんだ君は」
妙な親近感が湧くが、残念ながらこんな可愛く巨乳な知り合いはいない。
だからせめてと、視線は胸に。
聳える雄大な山脈から目を放すことはできない。
あぁ、素晴らしき自然の美。
ここは地獄か天国か。
四季折々の山脈の色は何色だろうか。
彼女の服装は、この状況に合わせてかメイド服。
だが何で、メイド服かと言う人もいるだろう。
ここは言わせてくれ、俺の夢だ。
俺の常識に合わせてくれたのだろう。と。
ふぅむ、何色かは未知数だ。
軽く深呼吸をした後、彼女は何を思ったかスカートを翻す。
当然視線は、あれよあれよと言う間にそちらの方へ。
「今度から視線には気を付けよう」
こちらの質問は無視である。
何か自分に言い聞かせているかのような節が見られるが、聞く勇気は消え失せた。
あの一瞬の出来事は俺の脳内フォルダーに、名前をつけて保存だ。
当然、名前は“パンチラ 黒”である。
しかしここで転機が。
彼女の顔つきが、明らかに変わったのである。
柔らかな感じから、キリリとした様子へ。
それはさながら、男のような。
明確な変容を驚いてばかりで、質問の類いなんか出来ない。
「俺はお前だ」
その口から出てきた言葉は、思いがけない。嘘みたいな事だった。
つまらない嘘をついている様子はなく、また付くメリットも必要性も感じられない。
と言うことは……つまり……彼女が言っている事は本当だということになる。
「つまりは、無意識下の中で俺は女だということに気付かず生きてきたのか」
「馬鹿か」
辛辣な言葉が被弾した。
ヤバイ……泣きそうだ。
容赦がないとは、まさにこの事。
彼女の言っていることが本当ならば、この銀髪巨乳メイドは俺自身ということになる。
「訳がわからないよ」
「言葉通り……いや、少し違うか」
「少しというと?」
「まずは、時間軸が違う」
「そんな難しい言葉使っても分からんぞ」
「頭で理解しようとしなくて良い、ただ言えることは、このままいくと確実に死ぬ」
その瞬間、目の前に陽光が指した。
希望の光がみえ、俺の中の何かが爆発したかのように。
目を見開き、目の前の俺自身に掴み掛かる。
「本当か」
「ンッ」
可愛い悲鳴に身体の力が抜ける。
思わず力が入ってしまったらしい。
「す、すまん」
「あぁ、本当だとも、嘘をついてどうする……おやっさん、嫌うだろ。そう言うの」
腕をくみ、片目を瞑って俺を見る彼女。
これで確信した。
彼女の言っている事は本当だと。
そこに追い討ちをかけるように、彼女は続ける。
「それに違和感を感じているだろ」
それは俺の心を見透かすように。
「それは間違っていない」
そして。
今一番、俺の欲しかった答えを紡いでくれる。
「心配するな、ここから目を覚ましたら叫べば良い」
「何をだ」
「それはわかっている筈だ、俺が恋かがれたもの、そして命を、それいじょうのものを救われた人が叫んだ言葉を」
「それってまさか」
瞬間、世界が暗転し。
意識がだんだんと遠退く。
「つぅっ」
その場をよろけ、彼女は俺を支える。
コーヒーのフワリとした良い匂いが鼻を抜ける。
雄大で柔らかな山脈が、俺を刺激した。
「この先、裏切られる事があっても自分が最初に感じた事を忘れず信じて進め」
これは未来からの忠告か。
さらに意識は遠のき、それと同時にある人の。
彼女に良く似た、だが非なる人の顔が浮かんだ。
「そうか……そういう」
さらに意識は遠退き始める。
そして。
世界は完全なる闇へと落ちていった。
反転、世界は段々と色づき始め。
しかし、辺りは暗いまま。
そうか……まだ、夜だったなそういえば。
そしてすぐ、違和感を覚えた。
嫌に静かだ。
あれを倒したなら万々歳だが、そう易々と上手く行く筈は無い。
すると、悪い予感しかしない。
身体の違和感は周知の通り。
そうだ。
そうなんだ。
俺は全てを思い出したんだ。
失われた記憶も絆も。
色彩が濃くなって行く景色、目の前に飛び込んできたのは赤と白。
そして、血の臭いだった。
身体に掛かる加重の感覚は妙に柔らかく。
それは、人の。
女性のものだと気付くには、そう時間はいらなかった。
急いで起き上がると、既に女体化していた。
だが今起きている問題はその事実さえも、些細な事となってしまう。
左胸大腿部を下から切り上げられたように入っている、鋭利な切り口。
手には天子ちゃんの血がベットリと付いていた。
「つぅっ」
不甲斐なさから声が漏れる。
いくら戦え無いからといって、女の子にこんなひどい怪我を。
今までの自分の否定からはいる。
いくら後悔したところで、事実はなにも変わりはしない。
後悔からは何も生まれず、大切な時間は刻一刻と過ぎ去って行く。
不幸中の幸いか、まだ息はあるがそう長くは持たないだろう。
今の自分に出来ることはと考える。
毒はどうにか出来ても血はどうにも出来ない。
「くそっ」
手詰まりだ。
俺は……天子ちゃんを助けることは出来ない。
無力感から来る脱力は、やがて自分に対する怒りへと変わって行く。
革ジャンを脱ぎ去り、天子ちゃんにかける。
意味のない行動かもしれないけれど、何かをせずにはいられなかった。
五感を研ぎ澄ませ、嫌な感覚を探す。
どうやらこれは女体化しなくても出来るらしいが、今は段違いに感度も精度も上がっている。
「そこか」
遥か上空を見据える。
そこには鳥のようなものに乗ったトモが、蠱毒の成れの果てと交戦中だった。
研ぎ澄まされた五感が、夜間の上空をも可視化させる。
そこには鎧童子も乱れ童子も居なく、激しい空中戦を繰り広げている。
それはまさしく弾幕のように、両者一進一退どちらとも引かぬ戦い。
光弾飛び交うその光景は、命の灯火を徒して戦っているかのように思えた。
そしてまたもや嫌な気配が俺を襲う。
今度は堂々と目の前、探す手間が省けた。
近くのポールを蹴りあげ、掴みとる。
身体を軸にブン回し、もとある形から戦いに最適な形へと変化させる。
「はぁぁぁっ……たぁっ」
それは矢。
それは槍。
かつて対峙した敵の持っていた武器。
これが最適な得物だと、本能で理解したのかもしれない。
ぶっつけ本番で、正直成功するとは思わなかったがなんとかなった。
だがしかし、剣術の心得はあれども槍術の心得は皆無だ。
かっこつけて矢のような槍をブン回したが、あれは昔見た動きの模倣にすぎない。
槍を操る術を持たないが、剣も槍も共通した動きなら、たったひとつ。
ただひとつ出来る技がある。
大地が揺らぎ、目の前に巨大ななにかが出現する。
幻が現実になるかのように。
靄が色濃く実態を帯び現れたのは巨大なバッタ。
そうか、こいつが夢のやつか。
何回も見た悪夢が今現実のものとなったら、驚きは半分だ。
夢と同じ色合い。
夢と同じ大きさ。
夢と同じ臭い臭い。
すべては一瞬。
こいつの動きは夢で何度も見たから、倒すのは造作もな………しまった。
対面したいが戦ってすらいなかった。
能力どうのと言っていたら、あの人に。
いや方に、笑われてしまう。
信じられるものは己の技術。
それは嘘をつかないし、気を抜かずに挑めば必ず報いてくれる無二の存在。
自分を信じよう。
こんな俺だけど、与えられた力と己の力があれば恐れるものは何もないのだから。
槍を握る手は自然と力がこもる。
まだ相手は出てきたばかりだ。
幾分かの余裕はある。
狙うは眉間。
狙うはその命。
「ハッ」
投擲された槍は真っ直ぐ軌跡を描き。
雷のごときスピードで穿つ。
出現して直ぐ、巨大なバッタば身体に大きな穴を開けられ光となり消えた。
どうやら、俺が倒すと光となるらしい。
その光は何時ものように身体へと、取り込まれる。
その充実感は、いつもとは比べ物にならないもの。
あれだけ引っ張ったのだから、もう少し苦戦すると思ったが拍子抜けした。
素直な感想がそれだ。
一度放った矢は戻ることはない。
投擲完了後、再び上空を睨み付けると戦いが最悪の形で決した。
炎を吐き出し、黒煙をあげ、落下してくる蠱毒の成れの果て。
軍配はトモに上がったらしい。
「むっ」
しかし落下してくる物体は一つではない。
皮肉にも燃え盛る炎をに照され、トモが墜ちてくるのが鮮明に目視出来た。
その顔には生気がなく、青ざめているのまではっきりと見て取れた。
「オイオイオイ」
夜風に流され落下地点が大きく変わる。
その身体は、このまま行けば確実に崖下まで堕ちる。
再び新たなポールを掴むと、トモの元へと走り出す。
距離にして百メートルぐらいの場所。
そしてその先は崖である。
止まろうとすれば間に合わなく、走り込めば崖下へまっ逆さまだ。
落下に伴い、そのスピードも段々と勢いを増して行く。
よもや迷っている時間はない。
ためらう気持ちを大地と一緒に蹴り飛ばし加速。
幸いにして落下地点は崖の上。
不謹慎だが今かこの場所を遠く離れたら、二人を危険な目に遭わせてしまう。
まるっきりさっきと立場が逆転してしまったが、単なる恩返しだ。
深い意味もなく、思惑があるとすればドヤ顔を見せつける位しか思い付かない。
崖の上となると、このポールは意味を成さなく受け止めるには邪魔なため投げ捨てた。
「うぉぉぉぉぉっ 」
ズシンと衝撃が走る。
落下の勢いを殺しきれず、その強い衝撃が肩から足へ伝達。
目の前には落下防止のガードレール
おもいっきり尻餅をつき、やっとこさ止まった。
腕の中で意識をら失っているトモを、お姫様だっこで天子ちゃんのもとへと運ぶ。
重さは大したことはない。
悲しいかな女体化している方が、力強いのは男としていかがなものだろうか。
運ぶ最中、トモのまぶたがピクリと動いた。
まだ状況を掴めている様子はなく、俺の腕の中でモゾモゾと動く。
「ここは」
嗄れ声でそう呟き、視界の焦点を合わせているのか何度か瞬きをして俺をまじまじと見つめている。
「そうか……なるほどな」
俺に視界を、焦点を合わせること数秒。
それだけで全てを悟ったのかトモはそれだけしか言わず、ただ俺を見るだけであった。
「気分はどうだい」
「最高だ」
茶化したつもりから一転、自分の腕を俺の渓谷に押し付けてきた。
「おい、トモ……てめぇ」
地面に……いや、このまま崖下に投げ落としたい衝動に刈られるがここは諸々の事でグッと我慢だ。
視線は仕方がないとして、今度からは不要なボディータッチは止めにしよう。
いや、触れることはないが念のためである。
触さぬ神に祟りなし、触れたら最後な気がする。
「良かった……ちゃんと動いているか」
触れる手は優しく俺の胸を撫でる。
土に埋まれば良いのにと普段なら思うところだが。
今回はその前の言葉のお陰で、-10から-1位の感情で留まっている。
「当たり前だろ……俺を誰だと思っている」
ゆっくりと、トモの身体を力強く抱き寄せる。
「まったく、お前って奴は」
「痛だだだだ、ちょっギン強い……ぎゃあああっ」
そう、力強く。
力強く、痛みを増加させるようにゆっくりと力強くだ。
怪我人らしくしていればいい。
ここからは俺の仕事なのだから。
天子ちゃんの側までトモを運ぶと、俺はゆっくりと空を見上げる。
「そこに居るんだろ……シルバさん」
街灯の上には、銀髪蒼碧眼の不良娘。
もとい、銀髪の騎士。
もうひとつの世界の俺である。
シルヴァーナ・カヴァリエーレ、ことシルバさんが俺を目力一杯で俺を睨んでいた。
それは偶然、いや必然。
誰も居ない筈の場所に、シルバさんは立ち俺を見ていた。
「何故見ているだけなんだ」
シルバさんが加勢してくれていたら、こんな血みどろの戦いになんかならなかった筈だ。
「貴様に言う義理はない」
貴様だとは妙によそよそしいじゃないか。
何だがもう少し、お互いの距離は短かった筈だ。
はっ、まさか。
久しぶりに合った俺に緊張して人見知りをしているのではないだろうか。
それだとしたら妙に納得だ。
あんなに密度の有る間柄になった人は初めてだし、異性なら尚更。
もう一人の世界の俺なのだから、友達が居る筈はない。
「おい、今明らかに失礼なことを考えていなかったか」
「さ、さぁ何の事だろうな」
よかった、なんかもとの調子に戻りつつある。
だけど正直言えば、いまだにシルバさんの目を見ると足がすくむ。
奇しくもそこは、初めてシルバさんと開講した場所。
雲は裂け、隙間からは光が差し込み月が顔を覗かせた。
しかし、あの時と決定的に違う事がひとつある。
「さぁ、剣を取れ銀。せめて楽に逝かせてやろう」
「なに」
向けられる殺意は俺に向けられ。
切っ先も俺に向けられ。
突き刺さるような視線と、その意志はかつてモンスターに向けられたそれと同じ。
「本気……なんだな」
「あぁ」
ニタリと俺に向けられるその笑顔は、別な意味で俺の鼓動をを早くさせる。
気配が生んだ微妙な変化は最大の判断材料だ。
「ならば動くな」
襲い来る殺意は俺の喉元を捉え、その大きさから避けることは容易い。
だけど反応は明らかに遅れをとり、しなり揺れる街灯。
急いで屈み避けるが、髪の毛を数センチ斬られた。
そのまま前転でその場から離脱。
月明かりに光る斬られた銀髪は、宙を舞い新たな星を産み出すかのようだった。
夜空の星は、何も点在するものばかりではない。
キラリと光る天の川。
銀色のそれは、季節感を無視し俺に襲い来る。
「ぶねぇ」
またもやギリギリで回避。
そう何度もこんな避け方をしていては、体力的によろしくない。
早く疲れればそのまま直行で天国行き決定だからである。
まだだ、まだ俺は死にたくはないんだ。
「1つ……聞いても良いか」
息を整えられれば上策と見たが、相手は手練れ。
そんな暇はくれるわけがなかった。
「良いだろう」
休まること無く剣舞は続き、俺の体力をガリガリと削って行く。
伊達に俺の戦いを見てきた訳ではないらしい。
さっきっから嫌なところを攻めてきて、そここら性格の悪さを滲み出している。
いったい誰に似たのやら。
やっとこさ投げ捨てたポールを掴めば、それは只の日本刀に形を変える。
「なに」
シルバさんと同じ剣を造り出す筈が、只の刀へと姿が変わってしまった。
時代劇で良く見るような、安っぽく鈍い光が刀身に走る。
「我が騎士の力は、私に帰ってきた。故に銀よ、我が剣の名も解らぬ主ではどうも出来ないだろう」
嬉しそうに剣を振るうシルバさん。
眼前には切っ先が何度も軌跡を描き、俺の体に傷を刻む。
まずい、まずいぞこのままじゃジリ貧で負ける。
一閃。
シルバさんの剣が俺の刀をへし折った時。
俺は濃厚になる負けを確かに感じ取った。
嫌な感は良く当たるもので、ネガティブ思考に帆を張れば。
際限無しに突き進む有り様である。
短くなった刀ではどうすることも出来ず。
かといって、丈夫であろう槍を使うことは愚の骨頂である。
槍は剣よりも強しと言うが、この手練れが相手だ。
そう易々と行くわけがないだろう。
「今までどこで何していたんだ」
へし折れたといっても、まだ使える。
その分リーチが短くなったが、逸らす分には何とかなる。
今重要なのは、切れ味よりも耐久性。
刀が触れ合う度に火花は散り、儚くも一瞬で消えて行く。
それは月明かりに負けまいと。
必死で自己を主張しているかのように、キラキラと輝く。
「なにをしていたかって?」
火花は一瞬でも強く光り、互いの表情を色濃く映し出す。
「そんなのは簡単なことだ、ただ帰る手筈を整えただけの事」
抜き身の剣。
俺が持っている剣は磨耗し、ボロボロだ。
これじゃぁ何時まで持つか分かったものではない。
「俺に黙ってか」
「そうだ」
戦いに集中し過ぎて所々聴き逃した感があるが、気のせいであって欲しいものだ。
剣を振るう度にシルバさんは楽しそうに笑う。
戦いがシルバさんの種族の本質だというのは本当らしい。
本人が言っていたのだから間違いはない。
だけど引っ掛かる事が一つ二つある。
まず一つめは、妹のブルーナちゃんの所在だ。
パット見結構なお姉ちゃん子だと、俺の勘が告げているのだが。
それ以前に作戦行動中に、2手に別れるのは何かしらの意味がある筈だ。
なんせテンプレなツンデレで自分の本心を押し殺してしまうタイプ。
本当はシルバさんに甘えたい筈なのに、次期王位後継者と言う重圧が彼女を……。
と、ここまで妄想が進んだとき。
俺の服はサックリと裂け、巨大な峡谷が露になった
「戦いに集中せよ、剣を作り替え、己の力を存分に私にぶつけよ」
急いで後退したその時、シルバさんは追いかけもせず。
ただ剣を構えるのみ。
その迫力は、俺の膀胱を緩め放出を許してしまいそうな。
顔に影がかかり、その迫力は夜という条件に遡上して、とても恐らしいものだった。
戦う理由なんて寸分も……いや、ミジンコほどの理由ならあるかもしれない。
だがしかし、俺がシルバさんと戦う理由は全くないし存在すらしていない。
ムカつく事はあろうども、刃を交えるなんて俺の常識ではあり得ないことだ。
だがそれは、シルバさんには通用しない。
「そういえば、理由を尋ねたな」
言い方が悪いが、すむ世界が元々は違ったのだ。
本来ならば交わることのない水と油のような関係なのだから。
「あぁ、忌野際に教えてくれないか」
よく自分でもこんな難しい言葉を今の状態からスラスラと言えたものだ。
「答えは簡単だ、主は早く起きすぎた」
「あえ?」
「む、どうした。そんな目で見るな」
いや……だってね。
「そんな理由でか」
「ふん、やはりことの重大さを理解してない様子だな」
そういうと、すかした。
してやったりな顔ともとれる、ドヤ顔で俺を見てきた。
「な、なんでだよ」