異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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エピローグ

 

 

 

あの後、ブルーナちゃんはタマと共に直ぐ様飛んできた。

 

小脇に抱えたタマは、途中で捕まえたの事。

 

 

 

逃げやがったのかな。

 

 

そしてもう一人、驚く来客が。

 

 

「ごきげんよう」

 

「え、アラクネ」

 

 

首には魔方陣。

なんでも、力を制限する手錠のようなものらしい。

 

記憶に残る、黒檀色のドレスを身に纏い優雅に降り立つ。

 

 

何で此処にと疑問しか浮かばないが、それを察してかシルバさんが説明をくれた。

 

 

 

なんでも、この土地に封印されたモンスターの類いの封印が解かれたらしい。

 

解いたものは、そのまま死亡。

 

 

自業自得と、シルバさんは言っていたが。

 

なんだかな。

 

 

それは天子ちゃん達が倒したのだけれども……って。

 

 

「やばい」

 

 

重症じゃないかあの二人。

 

早く医者……もしくは回復魔法的な何かを。

 

って、俺自分しか出来ないんだ。

 

 

「大丈夫、万事完了した」

 

 

親指を立て、どこかで見たようなドヤ顔を見せるブルーナちゃん。

 

ゆっくりと起き上がる二人は、いまいち状況が掴めていないといった様子だ。

 

 

 

「ふむ、続けるぞ」

 

 

意識が混濁している二人を尻目に、シルバさんは説明を再開した。

 

 

 

「要はこの町には悪い気が溜まりやすくモンスターの類いが出やすい……」

 

 

それを抑制する結界に、あの封印が使われていたらしい。

 

 

さっきのアレも、結界の歪みから産まれたモノで今は散らしたから大丈夫とのこと。

 

 

「……それでだ、欠けたモンスターの代わりにアラクネを使うと」

 

 

うん、何が何だかさっぱりだ。

 

「え、出来る……いゃ、良いの」

 

 

強制送還だから、取りあえずは帰った方が良いのは明白。

 

だれが好き好んで。

人柱になりたくないのは、誰しもが思う所ではある。

 

 

 

「フフッ、構わないわ」

 

 

袖で口を隠し、アラクネは笑うと。

 

 

「何かを企んでるんじゃないか」

 

 

俺の疑心に待ったをかけるのはブルーナちゃんであった。

 

 

「それは無理」

 

「なんだい」

 

「あくまでも使うのはアラクネの魔女としての高位の力、肉体は使わない」

 

 

 

「私はこの土地が気に入ったのよ、あの緑の洋館が自然が」

 

 

確かに、やけに手入れが行き届いた庭だったなそう言えば。

 

 

 

「とまぁ、悪さをしたとしても私やこの世界の者に簡単に倒せる程に弱まる。放っていても問題もない」

 

 

 

罪を犯せば即斬殺。

口には言わないが正にこんなことを言いたいのは何となく分かった。

 

この二日間、特に俺に対して大きな変化は無かった。

 

 

いや、アラクネにここで使う名前を考えてくれと言われた事があったな。

 

 

俺は咄嗟に【麻等 久音】と言った。

 

気に入ってくれた様で良かったのだが、なぜか視線を感じた。

どこからかは分からない。

 

 

 

そして、シルバさんとブルーナちゃん達を、おやっさんに紹介しようと思う。

 

 

モンスター関連の事はもちろん。

俺の女体化の件は伏せて。

 

そして俺は男の姿であることを確認し、噛み締めた。

 

 

おやっさんを待つ時間。

俺達は様々な事を話した。

 

 

これまでの事を。

 

これからの事を。

 

 

未だ不安定な状態が続くそうで、油断は許さないといった状況。

 

 

直接的ではないが、俺を含めたシルバさん達も事態の収集に協力してくれるらしい。

 

 

この業界は、慢性的に人手不足。

 

 

事件を起こす者が居ても、沈める者は居ない。

 

 

「たっだいまー」

 

 

久しぶりに見た気がする。

 

 

俺の幼なじみ、千束は今日も元気だ。

歳の事なんか考えずに。

 

 

「たっだいま、ブルーナちゃん」

 

 

 

何故かは知らぬが千束はブルーナちゃんがお気に入り。

 

本人曰く、妹みたいなものらしい。

 

 

 

「お、おかえりなさい」

 

 

少し顔がひきつっている。

本人は千束が苦手なようだ。

 

 

 

「そう言えば、愛さんの娘さんの名前が【さくら】に決まったらしいよ」

 

「へぇ、早いじゃないか」

 

 

「二人で前々から決めてたみたい」

 

 

何はともあれ、この数日。

命の誕生やら、色んな。

本当に色んな事が起きた。

 

 

それも人生を大きく変えるような事が沢山。

 

 

あの時の選択は間違っていなかった。

そりゃぁ、後悔するだろうが。

 

これだけは自信を持って言える。

 

 

 

人生は平等ではない。

努力の結果も、自信が望むものが得られないのが殆どだ。

 

 

だけど、それに負けないような。

 

自分に誇れるような人生にしてゆこう。

 

 

まだまだ、人生は終わっていないのだから。

 

 

 

 

カランとドアのベルが鳴る。

 

 

 

「おかえり」

 

 

帰ってきたおやっさんに、俺達一同は満面の笑みを向けた。

 

 

 


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