異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~ヒーロー=ヒロイン~(4/4)

    

 

覚えているだろうか。今、俺には足がない。

足と言うのは股から生えている足ではなく、車やバイク等を指す足の事だ。

 

歩いて行ける距離らしいが……

 

 

「何でだぁぁぁぁ」

 

 

俺は人の往来する町を歩く。

ただ歩いているのではない。

男物の服を来た美女(胸は残念)と、メイド服を着た美女(ただし男)が二人並んで歩いているのだ。

 

振り向かない人は少ない訳で、何人かの男は一定の距離を保ち

付いて来ているのが解る。

 

 

「この世界ではストーカーの息の根を止めても罪にはならないか」

 

「さすがに、そこまでは」

 

 

しかし、これでは良知が明かない。

 

そう思ったその時。

 

 

「まくぞ」

 

 

シルバさんは、そのまま俺の手を掴むと猛スピードで走り出した。

 

 

「ギャァァァァァ」

 

 

腕だけ捕まれた俺は、靡く旗のように連れられる。

 

 

「っと」

 

 

いきなり、シルバさんは止まるるが慣性の法則に従い、俺は吹き飛んだ。

 

 

「ぁぁぁぁぶぅ」

 

 

 

土だろうか。

柔らかい何かがクッションになり幸い傷はない。

 

でも何だろう。

この土、臭い。

 

腐葉土と言われる土。

 

文字通り落葉などが発酵して出来た栄養が豊富とされている土の事だ。

冬の寒い日なんかは発酵の熱で湯気が出ることもある。

痩せた畑や花壇なとに活力を与える素晴らしい土だか、ただ一つ難点が。

 

 

「臭いぞ」

 

 

そう、発酵したと言っているが言い替えると、それは腐っていると言うことだ。

 

 

「しかしシルバさん。あそこに放り込んだのはシルバさんだぞ」

 

 

鼻をつんざくような臭いを発しながら、汚れたメイド服で立ち上がる俺。

普通なら着替える訳だが、生憎メイド服しか着れる服はないのだ。

 

 

「岩やコンクリートに叩きつけてもよかったのか」

 

 

ニヤリと転がる岩を見たシルバさん。

 

 

「死ぬわ」

 

 

思わず大声で突っ込みを入れてしまった。

 

他に人がいるかもしれない。

周りを見渡してみるとそこは広大な畑が。

あれ以上目立つのは嫌だったがここは流石に遠すぎる。

 

たしか此処は、あの駐車場の近くだった気がする。

 

 

「ここら辺か」

 

 

シルバさんがそう呟いた先には、樹海のような森が見えた。

俺は向こうまで見えない木の海に唖然とした。

 

 

「まさか、自殺者を止めに行こうだなんて考えてないだろうな」

 

 

軽い人生しか送っていない俺には荷が重すぎる。

 

 

「まさか、銀には荷が重すぎる」

 

 

解っていたさ。

解っていたけれど自分以外から聞くと、とても悲しくなってくるのは何故だろ。

 

湧き上がる悲しみを胸の奥に留めつつ、俺は静かに頷いた。

 

 

「そうだな」

 

 

顔は……一切の揺るぎもなく無表情だっただろう。

 

 

「実は……人に会わなければいけない」

 

 

へぇと、俺はここまで連れてこられた無意味さを予感しつつシルバさんの話を続けて聞く。

 

 

「早く銀にモンスターを倒して貰って男の姿に戻ってくれないと、警察に届けられないからな」

 

 

ため息混じりにシルバさんは言った。

 

 

「ちょと待て……くれ。警察って何だよ」

 

 

モンスターがどうのこうのと言っていた気がするが、今の俺には警察の方が大切だ。

 

下手をすれば、住む場所から追い出されるばかりか、命がなくなるからだ(例のあの人の手によって)。

対策を立てるためにも早くそう言う事を言って貰わなければ困る訳だ。

 

      

「出頭するにしても、そのままの格好では私が出頭しているのと同じだろう」

 

「つまりはモンスターを倒すと」

 

「そうだ。出頭の前にチョコッとモンスターを倒すだけだ」

 

 

うっわぁ、買い物行感覚みたいに言われたよ。

 

 

「あんな化け物と戦えって?止めてくれ、命が幾つあっても足りないよ」

 

 

無理無理無理無理無理だから。

あんなのと戦うぐらいならずっとこのままの方が良いに決まっている。

 

 

「拒否権はない」

 

「はぁ、そうやってまた暴力で訴えるのか」

 

 

此方は命までかかっているんだ。

暴力で訴えるやり方じゃぁそれ相応の頼み方ってものがある。

 

 

「いや、やりたくなければそのままでも良いぞ」

 

「へ?」

 

 

なんか肩透かしを喰らった気がする。

シルバさんなら何がなんでもやらせるかと思ったのに。

 

 

「それを付けている限り私を含め、お前はモンスターに狙われ続けるがな」

 

 

そう言って、俺の胸のペンダントを指差した。

どうやら逃げられる事は出来ないようだ。

森の中をズンズン進むシルバさんの足取りは慣れたものであった。

 

 

「此方は山用じゃないっつうの」

 

 

無駄に装飾された靴を恨めしくにらむ俺。

まぁ、こんなの普段持っていないんだがな。

メイド服と一緒の性別変化による影響の一つだ。

 

 

「止まれ」

 

 

ピタリと止まったシルバさん。

近づいて見てみると地面に小さな窪みのようなものが規則的にへこんでいた。

 

 

「どうやら手負いか……まぁ初めてなら五分五分ってとこか」

 

 

ブツクサ何か言っている。

赤くは無くオレンジ色を濃くした黄土色とでも言うのだろうか。

まぁ、汚いオレンジ色とここでは最終的には俺の中で落ち着いた。

 

別に色の固有名が解らなかった訳ではない。

そしてあの、汚いオレンジ色の液体は〝手負い〟と言う情報から血だと推測される。

 

 

(やっぱり血は赤じゃないんだ)

 

 

と、考えつつ、それからはシルバさんの動きを頭の中を空っぽにして眺める。

 

 

「追いかけるぞ」

 

「ひぁい」

 

 

油断した。

声が裏返った事で顔が真っ赤になった。

 

気がする。

 

 

「いくぞ。銀、回復されては厄介だ」

 

「はいはい、俺がな」

 

 

何かが吹っ切れた。

一つ言っておく。

 

スルーとは、時としてどんな言葉よりも鋭いナイフに変わる時がある。

身をもって痛感した俺が言うのだから間違いはない。

 

こんなとき。

ディスクな式紙。

特に鷹の魂が入ったものが欲しくなる。

 

あれは動物の形になり何より持ち運びに便利そうだ。

まぁ、薄いと言う観点からなのだが、最近出てきた缶のやつはあまりフォルムが好きではない。

 

無いものを無いと嘆いても何も始まらない。

今一番必要なものは、少しの小銭と明日のパンツ……ではなく

 

 

「行くぞ銀。そんな腐った顔をしていると本当に腐るぞ」

 

 

強い強い。

強い折れない心が欲しいです。

 

 

「そうだ」

 

 

それは、突然だった。

 

 

「今のまま戦ったら銀が死ぬではないか」

 

 

そう、突然に命を後一歩のところで取り止めた。

 

 

「シルバさん、それは一体どういう意味かな」

 

「聞いての通りだ、このまま挑んでもあれには勝てない。むしろ死にに行くようなものだな」

 

 

腕を組ながら唸り、一人で納得している様子だが此方は見当がつかない。

 

いくら世界が違う同一人物だとしてもわかる筈はない。

わかる人がいたら挙手を、キャンディあげるから教えてくれ。

 

 

「まだ、本人と契約してない」

 

「本人?」

 

 

本人というくらいだから、少なくとも話が解る人だろう。

少しはまともな人が来て欲しいものだ。

シルバさんを見ていると不安の方が大きくなるのはどうしてだろう。

      

人気の無い森を言われるがまま暫く進むと、広い原っぱに出た。

 

 

「ふむ、ここが良いだろう」

 

 

そういったシルバさんは、俺に近づくとグイッと顔を近づけた。

 

 

「え、ちょっと、しし、シルバさん」

 

 

そして目を瞑り、俺の胸の谷間に手を置く。

 

 

誘われている、誘われているのか?

俺はその行動は待っていると捉えるぞ。

 

良いんだよな。

双方合意の下だし。

 

良いんだよな。

愛があれば、世界は違えども同じ自分“内藤銀”だとしても。

 

生唾を飲み俺も目を瞑る。

シルバさんのその体型に似合わないほど艶やかな唇に目掛け、顔を近づける。

 

 

「我が声に答え、出でよアーマイゼ」

 

 

すると。

目を瞑っていても解るほどに俺の胸のペンダントは、強く青白い光を放った。

 

 

「気配で解るわ愚か者」

 

「グハァッ」

 

 

どさくさに紛れ腹に一発。

 

良いパンチを貰った。

 

俺は痛みに耐えきれず、その場にうずくまってしまった。

今日一日だけで何発の攻撃を喰らったのだろう。

 

未だに残る腹に刺さるような痛み。がまだ残っている。

 

 

「こんなバカが、この世界のシルヴァーナなのか」

 

「あぁ、そうだ。認めたくないが……事実だ」

 

 

ため息混じりに誰かと話しているシルバさんの声が聞こえる。

 

あれ?一瞬の隙にだれかそこに立っている。

声はハスキーだが、女性だと解る。

良知が空かないと思いゆっくりと顔を上げる。

 

 

「……うん、頭でも打ったのかな」

 

「大丈夫。頭がおかしいのは元からだ。安心しなさい」

 

 

話しかけてきたのは知らない人。

 

いや、人ではなかった。

 

 

「改めて紹介する。私が契約していたモンスターのアーマイゼだ」

 

「よろしくね、バカ」

 

 

見上げると前に見た巨大な蟻が6本足で堂々と立っていた。

堂々と立つその佇まいは威厳や風格が見て取れ、多足歩行とは思えないほど堂々としているよいに見えた。

 

この蟻いや、アーマイゼだったか。

普通の蟻とは違い、まず全体を見ると機械に近い蟻。

普通の蟻の真ん丸な目とは違い黄色く鋭い目をしている

 

 

「じろじろ見るな胸の大きなシルヴァーナ」

 

「こら、アーマイゼ」

 

「昔から嘆いていたではないか、何で私だけ小さいのって」

 

「それはだな……って話を逸らすでない」

 

「ようやく気付いたか」

 

「わざとだったのか」

 

 

なんだろうか、内輪で漫才を始めたぞ。

 

 

「さて、早く本契約を結ぶぞ。いい加減に体がだるくなってきた」

 

「よし、銀。契約だ、がんばれ」

 

 

シルバさんはそう言うと、右手をグッと突き出した、

 

 

「よし、銀。契約だ、がんばれ……じゃねぇよ、やり方を教えてくれやり方を」

 

 

 

いきなり、飛行機を運転しろと言っているようなものだぞ。

無理だっつうの、こっちは説明以外にも飛び方を教えてもらってないんだから。

 

下手すりゃぁ死ぬ自信があるぞ。

 

 

「品の欠片もないな」

 

「全くだ」

 

「誰に似たんだか」

 

「おいアーマイゼ、こっちを見るなこっちを」

 

「仕方がないか、おい。銀とやら私に触れるんだ」

 

 

俺は言われた通りアーマイゼに手を触れた。

 

 

「お、おい、さわっても良いと言ったがいきなり私の尻をさわるだなんてなんて大胆な」

 

「あ、あああ、ごごごめん」

 

 

と言ってみたが、見た目は蟻だから何処が尻だかわからんのだよな。

 

 

「……」

 

 

そのやり取りをシルバさんがとても冷めた目で見ているのに俺は気付かなかった。

 

 

「後は自分の名前を、女っぽく叫べば終りだ」

 

「え?」

 

「どうした、このままで良いのか」

 

 

シルバさんを見た。

目を瞑り黙って頷いている。

合っているのか。

 

だったら逃げることは出来そうにないな。

 

 

「そんな俺は……」

 

「早くしないとエネルギー切れで私が消えるぞ」

 

「銀。早くしなさい」

 

「わ、分かったよ……コホン……な、内ぃ藤ぉ銀ん」

 

 

やった。やりきった。

もうこれっきり後悔はしない。

 

 

「ど、どうだ」

 

「……」

 

 

シルバさんは下を向き顔を赤くしてプルプルと震えている。

 

なにか間違って怒らせたのか。

そう俺が絶望に苛まれたその時。

 

 

「プッ」

 

 

留めきれなくなった口から吐き出される、空気の固まり。

 

 

「ハハハハハハッ」

 

 

その直後、二人から聞こえる大きな笑い声。

そのとき俺は確信した。

 

 

「騙したな」

 

 

皆さんには無責任で強引な女に捕まって欲しくはないと切に願う。

 

“騙されるのが悪い”

 

そう二人が一蹴した事によって強引だが事態は終息に向かった。

 

 

「気を付けろシルヴァーナ。近くに“巣”があるぞ」

 

「“巣”?」

 

 

思わず声に出してしまった。

 

 

「簡単に言うと、モンスターの集まりだ」

 

 

シルバさんが付け加えるように説明してくれた。

 

うん、でも。

 

 

「来たな」

 

 

静かな森の影から昨日と同じ。

いや、一回り小さい蜘蛛の化け物がコンニチハをしていた。

 

 

「ガンバレ」

 

 

表情を強張らせたまま静かに肩に手を置きながら頷いた。

 

      

「……」

 

「……」

 

 

簡単に言う。

これは決して放送事故などの類いではない。

 

あれから俺達は睨み合ったまま一向に動こうとはしなかった。

いや、動けないと言った方が正しいのだろう。

 

お互いがお互いを警戒しながら一歩も動けない状態。

 

 

『帰ッテクレ 俺達 静二暮ラス 』

 

『ソウダ ヒト 必要以外食ベナイ』

 

 

これは……頭の中に直接語りかけてくるのか。

 

 

「黙りなさい。貴方達は元の世界に強制送還よ」

 

『向ヤダ アッチハ 食料 少ナイ』

 

『ソウダ』

 

 

成る程な、向こうは食糧難らしい。

熊が食料を求めて人里へ下りるのと同じ原理か。

 

 

「成る程な熊と一緒か」

 

「そんな悠長な事を言っている場合ではないぞ」

 

 

シルバさんが指を指すと、元からいた蜘蛛の他にワラワラと言う表現が相応しいだろう。

 

 

「数は十……いや、もっとか」

 

 

大量の蜘蛛が気持ち悪いぐらい出てきて辺りが、ざわざわ騒がしくなってきた。

 

 

「銀、気を抜くなよ」

 

「いや、ここは逃げよう」

 

「ハァ」

 

 

ここは多勢に無勢。

あんな数を真面目に相手していたら、命が幾つあっても足り……って、死んだか俺。

 

一度は無くなった命だ。

それを大事にしなくて何が悪いんだ。

 

そう、これは当たり前。

人として純粋な感情であって、決して恥じるものではない。

 

 

「シルバさん、そんな顔をしてないで早く逃げよう」

 

 

そうだ、早くここから退散しなくちゃ。

 

 

「失望したよ。銀」

 

 

シルバさんは木の枝を拾い上げ、指でなぞる。

すると木は光輝き、レイピアだろうか?その枝は剣に姿を変えた。

 

 

「そこで震えて見ていろ」

 

 

シルバさんは凛とした佇まいで、蜘蛛の化け物を見据える。

そうこうしている内に俺達の回りには十数もの蜘蛛が辺りを取り囲んでいる。

 

 

「やぁっ」

 

 

掛け声と共に、シルバさんは蜘蛛の群れに一人単身で乗り込んでいった。

     

 

 

~Silvana said~

 

      

 

呆然とした顔で、銀は私を見ている。

騎士たる自覚の無さには私は失望の念が拭えない。

だが、今はこの群れをどうにかしなければならない。

 

“弱き者には救いの手を”

 

幼い頃からそう教えられてきた私、そして教えてこられなかった銀。

初めから無理だったのかもしれない。

 

 

「くそっ」

 

 

悪態をついてしまう。

エネルギーが少ないせいか、体がやっぱり重い。

さっきの物質変化が出来たのは奇跡に近い。

 

 

『騎士ヨ 一人デ 勝テルト 思ッテイルノカ』

 

「お前達下っ端には、私一人で丁度良い」

 

 

 

嘘だ。

本当は剣を維持しているだけで心臓が暴れるように動いている。

私は意を決し、握る剣に力を込めた。

 

 

「行くぞ」

 

 

槍のように鋭い前足が、私の頬を掠めた。

切っ先を一番柔らかいと思われる間接に向けた。

相手の勢いを利用して刀身は、肉を裂きそして筋を切る。

 

 

『ギギギッ』

 

 

バランスを失い仰向けになった蜘蛛の口に、剣を突き立てると直ぐ様次の行動に移す。

 

次は二方向。

私から右斜め上と、真後ろから来るのが解る。

 

他に来る気配。

殺気と言った方が分かりやすいだろうか。それがない。

 

 

「……ナメられたものだな」

 

 

体制を低く、力をため右に避ける。

銀色の髪が顔に掛かり、視界が一時失われるが聴覚による情報が作戦の成功を知らせた。

 

 

『ガッギギッ』

 

 

いきなり消えた私に対処できず、二体は衝突した。

 

この好機を逃してはならない。

剣を振り落とし、二体の頭を跳ねる。

 

刀身に響くものを切る感覚。

すぐ後に訪れた地面に当たった感覚。

汚いオレンジ色の血が剣からドロドロと流れ落ちる。

 

 

「まだか」

 

 

蜘蛛の群れが辺りをぐるりと囲まれる。

力は今ので十分に使ってしまった。

固い外皮を避け、間接の柔らかい所に剣を突き立てるも、切れ味が落ちてしまっているのが解る。

 

髪が反り血で、オレンジ色に染まっていがそんなのは気にしていられない。

 

今度は三体。

私に向かってきている。

悔しいが遊ばれている。

葬る毎にだんだんと向かってくる数が一体、また一体と増えてゆく。

 

 

「ハァァァァァ」

 

 

全身が血に染まっている。

剣を握る余力がもうない。

 

 

『十三カ ヨク 持ッタ 方ダナ』

 

 

私の手から剣が滑り飛び、地面に突き刺さると、元の木の枝にもどった。

 

 

「しまっ」

 

 

目の前には切り損ねた二体の蜘蛛が。

 

 

「くっ」

 

 

その時。

私はモンスターに恐怖した。

 

槍のような前足と、ギラギラと尖った口が私の命を奪いにやって来た。

 

恐怖からか。それとも、死に際の幻想か。

目を瞑ろうとした私の目に写ったの。

 

それは銀色の髪を靡かせ、見たこともない剣を持った私。

 

そう、この世界の私

 

 

「銀!!」

 

 

 

 

~GEN SAID~

 

      

俺は無力だ。

女の子一人を戦わせて、その光景をのうのうと見ている。

 

でも、大丈夫だよな。

あっと言う間に一体倒したし。

次の二体も流れる作業だったしな。

 

 

『本当にそう思っているのか』

 

「大丈夫だよ。だってただの木の枝を剣に変えたんだぜ」

 

 

何処から声がした。

流れで返答したが、この声はアーマイゼか。

 

 

『銀。シルヴァーナが本当に大丈夫だと思っているのか』

 

「それは……」

 

 

“大丈夫だと思っている”と、いえば嘘になる。

 

現に蜘蛛の群れも遊んでいるように見える。

素人の俺の目から見えたのだ、火を見るよりも明らかこのままでは危ないかも。

危ないかもと言ってみたものの何をして良いか解らない。

 

何をするべきなのか。

どうするべきなのか……。

 

      

『戦いたいか』

 

 

戦いたくないよ。

戦う理由がない。

戦いたくないけど、目の前で女の子が戦って、傷ついて血に染まっていくのは……

 

嫌だ。

 

 

『有るじゃないか。お前に戦う理由が』

 

 

理由があっても、力が。

 

 

『有るじゃないか。お前には戦う力が』

 

 

使い方が解らない。

 

 

『解らないんじゃ無い。使う勇気がないだけだ』

 

 

勇気?なんで出てこないんだ。

こんなに思っているはずなのに。

 

 

『本能で恐怖しているだけだ』

 

 

本能だと?

 

 

『この力。王の力はお前を孤独にする』

 

 

俺は……。

 

 

『抗え。叫べ。振り絞れ。躍動しろ。お前に与えた力。孤独になろうと守りたい者がお前にはある筈だ』

 

 

責任感か。

いや、これは覚悟。

 

シルバさん、悲鳴めいた声後。

足元に一本の剣が飛んできた。

 

 

『急げ。銀』

 

 

地面に突き刺さった剣は、元の木の枝に戻った。

 

 

「……シルバさん」

 

 

意思は固まった。

例え孤独になろうとも。

例え女のままになろうとも。

 

 

「俺は守る」

 

 

女の涙はみたくない。

傷つく姿を見たくはない。

例え自分が女であろうとも。

 

俺の願い。

俺の志。

俺の決意。

 

踏み込む足に力を込めて、イメージするのは最強の剣。

昔助けてもらった人が使っていた剣。

 

肘から指先までの長さの刀身。

鎖で繋がれた二本の剣が、俺の両手に収まっていた。

 

 

「ターボセイバー……だったけな」

 

『オ前ハ 何ナンダ』

 

「内藤銀。そこの姫の騎士さ」

 

 

右手の剣の切っ先を一匹の蜘蛛に向け、もう片方を肩に乗せながら俺は言った。

 

 

『オマエ マサカ』

 

「この格好じゃ戦い難いな……でも。まぁ、良いか」

 

『止メロ 後戻リ 出来ナクナルゾ』

 

「御生憎様。覚悟はもう出来ている」

 

 

肩に担いだ剣を一匹の蜘蛛に投げつけたる。

 

 

『貴様ァ』

 

 

辺りの蜘蛛は俺に向かって一斉に襲いかかってきた。

敵の頭に剣が突き刺すと、大量の液体を吹き出し崩れ去った。

 

 

「ツゥッ」

 

 

直ぐ様剣を引き抜く。

構えを戻し、第二波に備える。

 

 

「おいおい……多いって」

 

 

空を埋め尽くさんばかりの蜘蛛が降ってきた。

目が赤く発光しているのは気のせいではない。

映画で見たが、怒っている証拠だろうか。

その映画と同じとは限らないが、今はそんな気がする直感がある。

 

金色の野に、降り立たなければならないのだろうか。

 

 

『余所見ハ』

 

 

体が反射とも言うべきだろうか。

自動的に、そして機械的に攻撃が簡単に予測できる。

 

 

「ハァッ」

 

 

両手剣の手数を生かし、右へ左へ蜘蛛を凪ぎ払う。

固そうに見えた皮膚はまるで、大根を切るみたい切れる。

致命傷を受けた蜘蛛達は、光の粒子となって俺に取り込まれる。

 

イメージとしては、風呂上がりに出る体からの湯気を逆再生した感じた。

全身で光を取り込みつつ、いつか見たヒーロー。

いや。あの救世主みたいに、蜘蛛を切り捨てて行く。

 

 

「はぁぁぁっ」

 

 

斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。

 

どのくらい斬っただろうか。

周りの蜘蛛は一向に減る気配はない。

 

 

「退くぞ銀」

 

 

ボロボロのシルバさんは、そう言った。

 

 

「待ってくれよ、こいつ等を片付けなくちゃ。人が」

 

 

話している間にも蜘蛛は襲いかかってくる。

空気を読め。空気を。

 

 

「良いから。私を信じろ」

 

「……わかったよ」

 

 

何でだよシルバさん。

まだあんなに一杯居るじゃないか。

 

最初の戦いは。俺の圧勝で終わった。

だけど。

 

結果として、俺の逃亡と言う形でこの戦いは終わってしまった。

逃げる途中。暫く、蜘蛛は俺たちを追いかけてきた。

だが森を抜けようとした所で蜘蛛達はピタリと追跡を止めた。

 

それを後ろ目に見ながら、俺達は帰路についたのだった。

 

      

      

      

     

     

      

 

 

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