異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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02話 煌めく黒金の鎧~合縁奇縁~(1/5)

忘れている人は少ないと信じたい。

 

今の俺には足がない。

足と言うのは、股から生えてるアレではなく、乗り物の事を指す。

 

先の戦いで、忘れている人もいるかもしれないから言っておく必要がある。

俺達はあの現場近くの森へ行った訳だが、ここから千束の勤める警視庁まではかなりの距離がある。

 

何が言いたいと言うとだな。

 

 

「絶対に間に合わない」

 

 

二人して国道にしては狭い道を走る訳だが、スピードは常人のそれと変わらない。

 

 

「なんで男に戻るかな」

 

 

いや、戻りたかった訳なんだがね。

時と場合があるんだよ。

 

こんちくしょうが。

戦いの時に気づいたのだが、女になった時の俺は身体能力が上がっているらしい。

 

 

「言っただろう、まだ力を使いこなせていない。それに、あの蜘蛛から発せられていた殺気が途絶えた」

 

 

そんなことを言いながらシルバさんも俺の2、3歩後ろを走るのであった。

しばらく走っていないせいか、足が痛くなってきた。

 

運動不足の弊害とは、良く言ったもので、太股とふくらはぎの痛みは半端ない。

 

車が、何台も何台も抜き去って行く。

時には、これでもかっというほど距離を開けて。

時には、ギリギリの距離を走り抜いて行く。

 

また、一台の車が抜き去っていったと思ったら少し先でその車は止まった。

 

 

「あれぇ、銀ちゃん」

 

 

聞き覚えのある弾んだ声。

車の中からサングラスを外し、出てきたのは黒髪を靡かせた女性だった。

 

 

「めぐみさん何でこんな所に」

 

 

めぐみさんは車からおりて、此方に向かって歩いてきた。

 

 

「何でって、それはこっちの台詞よ、銀ちゃんこそ、なんでこんな所にいるの」

 

 

めぐみさんはそう言った後、シルバさんに気付いたようだ。

 

 

「銀ちゃん、この子……」

 

「お初にお目にかかります。私、内藤さんを頼ってイタリアから来ました、シルヴァーナ・カヴァリエーレです」

 

 

めぐみさんがそう言った時、軽く会釈した、シルバさん。

態度が俺の時と全然違うのは仕方がない事なのだろうか。

 

 

 

「初めまして、椎名めぐみです」

 

 

そう言って、めぐみさんもお辞儀をした。

 

 

「へぇー、最初はメールの間違いねぇ」

 

 

奇跡的に知り合いに出会えた俺達は、なんと慈悲深い事に、車に乗せてもらえた。

 

 

「そうなんですよ、最初は英語の羅列が一杯出てきてビックリしましたよ」

 

 

いけないことと解っているが嘘八百を並べる。

仕方がないよな、有りのままを話しても信じてもらう確率は限りなく低く、かなりの労力を使う。

 

 

「そこから始まった恋ってやつね」

 

 

少し、おどけた様子でめぐみさんは言った。

 

 

「大丈夫。その心配はありません」

 

 

真顔で言うな真顔で。

まだ、めぐみさんには見えてないから良いものの、その顔でその言葉。

 

深く胸に突き刺さるものがあるぞ。

 

 

「フフッ、どうかしら。私の勘結構いい線行ってると思うわよ」

 

 

そしてめぐみさん、これ以上深く掘り下げないで。

お願いだから。

 

 

「じゃあ、そうならない事を祈ります」

 

 

そう言ってシルバさんは十字を切った。

神にまで誓うことなのか……それは。

 

 

「ううっ、もう、どうにでもなれ」

 

 

様々な思い。微妙な均衡を保ちつつ、俺達は千束の元へ向かうのだった。

あれから、いろんな事を質問され、嘘と真実を織り混ぜながら話したのたが。

 

本当にこれで良かったのだろうかと思いつつ。

下手に話して他者を巻き込むわけにはいかなかなかい。

そう結論に至ったわけだ。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

気がつけば、警視庁の前に付いていた。

俺達はめぐみさんにお礼を言い、早速向かうことに。

 

 

「銀ちゃんとシルヴァちゃんと千束ちゃんの三角関係か……昼ドラみたいね」

 

 

別れ際にそう言った後。めぐみさんの乗った車は、走り去ってしまった。

 

だから違うってのに。

俺の叫びも虚しく、空の向こうに消えていってしまった。

 

さて、これから、ある意味戦いが始まる。

モンスターよりも手強く、戦いづらい相手だろう。

 

だが俺は負けない。

これ以上、事をややこしくしたら俺の頭の処理容量を超える。

 

それだけは何としてでも避けなければならない。

 

 

「私はここで待っているぞ」

 

 

そう言って石碑の周りのブロックにシルバさんは腰を掛けた。

 

 

「あぁ、分かった。寒くなってきたら中に入っているんだぞ」

 

 

フッと、シルバさんは笑うと。

 

 

「そうさせてもらう」

 

 

そう言ってシルバさんは手を振った。

 

 

これからは俺の戦い。

闘なければ生き残れない。

そう自分に言い聞かせながら、俺は千束の元に向かうのであった。

 

 

 

~Gin said~

 

薄暗い室内。

 

 

「いらっしゃい。ささっ、こっちに掛けて」

 

 

何故か笑顔の千束。

 

 

「あ、あぁ」

 

 

それに気圧され、縮こまる俺。

 

 

「なぁ、千束」

 

「なに」

 

 

机の上にはスタンドライト。

そして……カツ丼。

 

 

「何で俺。取調室にいるんだ」

 

 

ここは取調室。

何故、机の上にはカツ丼が置かれているのかは不明だ。

 

噂によると出されたカツ丼は自腹らしい。

それが、刑事側から出たものなのか犯人側から出たものかわ解らない。

 

ただ1つ言えることがある。

 

 

「と、言うわけで銀には器物損壊と銃刀法違反の容疑がかけられています」

 

「俺は犯人じゃねぇぇぇ」

 

 

虚しく響く声が取調室に木霊した。

なぁ、泣きたくなるだろう。

悲しみと苦しみを越えた先にあったのは更なる苦しみ。

はぁ、心の中で何度ため息をついたか解らない。

 

 

「銀……聞いてるの」

 

「あ、あぁ、もちろんだとも」

 

「聞いてなかったよね」

 

「はい」

 

 

シルバさん。

早く帰れそうにもありません。

どうか大人しく待っていてください。

 

 

 

~Silvana Said~

 

 

遅い。

直ぐに戻ってくると言っていたが、一時間も主を待たせるとはどう言う了見だ。

 

 

「ここは1つ乗り込んで……」

 

 

と、建物を睨むと、警備の者と目があった。

 

 

「……」

 

 

すごく見られてる。

 

 

「………」

 

 

穴が空くほど見られてる。

 

三下が。

私を睨むとは言い度胸だ。

私が鳥の餌にしてくれようか。

 

と、したい所だが、力がまだ回復しきってないな。

このまま行くには少々難儀……だな。

 

 

「ちょっと君」

 

「なんだです」

 

 

おっと。

日本語がおかしくなった。

 

 

「なんだですって……きみどこから来たの」

 

「秘密です」

 

「秘密って、君ずっとここに居るよね」

 

「頼まれたので」

 

「誰にだい」

 

 

おっと、警戒させてしまったかな。

まぁ、良い。

 

 

「銀だ。内藤銀」

 

「内藤……銀……あぁ、あの珈琲の」

 

 

どうやら、顔見知りみたいだな。

だったら話は早い。

 

 

「銀にここで待ってろと言われたけど中々来ないのだ」

 

「そうだったのか……」

 

 

三下がそう言うと少し考えた素振りを見せる。

 

 

「よし、多分。千束刑事に捕まってるんだと思うからロビーで待ってなさい」

 

 

三下が何を言って……って、そういえば銀も言っていたな。

      

ふむ。やはり、何もないな。

待たされるロビーにはこれといった面白いものはない。

 

 

(探検でもしてみるかな)

 

 

そう思ったが、それはあまりにも幼稚なような気がする。

 

しかしだな。

このままだと暇で死にそうだ。

いや、実際死ぬことはないのだがな。

 

 

「うむ~~~~っ」

 

 

こうしているだけでも時間は過ぎる。

だがしかし。

時間は金では買えない大切なもの。

 

それを、安々て無駄に浪費するなど言語道断だ。

 

どこかに……何かないかな。

幼稚と分かっていても、探求心が私の心をくすぐる。

 

あまり知らない世界。

全く知らない建物。

 

何だ。

 

悪いのは私では無いではないか。

悪いのは、ここまで私を刺激する環境にある。

 

 

「よし、探検だ」

 

 

私は早速地下へ向け歩を進めた。

探検と言ったらやっぱり地下ダンジョンに尽きるな。

 

 

~Gin Said ~

 

 

 

やっぱ心配事は的中してしまった。

シルバさんは何処にもいる気配はしない。

 

 

「ええい、どこに行ったんだ」

 

 

最初にいた場所、そしてロビーには居なかった。

なんだよ、こっちは折角 話をつけて終わらせたって言うのに。

 

俺はロビーに立ち尽くし、左右を見る。

案の定、シルバさんの姿は無い。

今度は上下、当然シルバさんの姿は無かった。

 

 

「……むぅっ」

 

 

考えるんだ。

考えれば何かが浮かんでくる筈だ。

 

 

「ハッ」

 

 

おっと。

思わず声が出てしまった。

 

そうだよ何でこんな簡単なことを思いつかなかった。

もとい、思い出せなかったんだ。

言ってたじゃないか

 

“もう1つの世界の内藤銀”

 

だって。

これを思い出した俺の観察力を持ってすれば、星の本棚に入らずとも探偵としてやっていけるに違いない。

 

ゆくゆくは、フィリップみたいな関係の相棒……いや、嫁を貰ってだな。

いや、男じゃなく関係としてのフィリップだからな。

 

勘違いしないでくれよ俺は、冴子さん派だ。

っと、話が逸れたな。

つまりだ。

 

何が言いたいかと言うと、俺の考えのまま動くとシルバさんもその方向にいく。

 

 

「よし、上にいくぞ」

 

 

探検と言ったらやはり、塔制覇に限るな。

 

 

「離せぇ」

 

 

おや、聞きなれた声。

嫌な予感が一瞬、頭を過ったのは気のせい……だよな。

登りかけた階段を再び降りるとやっぱりと言うか、案の定というか。

 

 

「離せ、私は地下ダンジョンを制覇するんだ」

 

 

複数の婦人警官に取り押さえられている、シルバさんの姿があった。

あぁ、そう言えば力を使いすぎて常人程度の力しか出せないって、言ってたっけな。

 

冷静に事の次第を解説している俺だが……これって、ヤバくないか。

 

 

シルバさんは見た目外国人

    ↓

その前にシルバさんは異界人

    ↓

当然、パスポートも無ければ戸籍も無い

    ↓

これが世間に知れる

    ↓

当然俺の状態も世間に知れ渡る

 

 

「ちょっと待ったぁ」

 

 

考えるよりも先に、体と声が出た。

 

 

「あれ、銀じゃない」

 

「って、千束なんで此処に」

 

「なんで此処に……じゃないわよ、つい数十分前に会ったばっかりじゃない」

 

「そうか」

 

 

忘れてた。

とは、口が裂けても言えないな。

 

 

「それより銀、こいつ知っているの」

 

「もちろん、シルバさんだ」

 

「いや、名前もそうだけど……」

 

 

場の空気が音を立てて凍りついた瞬間だった。

俺は取り押さえられ、俺を睨むシルバさんの目を見ることは出来なかった。

あの目を見たら、命を奪われそうな……寿命を縮めさせられるような、そんな気がする。

 

     

「へぇ、銀を頼って遠路はるばるイタリアからねぇ……」

 

 

ジトッとした目で俺とシルバさんを見る。

 

 

「ホントに……嘘をつくと銀は瞬きが何時もより多くなるのに」

 

 

そう問いかける千束はやはりまだ納得してないようで……

 

 

「シルヴァーナさん、だったかしら」

 

「はい」

 

「一応こんな時間だからホテルまで送るわよ」

 

 

疑わしきは遠くへ距離を置く癖は、相変わらず発揮されている。

勿論、シルバさんがホテルなんて取っている筈はない。

 

 

「私、実はこの身一つで此処まで来たんです」

 

「え?」

 

 

信じられないといった表情で千束はシルバさんを見る。

そりゃあ、そうだよなぁ……。

 

 

「着替えは」

 

「無い」

 

「お金は」

 

「500ユーロ丁度」

 

「ねぇ銀、500ユーロって日本円でいくら位」

 

「知るかっ、愛さんなら知ってるかも。確か(せい)はイタリアって言っていた気がする」

 

 

なんか今日の千束は冷たい気がする。

そんな雰囲気が俺でもわかる。

 

 

「愛刑事は産休に入ったのよ」

 

 

そう悔しそうに言った。

あわよくば押し付ける気だったのか……。

 

とまぁ、あれから説得と謝罪を繰り返して現在に至る。

辺りはすっかり暗くなり、喫茶店クレパスまでは歩いて50分くらいの途方もない距離を歩く羽目になる。

何度も言うが、常人程度の力しか出せない俺たち二人はボロボロ状態であって……

 

 

「シルバさん、どの位回復したの」

 

「0.5%だめだな、やはり回復力が落ち始めている」

 

 

……楽をしようという考えは見事に打ち砕かれた。

警視庁の玄関先でこれから帰るであろう道のりの長さに、今にでも心が打ち砕かれそうだ。

 

細くもなく広くもない二車線の道路。

その歩道をゆっくりと歩いていると事件は起きた。

 

 

「ひぁっ」

 

 

それは突然の出来事。

 

性転換。

もとい、モンスターが活動を始め俺に殺気を送っているようだ。

 

ちなみにまだ、変化した事以外は俺に実感はない。

 

 

「しし、シルバさん」

 

「狼狽えるな、銀」

 

 

怖いものは怖い。

あのときは必死だったけど、今は素にに近い状態だ。

そうは言っても、重い胸の鼓動は早くなる一方だけど。

 

 

「どうやら違うタイプのモンスターだな」

 

「そんな頻繁に出るものなのか、モンスターって」

 

「いや、それは……危ない」

 

 

シルバさんは俺の頭をつかむと、地面にめり込むかって、ほど下へ押す。

そのまま俺が下に潰れ、地面に額を強打する。

と、空を切る音が耳に入った。

 

その後に……

 

 

「くそっ」

 

 

ハッキリと舌打ちが聞こえた。

 

 

「な、なんだ」

 

 

声のした方向を見る。

 

 

「なんだ……あれは」

 

 

目にしたのは人の姿に似た鷹。

その手にはボウガン……弩とも言われている武器が持たれていた。

 

正直……怖いです。

 

 

「契約者か……面倒だ」

 

 

シルバさんは、鷹の人を睨むと俺の肩に手を置きこう言った。

 

 

「奴は強い、油断するな」

 

 

その顔は何時にもなく、真剣な目付きをしていた。

何時にもなく真剣な目付きのシルバさんの鋭い眼光に、息を飲む。

 

 

「ふざけているのか、そんな格好で」

 

 

たぶん俺のメイド服の事を言っているのだろう。

 

 

「好きでこの格好になっていっ」

 

 

ボウガンから矢が放たれると、反射のごとく俺はジャンプする。

足元を矢が走ると鷹の人はギョッとした(様な雰囲気)顔をした。

 

 

「へっ、どうだい」

 

 

静かにその場に着地すると、得意気に話した。

良い感じに上がった身体能力、舐めてもらっちゃ困るぜ。

 

 

「白と青のストライプか」

 

 

そう笑うと、足に目掛け矢を乱射した。

 

 

「ギャアアァァァ」

 

 

右へ左へボウガンの矢が俺に向かい飛んでくる。

スカートがめくり上がらないように細心の注意を払いながら。それらを避けゆく。

 

だって嫌じゃないかピッチリしたパンツを見られるのは。

今度からは違うパンツを履きたいと思う。

男だった時には感じられなかった羞心にも似た感情。

 

俺は矢を避けることにプラスして、パンツを見られないようにする。

なかなか攻撃に移れないでヤキモキする自分に苛立ちを感じる。

 

それに、剣を持ったとしても今のままでは勝てる気がしない。

この姿での勘は妙に冴え渡る今、それもあながち無下に切り捨てることはできない。

 

 

「なんなのこれは」

 

 

聞き覚えのある声。

声のした方向を見ると、そこには車から降りた千束。

 

 

「来るな、千束」

 

 

思わず叫んでしまった。

直ぐ様それは愚行だと気付く事となってしまった。

鷹の人は千束を見ると、ボウガンを向けた。

 

体から血の気が引いた。

千束はボウガンを向けられたことに気づくと一気に緊張を走らせた。

場数を踏んでいるだけあって、背後を見せて逃げようとはしていない。

 

直ぐ様、車に乗り込むと千束はひと安心といった表情をした。

しかし、それは通常のボウガンならば安心すると言う話であって、あれは例外。

アスファルトをも平気で貫く矢では車程度ては無意味。

 

 

「なんだか知らないけど死ねや」

 

 

矢が放たれた。

矢は千束に向けてまっすぐ飛んで行くと同時に、最悪な事態が頭をよぎった。

 

 

「アヒャッ」

 

 

鷹の人は醜悪な笑い声を上げた。

 

それもそうだろう……

 

 

「ちょっと、シルバ。アンタここで何やっているの」

 

 

フロントガラスに鏃が刺さる感覚。

ギリギリ間に合ったか。

 

 

「なんで、私を庇って」

 

 

胸から延びる一本の矢と滴る血流。

……俺は、胸に矢を受けのだから。

 

場所は右胸の下辺りかな。

激痛が胸に響く。

千束にもしもの事がなくて良かったと、心底思った。

 

 

「へっ、無駄に大きな胸で助かった」

 

 

胸から矢を抜く。

一気に血が吹き出し辺りを赤く染めた。

 

 

「怪我はなかったか」

 

 

良かった。

何ともなかったみたいだな。

しかし、状況はより一層悪くなった。

 

矢……抜かなきゃ良かったな。

     

視界が霞んできやがった。

 

胸のペンダントが赤く染まり、青い石が紫色に変色したように見える。

そんなことはどうだっていい。

車のワイパーを引きちぎると、それを剣へと変化させた。

 

 

 

「……ターボセイバー」

 

 

千束はそう呟いた。

なぜだ、千束はあの時居なかった筈だぞ。

 

だけどそんな事を聞く余裕は今の俺にはない。

二対ある筈の剣も一本しか手に収まっていない。

集中力の途切れか、はたまたエネルギー不足なのか。

 

どちらかは分からない。

だけど……

 

 

「俺は守る」

 

 

戦う。

あいつを黙らせて、関係の無い千束を巻き込むわけにはいかない。

 

 

「うぉぉぉっ」

 

 

飛んでくる矢を剣で払い、尚且つ千束から注意を逸らさせる。

決して難しくはない。

命を投げ捨てる覚悟で、俺は鷹の人に突っ込む。

 

それが、特攻の精神だとしても。

それが、死に向かって行くのだとしても。

 

足に、胸に、腕に、腹に、肩に、矢が刺さろうと意識は保つ。

 

否。

 

意識を体に鎖で縛ってでも無理矢理保つ。

保たせる。

ご丁寧にも急所は外しているな。

むかっ腹が立つ。

 

 

「はぁぁぁ」

 

 

剣が重い。

剣って、こんなにも重い物なのか。

 

この剣を振り上げる力は今の俺にはない。

本当に上がらないのか……いや、違うかもな。

 

憧れだけで振るってきた二対の剣。

憧れだけで真似た戦い方。

憧れだけじゃ剣は答えてくれない。

憧れだけで振るっていいほど、あの剣は……いや、あの人は安いものじゃない。

 

自分の象徴を。

自分の信念を形に。

 

 

「何をブツブツと、気持ち悪い」

 

 

鷹の人はそう言うと、背筋からうなじにかけて寒気。

それは、明らかに今までとは違う感覚。

距離にして後、2メートルだっただろうか。

 

鷹の人も距離を詰められないように開けていた。

謎の寒気は、胸の心臓にへと矢を射ぬかれる感覚に変わった。

今度はギリギリ急所を外すだなんてエグい真似はされないだろう。

 

正真正銘、命を射ぬく死の一閃。

 

俺は覚悟し、ある剣に再変化させた。

これが駄目だったら、後は死ぬしかないな。

光り輝く剣を俺は力の限り投げ付けた。

 

 

「ガァァァァァ」

 

 

光る剣は、矢と衝突した。

金属音が、辺りに木霊する。

 

血に染まった胸のペンダントは青白く光り輝いくと、目の前に魔方陣が現れた。

その魔方陣からは、蟻の形をした機械的なモンスター【アーマイゼ】が姿をあらわした。

 

 

「アーマイゼ」

 

 

かすれた声で名を叫ぶ。

その時光り輝く剣は、矢を破壊しそのまま地面に突き刺さった。

 

 

「なにっ」

 

鷹の人は驚いたの距離を開けた。

 

 

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