異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~協心戮力~(2/5)

 

 

体はボロボロ。

気持ちは芯のみをを残した状態。

だけどもう、負ける気はしない。

 

 

「行くぞ銀」

 

 

地面に突き刺さった剣は、身に纏う光を四散させ、その姿を露にした。

その剣は全て黒いレイピア、その真っ直で細身の刀身。

手を守る部分には、大きな菱形の青い装飾。

 

そして、左右下についた小さな青い三角形の装飾。

 

これはシルバさんが使っていた剣。

俺は剣の近くまで行くと、口から自然にあのキーワードを紡ぎだす。

 

 

「変身」

 

 

右手を広げ天に突き出し、左手は腰で拳を作り固定。

そして、アーマイゼは人の形へ変化する。

 

その次に、青白く輪郭だけを浮かび上がらせ俺と重なりあう。

金属がぶつかり合った音が辺りに響き渡ると俺は青白く発光した。

 

 

「カヴァリエーレ変身完了」

 

 

日曜朝のスーパーヒーロータイム四露死苦なんて、言ってはいられない。

カーブミラーに写った自分の姿を見る。

 

やっぱり……そうか、だったらやることは1つ。

俺は、剣を抜くと切っ先を鷹の人に向けこう言った。

 

 

「さぁて、一太刀行きますか」

 

 

黒く煌めくその鎧に、妖艶に浮かび上がらせているボディーライン。

手に持たれたレイピアは、その姿にとても馴染んでいた。

 

 

「負けるかぁぁぁ」

 

 

鷹の人はボウガンを連写する。

十数もの矢は、真っ直ぐに千束へ向かって飛んで行く。

 

 

「またか……だが」

 

 

満身創痍とは思えなかった。

体は先程とは打って代わり、羽のように軽い。

 

千束の車の前に向かって飛んで行く矢を、レイピア独特の素早い剣裁きでそれらを打ち落とす。

 

 

「悪いけど…君をそのまま返す訳にはいかない」

 

 

ジリジリと鷹の人に近付き間合いを詰める。

 

 

「来るなぁ」

 

 

それでも鷹の人は俺に向かって矢を放つ。

無駄だよ、幾らやっても。

今度は剣をダランと下ろし、飛んでくる矢を歩み寄りながら受ける。

 

 

「な……にぃっ」

 

 

黒金に煌めく漆黒の鎧に傷何てものは1つも付かなく、体へは軽い衝撃を感じたのみ。

 

 

「君は……越えてはならない一線を越えてしまった」

 

 

距離はもう目の前まで、迫っていた。

ボウガンをレイピアで弾き落とすと、空いた左手で鷹の人の頭を掴む。

 

 

「おらぁぁっ」

 

 

ブロック壁に思いっきり投げ、叩きつける。

案の定、ブロック壁は崩れ去り辺りは粉塵に包まれた。

 

 

「うぉっ」

 

 

粉塵の中、鷹の人は俺に飛びかかると拳を振るう。

それを紙一重でかわすと、顎に激痛が走った。

そのまま吹き飛び、背中から受身もとれずにぶつかってしまった。

 

 

「があっ」

 

 

なんとも言いがたい激痛。

体は動くと言っても、完全に傷が塞がったわけでは無い。

尋常ではない痛みが、背中から全身へと突き抜ける。

 

何が起きたのか理解できなかった。

確かに顔面を貫く拳を見切り、避けた筈だ。

 

 

「鉄仮面をしていても分かるぞ……避けきった筈、見切った筈なのに何故だってな」

 

 

そう、小馬鹿にしたように話す鷹の人は俺の神経を逆撫でるように喋ってくる。

乗せられるかよ、畜生が。

 

 

「へっ、そうだな……だがな、負けるわけにはいかないんだよ」

 

 

俺は剣を構え直すと鷹の人は……

 

 

「丸腰相手に剣を抜くのか」

 

 

と、今さらながら言ってきたがそれはもう遅い。

 

 

「今さらそれを言っても意味がないんだよ」

 

 

レイピア独特の素早い突き。

右へ左へ、鷹の人はそれらを避けて行くがそれは無駄に等しかった。

 

一瞬の隙を突き、脳天へ鋭く斬りつける。

 

 

「メェェェェン」

 

 

 

その攻撃は、剣道に近いものがあるがそれは俺がそれしか剣のたしなみがないので勘弁してほしい。

脳天へと鋭く剣を打ち付けると、鷹の人を抜き去った。

細い剣は折れる事なく、余計な箇所を切らずに頭のみを切り捨てる。

 

 

「………」

 

 

終わった。

そう思い、変身を解こうとしたその時。

 

 

「まだだ、次のが来るぞ」

 

 

斬り付け、割れた頭から湯気のように黒いものがもうもうと沸き出てくる。

 

     

「シルバさん」

 

 

いつの間にか背後に立っていたシルバさんは恐ろしげなキーワードを口に出した。

 

 

「来るぞ、こいつが本体だ」

 

 

黒い靄は段々と形を成して行く。

 

 

「いいか、鳥獣型寄生タイプのモンスター、ファルコーノは宿主か出てきたときが一番厄介だ」

 

「だったら、あのまま倒せば良かったじゃないか」

 

「私たちの仕事は、あくまでもモンスターを倒すこと。この世界の人間は特例がない限り殺すことは出来ないし、その剣も、モンスターと私達以外は斬れないはずだ」

 

 

そういってる間にも鷹の人から出てきた物体は形を形成し終えようとしている。

 

 

「後で教えてくれよ、モンスターの事をシルバさんの世界の事を」

 

 

俺は再び剣を構え直すと、そのモンスターの姿を確認した。

身の丈は鷹の人とさして変わらない、エジプトの壁画に描かれていたようなその姿。

 

残念ながら鷹の成分が強く、人肌の部分は皆無。

肌の部分は全て羽毛でおおわれていた。

 

 

「汝、よくも私の邪魔をしたな」

 

 

威厳のあるような声。

重く重圧をかけてくるようなしゃべり方。

それは俺が一番嫌いなしゃべり方だ。

 

無駄に大きいその声は、更に俺にイライラを付属するのに十分すぎる材料だ。

 

 

「わりいな……だなんて言うかよ」

 

 

再びレイピアらしからぬ剣の振るい方。

見よう見まねは最初だけ。

戦いに置いてそれは命を落とす事に直結してしまう。

 

できるだけ読まれないように、自我を出し戦う。

与えられた戦い方だと、その人の限界はたかが知れてしまうからだ。

かと言って、無闇やたらに戦う訳にはいかない。

 

その背後には千束。

そして、シルバさんがいる。

 

戦う術のない二人を守りながら戦うのは正直、厳しい。

だけどやるしかない。

 

 

「来ないのか……新米の騎士よ」

 

 

そう言って、足元に倒れていた宿主と言われた金髪の男をヒョイとつまみ上げた。

 

 

「まぁ、目覚めの朝食には丁度良いか」

 

 

力無くだらんと脱力している男は、大きく開けられた口の中へ。

 

 

「あっ」

 

 

声を出したが遅かった。

バリバリと骨が砕け、グチャグチャと内蔵が潰され咀嚼される音。

 

思わず耳を塞ぎたくなる音が、しばらく辺りを支配した。

呆然と見ることしか出来なかった。

千束、そしてシルバさんを見る。

 

千束は青ざめ、シルバさんは眉1つ動かさずその光景を眺めている。

 

 

「うぉぉぉっ」

 

 

 

倒さなきゃ。倒さなきゃ。倒さなきゃ。倒さなきゃ。倒さなきゃ。倒さなきゃ。倒さなきゃ。

頭の中でグルグルと同じ言葉が回る。

 

 

「来るか……なら」

 

 

ファルコーノの手には巨大な矢が持たれていた。           

それをファルコーノは槍のように突く、俺は咄嗟に剣で受け止める。

しかし直ぐ様、矢を引っ込めて再び俺を突く。

 

あれはもうボウガンに付いている矢ではない。

れっきとした槍である。

 

 

「ええい、ややこしいな」

 

 

俺は槍の間合いを抜け、懐に翔び入らなくてはならない。

それにファルコーノのあの動き、素直に入れてはくれないだろう。

しばらく剣と槍がぶつかり合い火花を散らす。

 

そして、間合いが大きく離れたとき、ファルコーノは自信ありげな口調で話し出した。

 

 

「おとなしく我の血肉になるか……それとも」

 

 

遥か高く飛び上がったファルコーノは、槍を構え直し手に持たれた槍を大きく振り……

 

 

「我のこの、矢の血肉となるかぁ」

 

 

俺に向かい投げつけた。

あれはやっぱり矢だったのね。

って、そんな悠長なことをいってる場合じゃない。

 

向かい来る巨大な矢。

段々徒大きくなって来ているのは気のせいではない。

避けることは出来ない。

 

避けたら千束。

そして、関係のない人を巻き込むことになる。

細く真っ直ぐな剣で受け止めるのは正直、無理だろう。

 

だったら……こう使うまでだ。

 

剣を逆手に持つ。

 

青い装飾が、キラキラと光りだすと、魔方陣が現れた。

 

 

「うぉっ」

 

 

その魔方陣は矢を受け止めると、勢いが俺に直接のし掛かる。

 

 

「ぐっ」

 

 

きしむ筋肉。

踏み込む足で悲鳴を上げ始める腱。

 

 

「うおおおおおおおっ」

 

 

矢は押し返され、それと同時に段々と小さくなってくる。

勢いを殺された矢は重力の流れに引き寄せられ、地面に落下した。

最初巨大だったその矢は、ごく一般的な矢の大きさに戻り地面に転がっていた。

 

 

「まさか……我の矢を止めるとは」

 

 

驚いた様に言っているが、それは本心からでは無いのだろう。

 

 

「諦めて、降参でもするか」

 

「我の辞書に降参の二文字はない」

 

 

やっぱりな……降参なんてする訳がないと解っていたんだけど。

少しは良い意味で期待を裏切ってくれたらどれだけ嬉しかったか。

 

なんて、考えている場合ではないのは百も承知だ。

ファルコーノは、再び矢を手に持つ。

槍のように巨大化した、矢は再び俺に向かい、空を突き進み俺の命を刺すため猛進してくる。

 

 

「まだまだっ」

 

 

所詮は直線的な突き。

弓いや、ボウガン……弩だったけ。

その矢が、俺の顔めがけ突かれる。

それを剣で弾き懐へ飛び込む。

 

 

「はぁっ」

 

 

左腹部か右胸部にかけ、一閃。

下段から切り上げる。

 

斬られたところから、赤黒い血が吹き出し、黒い鎧に付着した。

その血は、煌めく鎧の光を鈍らせる、だが。

しかし、その血は鎧を怪く光る物へと変える。

 

 

「ぐぅっ」

 

 

怯んだ隙を見逃す筈はなかった。

体制が崩れたファルコーノに、高速の突きを喰らわせる。

 

胸へ、そして喉へ。

急所と思われる場所に、特徴的な剣捌きで突いてゆく。

 

自然と動く身体。

自然と浮かぶ戦いのイメージ。

自然と浮かぶ相手の情報。

 

それは別世界の自分であるシルバさんのものか。

はたまた、別のものか。

考えを変えれば、自分自身に元から備わっていたものなのか。

必殺技とも言える技が、自然と頭に浮かび上がる。

 

思い浮かべるは、あの必殺技。

シルバさんがあの蜘蛛を葬っ……撤退させた必殺技。

 

あれが本来の力では無いのは重々承知している。

完成形ではないが、あの技を使う事でしか、決着は永久に付きそうな気はしない。

 

剣を逆手に持ち、構え、地面に突き刺す。

体の力の流れを、感じる。

流れを感じたまま、それを右足に集中させる。

落とし重心を低くする。

 

 

「コォォォッ」

 

 

右足がカッと熱くなる。

ヨロヨロと斬られた所を押さえながらファルコーノは俺を睨み付ける。

そのままのファルコーノに駆け寄りながら、高く高くジャンプする。

 

 

「ハアァァァ」

 

 

比喩ではない。

青白く光り輝いた右足は、ファルコーノに叩きつけられる。

そこから、何かの紋様みたいなマークが表れ、ヒビが全身へ走る。

2000の技を持つ男が変身するヒーローに、良く似た技。

 

だがこれは決定的に違うものがあった。

ヒビは全身に走ると、紋様を中心に何処かへ吸い込まれるように、モンスターは渦を巻き、消えてまった。

 

その後……。

激しい爆発。

縦にに真っ直ぐ、上る火柱は巨大な爆発音と共に天に上っていった。

 

モンスターは決して殺した訳ではない。

シルバさんの住む世界。

 

元の世界へ強制転移させただけだ。

爆発は……何で起こったのか解らない。

後でシルバさんに聞くとしよう。

 

火柱の熱でアスファルトは溶け、遠くのコンクリートの壁には焦げ目がついた。

 

一気に緊張が崩れた。

身に纏った黒金の鎧は、青白い光と共に消えていった。

再び女の姿となり、手にはシルバさんの剣。

モンスターを倒した筈だ、そろそろ元の姿に戻るだろう。

 

 

「ちょっと、あんたシルヴァーナ・カヴァリエーレでしょ。何なのよ今の」

 

 

やっべ、千束がいたんだよな……どう言い訳したら……。

 

 

「グッ、グッドモーニング」

 

 

取りあえず挨拶。

これ以上面倒な事は起きてくれるなよ。

 

 

「銀よ、どうだった初戦は」

 

 

うわっ、シルバさんも来たよ。

 

 

「え?へ?なな、何でシルヴァーナが二人いるの」

 

「それはだな、千束」

 

 

フォローに回ろうとするも……

 

 

「気安く私の名前を呼ばないで」

 

 

キッと睨まれ一蹴されてしまった。

 

 

「もとに戻った方が、話が早く進むと思うぞ」

 

 

シルバさんの助け船。

だけとな、ここで男に戻ったら俺は変態確実。

即逮捕&何処かの研究施設に収容されるなんて事態が、無きにしも有らずだ。

 

 

「もとに戻るって……まさか、双子の兄弟を偽った密入国」

 

 

ハッとした様子で俺たちを見る。

 

 

「違うっての」

 

 

そう俺が突っ込みを入れたとき、胸のペンダントが青白く光り輝いた。

千束は眩しいのか、腕で顔を覆う。

そして、光が収まったとき、女の……シルバさんの姿から、元の男の姿。

 

内藤銀へと戻っていた。

 

 

「え?へ?なんで銀が」

 

 

それはこっちが聞きたい。

 

 

「わかった、マジックね。私を騙そうなんてそうはいかない」

 

「イヤイヤイヤ、全く解っていないのは千束だ良く見ろ、このワイパーを」

 

 

男に戻ったことで、剣だった車のワイパーは元の姿に戻っていた。

 

 

「あ、私のワイパー」

 

 

千束もようやく事態を把握したようで……。

 

 

「何で銀があんな姿に」

 

 

案の定、千束は驚き、大声を張り上げた。

 

 

「あんなのとは失礼な」

 

 

沈黙を守っていたシルバさんが、少し不機嫌な様子で千束を睨む。

 

 

「だってそうでしょ、銀に女の子の姿にさせたら、それこそ金髪の美女が全裸でダウンタウンを歩くようなものよ」

 

「たしかに、私もこんな男に私と同じ姿になられるのは不愉快極まりない。それに、何度も女の姿でよからぬ事をしようとした」

 

「やっぱり……」

 

 

話はだんだんと脱線していった。

話の後半は……いや、大半は俺の不平不満や良くないところをぶちまける会と、なってしまった。

 

 

「なんで……こうなるの」

 

 

俺の言葉は届かない。

二人は気が合うのか、話に花を咲かせている。

 

いいんだ、うまくいけば。

俺がいくら罵られようと。

目から流れる水滴は、気のせいだ。

 

話が一段落するまで、三時間かかった。

それを、気にしていたら前に進めない気がする。

千束とシルバさん話は右から左へ受け流す。

 

その矛先は、俺に向いているものだがそれも右から左へ受け流す。

俺を残して二人だけ帰ってしまったのも、右から左へ受け流す。

流れる涙も右から左へ……受け流す事は出来なかった。

 

 

 

      

 

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