異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~呉越同舟~(3/5)

 

昨日の鷹の人(ファルコーノ)の事件から一晩経ち、シルバさんは一泊家に泊まった。

 

俺の布団に寝ぼけて潜り込む。

ギャルゲー展開を強く望んだのだが、それは辛くも崩れ去ってしまった。主人公要素の1つや2つあったら、夢の事態が起こっていたのかもしれない。

 

神は、俺にそんなスキルを与えてくれている筈はない。

全くと言って良いほど何も無い夜だった。

 

だが何か起こっているのに寝過ごしてはならん。

そう思い夜通し起きていた。

その戦い跡は、目の下の隈が物語っている。

 

いつか純粋な願いを聞き入れて欲しいものだ。

さて話は変わるが今日は普段着。

朝起きてウェイターの服を着るのは寝ぼけているときだけ。

 

オールして変なテンションで迎えた朝は何時も以上にクールに紳士に過ごす。

取りあえず外の掃除を済ませると、三人分のコーヒーを用意したのであった。

 

 

「なんだ、この黒いのは」

 

 

開口一番、朝からシルバさんの口から語られたのは耳を塞ぎたくなるような事実だった。

 

 

「知らないのか、珈琲を」

 

「私の生活圏ではそんな豆の出涸らしなんて無いぞ」

 

「何で出涸らしって言葉知ってるんだよ」

 

 

指をカタカタとキーボードを叩くような動きをしながらシルバさんこう言った。

 

 

「そんなの、見たからに決まっているだろう」

 

 

シルバさんはそう言って、妖しくクスリと笑った。

止めてくれ、そんな目で見ないでくれ。

 

まったく、何時から居たのやら……全くわからなかったぞ。

 

 

「そんで……何時からいたんだ」

 

「銀がここに来たすぐ後だ」

 

「早っ、声ぐらいかけてくれれば良かったのに」

 

「いや、何故かニヤニヤしていたのでな……声を掛けづらかった」

 

 

掃除の時……ニヤニヤ……。

 

整いました。

主人公要素の1つや2つあったら人生薔薇色……だった筈。

 

うん、大変だ。

シルバさんに理由……言えないや。

 

見透かされたのか、見抜かれてしまったのか。どっちも意味は一緒か。

 

 

「銀、お前は主人公要素のひとつでも持っていると思うのか」

 

 

そういいながら少し間を明けた後。

 

 

「無いぞ、銀には」

 

 

絶望的なことサラリといった。

分かっていた事だが、改めてまた言われると悲しくなるよ。

 

 

「ちょっと、あんた達、朝からなに騒いでいるの」

 

 

心に多大なるダメージをシルバさんから受けていた時、寝ぼけ眼で階段から降りてきたのは千束だった。

 

 

「千束、何時も言っているだろ……いくら幼馴染みだと言っても、シャツ一枚はどうかと思うぞ」

 

 

丈長いシャツ一枚を来て、その下は何もはいてない。

いや、多分パンツぐらいは履いているだろう……たぶん。

 

 

「おや、銀は平気なのか……曲がりなりにも男と女だぞ」

 

「あぁ、もう見慣れた……いやもう、見飽き……アベシッ」

 

「おー見事な鉄槌」

 

 

シルバさんは感心したように、手を叩き拍手した。

 

 

「て、鉄はあかん」

 

 

千束の手に持たれていたのはフライパン。

叩き込まれた黒金の調理器具。

料理に使われる筈のそれは、俺の脳天を打ち抜く凶器にか変わった。

 

 

「見事に調理されたな」

 

「うまいわね」

 

 

何故か一晩で打ち解けている二人。あれ、昨日まで仲悪くなかっけ?

頭部には今だに痛みが残っている。

勿論、千束から謝ってもらっていない。

 

さて、これから何をするっと言う話になったのだがおあいにく様やることは何もない。

まだ休みが四日も残っている訳で、やることは特に決まってはいない。

 

 

「そうだ銀、女の子の下着とか持ってる?」

 

「そうだ、素直に出した方が良いぞ」

 

「人を下着泥みたいに言うな」

 

 

まったく、こいつらは…。

 

 

「それで、なんの脈絡もなくそんなことを口走って何が目的なんだ」

 

 

少しダルそうに話すが、まぁ、大型検討はつく。

するとシルバさんは、得意気に

 

 

「買い物にいくぞ」

 

 

と言って、千束は

 

 

「私が選んであげるから」

 

 

何て事を言った。

それを丁寧に、のし袋をつけてお返ししたいのだかこの二人の目はそれを許さない。

その目は好奇心に満ちた目で、福袋を開けるときの目に近いものがある。

 

 

「下着は良いんじゃないか変わらないのは服だけだし」

 

「だめだよ銀」

 

 

そう言った千束、だんだんと目付きは鋭くなってゆく。

何て事だこれだと人が切られてしまう、新しい通り魔に……って、いかん。

 

また何処かへ旅立ってしまった。

 

 

「目立つよ、そんなことしたら服が破れた時どうするの、捕まえる視にもなってよ」

 

「シルバさん、下着も変わったよねあの時」

 

 

恐る恐る聞いてみた。

 

 

「む。あの時着ていた衣服は変わるがそれ以外は無いぞ」

 

 

はい、詰んだ。

 

人生詰んだ。

 

男がブラジャー持っているなんて不自然きわまりない。

持っている人は多分下着泥棒だけだろう、絶対。

 

 

「持ち歩けと俺にブラジャーを」

 

「銀がブラジャーをバックに忍ばせても何ら不思議はない」

 

「いや、あるだろう」

 

 

シルバさんが珍しくツッコミを入れた。雨が降るな今日は。

 

 

「いえ、あの銀よ」

 

 

そう千束が言った後、暫く考え込んだシルバさん。

 

 

「たしかに」

 

 

ハッとした様子で、そう言った。

 

 

「もう、泣いてもいいですか」

 

 

力無く俺からその言葉が流れた。

 

 

「……」

 

「……」

 

「ごめんね銀。つい、からかうのが楽しくなっちゃって」

 

「ふむ、少し言い過ぎた。主といえ少しやり過ぎた」

 

 

これが噂のツンデレなのか。

騙されんぞ、俺は。 

それから妙に優しく接してくれて俺達は結局、下着や服を買いに行くことになった。

 

騙されているような気がするが、今後必要なものなのは明確。

何時かは行くしかないので、今日行くことに。

 

 

「千束、仕事は」

 

「今日は非番よ」

 

 

どうやら問題は無いようだ。

ついでにシルバさんの服も買いに行くことになった。

 

そして、財布にお金を補充していざ行かん。

一応銀行のカードとウェイターの服を持って行こう。

 

転ばぬ先の杖ってやつだ。

 

緊張するな……。

二階の自室から戻ると、シルバさんがいた。

 

まだ千束は来ていない。

 

 

「どうしたんだシルバさん。顔色が悪いぞ」

 

 

見るとシルバさんの顔は真っ白。

 

 

「大丈夫だ」

 

 

全然そうは見えない。

貧血を起こした人みたいな状態だ。

 

 

「もしかしてシルバさん、この世界の気候が合わないとか」

 

「たわけ、ちがう」

 

「だったら……」

 

「一種の栄養不足だ、案ずるな」

 

「栄養不足って、朝御飯食べたよな」

 

「栄養の種類が違う」

 

「酒類?」

 

 

もしかしてお酒の種類の事か?

 

だった家には調理酒ぐらいしか無いぞ。

 

 

「調理酒で大丈夫か」

 

「そっちじゃない」

 

 

そうか、違うのか……ちょっと安心した。

だけど、栄養って何だろう。

体の作りは俺達とあまり変わらないし、違うとこと言えば髪の色ぐらい。

 

 

「銀達の言葉で分かりやすく、一言で表すとしたら魔力が足りない」

 

「魔力?」

 

 

んなファンタジーな。

いつからファンタジー路線にっ……て、俺の性別がコロコロ変わる時点で十分、ファンタジーか。

 

 

「んで、どうやって作るの。飯でも食えば回復するのか」

 

「違うな銀、人間が光合成をしてエネルギーを作り出せないと同じだ」

 

 

うん。

全く理解できなくなってきた。

因みに通信簿で理科は3ぐらいだった気がする。

 

知らんこっちゃない。

植物がどうやって大きくなるかなんて。

 

 

「つまり要約すると、普通では手に入らない栄養が不足していると言うこどだ」

 

「オッケー、オッケーそれは解った、して、その補給方法ってのは」

 

「それが……なぁ」

 

 

そう言ったシルバさん、チラリと俺の方を見ると深くため息をついた。

なんとも失礼なこの行動、俺はこの後理由を聞くと納得してしまう自分がいた。

 

 

「血なのだよ」

 

 

ボケるのは止そうではないか。

決して思いつかなかったわけではない。

 

 

「血って、俺の?」

 

「いや、そこまで限定したものだと私が倒れてしまう」

 

「だったら……男なのか」

 

 

思わず声を荒げる。

勘弁してほしい。

 

シルバさんが男の首筋に唇を這わせるなんて、例え森羅万象がそうだとしても俺が許さない。

その腐った幻想を俺がぶっ壊す。

ななどと、うろ覚えのフレーズまで勝手に出てくる。

 

合っているかどうかは別だ。

 

 

「何を考えている」

 

「だって、シルバさんが男の首筋に唇を這わせるなんて……」

 

「ばっ、馬鹿者」

 

 

そう言ったシルバさんは顔を赤くした。

 

 

「なんだ、違うのか」

 

「そうだ、私が血を吸う対象は女だけだ」

 

「そうか、女限定……ん?」

 

 

今俺の顔にはデカデカと疑問符でも浮かんでいるのだろう。

女限定とはどういうことだろうか。

 

 

「なんでその枠に俺が入っているんだ」

 

「何って、それはな……」

 

 

チラリと俺を見るシルバさん。

その瞬間、俺は肩に重みを感じ過去の経験から一番当てはまる現象を予想した。

胸を一回見て俺は深いため息を吐いた。

 

 

「なんでかな……」

 

 

たわわに実る胸に白に近い銀色の髪がかかり、着ていた服は、その果実を支えきれずにパンパンに膨れ上がった。

などと文学的な表現をしつつ考えるのだが、実際はあまり喜ぶ状況ではない。

 

 

「出たのか」

 

「あぁ、出たな……しかし変だ」

 

「変って」

 

「こんな頻繁に、しかも密集した地域に固まって出てくるの過去に例が少ない」

 

 

そう言いながら、シルバさんは目を細め開閉する手を見つめる。

 

 

「倒しにいくのか」

 

「あぁ、だが……その前に」

 

 

ツカツカと俺に歩み寄り、俺に顔を近づける。

 

 

 

「いただきます」

 

 

      

 

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