異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~意思薄弱~ (4/5)

     

 

 

まずい、このまま性的な意味でも、だ……。

これ以上言うと強大な力により、強制非公開を喰らいそうだから言わないでおこう。

 

今現在、シルバさんに血を吸われています。

痛みは思ったより無く、最初チクリとした痛みがあっただけ。

そんなことを考えている俺は今、どんな顔をしているのだろうか。

 

 

「ちょっと……あのー」

 

 

いつまでシルバさんは吸うつもりなんだ。

1、2分で済むと思ったが、それは甘く只今5分を経過した。

 

 

「んくっ」

 

 

どうやら終わったようだ。

食事として首筋に噛まれただけで、残念な事に大して興奮はしなかった。

 

すごく惜しいような気もするが、これが日常の一部に組み込まれる。

またいつでもできるさ。そう自分に言い聞かせる。

 

それに相手はシルバさん一人だけ。

これがもう一人増えたら、たぶん俺は貧血で倒れるだろう。

 

 

「すまぬ」

 

 

シルバさんはそうとだけ言うと、口についた血をハンカチで拭った。

 

 

「いいさ、これがなきゃシルバさんは死んじゃうんだから」

 

 

正直今更、俺が女になってどうのこうのなど言うつもりも、責めるつもりも微塵もない。

なってしまったものは仕方がない。これからどうするかを考えた方がずっと堅実的だ。

 

堅実的とは全く関係ないが、シルバさんは俺の血をどの位飲んだのだろうと気にはなる。

 

一口を少なく見積もって、50mlと考えて。

 

それを約5分。

大体、2秒に一口と考えて……止めた、下手に考えるのを止そう。

 

7.5L位は吸われている計算になるが下手に考えるのは、もう止そう。

貧血がどうのとか考えていたら怖くて次からあげるのを躊躇うから。

 

 

「何かやっていたの」

 

 

千束が階段から降りてきた。不思議そうに千束は俺たち二人を見る。

シルバさんは親指で唇をなぞり、血をぬぐう。

 

 

「よ、よし。行くか」

 

 

下手に空気を変えてはならない。陣頭を取り、買い物へと促す。

 

 

「そうね」

 

 

千束も特には気には止めていないようで、そのまま店を出て行く。

 

 

「ふむ、今度からは場所を見計らわないとな」

 

 

シルバさんもそう呟くと店をあとにし、二人を追うように俺も店を出て行った。

 

何年か前、駅前に出来たショッピングモール。

自宅からそこまで徒歩で約15分と好立地な場所にある。

その向かう途中、時間にして約五分たった頃だろうか、俺はある怪異に見回れた。

 

鍵閉めたっけ。

不意にやって来たこの妖怪の名は“妖怪 鍵閉めたっけ”。

ネーミングセンスの無さには触れないでもらいたい。

 

妖怪 鍵閉めたっけ。

フッとした意識の隙間に現れ、そいつは畏れを魅せる。

人の気と気が緩む絶妙なタイミングで、意識を一時的に無に。

 

鍵を閉めたかどうか曖昧にする恐ろしい妖怪だ。

この仲間に“妖怪 リモコン隠し”や“妖怪 小銭撒き散らし”等と言った妖怪もいる。

 

みんなも気を付けよう。

 

色々と右へ左へ話がどこかへと、逸れたような気がする。

本来の目的は俺の下着を買いに行くことである。忘れてくれた方が良いような気もするが、そうも行かないらしい。

 

 

「“妖怪 鍵閉めたっけ”に化かされて鍵を見に戻る」

 

 

そう言ってトンズラするつもりである。

さて、上手くいくと良いのだが。

 

 

「ダウト」

 

 

千束がそう言うと、シルバさんは黙って頷いていた。

 

 

「ダウトって何だよ、まるで俺が嘘をついているみたいじゃないか」

 

「正しくその通りだ」

 

 

シルバさんがそう言った後、一呼吸置き。

 

 

「銀の考えていることは、大概はお見通しなんだから」

 

 

千束が締め括るように言った。まったく……逃げる手は無いのかよ。

心の中で嘆くも、それはどこにも届くことはない。

無駄に明るい音楽であり妙にテンポの良い音楽。

 

 

「さっさと終わらせたいんだが……って、聞いてないか」

 

 

ビュッフェと言う名の食べ放題。

またの名をバイキングとも言うが、そんな事。

 

今は些細な事でしかない。テーブルの隅には高く高く積み上げられた使用済みの皿。

そして暴食魔を中心に、料理が全て大盛りに盛られている。

それを平然と平らげ、優雅に凛としてそれは周りの景色……いや。

 

この席回りだけ明らかに雰囲気というか、空気が違う。

 

 

「おかわりを頼む」

 

 

この暴食魔の手にかかれば新しく出てきた品など五分もあれば片付いてしまう。

もはや自分でおかわりを取りに行く事を捨て食べることに専念してる。

 

それを俺は給食係の如く渡すも、それは直ぐに中身を消されてしまう。

俺が違うものを取りに行っている間に、積み上げられた食べ物を平らげる。

 

なんとも効率的な食事の仕方だが、これって家に帰ったらそのまま家計を直撃するのではないだろうか。

 

そして料理を作るのは他でもない俺。千束は作れるがカレーオンリー。

うん、帰りに料理本でも買おうかなと、考える。

 

 

「おかわりを頼む」

 

「はい、ただいま」

 

 

これって……店員に頼んだ方がよくないか。

その体のどこに、あんな大量の食べ物が入っているのですか。

そう言うツッコミをたまらなく入れたいが、やったらなぜか負けな気がする。

 

あの後のビュッフェは閑散としたものへと変わった。

俺達が店を出た瞬間、安堵のため息だろうか厨房から声が聞こえてきた。

この体はどうやら五感も研ぎ澄まされ、飛躍的に能力が高くなっているようだ。

 

んっ?そういえば今は性別が逆か。

駄目だな……段々と境があやふやになってきている。

 

そして何か忘れているような……

 

 

「シルバさん」

 

「なんだ、食べ過ぎと言う注意は受けるが守る気は無いぞ。あれは足りない魔力をだな……」

 

「いや、違うから。俺達何か忘れていないか」

 

 

そういったシルバさん、顎に手を当て何か考える素振りを見せる。

 

 

「無かった気がするぞ」

 

「そっか、気のせいか」

 

「もう、銀の下着を買いに来たんでしょ」

 

 

千束が割って助言する。

 

 

「そっか、俺の下着を……買いに……き……たから」

 

 

記憶は突如結ぶ。

空虚なる俺の心に、激流のごとく無くしていた記憶が流れ込む。

 

などと文学的?な事を言っている場合ではない。

 

 

「シルバさん。モンスターだよモンスターじゃなきゃ俺が好きでこんな格好をするわけがない」

 

「あぁ」

 

 

なんとも間の抜けた返事だが、顔つきは段々と真剣な物へと変わっていく。

 

 

「あぁっ」

 

 

さぞかしビックリしたのだろう。シルバさんの声を聞いた赤ん坊が泣き出してしまった。

赤ん坊が泣き出すというハプニングがあったものの、なんとか本来の目的を思い出した。

このままだったら、普通に下着などを買って終わるという事態に陥るところだった。

 

 

「それでシルバさん、今回はどこら辺に……」

 

「囲まれたぞ」

 

「へ?」

 

 

一気に緊張が高まる。

手には何も持っていなく、武器に変化させるものがない。

 

 

「相手はどうやら繁殖目寄生型……いや、まてこの波長は……蜘蛛か」

 

 

蜘蛛?蜘蛛ってあれ、この前うじゃうじゃ出てきたあれか。

 

 

「どどっ、どうするんだシルバさん」

 

「慌てるな銀、相手は相当頭の切れるみたいだ」

 

 

辺りを見るとただの人が。

瞳の奥は、複眼のようで気持ちわるい目をしていた。

 

 

「これは?」

 

「寄生された人……大丈夫だ、助ける方法はある」

 

 

そう言ってシルバさんは身構えると、それに釣られるように俺も身構える。

 

 

「結界」

 

 

シルバさんがそう呟くと、辺りから人の姿は一部分を残し忽然とすがたを消した。

 

      

「随分とファンタジーだな」

 

 

素直な感想が口からこぼれ落ちた。そんな事を言っている場合ではないのは十分承知だ。

空はセピア色に染まり、沢山いた通行人やあの赤ん坊も姿を消していた。

 

 

「これで思う存分戦えるぞ」

 

 

回りを見渡すと回りの建物はそのままに、あの眼球複眼人間と俺達二人だけの空間が広がっていた。

 

 

「戦いたくないのになぁ……」

 

 

そうぼやく俺に対しシルバさんは……

 

 

「戦いたくないのならいいぞ……一生その姿のままだがな」

 

 

そう言って笑みを浮かべる。文だけだと大したことの無いようだが、生憎あれだ。

一応俺はこんな姿をしているが男な訳で、なんやかんやで今や女の姿。

もう、逆らうとか抵抗するとかそんなことは些細な事でしかなくなった。

 

要はアレだ。元の性別を維持するために戦うしか無いってことだ。

99%は自分のため。

 

 

「自分のためもとい……」

 

 

残りの1%はシルバさんと誰かの笑顔を守るため。

 

 

「みんなの笑顔を守るために」

 

 

そう言って俺は走り出す。

 

 

「俺は戦います」

 

 

飛び上がり目の前にいた眼球複眼人間に飛び蹴りを喰らわせ、そのまま蹴り飛ばす。

 

 

「だから見ていてください」

 

 

回りにいた眼球複眼人間を拳と蹴りのコンビネーションで吹き飛ばす。

 

 

「俺の……変身」

 

 

そう言い終えた頃には、周りの眼球複眼人間はヨロヨロと立ち上がる。

胸のネックレスが青白く光った。

足元に青白く光る魔方陣が現れ、腰に大きな菱形の青い装飾品の付いたベルトが現れる。

両手を胸の前でクロスさせ。

 

 

「変身」

 

 

魔方陣は下から上へと上がって行き、身体を鎧の姿へ変えて行く。

そして全身を全て通過したとき、クロスしていた両手を降り下げる。

それと同時に魔方陣は金属を叩きつけたような音ともに砕け散り、青白い光の粒子が辺りに降り注ぐ。

 

 

「カヴァリエーレ、変身完了っと」

 

 

手に剣は持たれていなかったがそれでも、何となく勘なのだが俺は出来るような気がした。

 

 

「カヴァリエーレ」

 

 

そう言った眼球複眼人間は俺の姿を見た瞬間たじろぐ。

なんだ、結構有名人じゃないか俺。

 

 

「人に害為す前に帰還か生滅好きな方を選べ」

 

 

シルバさんはそう言うがハイ帰りますとは言わないだろう。

 

 

「くっ、王家の執行人か」

 

 

また別の眼球複眼人間が話す。

どうでも良い話だがあの目、軽くトラウマになりそうだ。

シルバさんは俺を睨むように見るなり。

 

 

「そして銀、後で話がある」

 

「おっ……おう」

 

 

と言ったが。

何だろうか……すっごく怖いぞ。

 

すっごく。

 

そして眼球複眼人間はと言えば。

 

 

「我々は」

 

 

そう言いながら俺とシルバさんを囲むように、ジリジリと距離を詰める。

 

これはピンチ。

まぁ、相手に戦う意思があればの話だ。

俺を知っているのならば抵抗せずに投降して、元の世界に帰るのが一番賢いやり方だ。

 

 

「我々は……」

 

 

もう一度同じ事を言った眼球複眼人間。

バリバリと音を立て背中から六本の昆虫的な足を生やす。

 

あっれれぇ。

 

 

「まだ……この世界に留まる」

 

 

今度は全身の皮膚を突き破るよう、暗い紫色の固そうな何かが表れる。

 

 

「やはりか」

 

 

そう言ってシルバさんはその場から消えた。

 

 

「えっちょっと」

 

 

視線を眼球複眼人間に戻す。

すると、身体は人の形を保っているが大体の形のみ。

 

 

「オイオイ……嘘だろ」

 

 

目の前には同じ姿をした6人。

もとい、6匹の蜘蛛人間がそこにいた。

 

セピア色の空。

それとは対照的に色鮮やかなショッピングモール。

 

空手の天地の構えで周りの蜘蛛の人と対峙する。

 

どうしてこうなった。

 

多勢に無勢。

火を見るより明らかに、こっちの不利が嫌でも分かる。

 

 

「もう一度聞くけど、降伏する気は……」

 

「くどいぞ」

 

 

ゴマ粒ほどの期待も跡形もなく消え去った。

解っていた事だが本当に戦わなければいけないらしい。

 

とっさに構えた、この構え。

実際は見よう見まねで、この先どういう風に動いて良いのやら分からないでいる。

 

 

「シュア」

 

 

鳴き声なのやら、掛け声なのやら分からない音を発して一斉に掛かってくる蜘蛛の人。

 

 

「おわっ」

 

 

数にものを言わすこの戦いかは些か卑怯……などと考えているうちに、前後から嫌な気配が。

 

全ての感覚が研ぎ澄まされる。

次にするべき行動が頭にビジョンとして思い浮かぶ。軽く跳躍し、嫌な気配から逃れる。

 

 

「のぉっ」

 

 

思ったよりも跳びすぎた。

どうやらこの鎧を着ると、更に恐ろしく身体能力が上がるらしい。

店に目をやるとハンガーが飛び込む。

 

まずは武器だ。

とてもじゃないけど素手で戦うのは戦力に差がありすぎる。

 

力をハンガーに込める。

 

といってもただ単に強く握るだけだが、やり方は間違ってはいないようだ。

ハンガーはその姿を真っ黒なレイピアに姿を変え、俺の手の中に収まる。

 

 

「……ムッ」

 

 

二、三回軽く上下に振り感覚を確かめる。どうやら成功したらしい。

何となくだがハンガーよりかは多少重くなっている気がする。

 

 

「それは、まさか……」

 

 

蜘蛛の人は俺の剣を見た瞬間、狼狽える。

 

 

「どうだい」

 

「なんだ贋作か」

 

 

ウェイ?

蜘蛛の人はそう言うと同時に背後から、俺は吹き飛ばされた。

火花を散らしながら地面を滑る。

 

勢い余って、手から剣がこぼれ落ちる。

 

 

「わぁぁっ」

 

 

摩擦熱で腹が……って、胸が熱い。盛大に飛ばされたら後は嫌な予感しかしない。

俺は恐る恐る上を見上げると、そこには……

 

 

「やぁ」

 

 

三人?の蜘蛛の人が俺を見下ろしていた。

 

 

「……」

 

 

やっべぇ。

どうしよう、逃げると言っても逃げ切れる自信はないとハッキリ言えるさ。

そんなこんなを考えている内に、蜘蛛の人が片足を上げる。

 

 

「のぉっ」

 

 

案の定、そのまま顔面目掛け振り下ろされる足。

それを身を捩り、何とか避ける俺。今まで顔があった場所は足の形にへこんでいた。

 

 

「……」

 

 

よもや言葉は出ない。いや、人間、本当の死に直面したとき言葉なんか出ないのかもしれない。

飛び起き、手に力を込める。

床に転がる漆黒のレイピアは俺の手に収まり。

 

俺は周りにいる蜘蛛の人へ向い斬りつけた。

火花を散らし、斬られる蜘蛛の人は一瞬だがたじろぐ。

切り口からは光の粒子が流れ、剣へと吸収されて行く。

 

 

「浅かったか」

 

 

だが、不思議と手応えは感じなかった。

それはその筈、斬りつけた蜘蛛の人は一瞬の怯みを見せただけであった。

 

 

「グォォッ」

 

 

目が発光している。

見るからに怒っている。

いつもなら音と雰囲気で尻窄みするところだが、今回は違う。

 

アーマイゼの力を宿した漆黒の鎧に身を包んだ俺。

何故だか段々と自信が溢れ出ているのだから。

左右、蜘蛛の人がこん棒のような腕を横へと振るう。

 

風を切る鈍い音。

それを下へ屈み避ける。

 

それは甘かった。

目の前にいた蜘蛛の人が両手を組み、下へと振り落としている。

 

しかし、それはとても遅く感じるがそれを避ける手段が思い付かない。

 

足の筋肉が縮み、今から力を入れたとしても避けきれない。

 

あんなもの、一発でも貰えばひとたまりもない。

 

 

走馬灯が頭を駆け巡る。

 

 

ここ最近走馬灯の大安売りだな……もう、これっきりかもしれないけど。

 

 

 

 

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