おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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 筆者はザウーダンみたいな単純野郎だからうれ死い!(絶命)


12 パスタ王国完結編

「なんだろう、とてつもない恐怖を得た気がするけど直近30分程の記憶が一切ない。なんでオレはトマトまみれになっているんだ?」

「リコちゃんが勝手に転んだんやで」

「そうか、そうなのか?」

「転んだんやで」

「どうなんだシャマル」

 

 絶対違う予感がするのに、はやてが転んだと言い張って譲らないしシャマルは何も言ってくれない。

 教えてくれシグナム、俺はどの記憶を失ったんだ。

 

「転んだんやで」

「なんではやてが食い気味に答えるんだ。――いや聞くまでもないな。つまりはそんなにグレートなリコ様特製のスパゲッティが食べたいか、食い気味なだけにな!」

「あかん。リコちゃんがさらに壊れた」

「味が壊れそうなほど愛を込めたからな!」

「たぶん味はもうとっくに壊れてると思う」

 

 馬鹿な、頭のネジが数百本抜けて記憶が飛んでる内に完成させたからおいしいはずなのに。

 

「重症やな。壊れたリコちゃんは置いといてとりあえずごはんにしよか」

「もうちょっと心配してくれてもよくない?」

「ギャグ補正って知っとる?」

「やっぱりオレの事ギャグ時空から来たと思ってるよな?」

 

 はやての聖域たる台所をめちゃくちゃにして時折出火させたり全焼まであと一歩の所までをマラソンしたのは謝るよ。

 でもね、俺だって一生懸命作ったんだよ?

 なのにはやては頑なになぜか転んだ事にしようとするし、ヴィータは目を合わせてくれないし、シグナムは瞑想してるし、シャマルは真っ黒こげになってるし。

 

「私が一番被害を被ってるんですけど」

 

 シャマルはリツコさんみたいなもんだし平気でしょ。

 

「全く大丈夫に見えないなぁ。大丈夫かーシャマルー、リコちゃんサイテーやなー」

「オレの時と対応全く異なり過ぎねぇか。こういう時シャマルは一番スルーされる立場だろ!」

「うわそんな事考えとったん? リっちゃんサイッテー」

「文句あっか!」

 

 俺達のやりとりにシャマルが困惑してるけど、別にはやても分かっててやってるし俺もレスタで回復してやる。

 

「ほら謎に腹をくくってるシグナムに露骨に目線を逸らすヴィータも集まれー! ハイパー美しい天使である見習い悪魔召喚士リコちゃん様のスパゲッティだぞー!」

「ついにこの時が来たか……」

「よし……」

 

 なんかノリ悪いな。

 まぁいい。テーブルに並べていく。

 うむ。見た目はおいしそうでナイスなスパゲッティだな。

 所でヴィータを見ると震えが止まらないんだけどなんでだろう。

 

「お待たせいたしました、シェフ・ピストルリコ特製スパゲッティの“ヤンマーニ~窓が仕事終わりに食べる好物パスタ~”でございます」

「また変な名前だな」

 

 おうシグナム、文句があるなら聞くぞ。

 いいかぁ、よく聞けぇ。これを食べるとだなぁ……。

 

「食べると……?」

 

 なんと、射撃力+100とPP+5のステータスアップが望めるのだ!

 ニェーヘッヘッヘッヘッ!

 

「リコちゃんの頭のネジは色々あって数千本取れてるから気にせんでな」

「なんでだろうな」

「転んだんやで」

 

 ちなみに俺が食べた所で射撃力を参照する攻撃はしないし、殴りテクターはその戦闘スタイル上PPは盛らなくて良い。要は俺にとって二つともいらない。

 なんでこんなの作った?

 食べる必要はないと本能的な物が警鐘を鳴らしているが、製作者として食べる義務がある。

 

 お手を拝借し、頂きます。

 

「早速食べよか。頂きまーす」

『頂きまーす……』

 

 守護騎士が聞いて呆れる。スパゲッティの一つ程度なんかにビビるとは。

 さっき謎肉を食べたザフィーラの勇士を見習えよ。

 パスタが完成すると同時にお腹いっぱいになったからと自己申告して腹ごなしの散歩に出かけたけど。

 

 なんだーシグナムさん。まさかパスタ相手にびびってんのー?

 びびった奴は尻尾を巻いて逃げるがいいさ! 尻尾を持ってるやつは散歩に出かけてるけどな!

 あれ、まさか逃げたのかザッフィー。

 

「なんだその目は。食えばいいのだろう、食えば」

「一番槍シグナムゴー」

 

 ぱくり。

 固まった。

 ものすごく渋い顔をしている……。

 

「シグナムさん、どすか」

 

 ちょいちょいとヴィータを手招き。食えとジェスチャー。

 

「な、なんだよ……食えばいいのか……?」

 

 ぱくり。

 固まった。

 ものすっごく渋い顔をしている……。

 

「ヴィータ様、どすか」

 

 ちょいちょいとシャマルをつついた。同じく食えとジェスチャー。

 

「え、ええぇー……」

 

 ぱくり。

 固まって渋い顔をした……。

 

「リツコさん……」

「シャマルです」

 

 どさくさに紛れてもダメだった。

 てかなんで誰も感想言ってくれないんだよ。

 もうこうなったら俺も食ってみるか。

 

 ぱくり。

 

「……」

 

 うん、味わかんね。

 アイテムだからただ消費した扱いで消滅したのかな。

 いやでも翠屋で試食とかもしてるし。

 俺に続いてはやても食べる。あんたさりげなく全員の反応見てから食ったな?

 

 ぱくり。

 背景に宇宙空間が広がり全てを悟ったように頷き、渋い顔をした。

 

「あんなリコちゃん」

「どんな味だった? オレは味覚がダメらしくわからなかった」

「鏡見てみぃ」

 

 手鏡が渡されたので覗き込む。

 両目と口を横棒にして渋い顔をした俺が俺を見つめてました。なんで? どして?

 

「それが答えや」

 

 つまり、味がしない……だと……?

 

 丸焦げやケミカル色のくそまず謎料理ができればいくら良かったか。

 いや良くはないんだけど、とにかくこんなネタにもできない中途半端で不完全燃焼なギャグの欠片もないゴミのようなパスタが、見習い召喚士リコの全力だというのか……?

 

「ありえない、何かの間違いではないのか?」

 

 その小さな呟きは、はやての直してくるの声にかき消されていった。


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