おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
はちがつ。
夏。
あっつぅ!
……と言いたいところだけど、アークスはフォトンが云々でその気になれば簡単に防護できるのだ。
じゃなきゃ惑星リリーパの砂漠とかアムドゥスキアの火山とか耐えられない。
というか火山に至っては溶岩に入っちゃっても問題ないどころか、状態異常欲しさに肩まで浸かってる。
溶岩の中で正座してたり、あるいは表情一つ変えずに踊り狂ってたりするアークスって頭おかしんとちゃう?
状態異常を回復することでステータスアップができるから利にかなってるんだけどさ。
ずっとシリアス世界だと思ってたけど、はやての言う通りギャグ時空だったかも知れない。
【
「おい貴様! これを見ろ貴様!」
「ヒィッ……!」
――って、なんだヴィータか。
この前は一緒に寝た仲なのに脅かすなよ。ちびりそうになったじゃねぇか。
「どうせあそこで笑ってるはやての差し金だろ」
「いやー、リコちゃんの反応が面白くてついなー」
「あたしも楽しいからやってる」
「味方はいないのか。せめてもうちょっと加減してくれない? 心停止するこっちの立場になれよ」
「ちゃんと成仏してくれ」
なんだかんだ言いつつ俺が死んだらヴィータが一番悲しみそう。
で、何を見ろって?
「リコの借りてたビデオのレンタル、今日までだろって」
「あぁ、忘れてた。センキュ。ザッフィー、いるかーい?」
大型犬扱いのザフィーラは散歩させなければ怪しまれるので、何かのついでに一緒に出掛けて散歩としているのだ。
「出かけるのか」
「そそ、お散歩セットよろしく」
「わかった」
騎士とかいうもんだからもっとプライド的に犬の真似なんてしないんだからねビクンビクンとか言うと思ったのに、さも当然と言うように抵抗なく首輪をつけてやれる。
「これしきで主はやての平和を守れるというのならば甘んじて受け入れよう」
「かっくいい事言っちゃって。嫌いじゃないし尊敬するぜ、流石は守護騎士。またの名をヴォル……ヴォラ……」
「
「そうそう、ヴォルケンクラッツァー」
「さっそく間違えているが」
こっちの方がかっこいいじゃん。
景気付けに撃った波動砲で四国を真っ二つにした戦艦の名前だよ。
「にしてもザフィーラってほんとでかいよなぁ」
「……リコが小さいのだ」
「乗れそう。乗っていい?」
「近所の目を気にしないのであれば」
やめておこう。
どう見ても誤魔化せてないけど狼だとバレてしまう。
「んじゃあ行ってくるけど、なんか買ってくるものある?」
「私はなんもないで」
「じゃあアイス!」
ロックアイスね、分かった。
表へ出ると今日は曇りなので直射日光はないが、蒸し暑い。
ザフィーラは文句を言わないが、熱されたコンクリの事をどう思っているんだろう。
盾の守護獣を自称してるんだし防御盛りのカチ勢的に良いライバルなんだろうか。
あるいはアークス達と同じように状態異常を貰えて嬉しいか。
「その辺どうなんすか」
「熱いと思うが、耐えられぬ訳ではない」
漢だねぇ。銭湯に連れていったらサウナに籠りそう。
「パスタの前には降伏してたけど」
「……それより、どこに行くのだ?」
おおっと、露骨に話題を反らされた。
別にどうでもいい話だったので別にどうでもいいんだけど。
「駅前のレンタルショップだよ。ほら、オレがよく行く」
「あそこか」
「今日こそオレの知らない勇者ロボの一巻置いててくれー!」
人気なのかいつも穴抜けで借りられてるんだよなあれ。
一気見するタイプのデューマンなのでああいうの困る。
ネット配信に馴れたせいともいうが。
「リコ、そろそろ私は黙るが」
「おっけーザフィーラ」
「……」
まぁ、犬が喋ったら怪しいもんな。
最近周りに常に誰かしらいるせいなのか、どうも沈黙が逆に苦手になってしまった。
もはやほぼ忘れかけている前世的なあれの時は、もうちょっと孤独になれてるような気がするのに。
前世の事をどうだっけなーと思い出そうとしたら、ザフィーラが立ち止まり俺もそれに釣られて止まる。
「ああ、赤信号か。ザフィーラありがと」
動きがもう盲導犬か何かだったんだけど。
「やっぱりリコだ」
「んあ? お、アリッサじゃん」
「アリサよ。何そのイントネーション」
信号待ちしてたらいつぞやのパツキンに話しかけられた。
つかまた護衛の一つも付けてないのか。おいおいおいおい、死んだわこいつ。
「あんたが犬の散歩してるの見かけて車降りたのよ。名前は?」
「オレはリコ。アークスさ」
「こっちの子の話よ」
「んだよオレよりザフィーラか」
「ザフィーラっていうのね」
「無視かーい」
ひどくね? もうちょっと突っ込んでも良いと思う。
青信号になったので歩く。アリサもついてきた。
「リコのノリに付き合ってたらキリがないもの」
「最近周りの人が冷たいでござる」
「涼しくていいじゃない」
俺の扱いに馴れてんな。
リコ取り扱い免許証とか持ってんじゃなかろうか。
「取り扱い免許ならなのはがじゃない? たぶんゴールド免許」
「嘘だろおい」
「最近たまにリコの話をするんだけど、何かある度に“宇宙人なら仕方ない”で締め括るようになったもの」
「え、何それ。普通に傷つく」
「だったら改め……って、ガチでショック受けてる!?」
何がいけなかったんだろう。
高町家で桃鉄やった時にカード無双したのがまずったんだろうか。
もしくはドカポンでなのはの名前をたむらに変えたのが怒りに触れたのだろうか。
いやだって仕方ないじゃん。なんか声似てるというかご本人様な気がするし。
「ロクな事してないわね……」
「ドカポンはともかく桃鉄は大人気ないことした……」
「大人気ないも何も……いや実年齢は上だったかしら」
「そういう事にしないと働けないし」
というかアリサに桃鉄とドカポンが通じた事に驚きなんだけど。
「なのはの家に置いてあるしやった事あるわよ」
あそこ兄妹多いしパーティーゲームも多いし遊ぶも当然か。
パーティーゲームと称して友情破壊ゲームだけど。
実はあの家って闇深いんじゃなかろうか。
「つかここまで来たけど、時間はいいのか?」
「今日はこのまま家に帰る予定だったしいいの」
「さよけ。……護衛は?」
「リコがいれば何とかなるでしょ」
自称宇宙人で溶岩風呂を趣味とするやべぇやつを疑ったほうがいいと思います。
アリサってブルジョアお嬢様じゃなかったっけ。
「ここまで来たのは、何借りるか気になるしね」
そうかい。
ブルジョアお嬢様がレンタルショップとか庶民的過ぎてシュール。
空気と化してたザフィーラが良い感じの日陰を見つけたので、そこへ駐車してから店に入る。
「リコよりも大きいし、リコより賢いんじゃないかしら」
「オレだって日陰くらい見つけられるし。馬鹿にすんなよな」
「張り合う所そこじゃないから」
いやー、にしてもこの時代のレンタルショップって全盛期って感じしますなー。
俺のおぼろげな記憶やオラクル生活だと、殆どネット配信だからなぁ。月額何百円で見放題とかの。
「パケ借りできるのがお店の利点よ」
「……やっぱり実年齢結構上よね?」
「えー? リコそういうのよくわかんなぁーい☆」
「宇宙人なら仕方ないわね」
「おっとぉ。天丼は傷付くぜ」
俺のポテチのように繊細なハートを砕くんじゃない。
あ、未知なる勇者ロボが帰ってきてる。ありがてぇ……ありがてぇ……。
「意外性も何もないわね」
「男の子見てぇな趣味してるだろ? 女の子なんだぜ、オレ」
「ま、まぁ趣味は人それぞれだし」
わかってんじゃん。だから今ちらっとイケメンの映ったパッケージを見てたのは何も言わないぞ。
「ロボット以外に何かないの? それこそ女の子らしいものとか」
「って言われてもなぁ」
魔法少女物がなぜか少ないこの世界。この年代で女の子らしいものって何だろう。
分からないのでそれっぽいものを選択してみる。
「ベッタベタの恋愛物ね」
「ダメか?」
「いや、ダメではないけど」
ううむ、未知の勇者ロボと同じく見たことも聞いたこともない作品だったけど、アリサの反応を見るに憚られるものだったか。
もういいや、ロボットで覆い尽くせ。
「で、結果オレは男の子みたいな事になると」
「別に良いんじゃないかしら。趣味なら」
「いやまぁ興味はあるんだけどね? ただ、なんかこう少女趣味全開は抵抗あるっていうか、恥ずかしいっていうか」
「あんたに恥の概念があったなんてね……」
「泣くぞおら」
「あんたに涙の概念があったなんてね……」
最近、周りの人がオレの扱いに馴れてきてるとです……。
【カチ勢】……防御もりもりでカチカチになったプレイヤーの総称。