おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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19 ストーキングキャット

 最近なんか視線を感じるのは気のせいだろうか?

 バイトをしてる時は愛想を振り撒いてあっちこっちに人気者で仕方ないけれど、それがどうしてかバイトを終えて帰る時もそんな視線を感じる。

 

「暇な人もおるもんだねぇ……」

 

 万が一不審者に襲われたとしても、相手は戦闘力5な地球人。問題はない。

 しかしだ。俺だって人間(デューマン)だし生活がある。

 なんというか、端的に言えば落ち着かない。気持ち悪い。

 リコボディの方からは気配に察知し敵に備えた緊張状態、俺の方からは知らん人にケツを狙われてるかも知れないという状況のストレス。

 ダブルパンチのダメージアップでアップップー。

 

「お疲れさまでーす」

 

 裏口から出て、念のため少し時間差を作るため近くの段差に腰掛ける。

 こんな時のためにゲームのマップが欲しい。あれがあれば敵性反応をサーチ&デストロイできるのに。

 

 しっかし、どうして俺なんか狙うかねぇ。

 接客態度はあれだが、一分バイト時間を過ぎて着替えた途端にいつも通り過ごすっちゅーのに。

 一目惚れするのは分かるが。

 

「なー、猫なー」

 

 最近帰り道によく見かけるこの猫の視線ならいいんだけど。

 

「おっ、と。やっぱりここにいたか」

 

 猫を撫でながらぼーっとしてたら、裏口から高町家長男の恭也さんが現れた。

 そういえばこの人も今日は手伝いに来てたな。

 上がりだろうか?

 

「父さんが心配してたぞ。最近気疲れしてるみたいだとな」

 

 所でこの人の声聞き覚えがありすぎるんだけど。

 なんかこう、グリーンなリバーがライトってそうな……。

 

「気にすんなよ恭介」

「恭也だ」

「声似てるしいいだろ」

「よくないだろ」

「けち」

「お前な……」

 

 心配してくれてるのは確かだろうけど、正直な話どうするかなぁ。

 高町家の住民はどうしてか戦闘力高い上に優しいから、俺が「マジで困ってるんで助けてくだしあ」とか言ったら犯人の殲滅に動くんじゃなかろうか。

 

「あのな、こっちとしてはリコの方が実力行使で事故にならないか心配なんだぞ?」

「マジかよ」

「お前って無駄に力強いから、ぷちってできそうだし」

「ひでぇなおい。そらフィクサービームを使える恭也に比べたらあれだけどよ」

「待て、さりげなく俺がビーム出せることにするな」

 

 フィクサービーム言うてみ? めっちゃ似てるから。

 

「なんの話だなんの……。人が心配してるというのに」

「ははは、ごめんごめん。ただまぁ、ホントに心配ないから」

「ならいいんだが」

 

 大丈夫だって。

 翠屋から家に帰る途中や仕事中に視線を感じたり、あるいは曲がり角から謎の気配をよく感知する位だから。

 

「思いっきりストーキングと出待ちされてるじゃないか!?」

「ダヨネー」

「どうしてそう呑気なんだ……!」

 

 ケツ狙われてるなんて深刻に考えて病みたくないもん。

 このかわいい猫みたいにのんびりしたいね。

 んなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の翠屋。

 いつも通り出勤した俺は、ホールには出なくていいと倉庫整理を言い渡されていた。

 

「倉庫整理……キャラ倉庫……見つからないアイテム……」

 

 うっ、頭が!

 

「ま、まぁ今はそういうのとは縁もなくなったし」

 

 能力付けの為に作った素材をしまって、メモもしないからよくわからない事になって。

 倉庫なんだからタグ付けくらいさせてもいいじゃないかとずっと思ってた。ロックの有無だけじゃ整理できんよ……。

 あの頃は文字によるごちゃごちゃだったか、こっちは物理的なごちゃごちゃだ。

 

「たまーになんか武器っぽいのが混じってるのは誰の趣味だこれ」

 

 士郎さんも恭也ニキも戦闘力高いし、趣味っていうか闘争にでも備えてるんかね。

 

「……ま、なんかこの辺は関係ない気がするしいっか」

 

 たぶんこの辺の設定が主に生きるのは別宇宙(べつさくひん)な気がするし。

 謎電波をキャッチしつつも倉庫整理を行っていく。

 

「バイオリンケースじゃん。中に銃でも入ってるんじゃないか?」

「――流石にそれはないよ」

 

 あ、士郎さんだ。おつかれさまーっす。

 

「楽器に興味があるのかい?」

「なくはないっすね」

 

 だって楽器系のルームグッズってビジフォンで高く売れるもん。

 

「よかったら後で弾いてみるかい?」

 

 ゲームならマイルームに設置した様々な楽器を扱えてた。

 プロ並みの演奏も歌唱力を持ってるのに二曲しか演奏できないアークスって悲しいね。

 俺はともかく……あれ、何か楽器使った記憶あるな。これはリコの記憶か。

 でも今は弾けるか分からないしなぁ。

 

「ええと……上手に弾けないから」

「そっか。それより、そろそろ上がったらどうだい。もういい時間だよ」

「まじでか」

「掃除までしてくれてありがとう。ケーキでもどうだい? 向こうで待ってるよ」

 

 時計を見ればもう昼のピークは過ぎて、人のはけている時間だった。

 マジかよ、こっちでも倉庫整理だけで一日終わるのか。

 

「とと、またにゃんこか。んなぁー、かわいいなぁお前さん」

「……にゃ、にゃーん」

 

 シャベッタアアアア!

 

「猫だし鳴きもするか」

 

 にしては人が頑張って猫の真似した見たいな感じだったけど。

 つかどこから入ったんだこの猫。建物の中にまで入ってくるなんてな。

 最近よく見かけるし、まさかストーカーの正体がお前だなんてないよな。

 

「問おう、貴様が私のストーカーか」

「……にっ」

「な訳ないよな」

 

 

 俺も疲れてるのか。


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