おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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2-4 赤い輪とリコの記憶

 割りと無視していた事だけれど、神特典で高い身体能力貰ってたよな?

 そう気付いたのは、家へ帰りソファで寝て目が覚めた時だった。

 

 決死の覚悟こそしたが、終わってしまえば通常ボスの様な戦闘だったと感じるのに俺はだいぶ疲れた。すぐ寝てしまうほどに。

 考えられる可能性としては日常生活を謳歌し過ぎて鈍ってしまった事だろうか。

 翠屋で倉庫整理とかの力仕事はしてるからパワーは出たけど、基礎体力がガタ落ちしてたっぽいか。

 

「シグナムに乗れば良かったぜ」

 

 軽い手合せ程度でも変わるはず。

 今度からちょっとお願いしてみるか?

 ……あー、いや。斬殺されそうだ。

 

「ただいまー」

 

 起きてお茶を飲んでちょうど一段落ついた頃、はやてが帰ってきた。

 

「おかえリンガーダ」

「ひどいでリコちゃん。迎えに来てくれる言うから楽しみにしとったのにー」

「悪い悪い。好きなボーカルが路上ライブしててな」

「音楽に興味あったんや、意外やなぁ。何て名前なん?」

「え。あー……、熱気バサラ」

「ふぅん……? 今度どんな曲か教えてなー」

「機会があったらな」

 

 わざわざ襲われたとも言う必要はなかろう。

 あと咄嗟に名前出しちゃったけど、バサラのCD売ってるかな。

 というかそもそもいるのか熱気バサラ。

 調べたらすぐ分かっちゃうじゃん。嘘が下手だな。

 

「それはそうとリコちゃん、これ廊下に落ちてたで」

 

 そう言ってはやてが俺に渡したのは、一つの小さい物体。

 

「いつも身に付けとるし、大切なんやろ?」

 

 それは、赤い腕輪(レッドリング)

 

「いつ落としたんだ!?」

「うわっ。そ、そんなに大切やったんか……?」

「ありがとうはやて……これを失くしてたら……」

 

 失くしてたら、なんだ?

 テクターの必須装備であるAウォンドEチェンジのリングでもない、アクセサリーなだけのこの赤い輪に、なぜ俺はこんなにも執着したんだ。

 いやまぁ、これが落ちて転がるのはPSO的に縁起悪いんだけど……。

 

「……なんでもない」

「ならええんやけど」

「それよりシグナムはどうした? 一緒じゃないのか?」

「シグナムなら買い物に行っとるで。病院帰りだし私は先に帰って休んどきって、玄関で」

 

 手合わせの相談をしたかったけどそれなら仕方ない。

 しっかし、このリングはPSO2ゲーム内だとただの装飾品。必死になったのはオラクルに生きてたリコの感情なんだろうけど、どうしてこの腕輪を……。

 ……あ。

 

「これさ、師匠に貰ったやつなんだ」

 

 思い出せた。思い出した。

 フラッシュバックのようにその光景を思い出す。

 

「リコちゃんの、お師匠さん?」

 

 研修生時代に、実地研修でピンチに陥った時とあるアークスに助けてもらった。

 そのアークスはあまり人付き合いが得意ではないようだったけど、同じデューマンだったからか話もしやすくて、懐いた()()はアークスとして就任した後も師匠だと一方的に言い張り勝手について回ったんだ。

 

 不器用だけど優しい師匠に憧れて、それで髪型も口調も真似した。

 師匠の様にかっこよくなりたいと、一人前に見られたいと背伸びをしたりもして。

 いつしか向こうも師匠呼びは馴れないみたいだけど仲間として想ってくれて。

 

「チームに所属する事になるからもう頻繁に会えないって言ったら、餞別にくれたんだ。リコって名前にはこの赤い腕輪が似合うよって」

「へぇー……」

 

 当時はどうしてリコと赤い腕輪に関連性があったのかは分からなかったけど、メタ知識のある今なら前作の英雄レッドリング・リコの事を言ってたんだと分かる。

 師匠がどうして知ってたのかはよくわからないけど。

 文献とかにでも残ってたのかな。聞きに行けない今や謎でしかない。

 

「それで」

「ん?」

「リコちゃんはなんて言ったんや?」

「何って、普通にありがとうって返して今も愛用してるけど……」

「ちゃう! その告白に、リコちゃんはなんて返事したんや!」

 

 え、な、なに?

 はやては一体なんの話してるの?

 いやまぁリコのテーマ曲は薔薇の告白って名前だけどさ。

 

「はぁー……」

「なんだよ。なんなんだよそのため息」

「不憫、不憫やわぁお師匠さん」

「んだよ」

「いやよく考えてみぃ。何の気もなしに“お前にはこれが似合う”言うてリングを渡すか?」

 

 んー?

 あ、まさかはやてのやつ。

 

「一つ良いか、まさか告白って、そういう告白の話か?」

「そうに決まっとるやろが! はぁー、お師匠さんドンマイやでほんま……」

 

 確かにその状況、こうしてみるとただの告白だなぁ。

 たぶん、師匠も素で言ってただけでそこまで深く考えてないと思う。

 

「こ、ここまで至ってもリコちゃんは……!」

「待て待て本の角を掲げるな、構えるな」

 

 お前は一つ勘違いをしている。

 

「師匠は確かに一人称が“おれ”だったり短髪だったりまな板だったりしたけどな、レディだぜ?」

「それを先に言えやぁ!」

 

 あふぅん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 てな訳よ。

 話している時に俺は完全にリコの視点で話してたな。融合係数でも上がったか。

 リコ化してるのは置いておいてよく考えて欲しいが、仮に師匠が男だったとしてもロリ相手に愛の告白なんてするか?

 いくらかわいくたって常識的にせんだろ。

 

「なるほど、そんな事があったのか。道理でぼろ雑巾のようにされてるわけだ」

 

 この痛みを分かってくれるかシグナムっち。

 あとぼろ雑巾は言い過ぎじゃない?

 

「主はやての勘違いも悪いが、そんな話し方をしたリコも悪い」

 

 はやての肩持ちすぎじゃないか。贔屓だ贔屓。はやてが10割悪い。

 いくら怪我を自分で治せるといっても痛くない訳じゃないんだぞ。

 

「それにしても、リコの師匠か。ぜひ剣を交えてみたい」

 

 それは無理だと思うな、師匠は弓をメインに使ってたし。

 カタナも使えないことはないらしいけど、しっくり来ないんだとさ。

 

「……それは、剣を握るリコに指南できるのか?」

 

 ごめん、わりと無理させてたと思う……。

 

「さて、先に風呂入ってくる」

「ああ」

 

 にしても、俺が何の気なしにキャラクリでリコに追加した要素にも過去が結び付けられるなんてな。

 幼女ボディなのも研究所出身だからということになってるし、髪型がエターナルFレイヤーなのは関連人物の影響だし。

 殴りテクターをやっていたのもちゃんと理由があるんだろうか。

 

 今は俺がオレ(リコ)だけど、キャラクリが他にどう色々作用していたのか気になるな。

 厳密には他人となる人の過去を勝手に詮索するのは少しマナー的にどうかと思うけど。許してくれるかな。

 

「体が成長せんのは良いがしかし、髪型はせめて変えたかったな……」

 

 鏡に写った()()()()()()()を見て、それも思った。

 エステがなくてヘアスタイルの変更ができないなら、髪を伸ばすしかないというのに。

 折角かわいいロリになったのに短髪固定は寂しいなぁ。


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