おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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2-5 ダックハントのアレ

 ランニングって大事だわ。

 

 これが始めてからすぐの感想である。

 

 

 シグナムに稽古をつけてもらおうとしたのだが、向こうは最近忙しいらしく断られてしまった。

 

 それでじゃあ基礎体力作りに走ってみるかとやってみたが、これが思った以上になかなか効果的。

 どうやら想定していたより俺は怠けていたらしく、初日は予定していた道のりの半分で死を遂げた。

 だが流石はアークスなのか、片道でへばっていたコースも一週間ともなれば余裕になった。

 明らかに体力つくのが早いしやはり高い身体能力を発揮できるまでの伸び代を与えられた説が正解っぽい。

 ゲーム中じゃ無限に走り無限に武器を振り回していたがどこまで行けるだろうか。

 というか鈍りすぎなんだよな、戦闘がなかったからって。

 

 普段の俺の生活を見返してみよう。

 

 翠屋でのバイトが無い日は家で借りたビデオを見てだべってる。以上。

 うーん、体力も落ちるわ。怠けすぎ。

 

「あの世でリコも笑ってるぜ……」

 

 自分の体で弄ばれる気分はどうだぁリコちゃんよぉ。

 今は俺がリコちゃんなんだがな! がっはっは!

 

 はぁ。そのリコに最近はだいぶ侵蝕されてる気がするけど。

 絶対前世的な時はこんなヤケクソな性格じゃなかったはず。ヤケクソなのはリコのせいだ。

 俺は悪くねぇ。

 

「ん?」

 

 ランニングついでで近くの山まで来たが、上の方から何か音がするな。

 耳を澄ませてみれば、空き缶を打つ音とそれをカウントする音声が続いている。

 

「ダックハントの攻撃の、えーっと元ネタなんだっけ」

 

 オマージュとかパロディは見るんだけど元ネタの名前が思い出せない。

 空き缶リフティングをやってるのはわかるんだけど。

 

「この声ってなのはか?」

 

 掛け声はなのはだけど、カウントしてる機械チックな声の正体はわからん。

 ちょっと近付いて見るか。

 ここで捻りなく普通に近づくのは一般アークス。

 しかしここにいるのは緊急任務前のキャンプシップ待機が暇過ぎて暴れまわった事のあるアークス。

 

「スニークシューター」

 

 なのはが相手なら武器持ってても大丈夫やろの精神でライフルを持ち、PAを使い地面をうねうね這って行く。

 服が汚れないのかだって?

 フォトンって便利だよね。

 

 うねうね。

 うねうね。

 

 引っかかるボディもしてないのでステルス性能はたけぇぜ。

 

 うねうね。

 うねうね。

 

「あっ」

 

 前方数十メートル、なのはがミスったのか空き缶を取りこぼす!

 

「Go」

 

 ライフルから放たれた一発が、空き缶を粉砕した。

 

「びゅーてぃふぉー……」

「リコちゃん!?」

 

 ごめん、威力が高いのは知ってたけど破壊するつもりはなかったんだ。許してくれ、アークスはゴリラなんだ。イボンコなんだよ。

 立ち上がり普通に歩み寄り、代わりにかつて東京の川で釣っておいたギャザリングアイテムのアキカンを渡す。

 無言で断られた。

 

「にしても、なのはも修行か? 精が出るねぇ」

「う、うん。そんな感じ……」

 

 前回は俺が武器を出しているところをこっそりみられたが、今回は逆だな。

 つまり。

 

「今度はなのはがザリガニを釣りに来たと言うことか」

「ザリガニ!?」

「譲るぜ。遠慮せずにたんと食えよ」

 

 俺はザリガニは食わんから一人占めしていいぞー。

 

「食べないってば! それより、今の見てたの?」

「ダックハントのB技みたいなやつのこと? ばっちし見てたけど」

「よくわからない例えだけど、見てたんだね……」

 

 あれ、まずった?

 仮面戦に引き続いてなのは戦?

 何となくだがなのははたぶん強キャラだぞ、勝てるわけがない。

 手にしてる宝石がぴかぴか光って落ち着けみたいな事言ってるけどなにそれ。

 

「ごめん! 秘密にしてもらっても、いいかな」

 

 んあ?

 ああ、なるほどね。

 こっそり強くなりたい影の努力タイプか。わかった、お前さんがそう言うのなら黙ってるぜ。

 

「そういう訳じゃないんだけど……」

 

 おうおうおうおう、みなまで言うな。

 わかってる。

 いやー勉強してないわーって言いつつテストで良い点数取りたいタイプだろ。いるいる。

 

「違うから! その、魔法は秘密にしないといけないの」

「え、そうなの?」

「うん」

 

 俺って散々あちこちでそれっぽい事してるんだけど。アイテムパックから色々出したり。

 ダメならちゃんと教えてくれよ。

 

「そういえばそうだったね……」

「宇宙人だから仕方ないで流すからアイテムパックみたいな基礎的な事忘れるんだよ。ちゃんと思い出せ」

「あれ、これわたしが悪い流れ?」

 

 俺は認めん、自らの罪を決して認めんぞぉ……!

 

「変な意地なの」

 

 我が家にも4人ほど魔法を使える連中がいるけど、あいつらも魔法は日常生活で使ってねぇな。

 魔法的なものが大々的じゃないしやっぱりあんまり見せびらかすのはよくないか。

 気を付けよ。

 

「ありがとうなのは。オレは自らの罪を償いこれからを生きることにするよ」

「うん、なんかもうめちゃくちゃなの」

 

 ええやん。細かいなぁ。

 

「それはそうと、なのははどのポジションなんだ?」

「ポジション?」

「ほら、パーティー組んだときに前衛後衛とかあるだろ」

「うーん、それで言ったら後衛かも。今もシュートの制御を練習してたし」

「ふむ」

「どうしたの?」

 

 なのは本人は運動が苦手と聞いたし遠距離であるなら恐らくは固定砲台、フォースの火力特化型か。

 ……あれ、それってまたクラリスクレイス枠? ガクブルが止まらない。

 ヴィータと並んだら俺に対する特効入りそう。

 ソシャゲのレイドボスで俺が出現したらガチャのピックアップにふたり並んで入るんだろう。そして容赦なく俺は死ぬ。

 

「フォースはよくわからないけど、固定砲台は正解かな?」

「長所を先に伸ばすのは正解だと思うぞ。あっちこっちに手を出すのも良いが長所を潰して器用貧乏になってもなんだし」

 

 あっちこっちに手を伸ばしたお陰でリアルマネーを使いマグを買い直す必要が出たからな。

 

「前衛が欲しいが、そもそも他に仲間は?」

「今は地球にいないけど、お友達になれたフェイトちゃんやアルフさんにユーノくんやクロノくん。いっぱいいるの」

 

 おっとぉ、今や味方のアークスがいない俺には堪える解答だぜぇ……。

 だが頼れる仲間がいるなら心置きなく火力を伸ばせるな。

 

「ただしなのは。それでも最低限の回避、防御を怠ってはいけない」

 

 取り出すのはコモンウォンド。ラヴィスはオーバーキルだからね。

 仮面の男の実力がどんなものかは基準がないからわからんが、少くても気合い込めればバリアは粉砕できるっぽいし。

 

「ちょっとオレも修行したい所だったから、混ぜてもらっていいか?」

「リコちゃんって確か、昔は戦ってたって……」

 

 今までの「宇宙人なら仕方ない」な態度を改め、なのはは頭を下げた。

 

「もっと強くなりたいから、よろしくお願いします!」

 

 素直な子だ。

 まだ若い新人を伸ばすのもベテランアークスの仕事。なれば、レベリングに付き合うのもやぶさかではない。

 

 あと俺としても色々装備というかできることの確認したいし。

 この前で空中戦も考えないといけないといけないことがわかったので、修行ついでに色々試さねば。


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