おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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2-6 はやてとすずかの出会い

「フォトン……光子? 光の波動? ようわからんなぁ」

 

 いつもの図書館、はやての目の前には小難しい科学本が積まれていた。

 

「オラクルもアークスも、ダークなんとかもこっちにはないんかなぁ」

 

 宇宙が滅びる程の事が起きるのでいないのは良い事なのだが、はやてはがっかりしつつ本を戻していく。

 闇の書に召喚されたものの魔法らしい事はほとんどしていない4人と比べて、リコは日常生活でもよくSFのような技術を見せてくれていた。

 こちらの世界でもいつか世に出る技術だろうかと気軽に思い調べてみたが、ダメだったらしい。

 

「せめてアイテムパックを貸してくれたらええんに」

 

 そのリコも技術面に関しては享受している立場なのでどうしようもないのだが。

 

「ふんぬぬぬぬ……」

 

 本を仕舞おうと手を伸ばすが届かない。

 あと少し……。

 

「ここにしまえばいいの?」

 

 それを助けたのは、リコの友人であるすずかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうなぁ。高い所は手が届かなくて」

「ううん。これくらい大丈夫」

 

 時折図書館で見かけていたはやてと話をしてみたかったすずかであったが、ついに今日声をかけることができた。

 どの本が好きなのか、どんな本を読むのか、図書館でよく見かける同年代として。

 そして何より、本以上に話題にしてみたい事も。

 

「へー、すずかちゃんもリコちゃん知っとるなんて」

「半年くらい前に、ちょっと助けてもらった事があって」

「リコちゃんもええ所あるやん」

 

 はやてとリコの組み合わせを時折見ていたので、その話をしてみたかったのだ。

 

「はやてちゃんとよく一緒みたいだけど、どんなきっかけだったの?」

「ははは。きっかけって言うか、まあ最初は本当に突然話しかけて来たんよ。オレってかわいいだろって」

「リコちゃんらしいね」

「うんうん。あいつらしくはあるけど、今思えばとんでもない奴が来たと思うなあ」

 

 短い金色の髪に灰色の目をし、黙ってじっとしていれば人形かと思わせるほど端麗な顔つきをした少女リコ。

 まだ肌寒さが残るというのに白いワンピース(エアリーサマードレス)を着て椅子に胡坐をかいたリコは、眉間にしわを寄せながら図書館で新聞を読んでいた。容姿に全く似合っていない。

 そんなリコの隣へ車椅子をつけてしまったはやても運があったのかなかったのか、近くにいたからという理由で話しかけられてしまった。

 最初はその顔立ちからは想像できないほど荒い口調に驚いたはやてではあったが、不思議と気が合い自然とその後の買い物にも付いてきて、さらに家まできて。

 初めてできた友達として気を許し、そのまま流れで泊めてしまい。

 それから現在に至る今もまだ八神家へ住み着いている。

 

「はやてちゃんの家に住んでるんだ?」

「せやで。家がない言うから数日だけ思うて泊めたんやけど、結局本当に宇宙人みたいで今もおるで」

「そうなんだ」

 

 当時から引き続きリビングのソファを根城として住み着いている。

 数ヶ月が経ったある日にどこか別の部屋に移らないのかはやては聞いてみたが、別にそこまでしなくてもいいと断っていた。

 そのせいでソファへ座ろうとして寝ているリコを潰してしまう事件が頻発しているが。

 本人曰くヴィータとはやては許すがシグナムとシャマルは許さんらしい。

 潰されるのが嫌なら意地を張らず移動すればいいのに。潰してしまった方も被害者である。

 

「びっくりせんけど、すずかちゃんも宇宙人って言われたん?」

「信じられなかったけど、宇宙人の証拠だって頭の角を見せて貰ったよ」

「え、角なんか生えとったん?」

「うん。ちなみに目の色も左右で微妙に違うみたい」

「知らんかったなぁ」

 

 特に言う理由がないし、わざわざ言わないだけなので隠している訳でもないが、お陰で髪の毛から微妙に顔を覗かせている角は誰も気にしていなかった。

 瞳の色に関しては本当に微妙な差なので、本人も忘れてる。

 

「宇宙人やし人間じゃなくてデューマンやっけ。帰ったら確かめてみよ」

「嫌がらないかな」

「大丈夫やと思うで? 適当に褒めておけばオッケーや」

「ゴールド免許……」

「免許?」

 

 リコ取り扱い免許(ゴールド)認定者が増えた。

 

「まあちょっと変な所もあるけど、仲良くしてやってな」

「……この前翠屋で会った時、友達になろうって言ったら悲しそうな顔をされたけど」

 

 その真相は友達になろうという発言をフレンド登録の事だと勘違いしたからである。

 アークスでもない一般人のすずかは受信ができない為、送ったフレンド申請を無視されたと思い勝手に傷ついていた。

 ちなみにその後自棄になって手当たり次第にフレンド申請をバラまいたが、誰も同じく受信できないため返答がなく半泣きになりふて寝した。そしてその直後ソファでシャマルに潰されガチ泣きした。

 

「リコちゃんの事だからどうせしょうもない勘違いやし、気にせんで大丈夫やで」

「かな?」

「せやで」

 

 事実本当にしょうもない勘違いである。

 

「そういえば翠屋って、確かリコちゃんの働いてる所やっけ。どうなん? ちゃんと真面目に働いとるん?」

「それはもう、完璧な程に」

 

 私生活では主に自身の立ち回りのせいで立場はないが、翠屋では公私混同をしないの宣言通り真面目に働き重宝されている。

 こっそり翠屋の看板娘を狙い正社員まで上り詰めようともしていると噂もあるが、本当だろうか?

 少なくてもリコが出勤すれば売り上げが伸びるのも確かだが、今もなお変わらず薄給である。最低賃金も怪しい気がしてきた。

 

「クビになっとらんなら良かった。看板娘はともかく」

 

 なお店長たる桃子からすれば永遠にマスコット扱いである。

 看板娘は娘のなのはだけで良いらしい。

 

「悔しいけど容姿だけはええからなぁ」

「そうなんだけどねぇ」

「けどな、最近は気を抜いとるんか知らんけど髪の毛の紫増えてってるで」

「え、あれって増えるものなの……?」

「あんまし美容に気を使ってる様子ないし、染めるの忘れとるんとちゃう? どっちが地毛なのか知らんけど」

 

 

 

 元々話そうとしていた本の話題など一切上がらず、2人はその後もリコの話題で持ちきりになっていた。

 そして2人してリコの奇行が上がれば、

 

「宇宙人だから仕方ない」

 

 として締めるのであった。


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