おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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2-8 戦闘開始

 図書館からの帰り道。

 身内以外の同年代と話をして、そして友達のできたはやてはご機嫌だった。

 車椅子生活のおかげで学校にも行けず、今まで友達もロクに作れたことがなかったらしい。

 俺はもうヴィータと同じで家族判定なので、同年代でも友達とは違うのだとか。

 

 友達って外でしか会えない特別感があるものね。

 

 お前は同年代じゃないだろって? うるせぇな。

 さりげない家族認定はすごい嬉しいんだぞ。研究所出身なせいで仲間はいても親族はいなかったんだから。

 脳裏に宿る悲しい記憶。

 

「ただいまー」

「ただいマルモスー」

「マンモスやなくて?」

 

 家に帰ってきて声をかけるが、誰も返事がない。

 

「これは、事件か……!」

「いやみんな忙しいだけやで」

 

 あのバトルジャンキーなシグナムが俺との手合わせを断るレベルでねぇ。

 ゲートボールの大会が近いとかでヴィータが練習詰めなのはいいけど、シャマルもシグナムも何してるんだか。

 ザフィーラもそういや最近よく勝手に散歩いってるし。保健所に捕まらないだろうか。

 ……ああ、ザフィーラって元はおっさんだっけ。

 とにかくなんか最近みんな家を出払ってるのが多くなった。

 

「ついにオレと同じくニートなのを気にしたか」

「いやそういう訳やないと思うけど」

「じゃあなんだろうなぁ」

「ふふ、鈍いなぁリコちゃん。クリスマス近いしそういう事やで」

 

 ま、まさか。

 

「このオレに、プレゼントを……?」

「私だけにや」

「オレは? なあオレには?」

「一人占めやもーん」

 

 ちょっとぐらいいいじゃんか。クリスマスプレゼントだろぉ! ってオーガニックに叫ぶぞ。

 てか俺もなんかサプライズにプレゼント用意しておこうか。

 そうだな、手作りが良いだろうしクリスマスにはパインサラダでも作ってやろう。こっそり用意して冷蔵庫に潜ませてドッキリ作戦。

 うむ。思い出に残るサプライズに出来そうだ。

 

 しっかし、誰もいないとなるとなんか寂しいな。

 なんというか昔に戻ったみたいだ。

 思い返せばひと月くらいの短い期間だったとはいえ、かつてはこの広い家に俺とはやて2人きりだったのになぁ。

 

「せやなぁ。賑やかな今じゃ考えられへん」

「あの頃はオレの扱いももうちょっと良かった気がするんだけどな」

「気のせいやない?」

 

 そうかな。

 最近は物理的に扱いが悪い気がする。潰されたり。

 

「そやったらソファで寝るのやめたらええやん」

「床で寝ろと」

「いや、空いてる部屋使って欲しいんやけど」

 

 俺がマイルームを持つと欲が出てリモデルームLで勝手に部屋を拡張しちゃいそうだし。

 あるいはシーナリーパスで勝手に引っ越したり。

 まあ単純に家族判定とはいえ、まだ居候な気分なので部屋を借りるのは躊躇いがあるというか。

 

「じゃあごはん作ってるから、ゆっくりしててな」

「おう。手伝う事あったら呼べよ」

「リコちゃんには料理は手伝わせへんでー」

 

 なんでさ。たまには活躍するだろ俺。

 特にシャマルの生み出した暗黒物質に立ち向かった時とか大活躍だっただろ。

 やべぇ味と化した料理に俺が手を加えて、無味になった所をはやてが止めを刺すコンボで乗り切ったりして。

 

「普通そんな状況あり得へんし、そもそも何をしたらあの味を消せるん?」

「オレ超がんばった」

 

 個人的にどこまで手伝ったら無味になるかのチキンレースがやってみたいけど。

 マヨネーズかけた時はセーフだったしどこまでやったらダメなんだろうか。

 

「あ、材料がちょっと足りひん」

「クラリスクレイスのチョコか?」

「それが必要になる場面想像つかへんのやけど」

 

 折角久しぶりに出したネタだってのに。

 

「ごめんな、ちょっと買うてきてくれへん?」

「よっしキタコレ、伝説の配達人たるこのオレが唯一大活躍する場面」

「こんなんが唯一でええんか……?」

 

 いやだって。料理できないとなるとこれくらいしかやる事ないんだもの。

 んで、何買ってくればいいんだ?

 

「はいこれ、メモに書いたから。お財布ちゃんと持っとる?」

「おっけ。ついでにヴィータも拾ってくるか」

「せやな、悪いけど頼んだでー」

 

 ヴィータめ、大事な大会が近いのはわかるが、なるべく暗くなる前に帰ってきて欲しいもんだぜ。

 この街は意外と拉致とかが発生するくらいには危険だぞ。

 万が一ヴィータを襲ったりなんてしたら、犯人が危険だからな。

 

 ヴィータ本人はゴルディオンハンマー持ってるし、援軍のシグナムは剣を持ち、駆け付けた俺はデバンド&レスタで相手の無事を祈る。

 八神家さえいればこの街の防衛は万全じゃなかろうか。

 

 

 

 もう12月に入り、息も白くなる気候。

 あっという間に暗くなるし、いつ雪が降ってもおかしくないような毎日だ。

 最近は周りと合わせるためにフォトンの防護をしていないため、流石のアークスたる俺も堪える。

 

 にしても、忙しいとは言うがあいつらどこで何をしているんだか。

 病院でシャマルが何かしらの動きを見せる雰囲気出してたし、恐らくそれなんだろうけど俺に相談してくれりゃばいいのに。

 やっぱりアイコンタクトが伝わらなくてダメだったんだろうか。

 俺だってなぁ、はやての事を何とかしてやりたいと思ってんだよ。

 今日に至るまでにも隙あらば料理にモノメイトを混ぜようとしたり、アンティの能力を高める事が出来ないか気合いを込めて発動させたりしてるし。

 前者は叩いてでも止められたし、後者は上手く行かないけど。

 フォトンは想いを力に変えるとは言うけど、俺の愛が足りないのだろうか。

 愛です、愛ですよリコちゃん。

 愛が足りないぜでも歌うか。

 

 

「――ぬ?」

 

 

 突如として人が、車が消えた。

 街のざわめきが無くなって、世界に俺だけが取り残される。

 この感覚には覚えがある。かつて臨海公園で仮面の男に襲われた時と同じやつだ。

 

「さっそく障壁かい、カーメンマンよぉ」

 

 今着ている地球産の布服をぼろぼろにする訳にはいかないな。

 前の時は私服のまま戦闘してしまったがここは学習した俺。フォトンの防護がなされたオラクル産の服を着ていく。

 装備変更で服装を【若人(アプレンティス)】戦闘衣に変える。

 戦闘衣と名がついてるせいか知らんがしっくりくるぜ。

 

 あとはドルフィヌスとラヴィス=カノンを装備して、準備オッケー。

 

「待たせたな。こいよ」

 

 …………あれ?

 こないなおかしいぞ。

 

「へ、へいカモカモ」

 

 遠くで戦闘音が聞こえた。

 あれ、違うの? 俺目当てじゃないの?

 

「来ないなら来ないって言ってくれー! あとオレじゃないならとりあえずここから出してくれー!」

 

 つか、なに。

 こんなかっこつけて誰も見てないの? うっそだろおい。

 髪の毛の色と合わせて【若人】のパチモンじゃんこれ。うっわー恥ずかし。

 ハロウィンで近所回ってるかわいい幼女だよこれ。

 

「……もしかしてオレの事気が付いてないのかなぁ」

 

 巻き込まれ系主人公かな?

 このまま待ってても多分時間がかかるだけだし、武器をソードに変更してライドスラッシャー。

 

 空中サーフィンをDAICONと呼ぶかタオパイパイと呼ぶか、あるいはフリクリかエウレカか。

 俺もその系列に加われればうれしいぜ。

 

 年代が分かれる問いはともかく、こうなったら元凶を探して何とかするしかない。

 つか、せっかく戦えるんだし事件なら動かないとな。

 

「む」

 

 ビル群の向こう、今一瞬クラリスクレイスみたいなのが見えたな。

 いやあいつはこの世界にいないし、俺が見間違えるとしたらヴィータか。

 

「まじかよ」

 

 仮面の奴め、俺の次はヴィータが狙いか?

 やらせはせん、やらせはせんぞ。

 

「いやぁっほぉおおおおおおおおおお!」

 

 セルフウォークライ!

 届くか分からんが、俺がここにいる事をお知らせするぜ!

 俺の声が聞こえねぇか仮面よ! わかったらこっちに来な。

 

「行くぜ、ブーストファイヤー!」

 

 とかいいつつもちろんそんなブースト機能はない。気合い(フォトン)を込めて速度を上昇させます。

 ヴィータっぽい影が入って行ったビルに、側面から突撃!

 暗いオフィスの先に、少し息を切らした赤い服のヴィータがいた。

 

「見つけたぜ!」

「なっ、リコ!?」

 

 なに驚いてやがんだ。お前を迎えに来たんだぜ。

 で、敵は……。

 

「まずいっ」

 

 油断しているヴィータの反対側から、俺と同じように接近している金色の影が見えた。

 仮面ではないが、あいつが今回の敵か。

 くそっ! まだ遠い!

 間に合うか? いや、

 

「間に合えよ!」


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