おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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3 昔話をしてあげる

 買い物は無事に終えて少女の家へ。

 荷物は少女の膝に乗せて、俺は少女ナビのもと車椅子を押す感じ。

 

「押してもらって悪いなぁ」

「へ、感謝するならうんまいハンバーグでも寄越すんだな」

「あんたのリクエストで作る予定や」

 

 くっそ、広い一軒家とかうらやましい。

 

「てか、親に連絡せんでええんか? そんなそぶりないけど……」

「んあ? お前こそ親に言わなくていいのか。勝手に超絶美幼女家に連れ込んで」

「両親とも死んでもうた。ここに居るんは私だけ」

「……すまん」

 

 素直に謝るとびっくりした顔をされた。

 なにさ。俺だって謝るよ。

 クラリスクレイスのチョコは謝らないけど。あいつ今いないし。

 つーかあんなに渡してくるのが悪い。

 

「で、あんたの親は?」

「いねぇよ。ついでに家もない」

「家出とか」

「違う違う。オレは……あれだよ、宇宙人」

「まだその設定引きずってたんか……」

「おうおうおうおう、言ってくれんな。視察とか征服とかは嘘だけど」

「なんや、残念」

 

 代わりにこの家の一部屋、いやソファだけでも支配させてください。

 

「え、何。永住するん……?」

 

 図書館からすごい自然に話して、付いてって。

 せめて今日の飯でもと下心で来たけど、このまま勢いでいけないだろうか。

 どう? どう?

 

「チラッ」

「……あんな、一ついいか」

「はい」

 

 やっぱりダメだよねぇ。

 

「あんたの事、ちゃんと話してくれたらええで」

 

 なっ。

 マジでか!

 

「家出なんかほんまなんか知らんけど、しばらく匿う位ならええで。ただ、警察来たら誤魔化さんから」

「エンジェル……マイエンジェルis車椅子ウーメン……」

「放り出したろか」

「ごめんなさい」

「その調子でクラリスなんたらって子にも謝り。――ともかく、その、私も人恋しいんや……」

 

 最後は恥ずかし気に、小声で。

 ふむ。代償の本当の事を話すっていうのは本当の事を話しても受け入れられるか分からないけど……。

 

「宇宙人の話、期待しとるで」

「ああ、オレのちょっとした昔話してやるよ」

「……ところであんた、名前は? 私ははやてや。八神はやて」

「オレ? オレの名前は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リコと言う名前のアークスは、仲間内でも少しフォトンの適性が高いテクターだった。

 俗にいう殴りテクターであった彼女はその小柄な体格を活かして相手の懐に潜りこみ、ウォンドに溜めたフォトンを爆発させる。

 そして敵を蹴散らして戻ってきては支援テクニックをかけ直してドヤ顔するのだ。

 ある日の事である。アークスシップ内が赤いランプで照らされて、オペレーターの非常事態という声が響き渡った。

 

 理由は言わずとも分かる。

 ロビーの窓から外を見ればそこには惑星ナベリウスと、そこから伸びる巨大な徒花。

 ダークファルスと言う単騎で星々を滅ぼして回る悪の権化を束ねる存在にして、アークスの敵。

 

 ――深遠なる闇が、復活したのである。

 

 普段はおちゃらけていたチームのメンバーも、リコを含めこの時ばかりは真面目であった。

 それもそのはずで、脅威度はダークファルスの比ではない。

 この戦いに負ければ、冗談誇張抜きに宇宙そのものが滅び去る。

 戦えるアークスは全て集められ、12人毎に板のような小型船に文字通り乗って飛び立った。

 

「緊急事態発生!」

 

 もうすでに緊急事態だろう。

 その誰かの呟きは、光の束と共に消滅した。

 リコが振り返った時には遅く、背後の母船は真っ二つに折れ爆発し、割れた天井から市街が覗き、逃げ遅れたであろう市民が何の抵抗もなく宇宙空間へ吸い出されていくのも見えた。

 

 深遠なる闇に容赦はなかった。

 群がるハエ(アークス)は片手間に蹴散らされ、気まぐれにバラまかれる光線は容易にアークスシップの装甲を抜き数百万の命を消していく。

 

「負けるわけには、行かない……!」

 

 リコが次に顔を上げた瞬間、何が起ころうとしているのか瞬時に察して青ざめた。

 深遠なる闇が両腕を広げ、膨大なフォトンを使い全てを破壊するであろう程の威力の攻撃を行おうとしていたのである。

 

「テレパイプ!」

 

 それが、自身に向けられていたならどれほどマシであったか。

 その攻撃の矛先ははるか後方。アークスシップ? いいや違う。そのさらに後ろ。

 

「よりによって、マザーシップを狙うなんてね!」

 

 マザーシップ。その名の通り、オラクル船団の拠点も拠点。そこが落とされれば全ての演算能力は失われて戦いどころではない。

 アークスが戦えなくなる。それは即ち敗北を意味していた。

 

 テレパイプとライドロイドを駆使してマザーシップへ瞬時に戻ったリコは、同じく察しを付けていた他の仲間達と共に絶望の攻撃へ挑んだ。

 例えそれが、無謀な物であっても。

 当たれば死ぬぞと言われても。

 

「フォメルギオン! うぉおおおおおおおおおおお!」

 

 呆気なく、光に飲まれて全ては消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で、気が付けばここに居る訳」

「あんな、宇宙別に滅んでないんやけど」

 

 はやてに話した内容は嘘もいい所だ。

 アークス達は深遠なる闇と戦い敗れ、俺はその余波で別の宇宙に飛ばされてしまった事にした。

 いやだって転生とか神とか言ったってしょうがないじゃん。

 ただ、嘘にしてはすっごいすらすら出てきた。なんでだろ。

 あとはそう、自然と無意識になんか沈んだ気分になった。

 でも回想映像のラストはどうみてもフリーザに挑むバーダック。

 あれ、戦いの衝撃で別の次元に飛ばされるってバーダックと同じじゃん。

 俺はバーダックだった……?

 

「でも、真実だしなぁ」

「じゃあなんかその、テクニック? 見せてや」

「いいぞ。ではデバンド!」

「光ったのは凄いけど、何が変わったん?」

「防御力とHPが上がった」

「……他には?」

「攻撃テクニック使うか?」

「やめて」

 

 俺は使った事ない筈なのに、テクニックも自然に出せた。

 これは何だろう、体が覚えているって感じ?

 ……ともすれば、今使ってるリコの体は本当にその戦いを経験したんだろうなぁ。

 

「んで、信じてくれるのか」

「せやな。半信半疑だけど、あんたが魔法を使えるのも本当やし……」

「デューマンだけどちゃんと肌色だからなぁ。キャストなら分かりやすいんだけど」


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