おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
オラクル。
それは、マザーシップを中心とした数百の宇宙船からなる宇宙船団。
未知の惑星が見つかった場合アークスがそれを調査する。
アークスとは、ダーカーと呼ばれる生命体……ダークファルスの眷属と戦うのが主な仕事だ。
まあ色々職務はあるしざっくり言うと、良い感じの星が見つかったら降り立ってダーカー探して殲滅して、宇宙を掃除して平和にしていこうって感じ。
ちょっと前に【
この辺の情報はごちゃごちゃしててわたしは知らないし、知る気はない。もう関係ないから。
語るとすれば、良くも悪くも人生の転機ではあったのは確かだ。
「まだ数か月前なんだ」
わたしは研究所の出身。公には出せないような所だ。
いわゆる違法とは呼ばれた場所だったけれど、研究所での生活はとても気に入っていた。
言われた通りにしていればみんな優しいから。
向こうにとっては貴重な被験体なんだろうけど、わたしからしてみれば変わらない平穏をくれる人達。
食事と寝る場所と命の保障された、今考えれば自由のない生活だったとはいえ落ち着いた日々であったのは間違いない。
――でも、時々会う赤っぽい髪をしたやけに威圧的な子の事は好きになれなかった。
「私の方が貴様より才能がある」とかどうとか、戦う訳でもないのに会う度によく絡まれて自慢と誇示を延々と聞かされた。
話をするだけならまだいいけど、あのおっきなロッドを振り回すのは危ないしやめて欲しかった。
いつ得意の炎系テクニックで燃やされないか怖かったし。
じゃあ研究所を出た今の生活はどうかと言うと、命の保障はされてないし食事の為のお金も自分で稼がないといけない。平穏ではない生活。
けれど、決して不満ではない。
フォトンの適性が高いおかげで危ない所はあれど食うに困っては無いから。
伸びをして立ち上がり、マイルームを出る。
わたしはリコ。リコ・クローチェ。
クラスはテクターの一般アークスだ。
「お、リコ。ここにいたか」
ショップエリアで武器の強化を終えて、その結果に少し落ち込みながら緊急の任務もないし貯まったメセタでファッションアイテムでも買おうと雑誌を見ていたら声をかけられた。
わたしに声をかけてくる人なんて限られるけど、男の人で知り合いなんていたっけ。
顔を上げると、やけに赤と顔の傷の目立つ人が立っていた。
見覚えはあるけど、誰だっけ。
「だー! 覚えてないか、俺だよ俺、ゼノ」
ゼノって、あー……。
「彼女さんの尻に敷かれてる人」
「おいおい、俺ってそんな目で見られてたのか?」
「うん」
「あいつがちょっとばかしおっちょこちょいで俺が合わせてやってるだけだよ。むしろ俺が保護者な立ち位置だっつうの」
今日はその彼女さんと一緒じゃないんだろうか。
いつも一緒な気がするけど。
「お前の……」
「後ろに!」
うわぁ!?
「へっ、ドッキリ大成功ってね」
「びっくりした……」
「でしょ? それとゼノ、話があるわ」
後ろの草むらから突然出てこないで欲しい……。
それと、尻に敷かれてるじゃんか。わたしは正しい。
「私の名前は覚えてるわよね」
えっと確か……エコーさん、だっけ。
「正解!」
「なんでエコーの事は覚えてるんだよ……」
「やっぱりお世話したから。ね、リコちゃん」
「うん、まぁ、少しだけ」
といっても、アークスなりたての時にクラスの相談したくらいじゃなかったっけ?
まだどのクラスにしようか迷ってた頃の。
「何にしたの? クラス」
「色々迷ったけど、テクターにしました」
「お、いいじゃねぇか。お前らしくて」
「わたしらしい?」
「自分より他人を優先させる優しい所だよ。ったく、あいつみたいだな」
「そうね。あの人とリコちゃん、性格似てるかも」
2人の言うあの人っていうのはたぶん、情報を伏せてはいるけどアークス全体を救った事に変わりない英雄のような人の事だ。
特に【敗者】との戦いでは、混乱する全体の中でもの凄い活躍をしたらしい。
その場にわたしはいなかったからよくわからないけど、噂だとオラクル船団全体……つまり味方のいない状態で命を狙われた上、六芒均衡というトップの実力を持つ面々と衝突して無事な上でそのまま黒幕を打ち負かしたのだとか。
後はダーカーを数千数万と倒したとか、出先でヒューナル体とはいえダークファルスに襲われて単騎撃退するとか、ダークファルスに劣らずな存在のマガツをエクスキューブと呼び始めるとか、聞けば聞くほどおかしい。
たぶんというか、絶対噂に尾ひれがつき過ぎてるんだろうけど。
そんな伝説みたいな人と似てると言われるのは少し照れくさいし、テクターにしたのはただの受け売りだ。
「今誘ってくれているチームのリーダーが、“力なきものの盾となり剣となる。それがアークスだ”って。それで、テクターにしたんです」
「だぁから、そういうとこだっつの」
「いた、いたい、叩かないで……」
わたしの種族であるデューマンは身体が物理的に弱いから、ゼノさんの一撃が重くて痛い。
「ちょっとゼノ、嫌がってるしやめときなさいよ」
「はははは、悪い悪い」
エコーさんが止めてくれなかったらこのまま床を舐めていたんじゃなかろうか。ありがとう。
というか、何か用があって来たんじゃないのかな。何をしに来たんだろう。
「エコーの奴がさ、お前さんの服を見繕ってやりたいとか言っててな」
「そうそう。いつまでも支給されたエーデルゼリンじゃ寂しいでしょ?」
そう言って2人の視線がわたしの手元に――読んでいた雑誌に向いた。
「丁度ファッションカタログ持ってるじゃない!」
「お。ちゃんと付箋も貼ってるのか。へぇー、こう言うのが好きなのか?」
「ちょ、こんなかわいいの似合わないから、興味ないですから!」
「そんな事言ってチェックしてんじゃねぇか」
「わー! わー!」
………………
…………
……
「んあ?」
朝。いつものソファで目覚めたけど、なんか枕が違うな。
「って、シグナム?」
「……」
なんで俺ちゃんを膝枕なんてしてるんだろ。部屋で寝たんじゃないの?
「まあいいや」
つかまだ早朝じゃん。はやてもまだ寝てるぜ。
せっかくだしこのまま堪能しとこう。
後なんか昔の夢を見てた気がするし、二度寝すればまた見られるかな。
おやすみー……。