おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
気軽なそれこそが我のモチベ! 原動力!(突然の媚)
「応えよリコちゃん! 万象解決のその意思に!」
気合いを込めておっけ。インターホンぽちー。
ちなみに先ほどの台詞はものすっごい小声で叫びました(矛盾)
クロノマンションへ向かう足はとても重く、途中何度も倒れそうになった。
前と比べて侵食具合も増してるのが原因して、解決の糸口たる情報を仕入れたくないのだろう。
守護騎士達が闇の書のページを埋めていくのと合わせるかのように侵食されているので、最悪はそっちとこっちの状況がクロスして最悪な状況に……。
確証無しの嫌な想像はやめよう。
それをさせぬために我らリコちゃんズは闘争をしているのだ。
リコちゃんズって言うとなんかいっぱいいそうだけど、いるのはリコっち(ボディ)とリコじ(俺)の二名だけど。
「やあ、来たね」
「おはようクロノ」
家に入ると同時にマグを装備。状態異常回復系のアクションを存分に盛った特別品で、いざ気絶したりしても平気なように備えている。餌やりも万全。
微かに掴んだリコの記憶によれば、アンティやソルアトマイザー等はダーカー因子の浄化に通じるらしい。それならば、マグの回復も効くと踏んだ。
「……顔色が悪いけど、大丈夫かい?」
「寝不足。万が一が怖くて夜も寝られない」
寝落ちと言う名の気絶をしても良いように言い訳をセット。
さてさて、俺の方も時間が惜しいし早速聞かせてくれ。
まずは……そうだな、手始めにどのくらい情報が集まったのか。
「君に言われて改めてフォトンとダークファルスについてを纏めてみた。それと、例の板も今エイミィに取りに行かせてる」
「誰がまな板だって?」
早速話を逸らそうとしてんじゃねぇよ俺!
ソファに座り溜息。よし。
「ダークファルスがどう伝わっているのかをば頼む」
「わかった」
空中モニターが展開。
「見つかったのはプレシアの所有していた資料のみだが、それでもだいぶ数があってまとめるのに苦労したよ。ユーノが」
ユーノくんマジお疲れ様。まとめてこの量か……。
ボディに内蔵されてる翻訳機能だけじゃ追いつかんのぅ。
時間かかるしかいつまんで話せない?
「ユーノが注視していたのは考察や記録じゃなくて原文の一部だった」
一部の資料が抜き出されて、そこは俺にも読める部分だった。
そこに書かれていたのは――
『光ありて、影を成し。対ありて、対無く。不在の在。
千年に一度甦る破壊神、全宇宙の脅威。
そのものの名は、ダークファルス』
これって……!
「翻訳の精度もあまり良くはないが、ユーノはこれが本当ならとんでもないと言っていた。……君の反応を見る限り、間違いはなさそうだね」
この部位を、まさかこの文を抜き出してくるとは……。
大げさかも知れないけど大げさじゃない。
「最悪な事に過去のいつに現れたかが分からないんだ。恐らく君が狙われたというのも、ファンタシースターの宇宙から来たことを千年ぶりに甦ったかと勘違いをされたか」
「警戒に越すこたないさ。小を捨てて大を救うことは間違っちゃいない」
ま、その小がとんでもない事をやらかすのがファンタシースターシリーズなんですが。
っていうかちょっと待て。過去のいつに現れたかわからないって、現れたこと自体は確認できてんの!?
フォトンのないこっちで討伐か封印が出来てるって……!
「いつかも分からない大昔に闇の欠片と呼ばれる物が現れた時、運よくそう言った物を閉じ込めるのに丁度良い器があったそうだ。その器がなんなのかまでは分からなかったけど」
「下手に資料残されると墓暴きされちゃうからね。仕方ない」
「無限書庫に入ったユーノもダークファルスを重く見て闇の書のついでで調べてくれている。それで詳細が分かるかまでは保証できないが」
「いやいい。少なくとも仮面の奴がオレの尻を狙いたがる理由も分かった」
「……女の子なんだしもう少し言葉使いを直したらどうだ?」
あの仮面も、宇宙の脅威とは言え半信半疑だったかもな。
猫を使って普段の振る舞いも見ているだろうし、よりためらったか。
「はぁ……」
その考えは同時に助かりもしたけど。
俺の存在をダークファルスとイコールで結び付けた事は間違ってはいなかったんだから。
けれど俺とは別に奴がいるなら話は別。
話を聞いて場合によっては介錯を受け入れる気持ちになってたけれど、それをするにはまず欠片の方をいちアークスとして片付けたい。
片付けたいが……。
「浮かばれないか?」
「アークスの勘だが、その欠片はすぐ近くにいる、封印も危なそう。程度にもよるが欠片程度ならフィールドを整えてくれさえすればオレ単騎でも討伐できたと思うんだがなぁ」
「できた、とは?」
「病気だよ」
クロノが驚いた顔になる。
病気とは嘘だが似たようなもんだ。
同時に装備していたマグが数度輝き、一瞬飛んだ俺の意識を持ち直させてくれた。
「この通りオレはもう長くない。欠片の討伐なんて事をすれば確実に死ぬ」
「病気の事を、なのはや他の人には?」
「誰にも。あー、いざとなったらって事で信用できる奴にビデオメッセージを残してるけど」
俺の生存ルートと闇の書解決ルートを同時進行でクリアしたかったけど、嫌な感じがしてきた。
勘だが。本当に勘だが、言った通り封印された欠片はすぐ近くにいる。ダークファルスに近い
迎え撃って順調に戦っても最期のあがきとして融合しにくるか、あるいは内側から乗っ取られた俺が自ら進んで迎えに行くか。どちらにせよ邂逅した時点で終わりだ。
無視して俺とはやてがハッピーになった所で、近くにいるであろう欠片の封印が解ければ強制バッドエンド。おしまい。
全部台無しになる。
――俺の生存ルートは最悪もう切り捨てて、闇の書解決と欠片討伐にまずは絞ろうか。
……いい夢だったぜ。
幸せな家族、楽しい家庭。リコの記憶には足りていなかったもの。リコが渇望していたもの。
最期まで戦い続きで家族を得た事のなかったリコにとって、この半年はあまりにも眩しいものだっただろう。
自らに向けた問いは迷うことなく肯定で返された。
気が遠のいたのを抓って防ぎ留める。
「欠片の所在がわかったらオレが回収に行く。で、取り込んだらお前達の持つアフリカンシェフだっけ、あれでオレごと消し飛ばして欲しい。どうせ短い命だ」
せめて自分を犠牲にしてでもやっとできた家族だけは守りたい。
心の奥底から、俺だけでなくリコまでもが願う。
ポケットに入れていた取り込まれるなと何度も殴り書きされたメモを握りつぶす。もう不要な望みだ。
「どうして犠牲になる必要がある! 気軽に言ってくれるな! 例え命が短くたって最期の時くらい……」
「ダークファルスは実体を得るためにまず依り代を探す。オレが依り代として抑え込めば、確実に消し去れる。誰かがやらにゃならんことだ、適任だろ」
かつてナギサがやっていたような事だ。釣って自分ごと死ぬ。
失敗した時に備えてシグナムにはメッセージを残し続ける所存ではあるけど、はやてやヴィータには元の宇宙に帰るとでも言っておこう。
「まだ封印されているし、対処法だって……」
「専門家の意見は聞くもんだぜ?」
クロノは何も言えなくなり、顔を伏せ拳を震わせていた。
「……ちょっと休むわ」
「リコ!」
もう限界だ、寝るっていうか気絶。
起きるまでに昨日言ってた提督さんか板の用意を…………。