おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
「いいかい。相手は提督でとても目上の人。僕の恩人でもあるし絶対にふざけず、そして失礼のないようにしてもらいたい」
「オレの今までの振る舞いは決して真面目ができない訳じゃなくて顔を会わせ判断してからだというのを弁解しておく。その心配は不要だぜ」
「エイミィ、空気変えるために少し間をおこうか」
「そうね」
「わっちの話聞いてた?」
その注意の仕方なんかデジャヴ。
前は何してそれ言われたんだっけ? 料理した時?
いやでも俺って料理したことあったっけ。無味になるのはわかるけどそれが発覚したイベントが思い出せない。
あ、そういえば何て呼べばいいんだろ。
グレアム提督とはクロノは言ってるけど、今のところ部外者たる俺が堅苦しく提督呼びしちゃっていいんだろうか。
「普通にグレアムさんと呼ぶべきか、あるいはこのかわいい見た目を武器にグレアムおじちゃんと言って陥落させるか」
「……一番ボロが出にくいさん付けでいいんじゃないか?」
ボロって何よ。
「とりあえず、オレ口調はやめてわたしといこうか。んで、なるたけ丁寧語。要するに翠屋でバイトしてる感覚で」
「リコちゃんってアルバイトしてるの?」
「こっちで世話になってる家でヒモニートなのは心がしんどかったゆえ」
ちょっと待ってね、スイッチ入れるから。
……よし。
「クロノくん、色々調べてくれてありがとね。それと、グレアムさんとお話しする機会をくれたのもありがと」
なんで目を逸らすねん。
「君の気紛れが解けない内に繋ぐよ……」
失礼な。
ダークファルスの欠片とエミリアについてを知れればおっけーなので、この二つだけをしっかり意識していれば平気。さぁカモンベイベー。
「繋ぐぞ」と言い、場に緊張感が出る。提督がどれくらい偉いのかは正直あんましわかんないけど、どれくらいだろ。
『こんにちは、繋がったかい?』
管理局はテレワークがデフォらしい。おじいちゃんの顔が空中に映し出された。
「グレアム提督、お久しぶりです」
『クロノ…………どうして両頬が真っ赤なんだい?』
「その、色々ありまして」
エイミィ怒りのビンタ撃によってクロノのほっぺは真っ赤なり。
原因は俺にあるような気がしないでもないので我も話に入るか。
「初めましてグレアムさん。わたしはオラクル……そちらで言うとファンタシースターの世界から来ました、リコ・クローチェです」
『驚いた。聞いていたけれど、まだこんなにも幼かったとは……』
幼女やでと言いたかったけど、流石に我慢する。
『私はギル・グレアム。肩書は色々あるけれど、気軽に接してくれて構わないよ』
「忙しい所を今日はありがとうございます」
『いやいや、こちらこそファンタシースター世界の出身である君と話ができて嬉しいよ』
やっべぇ。
表向きはただの挨拶だけど、この人すっげぇ俺の裏っていうか本質を見抜こうとしてくる。
腹の探り合いって言うの? ともかく、表情の作り方とかからそんな感じがビンビン。
『クロノから聞いたのだけれども、何か聞きたいことがあるのだとか』
自分から話さないかー。
まあいいや、この人がなんか企んでるにしろ、こっちが知りたい情報は決まってる。
「エミリアという名前についてです」
『ほう、エミリア。それはどうしてまた』
「わたしがこちらの世界へ来たのはちょっとした事故なのです。それで、色々と調べていたらエミリアという名前がこちらに伝わっていると分かり詳細を聞きたくて」
『……そうか。わかった』
横を向いて何やら指示を出して、紙の資料を手に取って。
向こうでもアナログな紙を使う事ってあるのね。
『私がファンタシースターの宇宙を目指すことを諦めたのは、そのエミリアからのメッセージなんだ』
紙を裏返して俺に見せてくれる。
そこには何パターンかの文字があり、その中には俺にも読めるオラクル文字もあった。
他の文字も、ギリギリ読めなくはないけどちょっと難しい。
書かれている内容はどれも同じ。
『悪神がどこにも行かないように宇宙を閉ざし繋がりを断つ。助力を得て。――この訳で合っているかな?』
「そう、ですね」
ちゃんと訳して要約するとエミリアはダークファルスが他の宇宙……と言うよりも、ここのような異世界へ行かないように、ファンタシースターシリーズの宇宙内だけに閉じ込めるようにしたらしい。
助力というのが誰なのかは分からないけど、いくら天才キャラなエミリアといえどひとりで全部は無理だったんだろう。シャオかシオンか、その他色々。一般アークスなリコが知らない所で色々やってたんだな。
後出し設定なんて卑怯だぜ、全く。
『このメッセージと共に、もし悪神が現れてしまった場合の対処法についても』
続いて見せてくれたのは設計図や計算式。
翻訳云々じゃなくて、学的に理解は難しかったけど封印するものなんだろうなーってのは分かった。
登場初期の頃の怠けたイメージが抜けきれずあったけど、エミリアの奴こんなに……。
超危険な大型兵器に封印装置。それを扱う権力。
仮面野郎の上司はグレアムさんレベルか。あるいはその本人そのものか。
気になっていたエミリアの話も聞けたし、次は欠片についてを聞こう。
「こちらの世界に闇の欠片……つまりダークファルスが存在していると聞きましたが、それについてはどうでしょうか?」
『そのことか。一つ聞きたいのだけど、もし封印が解けた時は君での対処は可能かい?』
「はっきり言うと不可能ですね。もし被害を抑えるというのなら、わたしがダークファルスと同化して一つとなったその瞬間に何か丁度良い……それこそアメリカンシェフみたいなのを撃ち込んで……」
……。
…………。
「リコ」
あ、しまった。意識が飛んでた。
「ありがとうクロノ。それとグレアムさん、失礼しました」
『いや……大丈夫かい?』
「ええ。ちょっとした病気みたいなものでして」
どこまで話したっけ、伝えたいことは言えたかな。
『しかし、アルカンシェルか……』
「考えられる限り、大を救うならこれが一番かと。問題は、その欠片の所在が分からない事なんですけどね」
『封印ではダメなのか。閉じ込めて、その内にダークファルスを祓う方法とかの可能性は』
「それができるなら、たぶん欠片も今頃ないですし」
……あれ、なんでグレアムさん躊躇っとるん?
じゃあシェフ砲とか封印装置とか用意してたくせして、頼まれればヒヨルん?
「グレアムさん、いざという時はお願いします」
映像越しではあるけど目を見て。
俺がかわいいというのはさておき、お願いする姿勢にはグレアムさんは更に狼狽えていた。
横でクロノすごい顔してる。
『すまない、君の意見は正しいのだろうけど、そう頼まれると……』
「ですよね。気にしないでください」
エイミィも暗い顔をしている。
ま、そうだよね。自分たちよりずっと幼い女の子が、生贄になるから殺せと頼み込まれるのは。
でもまあいざという時は平気じゃない?
そん時はたぶん、人の姿じゃないだろうし気が付かず撃つさ。
筆者からお知らせです。
楽しみにしてくれているという方々がいる事は飛び上がるほど嬉しく(上昇負荷)、モチベーションとなっておりましたがリアル事情によりストックが尽きました。今話もギリギリです。
本作をお褒め頂いている所を本当に申し訳ありませんが、一週間ほど隔日での投稿とさせて頂きます。
これからもよろしくお願いいたします。