おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
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……。
…………。
………………。
「お?」
気が付けば夕暮れの臨海公園でベンチに座っていた。
なんでこんな所にいるんだ?
確か、クロノん家から帰ってて……。
途中でふらっと来て記憶が途絶えてるな。
「冬の夕暮れ、出迎えてくれるのは乾風だけなのか。なんてね」
うう、さむ。さっさと帰ろう。
上着のポケットに手を突っ込むと、ぐちゃぐちゃになったメモ……というよりお手製名刺が出てきた。
そういえばそうだ、俺の生存は諦めるって話だった。
にしても、これで良いのかねぇ。
気が付けば思考を誘導されてる信用できない我が身の出した答え。これで良いんだろうか。
この案がダークファルスさんがささやいた物なら、失敗して俺ちゃん最大往生&最大復活となるんじゃ?
なんか引っかかる。この作戦で本当に良かったんだろうか。
リコの記憶を引っ張り出して浄化する作戦はもう間に合わなさそうでダメだし、これしかないとは思ってるけど……。
「っとと、それこそよ」
いや、大丈夫だ。自分を信じろ。俺の信じる俺を信じろ。
今のは最善案を破棄させようと妨害しに来たアレだ。冷静に策を組み立てれば俺が欠片を取り込んで吹っ飛ぶのが良い。
変な設定をリコに追加して、ファンタシースターの能力をねだって、その結果が平和な世界へダークファルスの持ち込みなら俺が責任を負うべきだ。
「ん?」
ポケットの中にもう一つごみ……じゃないや、メモが入ってた。
「二枚も入れてたっけ」
震えた走り書きだが、オラクル文字だ。
「“誰でもいい、解放して。もう夜明けが見えない”……か」
……俺の中にいるリコがまた表に出てきてたのか。
それに、あいつはもう、完全に諦めちまってる。
フォトンは想いを力にする。諦めたら試合終了だとはいうけれど、正しくその通りだ。
諦めて嘆いて止まったら、最後に救える一つすら失ってしまう。
リコが戦う理由としていた「力なき者の剣となり盾となる」を今こそ果たそう。
「ただいまー」
「おかえりー」
すっかり日も落ちて、真っ暗な中で明るい我が家に戻ればほっとする。
この日常もいつまで続けられていつまでいられるかわからないけど、今は謳歌させてもらおう。
「リコちゃん遅いから心配してたで。また拐われとらんかなーって」
「その心配は無用だぜ。むしろ相手の心配した方がいい」
「意外とゴリラやもんな」
「バナナ寄越せおら」
「買ってあるで」
oh……バナァナ……。
食事前なので食べないけど。
「そういえばリコちゃんってなんか好きな食べ物あるん?」
好きな食べ物ねぇ。
パッと思い付いたのはウナギだけど、それが好きなのは一匹倒すと25万稼げるからだ。
ウォパル探索とバルロドス討伐を同時にやろうとオーダーを貯めて忘れてしまうのはよくやった。
「たっかいウナギやなそれ」
「物価が壊れてると思ったけど、ケーキが1000メセタ程度で買えるの見るとアークスが高給取りなのかなぁって」
意外と死亡率高いぞアークス。モブに厳しい。
忘れるな黒人兄貴隠蔽事件。
「お、リコ帰ってきたのか」
「ヴィータいたのか。風呂上がり?」
「うん。ーーそうだ、ちょっと待ってろっ」
俺を見るなりどっか行った。
そういやはやての風呂は?
「まだや。リコちゃんおらんかったやん」
「最近オレとお風呂入るの日課になってるもんな」
「手間かけて悪いなぁ」
「今更よ」
そう今更。
そんなお風呂の手間が云々より、俺としてはヴィータの口が悪くなってる気がするのが気になる。
「ヴィータの? 前からちょっと口調がリコちゃん寄りになっとる気はしとったけど」
それは俺が悪いと言いたいのか?
いやさ、ヴィータって前まで知らん奴への二人称が「お前」とかだったじゃん。なのにだんだん「貴様」呼びが定着してる気がして。
「ああー。この前私が男の子の集団に絡まれたとき、確かに貴様って言うとった」
「待て。なんだそいつら。我がラヴィス=カノンの頑固な汚れにしてやる」
「リコちゃんもヴィータみたいなこと言うとるで」
お互いに影響を受け合う、まるでライバルみたいじゃないか!
「頼むからその方向で高め合うのはやめてや」
ヴィータが帰ってきた。
なんか手に紙を持ってる。
「リコだ!」
画用紙に描かれていたのは、上手いとも言い切れないが確かに俺の顔がでかでかと描かれた絵だった。
「さっき一緒に描いててな、びっくりさせよて。ーーリコちゃん、にやけとるで」
「ヴィータ!」
「わあ!」
思わずハグ。
ありがとうヴィータ。その想い、確かに受け取った!
「これこそ、この暖かい家こそ、オレの守るべき物!」
決して壊させんぞ、決して!
「な、なに言ってるんだ……?」
「さあ。いつもの事やろ」
ひどい言われようだ。
だがしかし、これはとても励みになる。
折角だからリビングの隅に着々と勢力を広げつつあるリコちゃんコーナーに飾ろう。
「カオスなラインナップの中に唯一の良心が生まれた」
「あ、混沌としてるのは自覚しとるんや」
空いてるスペースに適当なテーブルとか置いてるだけだし、その横にいるナベリウスパパガイも混沌に一役買ってる。
俺の絵が沢山のフォトンドロップに囲まれて祭壇が完成した。
「オレは、イヌコロ以下じゃないんだ……!」
「いやマジで何言ってんだ?」
「発作やろ」
それやぞ。その扱いやぞ。
でもそれも家族愛の形。リコチャンシッテル。
絵の横に貰ったマターボード(仮)も添えておく。
うーん、なんか遺影みたい。縁起悪いな。
「でもこれでやる気でた」
かのヴァンパイアハンターとして有名なラルフ・C・ベルモンドは宿敵ドラキュラを討伐しに出る直前、生きて帰れないことを覚悟し墓石へ自分の名前を自分で掘ったと言う。
なお嫁を見つけて生還した模様。
「はやてにヴィータ、一応言っときたいんだがな」
「うん」「なんや」
あー、いいや。
ちょっと言いにくいし遠からずバレる嘘だけど言おう。
「近々オレの故郷、オラクルに一旦帰るかも」
そんな目で見るなよ。
「事故とはいえ手続きも無しに来ちゃってたから色々書類もあるし、すぐには戻ってこれんけど」
「……一旦、なんよな?」
「ちゃんと帰ってくるんだよな?」
ふたりとも勘が鋭いなぁもう。
俺が今まで嘘ついたことがあったか?
「……いや、そう言われると自信ないわ」
「だな。普段から何言ってるのかわかんねぇし」
おいまてこら。そこは頷く所だろうが。
「ちゃんと行動で示さんとリコちゃん信用ないからなぁ」
「貰ったチョコも食わねぇ義理の無さもな」
「そそ、無駄なところが真面目なんはわかるけど基本はイカれとるからな」
誰がイカレポンチじゃ。
「ちゅうか、リコちゃんのいた世界って滅びたんと違うか?」
え?
……あぁー! 忘れてた!
や、やべぇ。ここに来て最近の物忘れが来やがった。
ええっと、その
「オレのいたオラクル、実は無事だった」
そうだよ。
てっきり俺は防ぎきれずに消し飛んだかと思ったけど、超天元突破ギガフォメルギオンブレイクが思ったより強く出たみたいで競り勝ってたみたい。
俺はほら、その衝撃で結果が見れてなかったからさ、うん!
「なんか嘘くさくね?」
「……まぁ、しばらく家を空ける程度ならどうせリコちゃんやし死ぬわけでも無しに心配いらんけど」
もっと心配してくれー! はやてー!