おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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突然の4000文字。


5 拉致られて戦って

 ちょっと時間は飛んで6月。

 ちわーす、リコですがー。予約してたブツは用意できてるか。

 

「……? ああ、予約のケーキか。なのはー!」

 

 ここは翠屋と呼ばれる前世では縁の無かったJKの溜まり場……の親戚に当たると思わしきケーキ屋的な所。

 はやてから小遣いを貰っていたので、愚鈍脆弱無為な俺はカレンダーから察しをつけて誕生日祝いにケーキを買ったのだ。

 居候ヒモニートの癖に金を貰うなって? そしてその金をさも自分で稼いだの如く振る舞うなって?

 

 気持ちが大事なんだ気持ちが。アイテムパックにあるナウラ三姉妹の期間無限ケーキ出しても良いけどそれだと普段から出せるやろってなるでしょ。

 

 で、だ。

 厨房の方では栗色の髪した少女が一生懸命に働いてた。

 

「オレと同い年なのに、働いている……だと……?」

「真面目に手伝ってくれる自慢の娘だよ」

「親バカめ、見せ付けたな!」

「はっはっはっ!」

 

 そうこうしているとケーキが詰まった箱が届いた。

 で、貴様がこのおっさんの娘か。覚えたぞ。

 

「いつかこの借りかえさせてもらう!」

「え、え、ええぇえええ!」

「こらこら。なのはも大声出さない」

 

 保冷剤? 多めに見積もって30分くらいで。

 

「君は、なにか武術でも習っているのかい?」

「あん? どうしてまた」

「なんとなく動きでね」

「まぁ間違いはないな。言うてももう引退したけど」

「まだ若いのにもったいない」

 

 だってこんな平和な世界だ。戦う必要もない。

 

「ん、若い? 幼い儚いかわいい美少女っしょ」

「幼いにしては動きが洗練され過ぎている」

「あれま、手強いこと」

「それとこれはお節介だけどね」

「まだなにか?」

「折角かわいいのだし、口調も改めたら武器になるよ」

 

 かわいい……。

 かわいい!? お、おおおおお、おっさんにかわいい言われた!

 え、な、なにこの気持ち!

 

「はっはっ! 一本取ったな」

「か、からかったな!」

「かわいいのは本当だよ。さて、気を付けて帰るんだよ」

「また言った! くそ、美味しかったら2度と来てやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があったんだけどさ、あれぜってーオレに惚れてるよな」

「逆よ逆! ていうか、あんたよくこんな状況で落ち着いてるわね……」

 

 ちなみにさっきの話は最後の方すごい盛った。別におっさんに胸キュンした事実はない。

 現在地。廃墟。

 何があったというと、翠屋のケーキをアイテムパックにぶちこんで帰ろうとしたら拉致現場っぽいのに出くわしたのさ。 

 そしたら想像を絶する俺の美少女具合が胸キュンだったのか、ついでとばかりに収穫されて車に詰め込まれて。んで今ここ。

 

「いやぁいつかはパクられるかと思ったけど、まさかいやー、ついにかー」

「あんたは目撃者だから! 目的はあたしとすずかよ。家がその、お金持ちだから」

「んだブルジョア自慢かおら」

「てめぇらうるせぇぞ!」

 

 スーツなおっさんが3人現れた。

 もう夏も近いってのにクールビズもさせてくれないとか嫌な上司についたな。御愁傷様。

 

「兄貴、このガキは?」

「見られたからついでだ。そっちの金髪はまだとっとけ」

「と言いますと」

「ふんっ、景気づけだ。好きにしろ」

 

 くそ、俺の言いたいピッコロさんの台詞その2が取られた!

 

「へへ、まだちっさいが悪くねぇ顔だ」

「ほーら、おじさんたちと遊びましょうねぇー」

「かっ、気持ちわりぃ。やだおめぇ」

「や、やめなさいよ!」

 

 おい邪魔すんな。今のはベジータに抵触するぞ。

 ドラゴンボールごっこしてると汚っさんの手が延びてきたので、武器なしの動作であるスウェーで避ける避ける。

 一応テク職なんで武器なしでもテクニック使えるけど、まだ巻き添えとかの判定実験してないのよ。

 

「なにすんだこのガキ!」

 

 ああ、俺と一緒に捕まってた少女がタックルした!

 

「早く逃げなさい!」

「その勇気に希望を見た!」

 

 そろそろ本気ださんと事故が怖い。

 あとついでに、この少女の心の強さに感服した。

 ならばそれに応えよう。

 

「ふん!」

「な、縄をちぎった!?」

 

 ふはは怖かろう。この程度の縄でこの俺を止めることはできぬ!

 手にするのは愛用のウォンド。その名はラヴィス=カノン。

 ……はオーバーキルなのでしまい、ただの普通の無名のコモン武器、名無しのウォンド。逆にレアな☆1。

 

「ちっ、てめぇらこの銃が」

「ノンチャヘヴィーハンマー!」

「げうぉあ!」

 

 ふん、誤字ったけどなんかそれっぽいから直さずそのままにしたみたいな悲鳴出しやがって。なんて打とうとしたんだこれ。

 突如兄貴分がぶっ飛んだことにビビってるのか、残りの舎弟二人は混乱したまま再び掴みかかってきた。

 武器を変えてタリス。顔面にぺちぺち投げつけ怯ませる。

 締めは素手でー。

 

「支援職の拳!」

 

 ゆーうぃん。

 デデデデストローイナインボー。

 命は投げ捨てるものd(略)

 

「無事か、勇気ある少女よ」

「最初からそうしなさいよ!」

「いやぁすまん」

 

 さて、そろそろ本気だしますか。

 実はさっきもこの少女がちらっといった通り、もう一人拉致られているのだ。

 

「気を探るなんて芸当はできんのでしらみ潰しに行くぞ。付いてくるか?」

「……ええ、あんたに付いていった方が安全そうだし」

「そか」

 

 普通、俺のような人間超えてる化け物みたらドン引くんじゃなかろうか。

 

「もしかして引いてる?」

「何よ突然。当たり前じゃない」

「そっかー」

「でも、助けてくれたし。それにあんたは悪い人じゃないわ」

「へ、照れるぜ」

「同い年なのかは気になるけど」

「どこからどうみてもかわいらしいロリだろうが」

「その口調はなんなのよ……」

 

 ギャップ萌えだよ。

 廊下とかにいるドスゾンビとかチャカゾンビを蹴散らして、そうこうしてる内にフロアボスを見つけましたが。

 なにこれ。圧迫面接?

 

「おいボスおっさん! オレに仕事をくれ! できれば福利厚生がしっかりしてて土日祝完全休日で有給と年二回のボーナスマシマシで!」

「ずいぶん欲張りね」

 

 縛られてた紫少女の縄を引きちぎる。

 

「ははは! 愉快な嬢ちゃんだ。化け物が化け物を助けに来るとはな」

「化け物? 違う、オレは悪魔だ」

「何?」

 

 あ、ごめん。ネタ振りかと思って。

 でもマジに捉えたおっさんが悪いかんな。俺は悪くねぇ!

 余裕な俺と違って、隣の助けた紫少女はその言葉に震えた。

 

「知らなかったのか? そいつの一族は人間社会に紛れ込んだ化け物なんだよ!」

 

 ああ、おい紫頭。ふらっふらだぞ。

 

「アリサちゃん、違う、違うの」

「すずか……?」

 

 おいどうすんだこの状況。

 俺置いてイベント進んでるぞ。

 

「大丈夫よすずか、そこにいる人の方がよっぽど頭ごとおかしいから」

「えっ」

「おいオレを巻き込むな。くそ、これもすべておっさんの仕業なんだ」

 

 不敵な笑みを浮かべるおっさん。

 今日はおっさんだらけでいい加減飽きたぞ。

 

「もっと絶望すればいいのに、残念な奴等だ」

 

 そう言っておっさんが取り出すのは拳銃。

 その銃口は俺の後ろ、パツキン少女に

 

 

 ぱん。

 

 

 

「あ、あぁ……」

「なんて声、出してやがる……。この位なんてこたぁねぇ……」

 

 躊躇なく撃ちやがったが、当然、かばうに決まってんだろ。

 力なき者の剣となり盾となる。それが、我々アークスの定めなのだ。

 咄嗟だけど間に合って良かった。あと、耐えられて良かった。

 

 続いて何度も発砲音が重なり、その度に俺の背中や頭に衝撃が走る。

 

 痛いが、耐えられない程じゃない。死ななければ、それで充分だ。

 アークスは頑丈。ユニットだって良いの着けてるし。タカキも頑張ってるし。

 

「うぉぁああああ!」

 

 リロードだろうか。

 弾が途切れて何かをスライドさせる音がした瞬間、振り向いてガンスラッシュで射撃!

 武器を持ってないはずの俺が撃ったことに驚いたおっさんは肩を負傷してうずくまった。

 

「結構当たんじゃねぇか……」

 

 あと今更だけど、撃たれて最初に言っちゃった台詞ってこのタイミングだった。

 まだ間に合うかな。

 

「なんて声、出してやがる……。この位なんてこたぁねぇ……!」

「ふざけてる場合じゃないわよ! 血が、血が!」

 

 うん、ごめん。普通にこれ心配するよね。

 

「いやマジでなんともないから」

「止血、止めないと、血が!」

「大丈夫だって。モノメイト飲んどくから」

 

 あー、癒えていく。

 傷は治った。傷は。

 

 やっべ、血が足りねぇ。ふざけすぎた。

 貧血気味でふらふらする。くそ。

 ゲームの性能を現実に擦り合わせるとこんなことになるのか。

 

「あんた、何者?」

「オレは通りすがりのアークスさ。別に覚えなくていい」

 

 外が騒がしい。

 うずくまってるおっさんに止めを刺すため蹴り入れようと近づいたら飛び上がってネックハンギングされた。メタルマンかお前。

 

「油断したな、化け物が……!」

「……っ! いいや、油断したのはお前だ」

 

 流石に俺もふざけすぎて余力が無かったその時、おっさんが一閃の下斬り伏せられた。

 いや斬ってはないんだけど。木刀だし。

 

「助かったぜ、翠屋のおとん」

「ふぅ。無事でよかった」

 

 げげごぼ、うぇ。

 ああ、もう。最悪だ。

 今度から戦闘になったら真面目にやろう。あとなるべく戦いは避けるようにしよう。

 肉体の方は戦い慣れてるけど脳ミソがダメダメだ。倒したと思って油断するとかないわ。

 

「この部屋に来るまでにも何人か倒されてたけど、君が?」

「いんや。ここなパツキンが」

「いやこの人よ。えっと、アークスさんだったかしら」

「リコだ。もう会うこともないだろう」

 

 さて、俺は去るか。ケーキの保冷剤もそんな入れてもらってないし。

 あとお巡りさんに事情聴取されるの嫌だし。

 窓から飛び出してー。

 

「じゃーなー!」

 

 オタッシャデー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せめて、礼の一言くらい言わせなさいよ……」

「大丈夫さ」

「え?」

「うちのケーキはおいしいからね。また買いに来るよ」


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