おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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しばらく日刊に戻ります


2-31 演算の必要もない!

 足の治ったはやてと横に並んで歩き、同じ制服を着て、学校へ通う。

 なのはやフェイトに、すずかにアリサと仲良く過ごし家へ帰れば家族のいる光景。

 呆れるほどに平和で、欠伸の出るほど長閑。

 13つの光の灯ったマターボードにもはや用もなく、剣を置き、アークスではなくただの一人として生きる世界。

 

 これは、幻想だ。

 この未来には、もうおれはいない。

 

 ――分かるだろう? おれは手遅れなんだ。

 

 

 振り返り、背後から迫っていた気配にメギドを放って迎撃した。

 姿は見えない。ただ、おぞましいものが迫っておれを支配しようとしている。

 

 この通りだ。もう時間もない。だから、終わらせて欲しかったのに。

 

 狂ったように周囲を飛び交うイル・メギドと雨の様に降らせたラ・メギドが、気配を散らしていく。

 手元に愛剣がなければロクに戦えもしないけど、関係はないか。

 こんな抵抗に意味はないから。どうせ早かれ遅かれの時間稼ぎでしかないし。

 

 ……時間を稼いだところで、おれはどうしようっていうんだろうな。

 どうせ夜明けは見えないのだし。

 

 何してるんだろうなぁ。

 無理だと分かっていても、出来る内は抵抗を続けるのはアークスの皆の影響かなぁ。

 

 

 でも、無理だよ。

 もう一度メギドを放って、ため息。

 

 伝えられないのが歯がゆい。

 オレには早く終わらせて欲しい。

 

 

 何も知らない内に。

 

 

 絶望を知る前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、はやてって身内は基本呼び捨てだよな」

「せやな。石田さんはさん付けやし、すずかちゃんもちゃんや」

「そこでクエスチョン。オレは?」

「リコちゃん」

「なんで?」

 

 最近気が付いたんだけど、はやての敬称基準でいうと俺は呼び捨てになるんじゃなかろうか。

 夕暮れに差し掛かり家へ戻ると一人ではやてが勉強していたので、そのまま絡んでみた。

 

「んー、なんでやろな。最初に話した時にちゃん付けしたままやったかなぁ」

「だろ?」

 

 特に気にする所ではないけど、一度気になるとなんか考えちゃうじゃん。

 

「リコやと短いのもあるかも。ほら、二文字やし」

「そういうのもあるか」

「一回呼び捨てでやってみよか。リコち……リコ、ここの問題分かる?」

 

 コロンビア。

 

「なんで計算問題でそれが出てくるねん」

「演算の必要もない」

「いや少しは考えてや」

 

 まあおふざけはさておき、小学生程度の計算は楽勝よ。

 えーっとね、ここはこうで……。

 

「さん!」

「……リコ、今度から一緒に勉強しよか」

 

 どこだ、どこに間違いがあった……。

 

「全知はオレだ! オレの導き出した解に、間違いはない!」

「いや間違っとるんやて」

 

 答え見せてみ?

 ほら、限りなく答えに近い数字だから間違ってはないじゃん。

 

「計算問題で限りなく近いはつまり間違っとるんやで」

「未知の事象だと?」

「考えたら分かるやろ」

 

 俺に全知ごっこは無理だったようだ。

 ルーサーも演算演算言ってて全然未知だらけだったしリスペクトの形。

 シオンさんも未来はどうなるか分からないから楽しいって言ってた。

 

「リコちゃ、リコは……言いにくいなぁ。やっぱりリコちゃんがしっくりくるわ」

「えー。じゃあオレもはやての事はやてちゃんって呼ぶ」

「私以上にリコちゃんって敬称の付け方変よな。シグナムにさんを付けたり付けなかったり」

「基本歳上とかにはさん付けだぞ。後は言いやすさだったり」

 

 ほとんど気分だけどね。

 実はそんなに基準はあんまりない。

 

「リコちゃんって実質5歳やん。全員年上やろ」

「だーかーら。試験管でそれより過ごしてるっての。こっちきてからの日数も入れればもうちょい行ってる」

「知っとる? カンガルーって袋から出た時が誕生日なんやで」

「オレがカンガルーだと言いたいのか」

 

 もし誕生日を定めるとすればキャラクリを終えてプレイ開始した時ではなかろうか?

 

「分かった。アークス的な誕生日は2013年の10月だから今のオレは……」

「今は2005年の12月やから、-7歳やな。てか、そっちでも西暦なん?」

「こことは違えど地球自体はあったからね」

 

 年齢マイナスとか俺は消滅するんじゃなかろうか。

 

「リコちゃんが呼び捨てにできる人この世界におらんで」

「待て待て、それなら賞味期限切れと言われるクラリスクレイスのチョコも食えるぞ。これ2015年産だ」

「何年放置?」

 

 えっと、こっちに来て半年追加だから……。

 

「……火山で貰って溶けかけたものを、大体5年近く?」

「なんてものを人に食べさせようとしとったんや……」

「チョコをお食べ」

「あんたが食べるんやで」

 

 これ期間限定アイテムだから時期を逃すと永遠に消費できないんだよね。

 

「なんでずっと持っとるん?」

「いやぁ、二度と入手できないって思うと記念で置いときたいじゃん」

「ゴミ屋敷作る人みたいやな」

「倉庫内がゴミだらけなのは否定できない」

 

 無属性☆10武器やアイテムとして売ってた頃のスタングレネード、今やもはや知る人も少ない観測素子。

 追加倉庫の中は二度と取り出さないからと記念品(ゴミ)で覆い尽くされている。

 そして今はアイテムパックと直結してるからいつでもゴミが出せる。

 

「ゴミ倉庫の中にコスモアトマイザー混じってるの笑う」

 

 募金できるなら折角だからとそれなりに買ったけど、サブパレットを潰したくないからなのと課金アイテムだから勿体なくて結局使わなかったコスモアトマイザーは倉庫の肥やしになりました。

 つかこれって募金でもなければ誰も買わないんじゃなかろうか。

 アークスのリコ的には見た事ない高性能アイテムが倉庫に爆撃されてびっくりした事だろう。

 

「はやてにも上げよう。これがコスモアトマイザーだ」

「なんこれ」

「戦闘不能とHP全回復と状態異常を全部同時に回復できるお高いアイテム。なぜ他人の為に無意味にマネーを散らさねばならぬか一切不明なお高いアイテム」

 

 弱者に使う金などない……!

 

「命かけて戦っとるんやろ? その為の高給取りやないん?」

 

 そう言われるとリアルマネーって言えないし何とも答えられない。

 でもほら、テクターである俺がしっかり支援してればよっぽどなアレじゃない限り大丈夫だから。

 

「そういえばリコちゃんが強いのはちょくちょく聞いとるけど、実際どんなやったん?」

 

 えーっと、これはレベルカンストのゲームリコじゃなくてリアルリコの方か。

 研究所を出てアークスになった直後は運動不足でよく木の根っこに躓いてたけど、しばらくしてからは指名で依頼が出されたりしてたね。

 記憶を見る限り、一応シャオとも面識はあったっぽい。

 最近はプレイヤー俺とアークスリコの記憶が混同してたけど、こうして思い出せばまだまだ掘り出せるな。

 

「指名って、リコちゃんに? 真面目に働いとったんやなぁ」

「ちょっと強い一般アークスくらいなつもりだったんだけどな」

 

 よく考えればちょっと強い程度でシャオと知り合えないよな……。

 一応、メインキャラと絡んでたからコネがないとは言えないけど。

 

「でも今は戦いだけじゃダメやで。ちゃんと勉強せな」

「……だな」

 

 あ、確率の問題は得意だぞ。

 95%は落ちる。

 

「どこが得意やねん」

 

 許さねぇ、許さねぇぞドゥドゥ!


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