おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
12月も半ばを過ぎて、街はとっくにクリスマスムードだ。
この家でも例外ではなく……と言うよりも、今まで一人で過ごしそういったお祭り事とは無縁だったはやてを楽しませようと久しぶりに守護騎士達も全員集まって飾りつけをしている。
はやては現在図書館で勉強をしているので不在。帰ってきたら家が飾り付けられてましたーって算段だ。
企画者は俺。もっと俺を褒めろ。
たまにはリフレッシュしないとね。欠片探しも詰ってクロノ&ユーノに泣きついたら少し休めと言われたし。
ジュークボックスで名曲でもあるPSOEP1のED曲を流し、昔は分からなかったけど自動翻訳が入り意味が理解できるようになったので心で涙を流しながら作業をする。
本当にいつ聞いても良い曲だなぁ……。今の俺の名前がリコであるのも加味して本当にしんみり。
あ、終わって切り替わっちゃった。
すっげぇノリノリなバーニングレンジャーのOPになった。感動を返せ。
「――そうして辿り着いた一年中クリスマスの飾り付けがなされた街には、なんと自分と同じ顔の男がいた。そいつはサンタの格好をしているけれど、不気味な事に血濡れのナイフを手に……」
「わー! わー! なんでそんな話するんだよ!」
「いつもクラリスクレイスで怖がらせてくるお礼だ。へけっ」
「次その話したらグラーフアイゼンでぶん殴る」
しんみりタイムも終わったので、並んでクリスマスツリーの飾り付けをしていたヴィータに殺人サンタの噂話をしたら怖がられた。
呪いウサギのぬいぐるみが好きだったりパンクファッションだったりと、そういうダークな物が好きかと思ったけど違ったらしい。
ちなみに今もこの間あげたビビットパンキッシュを着てる。気に入ってくれたみたい。
「折角のクリスマスだし、なんか明るい話にするか」
「リコの話だし嫌な予感しかしないんだけど」
「バーロー。アークス式のクリスマスの話題だよ」
「そっちにもクリスマスあったんだ」
「あるぞぉ」
衣装チェンジ。パーティーサンタドレス玄。
「なんで黒?」
「クリスマスの衣装を着たまま現地の調査するとボーナス入るって聞いた時に買ったんだけど、通常カラーの赤がちょっと目に痛くてな……」
「目に痛いって、光ってるのかよ」
「ある意味光ってた。反射で」
単純に俺が赤に弱かったというか、描画設定6の光で目が焼かれたといいますか。
白い背景に赤が映えてめっちゃチカチカした。
「その後に別の衣装も買ったんだけど、結局これしか着なかったな」
一応で買ったハピネスノエルは通常のサンタカラーだぞ。
あ、そだ。だったらハピネスノエルは渡しておこう。
飾り付けが終わったら着てみてね。
「暖かそう」
「なお肝心のアークスは気候に対する耐性がマックスで関係ない模様」
「卑怯だよなー」
「オレとしちゃ空飛べる方が卑怯だと思うけど」
「むしろなんでそこまでできて飛べないんだ?」
ゲーム的な問題でして、空を飛んだ陰キャヒーローが楽々エキスパート条件を満たすって案件がございます位には敵も対空がアレでして。
まあなんだ、色んな理由があるのさ。
「ふーん? だったら戦ったらあたしの勝ちだな。射程外から撃ってやる」
「ふふふ、多少の不利も跳ねのけるのがアークスよ」
確かに空は飛べぬが、遠距離攻撃は多彩だぜ。
というか着弾確定のテクニックに吸い込みもあるし。
さてと、飾りつけはこんな所か。
てっぺんの星はどうしようか。俺が肩車すれば届くだろうけど、シグナムに任せる?
「だったらはやてにやらせる」
「はやてに? ……そうだな、こういうのはやらせるべきだ」
「決まったな。じゃあちょっとこのサンタさん試してくる」
「あいよ」
さて。次は何をしようかね。
何かが動いた気がして、庭を見てみるとシャマルが何かをしていた。
さっきまで部屋の中で飾り付けをしてたと思ったんだけど何をしてるんだろう。
「シャマルさんや、それは?」
「空き部屋を整理してたら庭飾りが出てきたの。リコちゃんもやってみる?」
足元に落ちているのはリースや電飾等々。
その殆どが開封もされてない。
「……まだ、新品なのか」
「ええ。だから、私達のいる今こそ使ってあげなきゃって」
はやての父母が、娘の為にと用意していたんだろう。
けれど全部を使う前に……。
「じゃ、パーっと使ってやらにゃな」
暗い話題はナッシン。折角クリスマスが来たんだしクリスマスしようぜ!
低木を傷つけないように電飾を伸ばしていく。
「これちょっとそこな枝に引っ掛けて貰っていい?」
「ここでいいかしら」
「せんきゅー」
我が美的センスに任せたまえよ。
「む。長さが足りぬか」
「……何を書こうとしてるの?」
「I♡ザリガニ」
「クリスマス一切関係ない……」
だよね。
この時期はザリガニもいないし。
「いやそうじゃないわよ」
そうだね。ザリガニの日は9月13日だ。
「I♡だけになっちゃったけど、まぁいっか」
「変にザリガニって書くよりはいいと思うけど、なんか変ね」
「言うなシャマル。なんで庭の中心で俺は愛を叫んでいるんだ」
愛してるんだー! 八神家をー! はっはっはっは!
「あ、そだ」
「どうしたの?」
「いやさ、ヴィータがサンタやるみたいだしトナカイスーツ着る?」
これこれ。
「うっ、なにかしらこれ……」
「トナカイスーツ。何をトチ狂ってこんなデザインになったのか小一時間問い詰めたいトナカイスーツ。顔がうざい」
「クリスマスらしくはあるけど、これは流石にちょっと」
そうか。だったらrtfぎゅhklスーツにしとく?
「えっと、ぎゅ……何?」
なんでみんな言えないかな。rtfぎゅhklだよ。
「ほらこれこれ」
アイテムパックから出したら中身のない白い袋状の物体と化した物がベロンと出てきた。
「リコちゃん、これ頭までしか入らなそうですけど」
「着るにはコツいるからな」
こう、体をぐちゃぐちゃにしてまずはrtfぎゅhklの形にしないといけないし。
こんな風になぁ!
「ま、ま、ま、待って! 待って!」
ガチ焦りでワープ進化をキャンセルされた。
「びっくりした……」
「ヴィータもサンタやるから後はトナカイかぎゅ~さんが必要だったんだけど、したら後何があったかな」
「サンタさんとトナカイが必要なのはわかりますけど、その蝉の抜け殻みたいなのは必要なのかしら……」
必要ないっす。
仕方ない、rtfぎゅhklスーツは封印しとくか。あーあ、ギャグ補正にあやかろうと思ったのに。
「何やかんやで庭の飾りつけも良い頃かな。つか、高い所はオレじゃ手が届かん」
「そうね、重たい物も多いし」
重い物はむしろ積載量の飛び抜けてる俺がやるべきなんだろうけど、流石に手が届かないんじゃ意味ないしな。
「じゃあここは任せて、シグナムかザフィーラでも手伝ってくるよ」
リビングに戻ったらシグナムさんがツリーのてっぺんに星を置こうとしてた。
待てやァ!
「うわっ、急に飛びついてくるな」
「そこは後ではやてにやらせるの! お楽しみなの!」
「そ、そうか。それは悪いことをした」
装着される直前だった星がテーブルに戻る。
「オレに、何か手伝えることはないか?」
「結構だ」
うぁああああああ!(絶望)
「いや済まない。こちらも終わってすることがなくてな」
「なんで断ったんすか」
「リコが相手だと少し弄りたくなってな」
「シグナムっちまでそちら側に回ると味方がいなくなってしまうからやめてくれ」
「……さて、味方であった時があったか?」
うぁああああああ!(絶望)
「冗談だ。私はいつでも主はやてやお前の味方だ」
「シグナムゥ!」
冗談も通じない堅物だった昔と違って、ずいぶん丸くなったな。
なぜか俺に向かって尖り始めてる気がするけど。
「リコには感謝している」
「なにさ、急に」
「今まで戦いしか知らなかった我ら騎士が、こうして笑って過ごせるのは主はやてだけでなくお前の影響も大きい。だから、その礼をな」
へっ、お楽しみ頂けているのなら光栄だぜ。
割と序盤からお主ら俺に対しては雑な感じはしてた気もするけど。
後で聞いたんだけど、ヴィータにハンマー持たせて俺を襲わせようとした前科があるのを忘れないぞシグナム。
「さて、何の話だ?」
まあいいさ。
あ、そだ。シグナム。
「これを渡そう」
「メッセージパックか」
あれ、知ってた?
「知ってるも何も、前にお前が渡したじゃないか」
「そうだっけか。まあともかく、今後俺の様子がおかしかったりしたら聞いといてくれ」
「その説明もそっくり聞いたぞ。今ここでメッセージを再生しようか」
「様子がおかしいと言いたいのか」
「……すまない、いつもの事だったな」
「オレの扱いうますぎね?」
ふーむ、ああ。前にも渡してたか。忘れてた。
最近物忘れが激しくてのぅ。
「ちなみに今までいくつか録音はしてたと思うけど、どれくらい貯めてたっけ」
「まだ聞いていないから分からないが」
「そっか。一応言うけど、様子のおかしいオレに構うなよ?」
「また変な要求だな」
「何かに飲まれたと思ってくれ」
目の前で再生されたらダークファルスさんも黙ってられず暴走しかねないからな。
「よっし、後はザッフィーの所にでも行ってくるか」
「今日はやけに張り切ってるな」
「あたりめぇよ」
だってよぉ! はやてって今まで誕生日ですら一人で祝ってたんだぜ!?
それに図書館ですずかと出会うまで友達いないっつうしよぉ!
「クリスマス、ひとり、ウッ!」
「なんでお前がダメージを受けているんだ」
なぜ、俺はクリスマスに、戦っていたんだ……!
「ザフィーラの所行ってくるね……」
さてさて、あいつはどこにいるのやら。
室内のどっかにいると思うんだけど。
ザッフィー、いるかぁーい。
「ザフィ――」
「む」
扉を開けたら、半裸のザフィーラ人間体が着替えてた。
「し、しつれい……」
ぱたん。
びっくりした……。
「もういいぞ」
しばらくして着替え終わったらしいザフィーラが出てくる。
なんで久しぶりに人間状態で、それも着替えてるんだよ。トナカイに。
「整理していたら出てきてな。こっそり用意して驚かせようと思ったのだ」
「色んな意味でびっくりしたよ」
「鍵を掛けていなかった私のせいだ。すまない」
「いやいいんだけどさ」
突然目の前に自分の倍近い大きさのムキムキのおっさんが居たらびっくりするじゃん?
「しっかし、ザフィーラがトナカイねぇ」
「駄目か」
「いいんでない? ヴィータもサンタの格好するし」
元々誰かしらにトナカイやってもらう気だったし。
そしたらどうしようかな、シグナムとシャマルが余る。
「無理に何かの格好をする必要もなかろう。それに、そういったものはヴィータやリコだから似合うのだ」
分かってるな。確かに無理に着せると痛い事になるから。
ムキムキのザフィーラトナカイは一周まわってシュールギャグな感じが良い味出てる。
あいつ等には後ろでクラッカーでも持ってもらうか、あるいははやての迎えに行ってもらうか。
「リコ!」
「お、ヴィータか。どった」
「サンタになった! ……って、ザフィーラどうした」
「……聖なる守護獣、トナカィーラだ」
ちょっと待て、なんだそのネーミングセンス。
負けた。
「くくく……。ああ、ヴィータも似合ってるんだけど、ふふふ、ダメだ、トナカィーラの笑いが抜けない……っ!」
「変な所でスイッチ入ったな」
「そんなに笑わせるつもりはなかったのだが」
はー、不意打ちはダメだぜザフィ……おっと間違えた。聖なる守護獣トナカィーラ。
「そんなに繰り返されると恥ずかしいのだが」
「ザフィーラが冗談言うの珍しいからじゃね?」
「そういうものか」
んで、俺と合わせてダブルサンタにトナカィーラね。
俺等2人を肩に担げる?
「む。まあできなくはないが」
しゃがんだザフィーラの肩に乗る。
反対側にヴィータも乗って、せーの。
「うわっとと」
「安定してるけど、結構高いなー。ザッフィー重くない?」
「問題ない」
よっし、降ろしてくれ。
当日はこの神輿フォーメーションで出迎えよう。
シグナム&シャマルは……はやての迎えっていう重大ミッションもあったか。
「よし、今日はここまでだな。そろそろはやても帰る頃だろうし、普段着に戻るぞ」
「? 今日は良いのか?」
まだクリスマス前でしょうが。
当日はパーッとやろうぜ。
皆で飾りつけした家は今日お披露目、そしてサンタ&トナカイのドッキリは当日!
ああ、これだ。こののんびりとした日常。
素晴らしい。
家族であるはやてやその騎士達、この世界でできた友達であるアリサにすずかに、なのはやフェイト。友達とは違うけど、バイト先である翠屋の士郎さん桃子さん。あとは名前もロクに覚えてないけど、よく声をかけてくれる常連のみんな。
この世界は暖か過ぎる。
だからこそ、充分命を捨ててでも守るにふさわしい。
まどろみの中で記憶に新しいはやての驚いた顔を思い返しながら、決意を新たにする。
そんなことをしたからだろうか?
明け方のまだ眠い時間、クロノが焦った声で今すぐ来てくれと電話をかけてきた。