おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
早朝ァ!
徹夜してたユーノからダークファルス関連の事で最有力情報が出たからすぐに来てと言われたので全力で走り、記録は5分ジャスト。俺がワールドレコードだ。なお走者はひとり。
わざわざ階段もエレベーターも使うのは億劫なので、マンションの裏からアークスの二段ジャンプ! そして換気扇に一度着地して、再度二段ジャンプ!
窓からこんちわー!
「急いでとは言ったけど、もう少し周りの目を考えてくれ」
「反省しまーす。反省しましたー」
バルーンコレクトで鍛えた甲斐があったけど、怒られた。
当然だよね。
早朝の誰もいない時間だからこそやったんだけど。
「んで、大至急の連絡って何よ」
ベランダに靴を置いて、いつ倒れても良いようにソファに座る。
クロノも慣れたもので、気にせずモニターを表示した。
「一つ聞きたいのだけど」
「なんだばさ」
「僕は闇の書とは少し因縁のような物がある。もし君の助力を得て負の連鎖を断ち切れるというのなら、全力を尽くしたい」
「ダークファルスの話じゃないの? なんで闇の書?」
闇の書関連についてはお任せしている状況ですが。
「……闇の欠片、古代に現れたそれを封じたのは夜天の魔導書。そして、現・闇の書だ」
「なに!?」
嘘だろおい。身近ってレベルじゃねぇ。
なんだ?
俺は、何を聞いた?
闇の書が、欠片を封印している?
封印は身近なんてものじゃない。
家にあったそれそのものこそがだった。
「本当だ。そもそもの夜天の魔導書というのは魔法を集め研究するためのデバイスだった。欠片が現れた時に偶然あったこれの収集機能を改変、解決策として封印機能へと変えてようやく閉じ込める事に成功し、以後は闇の書となって存在し続けている」
「お、おい、待てよ。そしたらさ、ロクなことにならないってのは……」
「欠片を封印し闇の書となった夜天の魔導書は魔力の蒐集を終えると覚醒し、封印は解かれ暴走こそはするが、それと同時に集めた魔力を使い表へ出ようとする欠片と破れた封印にリセットをかける。取りこぼしの無いように現在の主と周囲空間を巻き込み、沈静化する。前回の10年前、僕の父はそこで散った。グレアム提督の目の前で」
「……それが因縁か、グレアムさんには悪いことを頼んだ」
でもだ。なんで封印が再びなされたのに闇の書がこんな所にいるんだよ。
「恐らくは夜天の魔導書が本来持っていた機能もバグかなんかで動いてしまっているらしい。あるいは内部にいる欠片が管理局の目を逃れる為に使用しているのかも知れないけど」
「なんにせよ、転移先の新たな主の下で闇の書の騎士は魔力を集め……」
「復活と封印を永遠に繰り返す。最小限とはいえ、多くの命を巻き込んで」
欠片は封印を破るために騎士へ働きかけ、魔力を集めさせる。
闇の書は破られた封印を再びかけるための準備として魔力を集めさせる。
魔力を集め完成させる事は封印が解かれる事とイコールであり、また集めた魔力でリセットが行われる事ともイコールである。
全てはループ。被害を最小限に抑えるための。
あいつらがやばいと言われても疑問を持たず蒐集を止めなかったのは、俺がそうであったように無意識に干渉されていたからか。
「……リコ? 顔が真っ青だ、戦いが目前に迫って緊張するのは分かるが、あともう少し手を、知識を貸して欲しい」
「あ、ああ……」
欠片を取り込めば、いや欠片を取り出そうとすると、まずは主を殺す?
俺に誘導するまでの時間が云々じゃなくて、そもそもダークファルスではなく闇の書そのものが殺すように動くって? 取りこぼしのないように?
決められている?
……もう、主になった時点で死が決まっている?
「……なんて、事だ……」
もう時間もない。あいつらは後どれくらいで蒐集を終える?
あと何ページだ? いくら時間が残っている。
今こうして話している内に封印が解けて、はやての身に何かあったら。
今すぐ、蒐集を止めさせないと──
「……あれ?」
──そもそも、やめさせたところでどうなるんだ?
早かれ遅かれ封印は解かれる。はやては死ぬ。
いや、それ以前に。
「オレは、どうやって奴を倒せばいいんだ……?」
「どうしたリコ」
全ての闇を俺が集めて、砲撃で綺麗さっぱり吹っ飛ばす方法?
そもそも、
ただ薄ぼんやりと、理想論を並べてただけ?
「はは、ははははは。ははははははははは!」
「お、おいどうしたんだ……?」
ずっと前だが能力の確認をするために森で色々考えたとき、俺は自分で言っただろう!
PSO2のストーリーで【
クラリッサが手元に無ければそんなことできないって、あの時にもうわかってただろう!
過去作のワイナールのやり方は? あの時はできると踏んでたけど、よく考えてみろよ。
同一の欠片の一部、つまり最後の1ピースを持ってたからナギサからダークファルスを誘導できたんだ……。
じゃあ、俺は……?
ダークファルスになりかけの出来損ない。手元にクラリッサもない。
当然、闇の書に封じられてる欠片とは一切関りがない。せめてダークファルス同士、ちょっとシンパシーを感じる程度だ。
俺に闇を集める力なんて、能力なんて、無い。この作戦は実行できない。
できるような状況を挙げるとするなら、それはもう完全にダークファルス化して理性もない頃だ。
例えそれなら闇の書の封印も力技で解決して、はやてを殺さずに欠片を取り出せるんだろうけど、既に覚醒しているダークファルスを止める方法もなく滅びて終わる。
つまりは実行不可能。
騙されていた。
この方法で勝てると、そう信じ込まされていた。
終わりだ。何もかも。
奴は恐ろしい。
理不尽で、薄暗くて、願いは踏みにじられて、救いはない。
はやては死ぬ。
騎士達も再び次の主の為に死力を尽くし、尽きて、失い、繰り返す。
誰も救えずに滅びを見届けて、エミリアが設計しグレアムさんの作ってくれた棺桶に入るのが正解?
これが道筋なのか?
これが、辿るべき運命? 誰も救えず、足掻きも無意味に。
目の前が暗くなる。
もう何も、何も先が見えない。
悪夢なら覚めてくれ。
誰か、助けてくれ。
もう何も、なにも分からない。
俺がすべき事は……。
「リコ。何か懸念があるのなら聞く。少しでいい、教えてくれ」
クロノは真剣な顔で問いかけてくれるが、無理だ。
失敗した。考えが甘かった。平和ボケしていた。
無理だ、勝てない。
やつには、勝てないんだ。
「クロノ……。オレは、オレはどうしたらいいんだ……?」
「僕の知る限りは、このままだと今まで通りの対処をするしか──」
「それじゃ駄目なんだ! それじゃ、助けられない……!」
「助けるって、誰をだ。待て、何か知っていることがあるのか?」
コール。
俺に宛ててだ。電話?
ヴィータから?
落ち着こう、まだ、まだだ。
あいつ等の前くらいまだ、冷静に振舞わなければ。
そうだ、落ち着け。時間は、まだ時間はある。
「……はい、オリエンタルな味と香りの翠屋──」
『リコ! は、はやてが倒れたんだ!』
──!?
「おい、一体何が……!」
『わかんねぇけど、急に倒れて、苦しそうで! で、シグナムがはやく病院までって!』
「わかった、今すぐ向かう」
言うが早いか切れば、立ち上がる前にクロノが道を塞ぎ何かを聞きたそうにしている。
構ってられない。
「どけ」
「待ってくれ。まさかと思うが、君は連中の事を知っていたのか?」
「……知ってはいたし、何なら家族だ。だがな、欠片の事までは予想外だ」
まだ聞きたそうにしているが、そんな場合じゃない。
はやてが倒れた? 何の前兆だ?
早く、早く行って確かめないと。
「どけ!」
「うわっ」
筋力に物を言わせてクロノを突き飛ばし、ベランダを出て柵を乗り越え地面へ。無意識に着地も完璧にそのまま走る。
もうなりふり構ってなんかいられない。全力の走りだ。