おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する 作:親友気取り。
俺はリコ。八神リコ。
アークスとして生き、そして散った英雄のリコ・クローチェではない。
俺の借りてたリコの肉体にリコの精神が残ってたのはご存知の通り。そしてそのリコがあの戦いの途中で覚醒して俺を肉体から蹴り出したお陰で俺は無事生還できた。
精神だけになった所をシグナムを経由して夜天の魔導書に収容され、俺が所有していたゲームの知識──その中に存在していたキャラクリエイトのデータを復元することで復活できた訳だ。
まぁ正直、本当に奇跡の結果。
リインフォース曰くデバイスの修復中に俺を偶然見つけ、破損データを直す時に騎士として新しく追加することで復活させる事が出来たという。
以前に守護騎士になぞらえて守護輝士を勝手に名乗った事があったけど、名実ともに騎士の仲間入りしてしまった。
夜天戦隊ヤガミンジャーの追加戦士。リインフォースが銀なら俺は金か。
……と言っても、これらは後から聞いた情報を元に組み立てた推理なんだけどね。
記憶的にはぎりぎりクロノと戦ったりクローム・ドラゴンになっちゃったりは覚えてるんだけど……。
ともかく結論として
ただ、リコは……アークスのリコ・クローチェは犠牲になってしまった。
それだけが心残りで、俺の身代わりにしてしまったみたいで、すっきりはしない。
そんな活躍をした影の犠牲者たるリコの事を俺は「実は……」なんて言う事もできなかった。
説明をするなら転生やら憑依やら云々と説明をしなければならないし、それに機を逃してしまったのもある。
だから、せめて名前を変えた。
リコ・クローチェの名は過去にして、俺は八神リコとして本格的に名乗る事にした。
俺は死んだことになってるし、向こうとしても別人として登録できる口実として丁度良かったらしい。
リインフォースと合わせて夜天の魔導書から復活した新たな騎士として扱ってくれた。
さて、ではなぜすぐ八神家へ……というか生存を伏せて戻らなかったのか。
……すみません、完全に俺の都合です。
今は持ち直したから大丈夫だけど、復活直後はとても戻れる精神状態じゃなかった。
はやてに剣を差し向けた光景がフラッシュバックして、また繰り返してしまうのか、あるいは嫌われてしまったのではないのかとか色々ちょっと考えるだけで吐きそうになってしまうほど。
というか、それだけじゃなくてそもそも何か棒状の物……ひどい時には握れる物を手に取っただけでも震えが止まらない事もあった。
リインフォースもクロノ達アースラクルーも、そんな状態の俺を会わせたくないとして周りにはしばらく生存を黙ってくれていたのは助かった。
もしすぐにはやてが駆け付けていたら、俺はたぶん自分に対する恐怖から発狂していただろうし。
わざわざ出張してきてくれた精神科の先生ありがとうございました。
覚悟決めて撃ってくれたにも関わらずケロっと生還したのはグレアム、ごめんなさい。
自殺しそうだったから気合いを込めてぶん殴って説教垂れてどさくさで呼び捨てが定着しちゃったけど、マジでごめん。
2月に入って後は学校に通いつつ元の生活に慣れていこうって事で落ち着き、気が付けば入学の手続きも戸籍もできていた。
そして今日。
実は直前まで顔を合わせる事にやっぱり抵抗があった。
だって今更生還報告とかさ、もうこのまま死んだことにして別の星に隠居したいって気持ちで逃げ出したさが満点できつかった。
教室に入ってからもう逃げ出せないと悟り、いっその事だと開き直ってやって見たかった登場の仕方をしたんだけどね。
本当は「リコちゃんが帰って来たぞー!」って言いながらそのままの勢いで教室内まで突入、決めポーズの流れだったんだけどひよりました。
「アルカンシェル撃たれて生還した幼女とか言われても否定できない事実」
「本当に悲しかったんやで? でも、戻ってきてくれてよかった……」
「ふははは。八神はやてがこの世界にいる限り、俺は何度でも甦る!」
「いやまぁ、騎士になったって事は間違えてないんやろうけどもうそういうのやめてな」
「わぁーってるよ。今回は本当に偶然が過ぎたくらいだし」
帰り道にはやてへ生還できた事をかいつまんで説明しておく。
あんまし納得はいってないし黙ってた事に不満もあったらしかったが、俺が精神を病んでた事を聞くとそれも解消されむしろ心配してくれた。
殺されかけといて気にしないでとか、そんな事言える奴いねぇよ……。
傍から見れば殺されといて許した俺もいるけどさ。
「操られてても頑張って踏み止まってくれたやん。それこそできる人間そんなおらへんのやない?」
「……そう言ってくれるのは、助かる」
さ、暗い話題はもう終わりだ。
もうこれからの未来に闇はない。心配することはないんだよ。
「せやな。もう何も心配する事はないんや」
「その通り。天の光は全て星ってね」
「なんやそれ」
言ってみたかっただけ。
「せや、リコちゃんってデバイス持っとらんやろ?」
まあ確かに持ってないが。
フォトンが全部失われてしまったのでファンタシースターアイテム類がほとんど使えなくなったし、ちょっとしたら一応持っとこうとは思ってるよ。
だって魔法使いたいじゃん!
「リインと勉強ついでに一つデバイスを作ろうって話してて。せやから、リコちゃんのデバイスにしようか思うて」
「えぇー、いいよ。高いんだろ?」
「それが今なら研究目的って事でタダや。ベルカ式の研究も含まれとるみたいでなー」
ベルカ式って言われても先に出てくるのは戦闘機。
「どんなの作ろうか考えとる途中やけどな。といっても、ユニゾンデバイスを作ってくれとは言われとるけど」
「ユニゾン? 合体はロマンだぞ。それ言ったやつはわかってるな」
「うーん、リコちゃんの考えとるユニゾンとは違うけど」
説明を聞くにリインフォースみたいなやつの事で、なんか戦闘時に一体化する事で戦闘能力をアップするとか。
合体というよりフュージョン。
闇の書事件を映画化するなら決戦の時にはやてとリインフォースが究極のフュージョンをして大逆転大勝利を収めるに違いない。
映画って尺が無いしそれくらいしないとね。
「となると名前はどうなるんだろう。ヤガミインハヤォースか」
「滅茶苦茶な発音しよるな。語呂悪いし」
「リインフォースが悪い」
「リインのせいにするとかリコちゃんさいてー」
「文句あっか!」
ふふふと笑い合う。
この流れも前にあったなぁ。
「でも作ろうとしてるデバイスもリインが修復の時に余った破片から作るみたいやし、名付けるならリインフォース
「マジかよ。それとユニゾンしたらオレどうなるの? 頭文字Rで飲み込まれてオレの成分がコしか残らないんだけど。合体事故の確率でけぇ」
「そもそもなんで名前を混ぜる前提なん?」
だってフュージョンだし。
「てかデバイスっているの? 宇宙救ったんだしもう戦う事ないんじゃね?」
「リコちゃん、クロノくんとか管理局の人がどうして地球に来たか考えた事ない?」
あー、あいつ等って宇宙警察みたいなもんだっけ。
まさかとは思うけど、就職先の候補にしてるの?
「“力なき者の剣となり盾となる”。リコちゃんが言うとった事やで。せやから、戦う力を持ってる私達はその力を活かしたいと思うたんや」
「達って?」
「シグナム達は迷惑かけた罪滅ぼしもあるみたいやけどなぁ」
「あー、闇の書として何百年だっけ」
けどまぁ、それがやりたいことなら止めはしないさ。
「リコちゃんはこれからどうするん?」
そうだなぁ……。
ダークファルスを倒す事ばかりでその後の事はあんまし考えてなかった。
「ま、今は小学生生活を謳歌しながら考えるさ」
幼児体型のまま働けたり八神家と同じ職場である管理局に行くことにはなるんだろうけどね。もしかしたら後でまた翠屋で働くかも知れんけど。
だとしても、どの道を辿ろうとも俺が最優先に考えた方がいいのは変わらない。
リコが命を懸けて守り抜いた宇宙と家族。
それを引き継ぎ守り抜く。
例えこの容姿も名前も借り物でも、それでも、オレが継いだこの名は本物なんだ。
リコの名にかけて、何が来ようと負ける訳にはいかない。
「いや、そこまで固く誓わんでもええんやけど……」
ちょっと引かれたがまぁ、いいや。
到着した数か月ぶりの我が家は明るい。
「まずは皆に謝り。そして、皆で復活祝いや」
ドアノブに手をかけて開く。
そうだ、ここが俺の帰る家だ。
「たっだいまー!」
マターボードに13つの光が灯り、物語は幕を閉じる。
リコ・クローチェが夢に描いた平和な世界がここに築かれた。
もしかしたらまた大きな事件が起きるのかも知れないが、それはまた別の話。
しかし、もしそんな事件があっても手にした家族と仲間達がいればしっかり乗り越えてくれるだろう。
これにて完結となります。
また、キャラ設定&あとがきを後日投稿いたしますので興味ある方は覗いてみてください。
毎話感想をくれた方々、毎回誤字報告をしてくれた方々、お付き合い頂きありがとうございました。
StS編の参考にしたいと思います。好きな話数、会話等も参考になりますのでありましたらメッセージを送って頂けると助かります(~6/1)
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