おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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リコおっさん11月号です


EX.8 テレプール

『アークス風のデバイスが欲しいって君が頼んだんじゃないか』

「ウォンド風な武器が扱いやすいから欲しいだけ。オラクル式の魔法なんぞ作る気ないって」

『そうか……』

「金になるもんじゃないしええやん」

『ん? 立案者にでもなれば幾らでも特許で儲けはでるよ』

 

 あ、そうなの?

 でも断る理由はそれだけじゃない。

 いいかクロノ。俺が魔法方面にやる気を出してないのはな。

 

『そうか、すまない。戦いに戻る気はやはり──』

 

 今日はプールなんDAAAAAAAAAAAAAAA!

 そんな日にわざわざ電話してくんじゃねぇえええええええ!

 

『えぇ?』

 

 ったくクロノめ。わざわざデバイス云々で電話しやがって。

 俺ちゃんはプールが楽しみで生きてるんだぞっ!

 

「いやデバイスの話はだいぶ重要やん?」

 

 向こうも忙しいみたいだし詳しい打ち合わせはまた後日として、ひとまずの取り決めをして受話器を置いたらはやてにそう言われた。

 いやアークス的に言い直すと武器ユニットを兼任するオールインワンなデバイスがごっつ重要なのは分かるよ?

 

 けどよぅ、クロちゃんったら俺がウォンド風の武器欲しいって注文したらアークス式だかの魔法を作るんだって勘違いしてたんさ。

 ベルカ式だって再現しきれずに近代とか名付けて分けてんのに俺一人で復刻できるかっての。

 あとアークスは職業の名前で地元はオラクルだからな? 勘違いするなよミッド人!

 

「うし、電話も捌いたし行くぜプール! オレは、オレはこの日をずっと待ち続けていたんだから!」

「テンション高いなぁ」

「下げてやってられっか! 泳ぎだぜフゥーッ!」

 

 

 

 

 

 

 てなわけで電車からバスへ乗り継ぎ向かうのは、ちょいと遠めだけど練習によさげと踏んだごきげんな室内プール。

 小学生オッケーはともかくとして広さ深さビート板の貸し出しや自販機にマミーがあるかの調査もしたんだ。そこまでしたんだからワクテカもフルマックスよ。

 

「最後のマミーはなに、好きなん?」

「プール上がりはこれって決めてる」

 

 市民プールのエントランス特有のなんか独特な匂いに包まれながら紙パック商品用の自動販売機にお金を入れ番号をプッシュ。ガラス越しに内部のトレーが取り出すのを眺める。ただ機械が動いてるのを見るだけでもなんか楽しい俺は工場のベルトコンベアをぼーっと眺められるタイプ。

 そして!

 

「そして?」

「あれの紙パックには動物さんが描かれている……!」

 

 ランダムで!

 

「あとおいしい」

「味が最後なんや」

「二の次三の次、だがふやけて水分の不足した体にはとてもそのおいしさが染み渡る。ゆえにプール後マミーは最強」

「うーん、お風呂の後に瓶のコーヒー牛乳が良いとは聞くけどそれは聞いたときないなぁ」

「なら今日その身を持って覚えるがいい。ふははは!」

 

 目的ははやてにプール上がりのマミーを教える事!

 

「あれ、今日の目的ってなんやっけ」

「はやてに泳ぎを教える事」

「あ、覚えてた」

 

 ふん。忘れまいよ。

 そのために俺は準備マシマシでこの日を待っていたのだからな。

 準備マシマシ! 野菜マシマシ!

 

「んでだ。一人おっきい子が来てるんだが」

「来たら悪いか?」

「いや、大人同伴の方が良い気もしてきた」

 

 主に俺ちゃんのナンパ対策で。

 

「むしろシグナムの方がナンパされるんと違う?」

「かもな」

「私はあくまで主はやての護衛です」

「オレは?」

「主はやての無事は私が保証します」

「ねえオレは?」

 

 とは言うが分かっているぞ。

 万が一はやてが溺れた場合は背の低い俺じゃ青ピクミンみたいな救助しかできないし、持ち上げ抱えのできるシグナムのが適任なのだ。

 そこまで考えてきてくれているのなら頼もしい。

 俺と一緒になって夜中まであーだこーだと計画を立てたかいがあるな、ええ?

 

 なんだかんだでシグっちが一番楽しみにしてたんじゃないか説。

 

「家で浮き輪を膨らませて怒られていた奴に言われたくないな」

「浮き輪じゃないですー。バナナフロートですー」

「結局持ってこなかったが良かったのか?」

「残念ながらルール的にダメだった」

 

 ランチャー迷彩のバナンチャーみたいなのが激安の殿堂に売ってたから買ったんだけど、持ち込めないのに気が付いたのは家に帰ってから。

 

「というか疑問なのが、リコは本当に泳げるのか?」

「シグナムは分かってないな。なんでもそつなくこなす事に定評のあるオレに任せときなって」

「海底を走っていたと聞くが」

 

 うん。まあ海底って言ってもただの海底じゃなくて空間のある海底っていうの? ちょっと特殊な環境だけどね。

 その他の水辺は……。

 

 ……ん? 別に水のどころかマグマの抵抗すら受けずに行動できるな?

 いやいやいや。八神家のお風呂は……あれ、やけに水が軽く思えてたのってデューマンパワーのおかげじゃなくて?

 

「リコちゃーん、着いとるでー。はよ降りー」

 

 促されるままオートランで着いていく。

 

 水の抵抗を受けない。

 イコール地上と変わらない動作になる。

 つまーり全く浮かず地面をバタバタする翼の折れたエンジェルになる……?

 

「オレはエンジェル……初期のバグでパニック入れられた部下に爆殺されるファルス・アンゲル……」

「どったん?」

「どうせまたよくわからない話でしょう」

 

 まずいぞ。

 何とかしてこう、マイボディの設定的な物を変えられないか?

 たぶんゲーム仕様が魂に染み付いて騎士ボディに適応されてるから、なんかメニュー……開けねぇ!

 ど、どうすりゃいいんだ? あれか、再起動してゲームのランチャーにある設定からやらなきゃいけないのか。

 ログアウト……ログアウトってなんだよ。ああ、でも今のボディ的な再起動って一応あるのか、夜天の魔導書に戻ってから出直せば……家か今!

 

 

 アークスリコのボディなら開けたメニュー画面は現在無し。設定は開けない。

 ボディ再起動でランチャーを開くっていうのはそもそもできるか分からないし、魔導書は家なので復帰位置がはやてなのかそっちなのかわからず無し。

 

 詰みでは?

 無意識下のまま水着に着替えた俺を絶望が覆う。

 

「リコちゃんと色違いでお揃いなんよ」

「とてもよく似合っていますよ。主はやて」

「……」

「おかしい、いつもならここで“オレのがかわいいだろ?”って言うんに」

「もしかして本当は泳げないのでは?」

 

 んな訳ねぇだろ!

 プールマスターとは俺の事だぞ!

 

「飛び込みしテレプールは数知れず! 初心者教授も数知れず! 完璧美少女はオレに決まってんだろ!」

「うーん、本当に大丈夫なんかこれ」

「少なくとも頭は大丈夫ではないでしょう」

 

 もはや暴言では? リコは訝しんだ。

 

「まぁまずプールに入る前のシャワーについてお教えしよう」

「そういえばなんであるんやろ」

 

 ははは、とても冷たい。

 だがこの冷たさに慣れないといけないのだ。

 じゃばじゃば頭からシャワーを浴びる。

 さりげなくショーシャンクの空にみたいなポーズしたけど誰もわかってくれなかった。

 てか思ったより冷たいな。

 

「ここでプールの水温よりも低い水に慣れ……て……おく……ことで……」

「ちょ、氷の塊になっとる!?」

「リコ!?」

 

 ぁ……アンティで状態異常は治るよ……。

 

「誰もテクニック使えへんよ」

「私なら炎を扱えます。リコまで焼いてしまいますが……」

 

 ふんぬ! 時間経過で治ったわ。

 でだ。これほど体が寒さに慣れればプールの冷たさにがたがた震える必要はない。

 温水プールとはいえ温泉ではないし通常と比べればまあ温かい程度。それに夏も始まりかけた時期だし水温も抑えているだろう。

 

「いや私らは普通に浴びるわ……」

「すまないリコ。死にたくはない」

 

 え、最悪は氷漬けになる程度だし死なんだろ。

 フリーズ! 凍りつけ!

 

「それで無事なのリコちゃん位やで」

 

 ただの人間なら致命的な致命傷か。うむ。

 というか俺のボディがゲーム仕様のままなのかなんなのか良くわからん。今の氷塊を見る限りゲーム仕様のままっぽいけど。

 今度火事でも見かけたら突っ込んでみようか。無傷で出れるやも知れん。

 

「うっひゃー! プールだ!」

「ちゃんとストレッチせなあかんよー」

「チッ、わかってるよ……」

「舌打ちしたで」

 

 はやてが正しいので素直に従う。

 全く、プールにはしゃいで飛び込もうとするとか子供かよ。

 

「多分このメンバーの中で一番年少に見えとるで」

「主はやてより背も低いしな」

 

 ちびと申すか。

 

「いや、子供らしくていいと思うぞ。大人でその性格だとすぐに捕まりそうだ」

「確かに」

「自覚あるんや」

 

 だが待て、ボーイッシュ俺口調近所の姉さんって少年の性癖を歪ませられないか?

 くそう。大人ボディになれないのがこんなに悔しいなんて……!

 

「どちらかというとジャージ着てコンビニの前でタバコを吸ってるイメージだな」

「あー、なんか分かる。そんでリコちゃんの事やし、本格的なワルはせんで注意されたらすぐやめるんよ」

 

 黒地に金のラインが入ったジャージを着たチャライ金髪のお姉さんがコンビニの前でタバコを吸ってたので勇気を出して注意したら、思いのほか気の良い人ですぐにしまって笑いながら頭を撫でてくれた……と。

 うむ、ヤンと見せかけて善はそれまた少年の性癖を歪ませられるな。

 

「なんかリコちゃんだけ話が噛み合っとらん気が」

「いつもの事では?」

 

 大人にはなれんしタバコも吸う気はないけど。

 

「ジャージはいつも着とるけど」

「ぷそ煮込みリスペクト」

 

 いっちにーさんしー。

 さてさて、ようやくプールだッ!

 

「では手本を」

「リコちゃんゴー」

 

 ふふ、そう慌てなさんな。プールの力は侮れんのだぞ?

 結局ここに至るまで設定も見つからんし泳げるかも不明だがやるしかない。

 トゥアーッ!

 

 うお思ったよりちべたい。

 けどまあ平気だな。

 

「リコちゃん!?」

 

 お、はやてがなんか驚いてるしシグナムが行こうか思案してる。

 どうしたよ二人とも、俺ちゃんは溺れてもないぞ。

 まーなんだ。目線が水面ぎりぎり位で確かにぎりぎり足が着く位だけどさ。

 

「それ息できとるん!?」

「ぶく?」

「え、これ大丈夫なん……?」

「ぶくぶくぶく」

 

 ああ、口元が水に覆われてるだけ。鼻呼吸できなきゃ泡も出せんだろう?

 俺の身長で目下が水面ならはやてもぎりぎりだがちゃんと直立すれば大丈夫か。

 

 ん?

 目下が水面って鼻まで水に浸ってね?

 つまり俺今どうなってる?

 

「ぶぐぶぐぶぐ……」

「シグナムゴー!」

「今行くぞ!」

 

 飛び込んだシグナムに抱えられて空気に触れた。

 

「無事か!」

「無事です」

「は?」

 

 いや、水の抵抗がないのに始まって元々海底溶岩と続いて宇宙空間すら問答無用で行動できるアークスだしね。

 たぶん俺に酸素は必要ない。

 

「心配かけたな」

「本当にな!」

「ぶぼぉー!?」

「リコちゃーん!?」

 

 急に落とすなぁーっ!

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