おっさんin幼女が魔法少女な世界で暴走する   作:親友気取り。

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スペースチャンネル5の主人公ウララ、グラールチャンネル5のリポーター・ハル。二人を合わせると、ハルウララになるのだ! みんなは知ってたかな!?
……競馬場に行ってた訳じゃありません。本当なんです、芝8長距離9の因子を携えて時間溯行を繰り返してる訳じゃないんです。はぁ……はぁ……【敗者】……?
泣くな、笑え。ハルウララ。


それはともかく、本小説の完結から一年ですね。ありがとうございます。
StS編は考える程その後の時代まで響きそうなので悩み中です。全知が欲しい。
一周年なので今回はリコの話となります。作者もうろ覚えな部分が多いですがご容赦ください。
これからもよろしくお願いします。


EX.12 一周年

「確かに人間誰しも全員仲良く、なんて訳にはいかない。どぅしたって“あ、合わないなコイツ”なんていう事もある!」

 

 

 昼下がりのフランカ’s カフェに臭い小芝居の混じった声が響く。

 遠くからでも伝わるその暑苦しさと、謎にデカい肩アーマーが特徴的なのはアークスの中でもトップに位置する六芒均衡の六、ヒューイだ。

 普通は羨望の眼差しで見られる筈の六芒のひとりだが、彼自身が語った通り“あ、合わないなコイツ”と思われたのか近くの席から人が離れていく。

 

 一方でその正面に座り、冷めた目でトロピカルフルーツを飲むアークス──イオも、正直な所帰りたくて仕方なかった。

 朝から突然呼び出されたと思えば突然謎の演技が始まり、未だ本題も話してくれていない。

 ストローに口を付けたままジトーっとした目で眺めていると流石のヒューイもたじろいだ。

 

「っとと。すまない、そうだよな。うん。本題に入ろう!」

 

 ようやくか。呆れた顔でヒューイが出した写真を覗き込み、その瞬間に思わずイオはむせついた。

 仏頂面な正面写真の少女、その写真のアークスは、最近いつの間にか自身をなぜか師匠と呼びなんやかんやで一緒に任務を回る事も多い少女なのだから。

 

「けほっ! ……えと、突然どうしたんですか」

「うむ! 実はだなぁ。クラリスクレイスが彼女に謝りたいと言っているのだ!」

「……連絡先なら教えるけど……」

「ちっがーう!」

 

 バシーン! と音がしそうな程の勢いで片足を椅子に掛けイオを指さした。

 かと思えば姿勢を低くして、聞かれてはいけない話のように声量を絞る。

 ちなみにヒューイはさっきから椅子に座らず席を立ちっぱなし。とても目立っている。

 

「実はだな……。どうにもこの写真の彼女、クラリスクレイスの事を嫌って避けているらしい」

「ああー」

 

 話が分からない訳ではない。

 最近は改善されて周囲からも見直されて来てるとはいえ、過去の行いからまだクラリスクレイスを苦手とする人間も少なからずいると聞く。

 避けられているのもそのひとつだろうと予想はついた。

 

「別に仲良くしろとまでは言わない。ただクラリスクレイスがこの件について心残りみたいでな、一区切りつけさせてやりたい」

「そういうことなら、まぁ……」

 

 馬鹿正直に呼び出してとすればイオと少女の信頼関係にも響くとヒューイも案じているので、事前に用意していた作戦のスライドを表示する。

 やけに安っぽいダサいロゴと装飾に彩られたその作戦とは──

 

 

「──“チョコレートの行方”?」

「その通りだ!」

 

 

 作戦名だけでは意味が伝わらないが、それ以降のスライドは用意されていなかった。

 何のために用意したのだろう。

 

「毎年この時期は確か、お世話になった人や友人、あるいは想い人に言葉とお菓子を渡すイベントがあったよな?」

「あー、バレンタイン……ですね」

「そこで! 君とあの少女には適当なクエストへ赴いて貰い、良き所でクラリスクレイスにチョコを渡してもらうのだ!」

 

 良き所とは? 

 

「ああ分かってる。分かってるとも! 勿論このヒューイもお膳立てはしよう!」

 

 だから、良き所とは? 

 それと自分がどのように動けばいいのかも聞いておきたい。

 

「君達の実力よりほんのちょーっと強めなエネミーがいる出現する所へ行って、いつも通り戦って欲しいだけだ」

「いっ、強めなエネミーって」

「大丈夫だ安心しろ! 何故ならば、ちょーっとピンチになったその時にクラリスクレイスを向かわせる! 吊り橋効果ってやつだな! ははははっ!」

「あくどい……」

 

 暑苦しいとはいえヒューイの事だと割り切る。

 本当にピンチな時はクラリスクレイスだけでなくヒューイも戦いに参加するだろうから。

 それぞれの性格はさておき実力は確かな六芒二人が助けてくれるというのなら、乗ってみても悪くはないとイオは思った。

 

 なぜなら、イオも薄々その例の少女が誰かを避けているというのには気が付いていたからだ。

 任務中にふらふらと道を逸れたり、あるいはアークスシップ内でもどこか人目を気にしてこそこそしている時もある。

 それがクラリスクレイスを避けている故の行動で、今回の事でそれが改善される可能性があるのならば。

 

「良し! 決まりだな! では早速根回しだ!」

 

 言うが早いかヒューイは駆けた。

 駆けて、うるさいと店員に怒られた。

 

 

 

「……で、おれは特に何もしなくていいのか?」

 

 用意された任務を受けるというだけであれば待つだけで良いのだろうけど──と、ジュースを飲み終え立ち上がろうとした時に後ろから声をかけられる。

 今度はなんだと内心呆れつつ、聞き覚えのある声に振り替えるとそこにはお盆に軽食を乗せた例の少女の姿が。

 

 ──まさか、聞かれてた? 

 

 焦ってぎこちない動きになってしまっているかと自身を疑いつつ挨拶すると、少女はいつもの通りにこんにちはと返す。

 少し天然混じりの少女だ。きっと大丈夫。気にしてない。

 

「師匠は、休憩?」

「そんなところ。あと、師匠じゃないって」

 

 挨拶代わりのやり取りをしつつ少女は手招きする必要もなく、イオの向かいの席、先ほどまでヒューイが行儀悪く足を乗せていた椅子に座り行儀よく食事を取る。

 どうやらあれほどバカ騒ぎしていたにも関わらず聞こえていなかったようだ。あるいは、意識外で本当に気にしてないか。

 ひとまず安心して胸を撫で下ろし、ぱくぱくと食べ続ける少女の様子を眺める。

 

 こんなにも馴染んでいるのに、出会ったのは割と最近の話だ──

 

 

 

 

 

 

 ──イオがその小さなアークスと出会ったのは、惑星ナベリウスの森林地帯だった。

 

 

 ダークファルス【敗者(ルーサー)】の起こした歴史的大事件が終わりひと月が経ち、アークスシップ内の混乱も収まり始めた頃。

 いい転機だからとバレットボウを新調し、馴らしと試し撃ちに来たところで少女が地面に倒れているのを発見した。

 

「モノメイトならいっぱいあるけど」

「……助かります」

 

 

 フィールドワーク中に木の根っこに足を躓かせて倒れ、そのまま力尽きて突っ伏していたらしい。

 助け起こして話を聞いてみれば、なんと驚きな事にメイト系アイテムを全てすっかり忘れて来たと言う。

 一度キャンプシップに戻れば良いのにその発想すらもなかったようだ。

 ほっておけなくなり手持ちのモノメイトを分け与えつつ、その立ち振る舞いに疑問を持って容姿を観察していく。

 

 まず現在身に着けているのは配給される戦闘衣装のエーデルゼリン。袖や裾にグラデーションの入るアレンジが施されているが、アークスのファッションとしては普通。これはいい。

 座った状態でも分かるほど背は低くこじんまりとしており、恐らく立って並べば自分(イオ)の目元よりも下。綺麗な一色の金色をした髪の毛は切った事が無いのか腰まで伸びている。

 色々纏めて、結論は()()()()()を言えば完全な子供。

 

 

 見た目だけと言うのは、そんな可愛らしいという感想の出る容姿に反して右手に持つ武器が、その少女がただ者ではないぞと知らせていたからだ。

 イオが現在持っているパレットボウのエーデルイーオーも特注のワンオフだが、その武器は明らかに何かが違う。

 本人はラヴィス=カノンという短杖(ウォンド)だとさも当然のように教えてくれるが、少なくとも普遍的な短杖のようには見えない。

 真っ白な柄と薄紫に光る刃を持つシンプルな、杖というよりも剣に近いデザインはオラクルで作られた物ですら無いようにも思えた。

 六芒の一、レギアスが持っていた創世器のような、別宇宙で作られたのではないかと思えるデザイン──

 

 

「──そんなに不思議?」

 

 

 小首を傾げるが全くその通りだ。確証がないのでハッキリとは言えなかったが。

 そのラヴィス=カノンに始まる数多の発言の内容はちぐはぐだが、イオはなんとか情報をまとめていき、ついに一つ心当たりを見つけた。

 

 旧マザーシップ内に大量出現したクラリスクレイスクローンのような、ルーサーが管轄していたどこかの研究機関を出身とする人物ではないか──と。

 そうであれば子供の容姿や未知なる短杖、アークスとしてあるまじきアイテム忘れ諸々の常識外れにも納得がいく。

 

 

 どういう経緯で一般アークスとなり任務へ赴いているのかは分からない。

 ただとにかくこのままひとりで行かせるのを少し不安に感じたイオは、急遽パーティー申請を出して同行する事にした。

 

 

 

 これがその少女との出会い。

 

 

 

 当時の少女は人と喋り慣れていないのか口調も硬く、イオ自身もあまり口数多く喋るという性格では言い難かったので所々で沈黙も多かったものの、同じデューマンという種族でシンパシーを感じたのか気が合いそれからよく会うようになった。

 接近を得意とする少女が前衛を務め、遠距離を得意とするイオが後衛を務める形になるのもパーティーを組む理由にある。

 

 慣れ親しみ少女の口調は砕け、長かった髪は“師匠”を習って短く揃え、一人称は“わたし”だったのが真似され“おれ”になったり。

 そんな色々が在ったというのに、そういえばまだ付き合いが出来てから半年近くにしかならないのか。

 追加で頼んだジュースを飲みながら少女を眺めていると、小首を傾げられた。

 

 

「どうかした?」

「ううん。今更だけど、さっきヒューイさんと何話してたんだろって気になって」

「え」

 

 今更──というよりもやっぱり聞かれていた! 

 

「え、えと、ヒューイさんとは、お、お知り合いで?」

 

 そんな事を聞き返してどうする!? 

 焦るイオとは反対に、少女はのんびりと答えた。

 

「アークスになる手続きをクーナと一緒にやってくれて、お世話になったから」

「く、クーナさん……ってあの?」

「うん」

 

 予想外すぎる。

 クラリスクレイスとの確執といい、一体どんな立ち位置なんだ。

 過去はなんとなく聞いちゃいけない部分な気がしていてスルーしていたが、こうなってくると無視しきれない。

 頭を抱えたいが取りあえず耐える。

 

「クーナはなんか、弟と似てるからって前からよく会いに来てくれてた。ヒューイさんは……なんかいつの間にかいた」

「そ、そうなんだ」

 

 何にでも首を突っ込むヒューイだ。どうせ成り行きだろう。

 

「ヒューイさんは暑苦しいから、師匠に迷惑掛けたらごめん」

「あ、その、別に……」

 

 ──いや、結構迷惑だったかも? うるさかったし、作戦は中身無いし。割と周囲の視線が恥ずかしかったし……。

 どこまで聞かれていたのかもわからない。

 イオは切り替えて、嘘を言ってないレベルの話をすることにした。

 

「ヒューイさんから、今度実力を見たいから任務を受けてくれないかって」

「ふん?」

 

 もぐもぐと食べながら少し首を傾げた。

 傾げて、何か納得したのか頷く。

 

「テストかな。やだなぁ」

「そんな感じ……かも」

 

 少女の表情が陰る。

 出自からして本人の思うテストとはどんなものかと疑問に思ったが、やはり聞いてはいけない気がするのでスルー。

 後はともかく、続報があるまで分からない。

 なんとかしてくれ、ヒューイさん! 

 

 

 

 

 

 あっという間にその数日後。当日。

 いつもの通りイオと合流した少女は、促されるままテストの名を冠した任務を受けイオの背中を追ってキャンプシップに乗り込んだ。

 ここに来るまで少女へはテストはテストでもただの実力テストだと説得しているので、よほどテストに良い思い出がないらしい少女の顔からは陰りは消えている。

 

 現地へ向かっている途中で通信が入り、突如正面にヒューイの顔がでかでかと映った時は、結構嫌な顔をまたしていたが。

 暑苦しく、やれ青春がどうのや友情がどうの叫び始めのだから仕方ない。

 

『そこで! 君達には──』

 

 ぷつん。

 耐えかねた少女が通信を切った。

 

「容赦ないね……」

「ヒューイさんに本題を話させるには、一回こうして流れを切った方がいいってクーナが」

 

 しばらくして再び通信が入り、少し髪の毛の焦げているヒューイが少し冷静になって少しずつ詳細を話す。

 近くにいる()()の炎属性テクニックで焼かれたようだ。

 

「?」

 

 その焦げ跡に少女は首を傾げるが、ヒューイは至って真面目に話してくれるので聞く。

 アークスの育成だの訓練コースだのといった嘘が次から次へと出てくるし、その説明も台本か何かを丸読みなのが分かる視線だが少女はちゃんと真面目に聞いている。

 それを隣で見ているイオは事前にそれらを知っていたので、いつしかのようにまた冷めた目つきになっていた。

 

「その……変な奴に騙されないようにな」

「師匠?」

 

 ポンッと小さな肩に手を置いて、ふたりはアムドゥスキア火山地帯へ降り立った。

 

 

 

 ヒューイに指定されたコースはいたって単純な一本道。

 少女は知らないが、以前に行った戦技大会と同じのシンプルなルールだ。

 エネミーを撃破し前に進み、最後は大型エネミーと戦う。相手に実力があるならエキシビジョンとしてヒューイやクラリスクレイスが出てくる。

 

 今回の場合は大型エネミーによってピンチになった時に、援軍としてクラリスクレイスが現れるんだろう。

 

「ピンチ、ね……」

 

 愛用のラヴィス=カノンを構えた少女が駆け、エネミーに囲まれたかと思えばゾンディールを発動し敵を一か所にまとめ、自分と協力して殲滅する。

 正直な所、慢心もあるだろうがイオはピンチになる場面があまり想像できなかった。

 あの少女は強い。前衛を務めているとはいえテクター。あの杖と言う名の剣の威力と少女自身の高い能力、何よりテクター故に支援系テクニックで自己強化や回復をすることができるので、よほどの事がない限り追い詰める事は難しい。

 

「っとと、いけない」

 

 矢を構えて敵を討つ。

 いくら少女は強いとはいえ、まだ戦闘面では背後の警戒が甘い時がある。任せっきりにはできない。

 

「んー?」

「どうしたんだ?」

「いや」

 

 少女がきょろきょろと辺りを見渡す。周囲に敵はいない筈……。

 

「また、来たの?」

 

 来た?

 

「ううん。師匠には関係ないけど、うん」

 

 クラリスクレイスが来ているのがバレている?

 首を傾げた少女が歩き出したのでついていこうとすると、何かが迫ってイオの行く手を塞いだ。

 敵じゃない。火山地帯特有の落石じゃない。

 これは──

 

「──障壁!?」

「師匠!」

 

 そんな事聞いてないぞ!?

 イオは焦る。

 ある意味ピンチにはなるだろうしこれで向こうにクラリスクレイスは向かうんだろうけど、自分はどうするんだと。

 気配を感じ振り返って、迫っていたダーカーに矢を撃ち込む。同時に、少女側でも動きがあったようで短い声と共に爆発音がした。

 

「そっちは平気!?」

『なんとかする』

「なんとかって……」

『大丈夫』

 

 イオが小型エネミーに襲われ迎撃している頃、一方の少女は大型のエネミーに襲われていた。

 大型のダーカー種、ブリュー・リンガーダ。四本の足と四本の腕、一対の翼を持った強敵。

 流石の少女でもというより、手練れのアークスでも複数人でかかる相手。

 ひとりで倒せるのは【巨躯(エルダー)】や【敗者(ルーサー)】の撃退に一役買ったイオの先輩か、あるいはゲームの中くらいだろう。

 

 少女は大丈夫だとは言ったものの、分が悪い。

 

「……相性も悪いし」

 

 その事は本人も分かっていたし、そも少女は生来より闇属性系のテクニックを得意としていた。

 少女と同じく闇属性のテクニックを操りながらもダーカーの殲滅を果たす規格外もいない訳ではないし、全くダメージを与えられない訳ではない。

 だが少女の力量では流石に倒しきれない。

 

「うわっ」

 

 ブリュー・リンガーダの振るった槍を弾き、カウンターにテクニックを撃ち込むが怯みもしない。

 

「しまっ──」

 

 姿勢の崩れた一瞬のタイミングが悪く、次の攻撃を避けも防ぎもできない正しくピンチ。

 その瞬間!

 

「とぅりゃあああああああ!」

 

 突如として火球がブリュー・リンガーダを襲い、神々しさもある黄金の図体を吹き飛ばした。

 

「……まさか」

 

 姿勢を直した少女が振り返る。

 

「助けに来てやっ……来たぞ!」

 

 クラリスクレイスだ。

 こんなところにまで現れるなんて。

 内心悪態をつきつつも助かった事実には変わりなく、自分の横に並んだその顔をただどう接すればいいのかと眺める。

 

「その、今まで悪かった。あ、あー、謝る!」

「え?」

 

 言葉詰まり気味に放たれたその内容に面食らい少女は判断を遅らせ、敵の放った斬撃を慌てて防ぐもその衝撃でラヴィス=カノンが弾かれてしまった。

 拾う間もなくその場を移動し、そして思考を巡らせる。

 

 クラリスクレイスが、謝った?

 今まで顔を合わせては一方的に噛みついていたあのクラリスクレイスが?

 

 少女とて分からない訳ではない。

 いくら相手が悪ガキと言って間違いないような事をしていたクラリスクレイスでも、時が経てば成長する。

 今までを水に流しこれから仲良く、は苦手意識もあり難しいだろうがせめて嫌ったりはしないでおこう。

 ましてや今は戦闘中だ。好き嫌いをしている場合ではない。

 

「シフタ!」

「お?」

 

 離れたクラリスクレイスの元へタリスを投げてシフタを発動し、攻撃力を増してやる。

 自身に倒しきる火力はない。ならば、任せるのみ。

 

「おれが足止めする」

 

 手元に馴染んだ愛用の武器がないのは不安だが、不安を払拭できるくらいの力を持った()()がいる。

 先んじてこの場を訪れていたんであろう誰かどこかのアークスが落とし忘れていたソードを走りながら拾い、守勢に重みを置き攪乱に徹する。

 

「やるぞー!」

 

 しばらくの攻防の後、クラリスクレイスの声が響いた。

 

「りょ」

 

 フルスイングで振るわれたソードがブリュー・リンガーダの前足を叩き怯ませる。

 

「そりゃー!」

「……やっぱりすごい威力だ」

 

 炎の暴力。

 今まで散々自慢で見てきたのは、威力が抑えられていたというのが明らかだ。

 施設でテストの為に放つ、あるいは競うためのフォトンの扱い方ではない。

 クラリスクレイスの攻撃を受けたブリュー・リンガーダは耐えきれず砕け散った。

 

 流石は六芒に数えられるだけはある。

 

 

 敵は倒し終えた。障壁も解けてイオとも合流できた。

 任務も元からこういう予定だったとヒューイから通信が入り説明され、少女の肩から力が抜ける。

 

「師匠は知ってた?」

「えっと──」

『ん? 俺の独断だ! はっはっは!』

「ヒューイさんか……」

 

 やることはやったし、クラリスクレイスも謝ったんだし帰ろう。

 先ほど拾ったソードは流れで仕舞い、地面に刺さったラヴィス=カノンも拾い上げて去ろうとテレパイプを出す。

 テレパイプを使いキャンプシップに戻ろうとする少女の背中を、クラリスクレイスの声が止めた。

 

 

 振り返ると、何かを手にしている。

 小さい箱のようだが……。

 

「これ、バレンタイン? の、奴な!」

「……くれるの?」

「やる!」

 

 ぐいっと押し付けるようにして、照れ臭かったのか恥ずかしかったのかクラリスクレイスは走り去ってしまった。

 

「?」

 

 少女はバレンタインを知らないので意味は分からない。

 開けてみると、手作りらしいチョコが沢山入っていた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、チョコ貰ったってワケ」

「そんな事あったんやなー」

「ああ」

 

 後部座席で話を聞いていたはやてがしんみりと呟き、開いた窓から流れる風景を眺めた。

 助手席から話続けていた俺も流石に喉が乾き、ホルダーにあるドリンクを飲む。

 車を運転しているカノンも聞いていた筈だがノーリアクションだ。

 

 道すがら暇だからと昔の話を聞かせてくれと言われ、今話したのは俺の記憶に残っていたアークスとして生きたリコの話。

 記憶を保有していた本人はもういないので多少は間違えた部分もあるかも知れないが、俯瞰して記憶を見ていた俺からはこうとしか言えない。

 だいたいあってるくらいだろ。

 

 

「……結局そのチョコ、食べきらなかったね」

 

 なんか言ったかカノン。

 

 

 

 ──もう闇の書やダークファルスの事件から一年になった。

 あんまり思い返したくないけど忘れちゃいけないあの事件。

 オラクルに生きてたアークスのリコの肉体に憑依した俺からリコがいなくなり、俺が“八神リコ”という一つの個人になった一件。

 

 公的にも真実的にもリコ・クローチェはダークファルスと相打ちになって死亡。

 しかし真の真実は俺のみの知る事であり、公の真実は少し違う。

 新たな肉体を得た俺が名と容姿を継いで八神リコとなっているのには違いないが、真の真実は憑依だのと説明せなならんしややこしい厄介なものだ。

 

 まあそう色々とあるが、ともかく公の記録でも英雄リコと俺リコは別人と残っている。

 それゆえなのか、誰が作ろうと言い出したのか、ミッドチルダにある聖王教会という所の敷地内に英雄リコの墓地が用意されているらしい。

 

 

 ダークファルスがどれほどの脅威かはファンタシースターを知らない部外者にとっちゃ知らんこっちゃだろうし、公の記録で宇宙を救ったとなっているとはいえ知らん奴のお墓をわざわざ用意してくれたりするだろうか。

 遺体か遺骨の一つもあればまぁ慰霊碑程度に祈ろうと納得はするけど、遺物のラヴィス=カノンやレッドリングは八神家が所有してたし。

 

 じゃあ誰がと考えて、そういう権力ありそうなのはグレアムかクロノだけどあいつらそんな気が利きそうじゃない。

 もう消去法で残りがカノンしかいねぇ。

 てなわけで、どうなんだい。

 

「え、ここまで来てお墓の話? てかそのジュース私のなんだけど」

 

 ふはは、運転しっぱなしで口頭での注意しかできまい。

 勝手にドリンク飲んだのは置いておいて何の話かっていうと、リコのお墓を用意した奴だよ。

 どうせ汝なんだろ?

 

「ああー」

 

 はいハッキリと肯定も否定もしない有耶無耶なのでカノンがやった事にしまーす。

 あ゛り゛がとお゛ぉおおおお!!(クソでかボイス)

 

 

「リコならお墓参りくらい行きたいだろうと思ってさー。提督の名前借りちゃったんだ」

 

 お墓参りできるならそら助かるけど……。

 てか提督ってやっぱすげぇ権限だな。俺呼び捨てにしてたけどいいのかな。

 

「リコちゃんが、リコちゃんのお墓参り?」

 

 同じ名を持つ人物がふたりいるなんて事を知らないはやてはもちろん首を傾げるよな。当事者にとってリコ()は生存してたって話なんだし。

 しかし、だけど言い訳はある。

 

 

 いいかいはやてよ。公的に俺とリコは別人なんだ。

 同一人物だと疑われないためには前任者へ挨拶するのが良いのだよ。

 コナーくんだって破壊された前任者のお墓参りに行ってたし。

 

「あー、んー。はやてさんも分かると思うけど、リコってそういう所ヘンに律儀だからさ」

「難儀な性格しとるしなぁ」

 

 ヘンって何だ、文句あんのか!

 ごくごくごくごく!

 

「だからそれ私のジュースなんだってー」

「いやー、にしてもミッドは広いですなー」

「誤魔化すなぁー」

 

 そろそろ状況説明をした方がいいだろう。

 大体お判りになると思いますが現在はなんと、遠路はるばるお墓参りにミッドチルダ北部にある聖王教会まで車で向かっております。

 いやぁー。初めて降り立ったミッドの中心地はすごかったね、大都会越えてありゃもうSFだよ。なんだあの中央にあるクソでかタワー。

 地球の技術をはるかに超えた映画のような世界が目の前に広がってて興奮のあまり漏らしそうになったもん。

 

「お漏らしは流石にやめてや……」

 

 とは感想を述べた当時の俺に対するはやての感想。

 忘れてるようだが俺は今年で6歳児の幼女(成長)だぞ。失禁のひとつやふたつしないでどうする。

 ちなみに今は飲み過ぎたせいで膀胱が限界を迎えようとしている。

 

「ん、トイレ寄ってくの?」

 

 散々ドリンクを横取りされたカノンが心配してくれた。流石は初対面で味方宣言した奴は格が違う。

 けどね、けれどね、今漏らしそうなのは半分くらい気分高揚によるものだから。

 近い動詞で言えばうれション。ミッドチルダの技術にリコちゃん感激って話。思い出したらwktkしてまたトイレが近くなった。

 決して飲みすぎた訳じゃない。信じてくれ。

 

「飲みすぎや」

「違うんだって信じてよはやて」

「というかさリコ、オラクルも似たような技術だし今更感動しないって前に言ってなかった?」

 

 そうだっけか。言った覚えないけど。

 言ったとすればDF寄生時かな。あの時って記憶障害も起きてたっぽいし。

 自分の発言に責任を持ったことがないから覚えてないな。

 

「いや責任持ちぃ。いつか痛い目みるで」

 

 現在進行形で膀胱にダメージ受けてる。

 

「うーん、後20分位だけど持ちそう?」

「揺れにもよる」

 

 

 何とかして気を紛らせよう。

 そうだはやて、さっきの話の続きとかどうだ?

 話そうか迷ったんだが、この際最後まで話しておこう。

 なに、関西弁っちゅーことはオチを求めるタイプの人種なはやてに損をさせないさ。

 

「え、何。オチて」

「……リコ、私それ分かっちゃったんだけど……」

 

 なぜカノンは分かるんだ。

 まぁいいや。

 続きを言うとな──

 

「──そ、そうだ! 私はやてさんに嫉妬してるんだぁ! リコの浮気者ってね!」

「急にどしたん?」

「ほんとにどうしたよ」

 

 カノンが慌てるなんて珍しい。

 

「(リコ、そのオチはだめ。はやてさんガッカリするから絶対)」

 

 なんで小声やねん。いいじゃん話して。

 てかカノンもこの話聞いたことないのになんでガッカリするって言い切れるんだよ。

 

「揺らすよ?」

 

 ま、まて! 今揺らしたらまずいぞ!

 黒部ダムの底に沈む鉄人28号が目を覚ますぞいいのか!?(?)

 

「錯乱しすぎやで。で、結局そのオチって?」

「ふ、度肝を抜いてやるぜ」

「どうせチョコ食いきれんで腐らせたとかちゃうん?」

 

 カノンは片手でハンドルを握りながら顔を抑えた。前見て運転しなよ。

 様子を見るに諦めてくれてるっぽいし、よし、んじゃあ話すぞぉ。

 

 

 

 クラリスクレイスにチョコを貰った……前に仕舞ったソード。

 それこそが──

 

 

 

「管理局に写真も提出されたアークスの武器、スペース・ツナだったのだッ!」

 

 

 そう!

 火山の地面に刺さってたソード!

 ブリュー・リンガーダの足止めをし、前足を砕いたソード!

 

 それは、スペース・ツナ!

 

 

「リコちゃんのお腹押してええ?」

 

 ヤメテ!




(StS編悩むというのは、下手に設定をいじるとベルカの歴史が変わってヴィヴィオ関連があれになるからです。StS以降の知識がやはりほぼないので矛盾発生恐ろしや)
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