原初の火   作:sabisuke

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10 旅立ち

 昼下がり、バーニーズのとある部屋に俺は招待された。

 テーブルには白い布がかけられていた。彼女のワンピースとは正反対のオフホワイト。そのクロスの上に、プラスチックのカップが二つ。ニクスさんが俺をアフタヌーンティーに招いてくれたためだ。

 あれから、ニクスさんの精神は非常に安定していた。本を読み、リーヴスの町を散歩して、時に士官学院生や町人と交流する日々を送っていて、街道に出たり列車に乗って他の都市に行こうとはしなかった。

 時々執筆も行っているようで、噴水前のベンチで何かを書いているときもあった。

 

 きっと、場を作ってくれたのだろう。俺が彼女にちゃんとした説明をするための場を。俺は彼女と関わったものとして、説明責任があった。彼女に説明を求めたのと同じだけ情報を開示する責任があった。その中の一部の情報はたとえ彼女が知りたがらないとしても、言わなければならないことだった。

 

 ニクスさんはのんびりと外を眺めている。

 

 「ニクスさん、あなたに話しておくべきことがあります。」

 「はい、何でしょうか?」

 「お気づきの事とは思いますが、マクバーンは大陸各地で暗躍する犯罪結社のエージェントです。自分も、彼と何度も対峙し、交戦しました。ニクスさんにとって、マクバーンはたった一人の故郷の生き残りで大切に思う気持ちも理解できます。

 しかし、どうか安全のためにこれ以上彼と関わらないでいただきたいのです。」

 

 彼女はただ微笑んでいた。

 こういわれることをわかっていたのだろうか。

 

 「勝手なことを言ってすみません。マクバーン個人があなたを傷つけることはないのかもしれませんが、結社は一枚岩ではありません。回りまわってあなたに危害が及ぶ可能性は高い。」

 当然、彼女だけでなくこのリーヴスという町が危険にさらされる可能性も皆無とは言えないだろう。

 彼女はこのリーヴスでの生活を楽しんでいた。日の光を浴びて外を歩く彼女はいつも満足そうだった。子どもたちと一緒に遊んだり、街の人にさまざまな学問を教えたり、自分もたくさん手伝ってもらった。 

 そんな彼女にとって生活の一要素になりかけていたあの男との交流をたつのは心苦しい。だがあの男に犯罪者としての前科があることも覆しようがないのだ。

 

 

 (どうにかならないんですか!)

 (さすがに気の毒ではないでしょうか?)

 

 

 脳裏に教え子の声がよぎる。彼女たちはニクスさんの親友でもあったから、彼女の意に沿わないようなことが起こってほしくないと本気で思っているようだった。

 不思議なもので、俺もそう思っている。あの男には散々巻き込まれて、始末書を何枚も書かされる羽目になった。ミハイル少佐なんてあの随分メンツが濃いお茶会に招かれて、胃を痛めていた。

 本来マクバーンという男はそういう災厄じみた存在であるはずなのだ。関わらないに越したことはないというのに、できることならニクスさんとのつながりは保たれたままであってほしいと思っていた。リーヴスに滞在する彼女のもとをたまに訪れる友人としていい付き合いができたらいいと思っていた。

 それが本来あるべき自然な形ではないのかと思っていたのだ。

 

 「―――私、明後日にはリーヴスを出ていくつもりです。」

 「そ、それはまた随分急ですね。」

 

 相変わらず話の急に変わる人だ。さっきまで俺はマクバーンの話をしていたと思ったのだが、この人にとってはあまり意味のある忠告にはならなかったのかもしれない。本人にとって嫌な話題だろうから緊張していたのだが、案外ショックを受けていないようだ。

 

 「リィン様にはお世話になったというのに、お伝えするのが遅くなってしまって申し訳ありません。聞けば、大陸東部は不毛の地であるとか。幸いお金も少し集まりましたから、そちらで人々の生活を支援できればと思っているんです。」

 「大陸東部の龍脈が枯渇しているという話は伺っています。それでは、共和国の方に行かれるということですね。」

 「ええ。少し長い旅になりますけれど頑張ってみようと思います。」

 

 窓の外に向けられていた彼女の顔がこちらを向く。とても晴れやかな顔だった。

 彼女がマクバーンに連れ戻された日から、彼女は事情を知る人間の前ではベールを外すようになった。今も彼女の白い角と尖った耳は露わになっている。

 曰く『汚すのが怖くなったから』とのことだが、以前身に付けていたものに比べて高価なものであるようにも感じられない。

 

 「そのことは、ユウナたちには伝えましたか?」

 もし黙って出ていけば反感を買うことは間違いない。俺だけが事情を知っているというのも好ましくない。他の人に伝えていないようならば二人を呼び出してでも情報を共有させるべきだと思った。

 

 「今夜、一緒にご飯を食べる約束をしていますから、その時にお話しするつもりです。」

 「そうでしたか。……そういえばあの子たちはあなたにごちそうになってばかりでしたね。何かお礼ができればよいのですが……」

 「お気になさらないでください。二人にはそれ以上のものをいただきました。友達と言ってくださるような人がいるなんて、思わなかったから―――本当にうれしいんです。」

 心配には及ばなかったようで一安心といったところだが、彼女の発言に少し引っかかるところがあった。

 

 

 

 「……あの?マクバーンとは友人ではないんですか?」

 「マクバーン様と?どうしてですか?」

 

 おかしい。これまでの二人の言動を統合したら二人は友人というのが一番適切であるはずだ。ややこしいことになってきたのでここで推理パートを展開してみよう。

 

 

 

<根拠>

①ニクスさんはマクバーンのことを世界で一番尊敬している。

②マクバーンとニクスさんは同じ世界の出身で顔見知りである。

③お互いが無理して会おうとするくらいの仲である。

④マクバーンによると『深い仲ではない』

⑤でもなんだかんだマクバーンはニクスさんの世話を焼く。

⑥ニクスさんによると『対外的に見れば』上司と部下『のようなもの』

⑦しかし明らかに仕事だけの関係ではない。

 

 

 「―――以上の理由からお二人は友人と判断するのが自然だと思ったんですが、ちがうんですか!?」

 「あの……今何かこのあたりに文字が出てきたような気がするんですけれど……」

 「気にしないでください。」「あ、はい。」

 

 「何度か聞いているような気もするんですが、ニクスさんとマクバーンさんって結局どういう関係なんですか?お二人は故郷で何をしていらっしゃったんですか?」

 「私は昔故郷にある神殿で神官をしていました。()()()を民衆に伝えて平和を保つという仕事で、今でいう政治家に当たりますね。」

 

 彼女から以前聞いた話ではニクスさんはインフラの整備に関わる仕事をしていたと言っていた。それはどちらかといえば宗教家の仕事ではなく公務員の仕事のはずだ。最大幸福とか機会平等とかそういう単語も宗教というより現代の公民で出てきそうな語句という印象を受ける。

 

 「……つまり、()()()というのは……」

 「その時の社会情勢を鑑みて私が決めた政策だったということです。

 そして故郷を国に例えたとき、国家元首にあたる方がマクバーン様だったのですよ。」

 

 ははぁ。なんとなく分かった。

 しかし―――

 

 「そうは見えない、ですか?」

 「……ええ、正直なところを言わせていただくと。差異はあるのかもしれませんが、この国の政治家は政争や社交の必要がありますから社会や経済の知識以上にもっと計算ができる方が多いです。その方々と比べるとあなたは少し、純粋すぎるような気がします。」

 「よき政治家であるためにはなにより民に誠実でなくてはなりません。社交も時には必要なのかもしれませんが、私の故郷には神官が私一人しかいませんでしたから、他の神官と折衝を行う必要もなかったのですよ。

 私は神官として必要な素質を揃えていました。都合よくできていたんです。」

 「マクバーンもあなたのことをそのように評していました。『できている』とか、『そうなっている』というのはどういった意味なんです?」

 

 「そのままですよ。私はそういう性格に生まれて、成長することなく育ちました。

 知識や言葉を私は生まれつき持っていたので外に出る必要もなく、たまに元首であらせられたマクバーン様にお会いする以外には神殿の中で引きこもっていました。その結果、生まれたときの状態でここまで来てしまったというわけです。」

 

 いま、何かすごいことをこの人は言わなかっただろうか。知識や言葉を生まれつき持っていた?

 

 「あなた方は、異能や知能を宿した状態で生まれてくるということですか!?」

 「人間の方にはあり得ないでしょうが、私はそうでした。マクバーン様もそうだったかどうかはわからないのですけれど…」

 

 「す、すごいんですね……。」

 「大切なのは私が故郷をよく導けるかどうかでしたから、生まれがどうであるかなんて実はあまり関係がないんですよ。最終的に辻褄が合えば、それでいいんです。」

 彼女の耳がピコピコと揺れる。アルティナの髪と形は似ているが神経が通っているので当然ひとりでに動きもする、らしい。

 

 「マクバーン様とは、それだけです。私は仕事人間でずっと()()()を聴いていましたから、友達付き合いなんて呼べるようなものはありませんでした。

 ともに国の未来を憂う同志ではあったかもしれませんが、やはり上司と部下というのが一番近いと思いますよ。」

 「そうだったんですか……」

 

 今更ながらマクバーンで思い出した。そういえば自分は彼女にこれ以上マクバーンと関わらないように言いに来たのだった。

 彼女が話を逸らすままに誘導されてしまったが、彼女なりの結論くらいは聞いておかねば帰れない。

 

 「それで、ニクスさん。マクバーンの事なのですが。」

 話を無理やり戻すと彼女は顔から微笑みを消した。小さな唇を引き締めて、いつもよりもずっと真剣な声を発する。

 

 「――私の勝手な行いでリーヴスの皆さまが危険に及ぶようなことがあれば心苦しいですから。私からマクバーン様に連絡をしたり、話しかけたりといったことは遠慮させていただきます。」

 「……本当に、ありがとうございます。勝手を言ってしまってすみません。」

 「いいえ。リィン様のお立場を考えれば私が今こうしてお茶をご一緒できるだけで喜ぶべきなのでしょう。心配をかけてしまって、謝るべきは私の方です。」

 

 眉を下げながらも微笑んでいるニクスさんはティーカップを置き、両手を重ねた。少しうつむいて何事かを考えているようだ。

 ともに故郷を支え合った存在が犯罪者としての扱いを受けているのだから、きっとその心中は複雑に違いない。

 目的は果たしたのだからここは彼女を一人にしてゆっくりとした時間を過ごしてもらうべきだろうか。夕食はユウナたちと一緒にとのことだったから、少し持ち直すための時間を設けてほしいという気持ちもある。あまり二人が心配するようなことにはなってほしくないのだ。

 都合のいい話かもしれないが。

 

 「ニクスさん、俺はもうお暇しますが、何かお困りのことがあれば申し付けてください。あと、出発の時には見送りに行きますから。」

 「何から何までありがとうございます。リィン様にはお世話になってばかりでしたね。」

 「お力になれたならよいのですが。」

 

 

 昼下がり。太陽の光がだんだんと長くなっていく時間帯。

 俺は白いコートを羽織り、ニクスさんはベールを頭にかぶって、俺たちはどこか懐かしい温かさに満ちたお茶会を終えたのだった。

 

 

***

 

 

 初めて嘘をついた、と思う。

 何だか、本当のことを言ってはいけないような気がした。

 

 ユウナやアルティナのような『友』がこれまでにいなかったのは本当だ。人間が対等な存在として支え合い、ぶつかり合い、慈しみ合うなんて、以前の私にはない経験だった。

 

 けれど私は、彼の『友』であったはずなのだ。

 あたたかい炎が大好きで、彼が民に誠実であることが本当にうれしかった。ともにあの世界を導くことが楽しかった。

 ともに民を愛し、ともに大地を守ってきた。

 私たちは『友』であった。

 

 だけど、あの青年にあの方のことを『友』だと言えなかった。

 ただの上司と部下だなんてことを言った。この社会の常識から考えればきっとそれ以上の関係に相当するだろうに。

 私は彼の傍で彼を支え、守ることが当然だと思っていた。気の遠くなるような年月を共に過ごしてきてなお、これからもずっとこのままだと思っていた。

 

 それを人々はなんていうのだろう。

 私たちの関係を、人々は何て呼ぶのだろう。

 

 共に過ごした年月が長すぎて、お互いを信じる心が大きすぎて、ただの友には収まらない。

 私には性別という概念がないから恋人や夫婦にもなれない。

 生まれの由来が違うから家族にもなれない。

 

 私たちは、何なのだろう。

 私はただ、あの炎をもう一度見たかっただけだ。私をずっと導いてくれた炎の光がどこかにあることを確かめて安心したかっただけだ。

 そして私はそれを確かめた。あの人が今も自由に生きていることを知った。

 

 だから私は次の一歩を歩みだす。一人のヒトとして生きるために、私という存在をこの世界に作り出すために、私は私を許すための旅に出る。

 ちっぽけな私でも、誰かを救えるということを証明するために不毛の地へ旅立つことを決めたのだ。今にも消えそうな命の灯火があれば、それを今度こそ救い上げるために。

 

 それだけが今の私の望みだというのに、どうしてだろう。

 どうして私は、あの溶けてしまうほどに熱い炎に巻かれたいと思っているのだろう。

 こんな自己本位な浅ましい感情を、私は持っていなかったはずだ。民を救うという私の使命を果たすために生きているはずなのに。

 

 

 胸の奥で、小さな小さな灯が燃えている。

 そよ風で掻き消えてしまいそうなほど頼りない小さな熱が私の心の奥に確かにある。そこには慈愛の海だけがあったはずなのに。

 

 怖い。

 私は火を宿してしまった。戦いの象徴たる火を自分の中に持ってしまった。

 これが、誰かを傷つけてしまったら。救うべき命を奪ってしまったら。私は私を許せなくなってしまう。

 

 どうしよう。

 どうすればこの炎を、消すことができるのだろう?

 

 

 

***

 

 旅立ちの日は、あまりにあっさりとやってきた。

 

 「ニクス、到着したら絶対絶対手紙出してよね!?住所忘れたなんて言って1か月手紙来なかったら大陸東部まで行ってやるんだから!」

 「やはりARCUSかENIGMAを贈るべきだったのではないでしょうか。」

 「きっと宝の持ち腐れですよ。必ず連絡しますから、ご心配なく。向こうの駅に着いたら通信機をお借りして分校に一報をいれます。とりあえずはそれを待っていてください。」

 「本当に心配なの!こんなポヤポヤしてて、誰かに攫われたりするんじゃないかって……」

 「ニクスさん、シュバルツァー式護身心得をもう一回暗唱してください。」

 

 この子たちはやけに心配性だ。何かあっても死にはしないから大丈夫だと思うのだが、私はそんなに頼りなく見えているらしい。

 

 「あやしいひとにはちかづかない きけんをかんじたらすぐにげる、ですね。ちゃんと覚えていますよ。」

 「ねえアル、本当かな?」

 「わかりません。ですが万全は期すべきかと。」

 「やっぱりそうよね!」

 

 そう言って二人は何かが入った包みと一枚の紙を渡してくれた。

 

 「これは……?」

 どうやら何かの料理であるようだが、料理にしては不思議なにおいがしていると思う。

 「サンディおすすめの攻撃料理とそのレシピよ!長期保存もできるから、もし危ない目にあったらこれを投げてね。」

 「フレディさんの特性濃縮エキスが入っているのでどんな魔獣も昏倒まちがいなし、です。」

 

 包みを開けてみると確かに、あり得ない色をしたクッキーが大量に入っている。一枚でも十分な効果がありそうだ。それにフレディさんというのは珍味(と言えば聞こえはいい)で独特な料理を作る異彩の料理人ではなかっただろうか。

 くれぐれも自分で食べてしまわないように気をつける必要がありそうだ。

 

 「ふふふ、本当に二人ともありがとう。お二人と親友になれてよかったと思っています。皆さんも、長い間お世話になりました。リーヴスにはまた折を見て参りますので、その時はよろしくお願いしますね。」

 

 親友、のあたりでぎゅっと抱き着いてきた二人を抱きしめ、頭をなでながらお世話になった皆さんにお礼を言う。

 社会基盤と防災について個人的に教えていたフランキー様、たくさんの本を紹介してくださったレイチェル様、長期にわたってお部屋に泊めて下さったバーニー様ご夫妻、料理に関する知識をたくさん分けて下さったリーザ様、分校の蔵書室に入室するための手続きを行ってくださったセレスタン様……そして言わずもがなリィン様やランドナー様、ランディ様。たくさんの方にお世話になった。この町での生活は本当に楽しかった。

 これからもきっとここでの日々と同じくらい素晴らしい日々を過ごしていけるだろう。

 

 

 「またお会いしましょう。皆さまによきご縁のありますように!」

 

 二人の女の子たちのぬくもりから離れて、旅行鞄を手に取る。名残惜しそうな二人に微笑みかけて、私は駅舎の中へと足を踏み入れた。

 背中に刺さる視線がくすぐったくて、ドアが閉まろうとするときに振り返って手を振れば、今にも泣きそうな顔をしている子を何人か見つけてしまった。

 慰めてあげたい。抱きしめて、ずっと一緒にいると言ってあげられたらいいけれど。私は私の使命を果たすために、旅立たなければいけない。遠い不毛の地でしか救えない命があるだろうから。

 

 

 

 

 階段からホームに降り立ち、ベンチに座っていると、誰かが隣に座った。

 

 

 「いや~~友情ってホントいいですよね。私もあんな青春を過ごしてみたかったものですよ。」

 「あら?あなたは、もしかして先日の……」

 

 隣に座った男性の姿には見覚えがある。

 ベージュ色のロングコートに量の多い茶髪。丸い眼鏡と楽しげな声。

 初めて会ったのは少し前になるだろうか?電車を眺めるために駅のベンチに座っていたら話しかけてきた教会の人だ。名前は何といっただろうか?

 

 「お久しぶりです、トマスです。覚えていてくださったみたいで嬉しいですよ~。」

 「私も、こんなところでまたお会いできるなんて思っていませんでした。お手紙は届きましたか?」

 

 その時は少しお話をして、いくらかこちらの信仰に関することを教えてほしいと言われたので軽く紙にまとめてリィン様に手渡したのだったか。

 教会の人に、と言えば伝わるからだなんて不思議なことを言われ、その通りにしたのだが、果たしてあれで届いていたのだろうか?

 

 「ええ、もちろん。しかし今日はそれとは別の件でして――」

 「??」

 

 申し訳なさそうにトマスさんは眉を下げている。

 彼の丸底メガネの奥で細い目が開かれたと思うと、後ろから両肩を誰かに抑えられた。感じる圧は弱い。女性だろうか。

 さすがに不審に思い後ろを向くとそこには金髪の女性が立っている。穏やかそうな顔立ちで、出で立ちにも不審なところはない。

 女性の手を振りほどこうとして右手で彼女の腕を取ろうとしたが、体が動かない。

 

 まるで金縛りか何かにあったように指が動かないのだ。

 

 「……?」

 「本当に申し訳ないんですけれども、私たちと一緒に来ていただきますね。」

 

 

 

 

 そうして、パチン、と。

 指のなる音が誰もいない駅舎に響いた。

 

 

 

 




次回からアルテリア法国編です。
あと全部さんはしばらくでない…はず。

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