ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか 作:逢奇流
今作が初投稿となります。
至らない点は多々あると思いますが、よろしくお願いいたします。
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a-夢と噂と出会い
また、この夢を見ている。
密林を進む中、漠然とした
ただ密林をさまようだけの夢を僕はここ最近何度も見ていた。夢の中の僕がどうしてこんなところを歩いているのかはわからないけど、一度も止まることなく道なき道を進む姿はまるで求道者のよう……なんて自分のことなのに他人事のように感じてしまっている。
夢に変化が現れたのは、王国との戦争がひと段落ついたころだった。密林を超えた先に石造りの遺跡が現れたのだ。それからはその遺跡の中に入り、入り組んだ道を歩く。
―初めて遺跡を見たとき、あの
もう会えない彼女を思い出し、ズキリと胸が痛んだ。そんな感傷に浸る僕の心と切り離されているかのように、足は遺跡の奥へと向かっていった。
長かったのか、はたまた一瞬だったのか、夢の中の曖昧な時間の流れでは判断がつかないが、僕は遺跡の最奥部にたどり着いた。
そこには「石造りの翼」とでも表現できるような、奇妙な石碑が青白く発光していた。何かに誘われるように手を伸ばそうとしたとき、意識が目の前の光景から引き離されるのを感じる。あぁ、今日はここまでか。そうつぶやくと同時に夢は終わりを告げた。
迷宮都市オラリオ、世界の中心とも呼ばれるその都市にはダンジョンと呼ばれる地下何十階層にも及ぶモンスターたちの巣窟がある。普通に考えればその上に街をつくるなんて正気の沙汰じゃないけど、モンスターたちから採取できる魔石といわれるドロップアイテムを加工した魔石製品は、人が生活するうえでなくてはならないものであり、その市場を独占できるオラリオには色々な人たちが集まるのだそうだ。
実際、僕の生まれた村にはヒューマンと少しの獣人しかいなかったけどこの都市に来てからはエルフやドワーフといった様々な種族どころか、下界に降りてきた神様たちをいたるところで見かける。
そんなオラリオを語る上で欠かせないのが、ダンジョンでモンスターと戦うダンジョンの冒険者の存在だ。神様の恩恵を受けて凶悪なモンスターと日々戦う冒険者を数多く有するオラリオでは武勇伝がこれでもかというくらいあふれている。
かく言う僕も、オラリオの英雄譚に憧れて冒険者になった一人だ。
「おい、あの冒険者もしかして、【リトル・ルーキー】じゃないか?」
「【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネル? あの
ダンジョンに向かう途中に同業者たちからひそひそと会話が聞こえる。
オラリオに来て3か月くらいになるけど、最近はこうして噂されることも多くなってきた。まだこのムズムズする感覚にはなれないけど……
「お前、
「兎みたいで全然強そうに見えねぇぞ? 別人じゃね?」
……ああ言う反応をされるのもなんだか慣れてきた。
これでももうレベル3で第二級冒険者になるんだけど、そんなに弱そうに見えるかなぁ。
「まぁ、ベル・クラネルはいいんだよ。それよりセオロの密林のうわさは聞いたか?」
「妙なバケモンが徘徊しているとかいう話だろ? うちの神も最近うるさくてな、振り回されるこっちの身にもなれっつうの」
そんなオラリオだけどここ最近奇妙な噂が多く流れている。さっき冒険者たちが話していたセオロの密林に徘徊する怪人もそうだし、それ以外にも、迷宮にとどろく機械音や、何十
「暇だから来た」なんて言いながら千年以上も前に突如として下界に現れた神様たちなんて
幸い僕の神様……ヘスティア様は自重ができる神様だから、眷属の僕たちが振り回されてひどい目を見ることはないけれど。
神様たちほど楽観的になれない僕たち冒険者は一連の騒ぎをダンジョンが稀によく起こす
今日はリリたちもいないし、そう深くまで潜るつもりはないけど用心したほうがいいのかもしれない。
ダンジョン10階層。
下級冒険者が主として活動するこの階層は弱者を振るい落とす関門として知られる。
この階層から出現しだす大型のモンスターやごく低確率で
とは言え、所詮は上層。壁を越え、ランクアップを果たしたレベル2以上の冒険者にとっては
そう、
(何かが起きている……)
ベルは第九階層の階段を下る途中で悟った。
モンスターが現れない。普段なら人の気配を感じたとたんに殺意をぎらつかせて襲い掛かる人類の天敵がここに来るまで不自然なほどその醜悪な姿を見せない。まるで、何かにおびえるように息をひそめて迷宮の闇に溶け込んでいる。
まだ3か月ほどの駆け出し冒険者だが、それでもこれまで積み重ねてきた経験や学んできた知識がこの状況の異様さをベルに教えてくれる。
思い起こすのは2か月前、今日のようにモンスターが現れない状況で起きた
(どうしよう……。何が起きているか確認すべきか、それとも直感に従って引き返すべきか)
冒険者は冒険してはいけない。専属アドバイザーのエイナの言葉が脳裏をよぎる。危険を感じたのなら素直に引くべきというのはベル・クラネルという冒険者をこれまで導いてきた指標だ。
しかし、その根拠が直感という抽象的なものであることが、判断を迷わせる。これではギルドに報告しようにもどう説明すればいいのかわからない。何が起きているかだけでも確認したほうが自分以外の冒険者の安全のためになるのではないか。
思考の袋小路に入りかけたときにベルのランクアップで強化された聴覚がかすかな音を拾った。
「…………ぅ……ぁぁ…………っ………………ぁ」
「っ! 悲鳴!?」
迷宮の奥から聞こえたかすかな悲鳴を聞いたベルは迷わず10階層に突入した。
短い草の生えた草原に、視界を遮る白い霧がルームに立ち込めている。
先ほど聞こえた悲鳴の大きさと大まかに記憶している10階層の
不気味に乱立する木々を抜けた先に悲鳴を上げたと思われる
「大丈夫ですか!? 一体何が……」
言葉が途切れる。
目の前のありえない光景に、この世で最も危険な地であるダンジョンを探索する冒険者にあるまじきことに呆然とそれを見上げた。
―それは、
―それは、脈うつ黒ずんだ半透明の膜につつまれていた
―それは、生々しい鼓動を発するナニカの幼体を内包していた。
ドラゴンのような肉体に背びれ、頭部に2本の長い角を持つ。
まごうことなき、異形の体躯。
だが……
「モンスターじゃない……!?」
ダンジョンから生まれるモンスターは例外なく迷宮の壁から生まれる。
地上に進出した劣化しているモンスターならともかく、モンスターが卵から生まれるなんて聞いたこともない!
何より、
「は、早くみんなに知らせないと……っ!?」
自分の手に負える状況ではないとベルは冒険者を連れて撤退しようと決断するが、その選択はあまりにも遅かった。
ビキリ、と嫌な音と共に目の前の物体から絶望が産まれ落ちる。
―これは、ありえなかった出会い
―神々すら予想できなかった
麻痺する頭の片隅で思考すると同時に、敵意に満ちた眼光を発する生まれたての怪物が咆哮を迷宮に響かせた。
「グギャアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!!!!」
ウルトラマン出てこなかった…
ていうか戦闘すらしていない…