ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか 作:逢奇流
『おのれぇ……忌々しいウルトラマンめ……』
時間の流れもあいまいな異次元の狭間で、老人のようなしわがれた声が木霊する。
黒い影がその姿を揺らめかせると、これまでこの世界で起きたウルトラマンの戦いが浮かび上がった。
甲冑のようなウルトラマンの姿を憎らしげに睨み付けると、乱暴に映像をかき消した。
『我が大いなる計画に気がついているのは、このウルトラマンのみ。しかし、よりにもよってこのウルトラマンは……』
たかが一体のウルトラマンならば、どうにでもなる。
しかし、このウルトラマンは
『しかし妙だな。
影が手を翳すと突如ダンジョンの空間に亀裂が走り、中から怪獣が現れた。
『行けぇいファイブキング!冒険者共を血祭りに上げるのだ!』
哄笑とともに亀裂は空間から消え、怪獣だけが残された。
ダンジョン8階層。
まだ2カ月程度のことなのに、ここに来ると久しぶりに感じるのはオラリオで起きたすべての出来事が濃密だったからだろう。
「冒険者様の姿が見えませんね……」
春姫さんの言葉が薄暗い空間に響いた。
最近の不穏な噂の数々に、それを裏付けるかのように姿を見せないモンスターたち、そのせいで冒険者は活動を自粛気味なのだろう、エイナさんも最近の魔石収集量が低下しているとこぼしていたっけ。
「しかし、噂の多い階層が上層ばかりというのは不可解です。もっと深い階層ならばこうして人々の噂になどならなかったはずですが……」
ニードルラビットやキラーアントを処理しながら、命が疑問を口にした。
確かに妙だ。
正直に言って、18階層以下の場所で怪獣が出現したら僕たちだけで対処できなくなる。
よく見積もっても中堅以下の【ヘスティア・ファミリア】が活動できる程度の階層で怪獣は目立ちすぎる。
「或いは怪獣を隠蔽する気はないのかもな、
「出現頻度から言って怪獣の存在はいずれバレます。そうなれば芋づる式に宇宙人や黒幕の存在にもたどり着くはずです。わざわざリスクを負う意味分かりません。」
怪獣の存在は知られてよくて宇宙人はダメなんて、確かに変な動きだ。
怪獣を知られることがどう黒幕のメリットになるのか分からない。
そんな風に会話をしながら進んでいると、『エボルトラスター』に反応があった。
「!みんな、下の階層から怪獣の反応が‼」
この感じは多分10階層ぐらいだろうか?
当初の9階層までと言う目標と少しずれたけど、確認しないわけにはいかない。
僕たちは急いで下層に通じる階段に向かった。
奇しくも僕の初変身の舞台でもあった霧の都には、既に怪獣の鳴き声が響いていた。
「この鳴き声、何体いるんだ……?」
ヴェルフの呟く通り、霧の向こうからたくさんの鳴き声が聞こえていて、この先に待つ怪獣が複数体であると推察できた。
いや、あるいは……
「いいえ、この声の重なり方には覚えがあります。」
春姫さんがヴェルフの言葉を否定する。
獣人の感覚はヒューマンとは一線を画す。
僕たちにはわからないような微細な情報も、彼女は見逃さない。
「これは私たちが縦穴で戦った怪獣のように、一つの地点から重複して聞こえてきます。」
「つまり、あの時の様な
おそらく、リリの推測は正しいのだろう。
春姫さんも無言で頷いた。
「一体ならばやりようはあります。いつも通りの体制でベル殿の補助に徹しましょう。」
「いえ、18階層では明らかに何者かによる横やりを入れられています。今回もそれがある可能性は高いでしょう。」
命の提案にリリが待ったをかける。
僕は前回気が付かなかったけど、あの時の怪獣は空間に生えた亀裂から出現したらしい。
もう一体の怪獣との戦闘中に、
あんな直接的な介入が、あれきりなんてことは考えにくい。
「今、この場にいない怪獣の出現を前提に動きましょう。リリたちは霧に紛れてウルトラマンの援護と奇襲への警戒を行います。ベル様も奇襲の可能性を考慮して戦闘を行ってください。」
リリはテキパキと役割分担を決めていく。
春姫は魔法と魔剣による援護を行うので、ウルトラマンの補助。
ヴェルフは怪獣がサポーターを狙った際の護衛を兼ねた、魔剣による援護。
命はスキルやランクアップして強化されている感覚を生かした、新たに送り込まれる怪獣の探知。
「………リリはどちらをやるにも力不足ですから、
この瞬間、リリの表情が曇った気がした。
まだ、昨日言ったことを気にしているのだろうか。
確かに、サポーターは目立った活躍こそしないがパーティーの生命線だ。
(認めていないのはリリ自身だけ。どうすれば分かってもらえるかな?)
結局、今は何も言えず、僕たちは怪獣の声が聞こえるほうに向けて進んだ。
やがて、霧の向こうに青い光がいくつも見えた。
近づいていくと、それは徐々に怪獣の輪郭を持っていく。
やがて、霧の中でもなんとか目視可能な距離にたどり着いた。
現れた怪獣はリリが予想した通り、色々な怪獣が
体中に様々な怪獣の眼があり、それが尚のことこの怪獣のアンバランスさに拍車をかける。
きっと、黒幕によって戦うためだけに生み出されたであろうその怪獣の声は、ベルには生贄にされた怪獣たちの悲鳴のように思えた。
(もしかしたら、僕が最初に見た怪獣は、こうやって合成の為の生贄にするために育てられていたのかも……)
恐ろしい想像に身を震えさせる。
黒幕にどんな思惑があっても、これは許されない。
こんな命を冒涜するようなこと、絶対にダメだ。
「みんな離れていて‼」
激闘を予感し、パーティーを離れさせる。
そして、『エボルトラスター』を抜刀したベルは光に包まれた。
「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
再びウルトラマンが白き世界に降り立つ。
突如現れた敵にひるむことなく、怪獣は低い唸り声を上げる。
「シェエアア!!」
ウルトラマンは目の前の異形にジャンプからの『アンファンスキック』をお見舞いする。
それを怪獣ーーファイブキングは背中の翼を広げて飛行することで躱した。
『あんな継ぎ接ぎでも、空は飛べるのか!』
ウルトラマンはキックの勢いのまま、スライディングのように地面を滑り、ファイブキングと距離を取った。
一瞬の探り合い。
ファイブキングは右手の鋏から、炎と冷気の合成光線を放つ。
それを前転で回避するが、休む間もなく目の形をした盾からも光線が飛んでくる。
『パーティクル・フェザー』で撃ち落とすが、貝殻を思わせるごつごつとしたドラゴンの兜を纏ったかのような顔から、無数の光弾を打ち出す。
『【ファイアボルト】!』
負けじと
目まぐるしく攻守が入れ替わる戦闘だが、【ヘスティア・ファミリア】は動じない。
風の魔剣でファイブキングの射線をずらす。
遠距離攻撃が飛び交うこの戦いで、その援護の効果は絶大だった。
少しづつ、ファイブキングはウルトラマンの攻撃に押されていく。
「グガガアアァァァ!!ッ!!!!」
自分の劣勢の原因が魔剣を打つ二人だと気づいた怪獣は、魔法の被弾も無視して額にエネルギーを集中する。
二体の怪獣の破壊光線を混ぜ合わせた一撃は、たかが人間には過剰すぎる威力だ。
『ゴルメルバキャノン』
ヴェルフと春姫を滅さんと迫る光の奔流。
それに対し、『マッハムーブ』で二人の前に移動したウルトラマンは光の盾を翳す。
『サークルシールド』
怪獣の必殺を懸命に押しとどめるウルトラマン。
その背後に亀裂が走った。
「来ました!ベル殿!」
命の警告に、全員が亀裂に注目する。
どんな怪獣が現れるにしても、【ファミリア】全員が警戒しているこの状況で奇襲はさせない。
現れるであろう敵への戦意を燃やすが……
『え……?』
そこから出てきた予想外の姿に、皆絶句した。
その怪獣の姿はこれまで戦ってきた存在からかけ離れていた。
一言でその姿を現すならば「花」。
ユリに似た黄色の巨大な花弁は、光弾が飛び交うこの戦場にはあまりにも似つかわしくない。
「植物型の怪獣……?」
突然の出来事に巨大なユリの花に意識が集中する。
その意識の隙間こそ罠だった。
気が付くと、ダンジョンを覆う真っ白な霧の中に、不純物が混在していた。
(黄色い粉……?)
それが、いつの間にかそこかしこに咲いていた小さな花から発せられる花粉だと認識すると同時に、リリの意識は闇に落ちた。
ファイブキングの造形は凄いですよね。
分かりやすく合体怪獣!って感じで。