ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか   作:逢奇流

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最終話「英雄-ウルトラマン-(前編)」
a-ダーク・レイド


 荒れ狂う嵐を引き裂くようにウルトラマンが飛翔する。

 標的は竜巻を自在に飛ぶ鳥のような怪獣マガバッサー。

 ヤプールによって再現された魔王獣は、地球のエレメントこそ持っていないがその力は他の怪獣に決して劣らない。

 

 ウルトラマンと互角の空中戦闘能力を見せつけるマガバッサーは鉤爪でウルトラマンに襲いかかった。

 咄嗟に『アームドネクサス』で防ぐがその一瞬、ウルトラマンは空中に停止してしまう。

 

『しまった!』

 

 自らの失策をベルは悟るが遅い。

 嵐に巻き込まれたモンスター、ハービィーが無数の弾丸となってウルトラマンに襲いかかる。

 堪らず吹き飛ばされたウルトラマンのエナジーコアが点滅し出した。

 

 このままではまずいと、ウルトラマンは『マッハムーブ』で嵐から脱出する。

 

 尻尾を巻いて逃げ出したその姿を嘲笑うマガバッサー。

 しかし、ウルトラマンは安全な距離を取ると反転。

 【英雄願望(アルゴノゥト)】を蓄力(チャージ)すると、ジュネッス・ホワイトに転身した。

 コアゲージが勢い良く点滅するが、構わずエナジーコアに腕を当て、『アームドネクサス』に弓の弦を顕現させる。

 ウルトラマンの超人的視力が、嵐を高速で飛び回るマガバッサーを捉えた。

 

 アルテミスの射撃を脳裏に浮かべながら、必殺の一撃を解放する。

 

『アローレイ・シュトローム』

 

 僅か10秒の蓄力(チャージ)

 それでも光の弓は数多のモンスターを切り裂きながらマガバッサーに向かう。

 

「ギャッッッ!!!!?」

 

 閃光を視認したときには遅すぎた。

 マガバッサーは真っ二つに切断され、爆発。

 急激に終息しつつある嵐に残された羽が散っていく。

 

 確実に仕留めたことを確認したウルトラマンは地上に降りて変身を解いた。

 

「~~~ッッ‼」

 

 途端に激痛がベルを襲い、地面に倒れ込む。

 ヒュー、ヒュー、と乾いた音が唇から零れる。

 

(身体中が痛い……このままだと帰れないな……)

 

 ベルはなんとか懐から『ブラストショット』を取り出すと、銃型(ガンモード)に変形させて上空に発射口を向けた。

 

 引き金を引くとエネルギーが銃口から迸り、空から何かが召喚される。

 『ストーン・フリューゲル』

 あの日、ベルの夢に現れた石碑は色を纏って光輝く。

 光はベルを優しく包み込み、鳥のようなその物体に彼を吸い込んだ。

 

 『ストーン・フリューゲル』は再び飛翔すると、雲を突き破るほど大きな塔のある街、オラリオに向かい弧を描きながら向かった。

 

 

 

 

『すいません……もう、限界が近いみたいです。』

 

 『ストーン・フリューゲル』の中にある空間で、ベルは大粒の汗を滲ませながら目の前の巨人に詫びる。

 

 『アンファンスの状態だったのに、こんな早くに活動限界が来るなんて……』

 

 もとより人には過ぎた力だ、ノーリスクなんて考えていなかったが代償は想像以上にきつかった。

 

 多分、もう何回も変身できるだけの力は残されていないだろう。

 

(こんなことで皆を守れるのかな……また、あの時みたいに……)

 

 体が疲れていると心も参ってしまう。

 一度は振り払った弱音が甦る。

 アルテミス様を守れなかったときと同じだ。

 弱い冒険者はなにも守ることなどできずに、涙を流すことになる。

 

『急がないと……まだ戦えるうちに』

 

 ウルトラマンに見守られるベルはそう呟き、目を閉じる。

 少しでも力を蓄えるために。

 

 

 

 

 『竈の館』

 【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム) を制した際に、手にいれた【ヘスティア・ファミリア】のホームの中庭に安置された『ストーン・フリューゲル』をヘスティアは静かに見つめる。

 

 本来、全知全能の存在である神の力、アルカナムを使えばこの一件は簡単に解決するだろう。

 しかし、今のヘスティアは零能の身だ。

 戦い、傷つくベルの姿を見るたびに、下界のルールが憎々しく思える。

 

 神の勘が告げている。

 今回の敵は尋常なものではない。

 ウルトラマンの力を持つベルであっても、厳しい戦いになると。

 

「結局、ボクは君を見守って物語を綴ることしかできないんだ。」

 

 ベルが今も眠る『ストーン・フリューゲル』を慈しむように撫でる。

 

「ベル君、忘れないでくれ。君は一人じゃないんだ。」

 

 ウルトマンネクサスになる前から、彼の心に(よど)みがあることは分かっていた。

 それが、彼女の神友(しんゆう)であるアルテミスとの別離が原因であることも。

 

 彼女の死後、神々は禁忌を侵したベルを咎めることはなかった。どんなろくでなしの神であったとしても。

 ベルがアルテミスに与えた死は、彼女にとって何よりの救いだったからだ。

 しかし、今にして思えば神のその態度が彼の心を決定的に傷つけたのかもしれない。

 アルテミスを殺した彼はきっと罰を受けたかったのであろう。

 しかし、神々は誰も彼を非難せず、謝りさえした。重いものを背負わせて済まないと。

 

「………ねぇ、ウルトラマン。もしかしたら君はそんな傷ついたベル君だから選んだのかな?」

 

 ヘスティアはなんとなしにあの銀の巨人に尋ねた。

 当然、返事は帰ってこないかった。期待もしていなかったが。

 ただ、ポツンと浮かんだ考えを口にしただけ、だがそれが正解なのだろうと漠然とした確信を持つ。

 

 この光は自分が人間に影響を与えることを良しとはしていないのかもしれない。

 だから、与えられる力に疑問を持つベルが選ばれた。

 使命以外の理由で力を使おうとも思えない彼が。

 だとしたら残酷な話だ。彼は力を使うたびにアルテミスとの別離を思い出している。

 

(まぁ、ベル君を利用するだけ利用して、後は知らないっていう奴ではないみたいだけど。) 

 

 そんなやつでもヘスティアは“いい奴”だと感じた。

 ベルの中から感じる暖かな光のせいか、妙に充実しているサポートのせいか。

 あるいは初めて変身した時に聞いたという台詞(セリフ)のせいか。

 だけど、自分にも(おや)の意地がある。光だけにベルを任せるわけにはいかない。

 

「なぁ、ベル君。君たちは有限の時しか生きれない人間なんだ。神とは違う、不完全な可能性の申し子なんだ。なら、答えはもう見えているんじゃないかい?」

 

 ヘスティアは初めての眷属に問いかけ続ける。

 今のベルにこの言葉が届くかは分からないけど、ほんの僅かでも彼の物語の一助になることを願って。

 

 

 

 

 傷つき、療養するベル。

 しかし、ヤプールは彼が完治するまで待つことはなかった。

 

『やれぇい‼スペースビースト・ペドレオン!恐怖の宴を幕開け‼』

 

 老人の声が『竈の館』に響くと同時に3・4M(メドル)程の触手を付けたナメクジの様な怪獣が突如館の中に出現した。

 

「なんだ!?」

 

「何奴!?」

 

 レベル2のヴェルフや命が非戦闘員を庇いながら戦闘するが、数が多すぎる。

 一体一体は対処可能でも、群れで襲ってくるならば話は別だ。

 能力と数の暴力に押し潰される。

 

(いけません!リリたちだけではジリ貧です!?)

 

 生理的嫌悪感を掻き立てる異形の群れと、自分たちの戦力差にリリは顔を青くした。

 そして、暴れまわる怪獣たちのおぞましい叫びはヘスティアの耳にも届く。

 

「なんだ!?なにが起きているんだ!?」

 

 混乱するヘスティア。

 その前に発光する『ストーン・フリューゲル』から飛び出したベルが現れる。

 

「うぇ!?ベル君‼?」

 

 突然出現した少年に目を白黒させるヘスティアだったが、明らかに衰弱しきったベルを見て、思わず駆け寄った。

 倒れるように前に進もうとするベルをヘスティアが慌てて支える。

 

「っ神様!変身します!」

 

「な……そんな顔で何言ってるんだ!もう君は限界だろう!?」

 

 死人のように真っ青な少年にヘスティアは声を荒げるが、ベルはふらつきながらも『エボルトラスター』を抜刀した。

 

「くっ……あああああああぁぁあぁぁぁ……!!!!」

 

 等身大のままウルトラマンに変身したベルはジュネッス・ホワイトに変化すると、『メタフィールド』を展開した。

 この空間の強みはどんな状況であっても、自身に有利なフィールドに相手を引きずり込めるところだ。

 ペドレオンという脅威を一気に無力化できるこの力を使い、体勢を立て直すことは決して間違いではない。

 しかし、今回の相手は格が違った。

 いつもの小金の光に包まれた空間が、闇に塗りつぶされる。

 

『愚か者め!貴様の『メタフィールド』なぞこのヤプールがとっくに見切っておるわ!!』

 

 空中に投影された長い帽子が特徴的な人型。

 異次元人ヤプール

 ついに現れた黒幕にウルトラマンは警戒を強めた。 

 

『ヤプール……‼この怪獣騒ぎの元凶!どうしてこんなことを!?』

 

『単純なことだ!超獣を生み出すマイナスエネルギー、嫉妬や差別と言った負の感情が豊富にとれるこの世界で俺たちは光の国を滅ぼせるだけの力を蓄える!』

 

 あまりにも勝手な理由に和解は不可能だと判断する。

 敵からの奇襲から始まり、『メタフィールド』も塗りつぶされた最悪の状況だが、諦めるわけにはいかない。

 戦意を振り絞ってウルトラマンは構えた。

 

「シェア!」

 

『そのためにもまずは邪魔な貴様から始末させてもらう!』

 

 その言葉とともに、人影が手を上げるとウルトラマンの前の空間がひび割れた。

 そこには無数の怪獣。

 

 絶望的な戦いが始まる。




 ウルトラシリーズの終盤はみんなボロボロになりますよね。
 そんな彼らの姿はかっこいいけど、痛々しいです。
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