ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか   作:逢奇流

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b-悪魔のグンゼイ

 怪獣の群れが迫り来る。

 真っ先に飛び出して来た宇宙人らしき黒い影は、鋭い槍さばきでウルトラマンの首を薙ごうとする。

 

──その名はダークルギエル

 

──銀河の覇者と対をなす、永遠の停滞を司る巨人である

 

 咄嗟に『アームドネクサス』で防ぐが、ベルはその力に驚愕する。

 

『っ、強い……!でも‼』 

 

 無理やり穂先を『アームドネクサス』で滑らせると槍を地面に突き刺し、足で押さえる。

 動きが止まったルギエルの懐を捉えたウルトラマンは『ソードレイ・シュトローム』を展開、袈裟斬りに切り裂く。

 光の剣が黒い体に触れた瞬間、その姿がスライムのようのドロリと溶けた。

 

「!?」

 

 巨人の傷口からドロドロに溶けたモンスターのものらしき死体が姿を見せる。

 それを見たリリはヤプールは様々な怪獣・宇宙人を再現しているというヒマラの言葉が頭を過らせた。

 

「怪獣だけじゃなくて、モンスターも材料にしているのですか……?」

 

 血の気が引いた。

 本来は人類の天敵であるモンスターが哀れだと思うほど、その所業は常軌を逸している。

 

『かつてザ・ワンと呼ばれた怪獣。その細胞を宿したスペースビーストには他の生物を吸収して進化する性質がある。』

 

 そんなベルたちの様子に気をよくしたのか、ヤプールが饒舌に語りだした。

 

『私はネズミや虫の様な矮小な生物を取り込んだだけで一角の怪獣を生み出せるこの細胞を利用し、モンスター共を生贄に数々の強豪怪獣たちを再現することに成功したのだぁ!!!!』

 

 ヤプールが解説している間にもダークルギエルのコピーは槍を振りかざし、イナゴの様な小型の怪獣であるドビシの群れがウルトラマンに襲い掛かる。

 あまりの物量に、捌けなくなると判断したベルは空中に逃れる。

 背後から迫りくるイナゴの群れを魔法(ファイアボルト)で焼き払い、地上のリリたちが魔剣で薙ぎ払うがその数は一向に減らない。

 

『この世界は実に役に立ったぞ!不安定な治安のおかげで、怪獣たちの噂は人間どもから豊潤なマイナスエネルギーを確保できた!これだけの力があれば、忌々しいウルトラの戦士どもを根絶やしにできる!』

 

 突如、ウルトラマンの足に蛇のような触手が絡みつく。

 地上では、ドビシたちが合体し深海魚の様な見た目の複数体の怪獣ーカイザードビシを生み出していた。

 カイザードビシは触手を勢い良く引き、ウルトラマンを地面に激突させようとする。

 

「ヘアアアァァァ!?」

 

 ウルトラマンは『パーティクル・フェザー』で触手を切断しようと左腕を突き出すが、カイザードビシは顔の眼からの光線で狙撃して阻む。

 為すすべなく大地に叩きつけられたウルトラマンは痛みに悶絶するが、殺気を感じて咄嗟に飛びのく。

 先ほどまでウルトラマンが倒れていた場所が音波攻撃で抉れる。

 新たに現れたのは漆黒の翼に赤い目が特徴のおぞましい姿の怪獣──ナイトファング。

 次々と現れる怪獣にウルトラマンは息を切らせ、エナジーコアが赤く点滅を始めた。

 

『豊富なモンスターが採れるダンジョン!全能の力を持ちながらそれを自ら封じる愚か者()ども!そしてほどほどの力を持ち、怪獣のテストに利用できる冒険者!』

 

 そんなウルトラマンに一斉に怪獣たちが襲い掛かる。

 【ヘスティア・ファミリア】は必死に魔剣で援護するが、空を飛び交うドビシたちがわが身を盾にして攻撃を防いでしまう。

 ウルトラマンは何とか応戦するが、カイザードビシたちによる触手攻撃が腕に絡み、足を抑え、首を絞めることで動きが封じられてしまう。

 そこを逃さず、ナイトファングは口から火球『ファングヴォルボール』を連射する。

 炎に包まれるウルトラマンが膝をつき、エナジーコアの点滅が加速していく。

 命や春姫は魔法による援護しようとしても、怪獣たちが波のように襲い掛かる現状では詠唱する暇もない。

 

『ここは理想の実験場だ!手始めに神どもを天界に送還した暁には、超獣たちの育成所として永遠に利用し続けてやろう!』

 

 絶え間なく激痛が襲い来る中、ベルは遠くなり始めた意識で思った。 

 やはりヤプールと和解することはあり得ない。

 あの存在は人の負の心を糧とするこの怪人は人類を蝕む癌だ。

 絶対に光の力を持つ自分が倒さなければならない。

 

『……おやおや、少し話している間に随分と苦しそうではないか?紛い物の光ではそれが限界だったか?』

 

『……?何を?』

 

 突如言われた言葉に咄嗟に反応できなかった。

 そんなベルの様子にヤプールは満足そうに次の言葉を口にする。

 

『本来、適合者(デュナミスト)が変身するウルトラマンは、神に等しい力を持ったウルトラマンノアに変身できるだけの潜在能力(ポテンシャル)がある。しかし、お前のそれはノアを模した模造品のさらに失敗作だ。』

 

 ウルトラマンノア?

 模造品?失敗作?

 なにを言っているんだ?

 

『理解する必要ない。重要なのはお前が持つ光は我を倒すだけの力は持たないということだ!』

 

 ヤプールの言葉に呼応するように、ダークルギエルは槍に闇を纏わせてウルトラマンを刺し貫く。

 

「ガッ、グ…アァァ……」

 

 ウルトラマンは呻きながらも、槍を掴んでダークルギエルを捉えると『コアインパルス』で吹き飛ばす。

 風前の灯と言ってもいいボロボロの姿だが、その目の輝きはまだ消えていない。

 死力を振り絞って前へ前へと進もうとする。

 カイザードビシたちが徐々に引きずられ始めるが、ヤプールは自分に向かってくるウルトラマンの姿を見ても余裕を崩すことはない。

 

『流石だベル・クラネル。(ちまた)を騒がせる【未完の少年(リトル・ルーキー)】の名は伊達ではないということか。光を増幅できるお前が本来のネクサスに変身できればこれ以上とない脅威だった。』

 

 ヤプールが発射した光線が肩に突き刺さっても、ウルトラマンは歩みを止めない。

 凍えそうな心に灯をともし、こぶしを握り締めてヤプールを討とうと闘志を燃やす。

 

『しかし分かっているぞ?その光に選ばれたということは、心に傷を負っているということ!傷を持つ者にはこの怪獣が天敵だ‼やれぇい!ナイトファング‼』

 

 ヤプールの号令に従い、ナイトファングがウルトラマンの前に立ちふさがる。

 相手にしてる暇はないと、『ネクサスハリケーン』で吹き飛ばそうとするが、異なる世界で神と崇められたその怪獣の強固な体はビクともしない。

 ナイトファングは頭部の角から眼を出現させると、音波攻撃を再び飛ばす。

 すると、ベルの意識がこの異空間から飛び、過去に戻る。

 

『僕はそんなことのためにあなたと……あなたに!、あなたを!』

 

『お願い!撃って‼オリオン!』

 

 あの日の記憶が、あの時の想いのままベルの中で蘇る。

 あの日の絶望も……あの日の無力感も……

 あの日のナイフの感触も……

 

『うわああああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ……!!!!?!?』

 

 ウルトラマン(ベル)が頭を押さえて絶叫する。

 

「おい!ベル!しっかりしろ!」

 

「ベル様!?何があったのですか!?」

 

ただ事ではない様子に仲間たちが必死に呼びかけるが、悪夢に囚われた彼には届かない。

 そうしてもがいていく間にも、活動限界は刻一刻と迫りくる。

 

「ウ……アァ……ッ!」

 

 頭を振り、悪夢を何とか振り払おうとするウルトラマン。

 しかし、そんな巨人の体にイナゴの群れが殺到する。

 ドビシたちはその銀の体を黒く覆い噛みつきはじめた。

 リリが匂い(モルブル)でウジャウジャと蠢く虫たちを追い払おうとするが、焼け石に水だ。

 

『この世界にウルトラマンは他に存在しない!もう我々の野望を阻むものはいなくなる!』

 

 怪獣たちが光線・光弾を放つ。

 一人に対する攻撃と言うにはあまりにも過剰攻撃(オーバーキル)なその光景に、仲間たちから乾いた息が漏れる。

 攻撃が止むとボロボロになったウルトラマンが現れた。

 ウルトラマンのエナジーコアが点滅していないとヴェルフは気づいた瞬間、弾かれるようにそこから飛び出す。

 

「ベル君!!!!」

 

 ヘスティアの声が闇に満ちた異空間に響く。

 巨人はその姿を消し、血まみれのベルが倒れ伏していた。




 ドビシたちがガイアとアグルに纏わりつくシーンはホントにトラウマになりました。
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