ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか 作:逢奇流
崩れ落ちる人間の無様な姿を見て、瞳を細めた。
手間をかけさせやがって、いい気味だ。
この世界にあってはならない
怪物は自分がここにいることが本来あり得ないことだと理解していた。
そして、自分をここに連れてきた醜悪な存在による邪な
それでも、怪物が生きていけるのはこの霧の草原しかないのだ。だから、ここを縄張りだと主張し、近寄るあらゆる存在を排除し続けた。
この世界の生物は元居た世界と比べるとしぶとい。人間は妙に頑丈だし、モンスターは際限なく産まれてくる。
だがそれだけだ、産まれたばかりの幼体とは言え、
それで終わりだ。生まれながらに最強の力を持つ己こそが王なのだ。最強の生態系の頂点に君臨する一角は、有象無象が集ったところで、圧倒的な威風を崩すことはない。生物としての次元が人間とは違うのだ。
故に我らは、その起源である地球で畏怖を持ってこう呼ばれたのだ。
──「怪獣」と
人間が最後の力を振り絞って業火の魔法をぶつけてきた。
無駄なことだ
結末は決まっている。王の機嫌を損ねた愚か者は、地獄の業火に焼かれるのがお似合いだ。
ちっぽけな魔法ごと焼き尽くしてやる。
地球ではキングザウルス3世と呼ばれ、ウルトラマンジャックすら一度は地につけたナチュラル・ボーン・デストロイヤーの遺伝子を受け継ぐその力の前に人間の足掻きなど何の意味も持たないはずだった。
しかし、彼は死にかけの人間が発した、目の前に広がる光の波紋を前に動揺する。
それは、宇宙の頂点に立つ恒星の威厳。
迷宮を覆う霧すら遮れぬ、偉大な純白の光。
王の威光すら凌駕する神秘の輝きの気配に怪獣は思わず後ずさる。
そして、一瞬、人間が発した光如きで狼狽えたことに強い屈辱を感じた。
ー往生際の悪い
死の運命は絶対だ。余計な手間を増やすな。
光を見ても、動揺こそしたが、怪獣の余裕は変わらなかった。
だが、光が収まった先で現れたものに、怪獣は絶句する。
光は収束すると巨人の形を成した
銀を基調とした体、胸には宝石のように赤く輝く命の輝き
10
構え、人のものとは違う言語で巨人は声を上げた。
「シェア!」
片手は拳で片手は手刀、巨人は勢いよく正拳突きを見舞った。
「ギャアアアアァァ!?」
ズン、と生まれて初めて感じる脳を揺さぶられる衝撃にキングザウルスはうめき声を上げる。
こいつは俺を殺そうとしている!
目の前の敵は自分の命を脅かす存在だとこれまでにないほど力を込めて尻尾を振るう。
しかし、巨人はそんな攻撃をバク転で軽々と回避して悠々と回避し、先ほどと同じ構えをとる。
「グギャアアアアアアアアァァ!!!!!!!!!」
それが余裕に見えたのか、キングザウルスは怒りに我を忘れてショック光線、熱線、催眠光線を乱れ打つ。それを巨人は時に躱し、時に両腕の刃付きの籠手『アームドネクサス』で切り払う。
キングザウルスがさらに弾幕を強めると、巨人は飛び上がった。
「────────────────」
怒りを忘れ、呆然と空を飛ぶ巨人を見つめるキングザウルス。
その隙を逃さず巨人は光の刃『パーティクル・フェザー』を飛ばす。
怪獣の厚い皮膚すら切り裂くと思われた刃を、2本の角から発生させた光の壁で防ぐ。
「!?」
驚く巨人に冷静さを取り戻す。
大丈夫だ。自分には最強の盾がある。
このバリアーがある限り、負けることは絶対にない。
全身を覆うこの絶対の守りは破れない。
確信をもってショック光線を浴びせる。これは躱されるが、休む間も与えず打ち続ければ、必ず奴には限界が来る。
「フッ!!」
学習せずに同じ攻撃を繰り返す巨人を嘲笑う。
再び展開されたバリアーは先ほどと同じように光の刃を防ぐ。
やはり、奴はこの盾を突破できない。
勝利を確信するキングザウルスは、バリアーを解除し巨人に勝ち誇った咆哮を上げようとして……思考を止める。
視線の先には何もなかった。
「ギギャア!?」
慌てて巨人の姿を探す怪獣の耳に音が聞こえた。
──リン、リン
この音は、巨人になる前の……
跳ね上がるように視線を真上に向ける。
そこには上空で足に白い光粒をチャイムとともに収斂する巨人の姿。
気づいたときにはもう遅い。
5秒の
巨人は銀の流星となって、キングザウルス目掛けて急降下する。
『アンファンスキック』
怪獣の悲鳴がこだまする。
巨人は急降下の勢いを利用して地面を滑り、必殺の間合いを確保する。
もう、最強の盾を発生させる角はもうない、
両腕にエネルギーを帯電させ抜刀するように開かれた両腕は十字に組まれた。
「ハアア……デヤァ!!!」
『クロスレイ・シュトローム』
必殺を期して放たれた光線はキングザウルスにはとても耐えられず、絶叫とともに爆散した。
光が解けていく。
体から気力をごっそり抜かれたような倦怠感に、頭が霞む中、ベルはあたりを見渡した。
床の草原は荒らされ、ダンジョンの壁は怪獣による光線であちこちが抉れている。
最後に発射した、クロスレイ・シュトロームの爆風により、霧が晴れているにも関わらず、モンスターは一体も見えない。まるで、何かに怯え続けているように。
「あ……」
そこで気づく、あの光の中で握った宝具『エボルトラスター』がまだ自分の手にあることに。力を蓄えているように、そこから漏れ出す光が脈打っている。
「これは、なに……? どうして僕があんな……」
光をもたらした者は何も答えない。
少年のかすかな呟きだけが、迷宮に響いた。
そこからどうやってホームまで戻ったか自分でもわからない。
僕を見つけたヴェルフによると、玄関に入った途端に気を失ったらしい。
何かあったのかと聞かれたけど、僕は答えられなかった。
今日あったことを話して、みんなの僕を見る目が変わってしまうことが怖かったから、僕は俯いて、心配してくれるファミリアのみんなに何も言えなかった。
そうして、自室でベッドにくるまっているけれど、考えがまとまらない。もう、訳も分からず、叫びだしそうだ。
そんな時、コンコンとドアをたたく音が聞こえた。
「ベル君、少しいいかい?」
「神様……」
一番来てほしくない人が来てしまった。
下界に来るにあたって、自らに制限をかけて全知零能の存在になっているとはいえ、神様は、僕たち人類をつくった
この
嫌われたくないのに、そんな神様が少しうれしくて、僕は神様にだけはすべてを話してしまった。
神様は深刻そうに黙り込んだ後、2つ質問をしてきた。
―その力を与えた存在と会話はできるか
―普通の人間の状態でも身体能力に変化はあるか
僕はどちらにもいいえと答えると、次に神様は嘘をついてくれといった。
その意味は分からなかったけど、僕は自分が女だ、と誰でもわかる嘘をついた。
すると、神様は考えをまとめているのか険しい表情で僕の【ステイタス】を見ている。
そして、落ち着いて聞いてくれよ、と前置きして自身の見解を語った。
「その光はこの世界とは別の場所から来ているのかもしれない。そして、君は【ステイタス】に変動こそないけれど、巨人に変身する能力を手に入れた」
これは、非常にまずいことかもしれない。神様の言葉に僕は背筋がひやりとする感覚を覚えた。
「下界の要素以外で
神様の言葉の意味を理解すると同時に、冷汗が流れた。
神様たちはやろうと思えば、今の第一級冒険者を軽々と超える存在を量産できるらしい。しかし、意図的に能力をつけさえる行為は
この光を得たことはそんな
それはつまり、今の僕は人間とは違う存在になっているということではないか?
そんな種族そのものが変質してしまう変化が、果たして下界の可能性と言えるだろうか?
「もし、この光の存在が他の神に露呈した場合……最悪、君の冒険者生命が終わる」
重要なのはそこじゃない! と叫びたかった。
僕がこうなったのは、
「……君の気持ちはうれしいけど、他の神はそうは考えない。もしかしたら、これを機に足を引っ張ってやろうと考えるやつもいるかもね」
全くこれだから神ってやつは……と、めんどくさそうにツインテールを揺らす神様は、僕の考えを見透かしたように大丈夫だぜ、と笑いかけた。
「要は、ばれなきゃいいんだ。だから、君はその力をなるべく隠していかなきゃいけない」
わかるね? と言う神様な言葉に僕は頷いた。この人に迷惑をかけることは絶対にあっちゃいけない。なんとしても隠し通さないと……
「おっと、もうこんな時間だね。ボクはこれで失礼するよ。……それとも、もう少し一緒にいようか?」
なんなら、添い寝してもいいぜ! といつものように冗談を言う神様に少し、笑みがこぼれた。
「いえ、大丈夫です。神様に迷惑はかけられません」
全然迷惑じゃないんだけどなー、むしろウェルカムなんだけどなーと僕に気を使ってくれたのか冗談を小さな声で呟きながら部屋から出ていく神様だったが、ふと何かに気づいたようにこちらを向いた。
「そうそう、厄介ごとを運んできたけど、光自身は悪い奴じゃないと思うぜ? 多分、ベル君には、何かやらなきゃいけない使命があるんじゃないかなぁ……勘だけど」
そう、言い残すと今度こそ神様は部屋を出ていった。
神様の勘……天界の住人である神様たちは、時折そう言って予言じみた意味深なことを僕たちに投げかける。
けして無視できない言葉に、再び僕は思考に没頭する。
──使命って何だろう。
──君はどうして僕を選んだの?
答えはいつまで経っても帰ってこなかった。
かっこいいタイトルが思いつかない。
だれか、センスを分けてくれ。
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