ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか   作:逢奇流

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b-邪悪×襲来

 目標量のドロップアイテムを確保し、地上に帰還しようと話していると、突如ダンジョンが揺れ始めた。

 気を抜けば転倒しそうなほどの揺れに、ヴェルフたちが呻く中、『エボルトラスター』が、ベルに警告を告げる。

 

(近くに怪獣が!?)

 

「ごめん! 先に戻ってて!」

 

「ベル様!?」

 

 制止の声が聞こえるが、無視する。

 第一級冒険者ならともかく、この中層で活動する冒険者のほとんどは、怪獣なんてものと戦える力はない。

 異常事態(イレギュラー)が起きているダンジョンで単独行動なんて、とても褒められたものではないけれど。

 この力と共に与えられた使命はきっと怪獣に関係しているはずだ。

 だから、行かないと。

 ヴェルフたちが追ってくるが、この中でレベルは僕が一番高い。

 一気に加速して、振り切った。

 

 

 

 

「おい! 何やってんだよベル!」

 

 瞬く間にその姿を消したベルに、ヴェルフが声を荒げる。

 昨日からずっと様子がおかしかったが、いよいよ理解できない行動をとった。

 ベルだって馬鹿じゃない。この状況で、単独行動をすることの愚かさは分かっているはずだ。

 にも拘わらず、あんな行動をとったということは、そのリスクを負ってでもやるべきことがあるということだ。

 問題は……

 

「何故、自分たちに何も言ってくれないのでしょう……」

 

 【八咫白鳥】(スキル)でベルを探知しながら、命は悲しげに呟く。

 【ヘスティア・ファミリア】は団長のベル以外のメンバーは、全て他【ファミリア】からの移籍という、オラリオの中でも珍しい構成のファミリアだ。

 それはつまり、【ファミリア】の団員がベル・クラネルと言う人間にそれほどの好感を持っているということでもある。

 彼女は期間が過ぎれば、【タケミカヅチ・ファミリア】に戻る予定ではあるが、それでも、ベルとは確かな絆を持てたと思っていたのだ。

 だからこそ、彼が苦しんでいるときに頼ってもらえないことが悲しい。

 

「ど、どうしましょう……」

 

 オロオロと獣人の尻尾を揺らしながら、春姫はパーティーとしての判断をリリに仰ぐ。

 レベル1のサポーターで、非力な小人族(パルゥム)はあるが、彼女の頭のキレは仲間の誰もが認めるものだ。

 

「ベル様を追います」

 

 リリは迷わず即答する。

 彼女にとって、ベルは何よりも優先するべき事柄だ。

 異常事態(イレギュラー)が起きていようと、それは変わらない。

 

「なぜそこに向かったかはともかく、どこに向かっているかは推察できます」

 

 ベルは力任せにリリたちの追跡を振り切っただけだ。

 道を滅茶苦茶に進むといった、こちらを攪乱するような細工は何もしていない。

 素直に目的地までまっすぐ進んだ、ベルの居場所を割り出すことは、活動階層の地図(マップ)を全て記憶しているリリにとっては、たやすいことだ。

 

「ベル様が向かったのは恐らく、リリたちが前に利用した縦穴でしょう。ショートカットしてリリたちも追いかけます。」

 

 リリの言葉にパーティーは頷き、ベルの後を追った。

 

 

 

 

『エボルトラスター』に導かれた場所、かつて下った縦穴にはやはり怪獣がいた。

 悪魔のような相貌、全身は鋭利な棘で覆われ、両腕は龍の頭をくっつけたような歪なシルエット。どんな生態系を経たらこんな進化をたどるのか想像も付かない。

 凶獣・ルガノーガー

 50M(メドル)を超える巨体が、縦穴から顔を覗かせる光景は、子供のころに見た悪夢のように現実味がない。

 深紅(怪獣)の瞳と真紅(ベル)の瞳が互いを見据える。

 沈黙を破ったのは怪獣の咆哮と共に放たれた光だった。

 青白い破壊光線がベルに迫る。

 それに対してベルは、『エボルトラスター』と共に与えられた宝具である『ブラストショット』でバリアを形成し、攻撃を防いだ。

 階層をまたいだ攻撃。そんなもの、まるで風の噂で聞いた深層のドラゴンだ。

 お返しとばかりに魔法(ファイアボルト)を連射するが、ルガノーガーの胸の装甲に弾かれる。

 キングザウルスの時と違い、ここが縦穴である以上は大きな回避行動はできない。

 最短で怪獣の近くまで接近して、必殺を叩き込むしかない。

 しかし、ベル・クラネルにはその両方を成立させる手段がない。

 

(やっぱり、人間のままだと太刀打ちできない)

 

 ベルは『ブラストショット』のバレル下部をスライドし、波動弾を装填。

 ルガノーガーの顔面に標準を合わせて、トリガーを引く。

『ブラストショット』は単発式故に、【ファイアボルト】のように連射はできないが、その分威力は絶大だ。

 悲鳴を上げて仰け反るルガノーガー。

 その隙に、ベルは『エボルトラスター』を抜刀、右腕を後ろから前に回して宝具を空に掲げた。

 

「せあぁぁぁ!」

 

 

 

 

 春姫たちは轟音が鳴り響く縦穴には到着すると、まず、階層主以上になる強大な怪物を目の当たりにする。

 想像を絶する光景に言葉を失う一同。

 そして、怪物に憎々しげに睨み付けられる白髪に、春姫が声を上げる。

 

「ベル様!」

 

 白い短刀を天に掲げる姿勢のまま、こちらを見るベル。

 その目が大きく見開かれる。

 同時に短刀から赤い光が発せられ、光の波紋が冒険者たちの視界を埋める。

 輝きが収まった時、少年の姿はなく、そこには4M(メドル)程の光の巨人が立っていた。

 

「…………………………ベル…………様……?」

 

 

 

 

 どうしてここに!? 

 巨人(ベル)は現れてしまった仲間(ファミリア)に動揺する。

 本来、変身してすぐに飛行能力を駆使して縦穴を駆け抜けて、必殺光線を打つ予定だった。

 しかし、それは近くに誰もいないからこその作戦だ。

 あの破壊光線を乱射されれば、リリたちは跡形もなく消し飛ぶだろう。

 当初の作戦は完全に瓦解した。

 そして、それ以上に

 

 ―見られた。

 

 知られたくなかったこの姿を、見られてしまった。

 そのことが何よりもショックで、変身が終わっても、彼女たちを見つめてしまった。

 そして、邪悪はそれを決して見逃さなかった。

 目の前の敵にとって、そこの人間たちが致命的な弱点だと理解したルガノーガーは、破壊光線を滅茶苦茶に乱射した。

 崩れ落ちる縦穴の壁から出た破片は、人間にとっては凶器だ。

 顔を引きつらせて、回避行動に入るパーティーと、降りしきる岩の塊を、パーティクル・フェザーやその拳で粉砕する巨人。

 しかし、縦穴を通り抜けるために、大きさを抑えて変身したせいで、完全に防ぎきれず、落ちてくる破片をリリたちは懸命に回避する。

 必死で人間たちを守る巨人に向けて、両腕の龍の口から必殺を期した一撃が炸裂する。

 迫りくる、青色破壊光線にリリたちが死を覚悟する中、巨人が懸命に両腕を突き出す。

 

「グゥゥゥ!!」

 

『サークル・シールド』

 

 オリオン・ブルーの円形のバリアーが、同色の光線を防ぐ。

 しかし、ルガノーガーは気にせず、3つの口や肩の赤い棘から攻撃を続ける。

 

「魔剣を使え!!」

 

 ヴェルフの声に従い、サポーター二人はそれぞれ魔剣を振るう。

 嘗て王国(ラキア)はとある魔剣を軍隊で装備し、不敗神話を築き上げた。

 名をクロッゾの魔剣。

 その一撃は容易く城壁を壊し、魔法に長ける妖精(エルフ)たちの里を焼き払ったと言い伝えられている。

 ベル・クラネルの専属鍛冶師であるヴェルフ・クロッゾは、そんな伝説を作り上げた鍛冶貴族の末裔である。

 ヴェルフ・クロッゾの魔剣は、先代クロッゾたちの魔剣すら凌駕する威力で怪獣に迫る。

 しかし、ルガノーガーはまさしく桁違い。その破壊光線は星すら殺す。

 人間の世界では最強を誇った魔剣も、星を蹂躙する殺意の前に霧散した。

 

「────────────」

 

 常識外れの光景に思考が停止する。

 自分たちには、この暴虐の嵐は止められないと本能が悟った。

 

「ピギギャァァァァァ!!!!!」

 

 三つの顔が喜色に染まる。

 獲物の無残な最期を想像し、歓喜の咆哮をそれぞれ上げた。

 それが、不協和音となって迷宮に轟く。

 死神の足音が少しずつ、近づいているように春姫は感じた。

 




 星すら殺す(比喩表現に非ず)
 ダンまちキャラとウルトラ怪獣の戦力格差がひどい。

怪獣・モンスター解説はいる?

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