ダンジョンで受け継がれる絆と出会うのは間違っているだろうか   作:逢奇流

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b-ALIEN ATTACK!

 夕日に照らされる路地を一人歩くベルはふと足を止めた。

 

(…………見られている?)

 

 オラリオに来てから、無遠慮な視線によく見られるようになって敏感になった感覚が自分に向く複数の視線に気が付いた。

 ヴェルフに注意されて、今日一日は休息日にしようとした僕だったけどいざ自由な時間になるとやることがない。

 そんな僕に、ヴェルフは暇だったらお使いをしてほしいと頼んできた。

 なんでも工房の設備に関する資料らしいんだけど、それをそろそろギルドに提出するころらしい。

 ところが、その担当がエルフで、かつてエルフの森を焼いた魔剣をつくるクロッゾに敵対心むき出しなんだとか。

 

「森を焼いた代償に、クロッゾは魔剣を創るスキルを無くしたんだ、それでいいだろうが」

 

 なんて愚痴っていたっけ。

 だから、代わりに行ってほしいとヴェルフは言っていた。

 ……多分、今の僕は暇があってあれこれ考えるより、簡単な仕事をして気を紛らわせた方がいいと気を使ってくれたんだろう。

 そんなわけで、僕は封筒を持ってギルドに向かっていた。

 しかし……

 

(確かに、近道するために人通りの少ない道を来たけど……()()()()()

 

 視線を感じるのだから、無人ということはないはずだ。

 戦争遊戯(ウォーゲーム)前の特訓で、アイズさんとティオナさんに二人の対人戦での経験を思い出す。

 敵対ファミリアに闇討ちされる前は、相手が人払いを済ませていることが多く、不自然なほど静かだという。

 付け焼刃の知識がどこまで正しいかわからないけど、護身用に持ってきた【ヘスティアナイフ】をいつでも抜けるようにしておく。

 すると、前方からエルフの女性が歩いてきた。

 

「すいません。少しお話があるのですが、こちらに来ていただきませんか」

 

 女性が話しかけてくる。

 その話し方に不気味なものを感じた。

 イントネーションはおかしくないんだけど、何かこう口が動いているだけの様な、奇妙な違和感。 

 

「? …………っ熱!!」

 

 女性の様子に警戒していると、背中に刻まれている【ステイタス】がチリチリと熱を発した。

 熱を発しているのは……アビリティ? …………【幸運】だろうか? 

 神様曰く、加護に近い効果を発揮する【幸運】が目の前の女性に反応している。

 その瞬間、能面の様なエルフの表情が僅かに苛立ちを見せた気がした。

 

(何かまずい!)

 

 直感に従い、ナイフではなく懐にある宝具『ブラストショット』を抜く。

 同時に、女性が襲い掛かってきた。

 幸い、女性の動きは一般人よりちょっと上程度。

 恩恵(ファルナ)を持つ僕は危なげなくポンプアクションを行い波動弾を装填、発射する。

 すると、女性の体からオオカミの様な怪人が吹き飛ばされた。

 

「いってぇ!? なんだ!?」

 

 ──しゃべった!? 

 

 明らかに人間ではない存在が喋ったことに驚愕する。

 

(この人に憑依していたのか!?)

 

 その時、首筋にヒヤリと冷たい感覚が走る。

 とっさに屈むと鈍器のようなものがブォン、と空振る音が聞こえた。

 振り返ると黒い体に赤い単眼が浮かぶ怪人が、その腕を僕の頭があったところに通過させていた。

 

「このへたくそが! しくじってんじゃねぇワロガ!」

 

「先に気づかれたのはお前だ、ウルフ星人。最近お前のミスが多い。人間どもの噂になっている」

 

 明らかに知性のある二人の怪人、ワロガとウルフ星人にベルの目が見開かれる。

 

「……ふむ。その反応、怪獣は知っていても宇宙人はこれが初見か。この世界の適合者(デュナミスト)よ」

 

 ワロガはそう呟くと、プランBに移行する、と言って空を見た。

 その視線の先には青い球体が……

 その瞬間、『エボルトラスター』が警告を発する。あれは危険だと。

 

(まずい、この人を保護しないと……!?)

 

 しかし、初動が遅れれば青い球によって町に被害が出る。

 思考は一瞬。

 ベルはそれに向けて砲声した。

 

「【ファイアボルト】‼」

 

 ベルの魔法は空高く舞い上がる。

 これで、近くの誰かが気づいてくれる。

 闇討ちしてきたということは、衆目の目に晒されたいわけではないはず。

 予想通り、ワロガとウルフ星人はその姿を消した。

 最後にこちらに来る人々の声を確認して、ベルは『エボルトラスター』を勢いよく抜刀、そのまま青い球に向けた。

 

「フッ!!」

 

 刀身から光があふれる。

 ベルの体がまばゆく発光すると、彼は空に向かい跳躍した。

 空中で徐々に大きさを増すベル。

 完全にウルトラマンに変身すると同時にジュネッシス・ホワイトに変化。

『メタフィールド』を展開し、青い球は光のドームに包まれて空に同化する。

 

 ──人々は、路地裏で倒れている女性に注目しており、誰一人として上空の異変に気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 青い球が割れ、中から『エボルトラスター』が警告した怪獣が現れる。

 黒と銀の体はウルトラマンと対照的で、頭部の黄色の機関が不気味に点滅する。

 虚ろな瞳がウルトラマンを見据えていた。

 

「シュンシュンシュンシュン…………ピポポポポッ」

 

 ゼットン

 対ウルトラマンに特化した、最悪の怪獣。

 数多のウルトラ戦士を苦しめた存在に、ベルも初っ端(しょっぱな)から全力で仕掛ける。

 これまで数々の怪獣を屠ってきた『クロスレイ・シュトローム』を発射するウルトラマン。

 必殺の輝きは、ゼットンの突き出した両腕の間に吸い込まれた。

 

『何が……ッ!?』

 

 驚くウルトラマンに向けて光線が返される。

 咄嗟に射線を胸部からずらすウルトラマン。

 光線は右肩にあたり、ウルトラマンは大きく吹き飛ばされた。

 

「ヘアアアァァァ!!!!」

 

 ふわりとした浮遊感の後、大地に激突する。

 痛みにのたうち回るウルトラマンを見ても、ゼットンは感情を見せずに淡々と火球を放つ。

 咄嗟に空へと逃れたウルトラマンは、次々と放たれる火球をアクロバティックに回避する。

 

『前の地下水路の2体と言い、今回の奴と言い、妙に感情を見せない怪獣が多い気がする……』

 

 喜怒哀楽がはっきりしていたキングザウルスやルガノーガーと違い、最近の怪獣はまるで感情がない。

 生物と言うより、本当に兵器のようだとベルは思った。

 光線が聞かないのなら格闘戦だと、ウルトラマンは『ジュネッスキック』を放った。

 しかし、その蹴りもゼットンを中心に発生するシャッターの様なバリアに防がれる。

 ウルトラマンが空中で反転して着地すると、続けて『ジュネッスパンチ』の構えをとる。

 すると、突如背後にゼットンが出現する。

 

『瞬間移動まで!?』

 

「ゼットォォオン………」

 

 至近距離で火球を連射される。

 ウランと発火液を体内で混ぜ合わせた火球の熱量は一兆度。

 これにはたまらずウルトラマンは吹き飛ばされ、エナジーコアの上にあるカラータイマーが点滅しだした。

 ここがメタフィールドで、ゼットンが弱体化していなければやられていたと、肝を冷やすベルだが頼みのメタフィールドの限界が見えてきたと悟る。

 

『……っまだだ!』

 

 ウルトラマンは渾身の力で巨大な竜巻を作り出す。

 竜巻はゼットンの巨体を高く浮き上がらせてから、勢いよく地面に向かって叩きつけた。

 

『ネクサスハリケーン』

 

 地面にめり込むゼットンにさらに『オーラミラージュ』を繰り出し動きを封じる。

 ゼットンが動けない間にウルトラマン(ベル)は【英雄願望(アルゴノゥト)】の蓄力(チャージ)を開始する。

 リン、リン、と輝く光粒がゼットンを照らす中、ベルは静かに告げた。

 

 ──1分の蓄力(チャージ)

 

 腕を光に纏い、ウルトラマンは勢い良く振りかぶる。

『ジュネッスパンチ』を凌駕するエネルギーを纏った鉄拳、その名も

 

『ジェネレードナックル』

 

 拳はバリアーごとゼットンの体を突き破る。

英雄願望(アルゴノゥト)】によって生み出された、尋常ではない衝撃がゼットンの体を崩壊させ、大爆発を引き起こす。

 同時に、『メタフィールド』の展開限界が来て、ウルトラマンの変身が解除される。

 人間に戻ったベルは、ウルトラマンの残滓によって赤い球体に包まれて地上に降り立った。

 

 

 

 

「ぐ、ああああぁぁぁぁぁ………………」

 

 プラン、とだらしなく揺れるボロボロの腕を抑えて呻く。

英雄願望(アルゴノゥト)】は諸刃の刃。溜めた力が大きければ大きいほど反動もでかい。

 武器は罅割れ、魔法後は精神力(マインド)が枯渇し、身体はボロボロになる。

 

「ギリギリ、だった……っ!」

 

 こうしてリスクを負わなければ、あのまま負けていた。

 敵の強大さに歯噛みする。

 とにかく、この消耗をどうにかしなくては。

 

(ホームで高等回復薬(ハイ・ポーション)を使って、後は『ストーンフリューゲル』を呼んで休まないと)

 

 よろめきながら、ホームに戻ろうとするベル。

 ギルドには行けなかったと、ヴェルフには謝ろう。

 そう、頭の片隅で考えた瞬間、冒険者としての勘が警鐘を鳴らす。

 同時に、足元に無数の赤い点が広がる。

 

(まずい、罠──)

 

 思考は閃光に包まれ、全身を焼く痛みにベルは絶叫した。

 

 

 

 

 気がつけばベルは倒れ伏していた。

 咄嗟に『エボルトラスター』の発生させるバリアーを展開したおかげで死ななかったらしい。

 もっとも、防ぎきれずに致命傷一歩手前の状況では、寿命が少し伸びただけだが。

 煙が晴れてきたとき、先ほどの二人の宇宙人が現れた。

 

「さて、予定通り奴をアジトに運ぶぞ」

 

 アジト……? 

 自分はどこかにさらわれるのだろうか、

 逃げようとしても少し、体が動くだけだ。

 

「また、あのバカでかい壁を超えるのかよ……」

 

 壁? 

 オラリオの壁と言えば……

 

「|オラリオの憲兵【ガネーシャファミリア】はせいぜい、出入口を見張っているだけだ。一度壁を越えれば、あとは生い茂る木々が我々を隠す」

 

 生い茂る木々……

 もしかして、アジトの場所は……

 

「分かってるつぅの、分かっていてもだるいんだよ」

 

「安心しろ、今回限りだ。こいつの光の持つエネルギーさえあれば我々の計画は始動する」

 

 ワロガが笑みを浮かべた気がした、

 悪意に歪んだ笑みを。

 

「あの、最強の殺戮兵器が完成すればすべては我々の思うままだ」

 

 なんとか、みんなに知らせないと、

 ベルは決して優秀とは言えない頭を懸命に回す。

 ふと、視界に真っ黒に焼け焦げた封筒が映った。

 元の色が分からないほど焼けた封筒だが【万能者(ペルセウス)】が発明したと言う、決して消えない羽ペンで書かれた宛名や住所はかろうじて読める。

 懸命に手を伸ばし、差出人住所に書かれたヴェルフ・クロッゾのクロッゾの部分を血で塗りつぶす。

 

「あぁ、俺たちを、この世界に引きずり込みやがったヤプールを出し抜けるぜ」

 

 彼らのそんな会話を最後に、ベルの意識は途絶えた。

 




 『ヴェルフ・■■■■』

 頭の良くない作者が必死に考えたメッセージです。
 ぶっちゃけ、ものすごい単純なので暗号とは言えない…
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