ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ Extra Stories.   作:アルタナ

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それぞれの日常

22層の森の中のとある小屋にて。

 

 

「…あれ、シグレ君は?」

 

 

朝。

起床し、リビングルームに向かうと、そこにはキリトがいた。

しかし、シグレの姿はない。

確か二人は一緒の部屋だったはず、とアスナは思い、疑問に思いキリトに尋ねる。

 

 

「あぁ、あいつなら…」

 

 

アスナの問いに答えながら、キリトは窓の外に視線を向ける。

その視線の先には、一人黙々と木刀での素振りをするシグレの姿。

よくよく意識してみれば、僅かながら、木刀が風を切る音が耳に届く。

 

 

「…あいつ、俺が起きた時にはもう素振り始めてた。何時からやってんだか…」

 

 

キリトはやれやれ、といった感じで呆れたように言う。

キリトの言いたいこともわかるが、アスナの心配は別のところにあった。

 

 

「シグレ君…ちゃんと寝てるのかな」

 

 

アスナが心配げに窓の外を見る。

今は、朝でも結構早い時間で、日はまだ昇りきっていないような時間で、僅かに薄暗さが残っている。

実際、サチとストレアはまだ起きておらず、部屋の中は少し肌寒い。

 

 

「そういや、いつも俺の方が先に寝てるな。夜は部屋で武器弄ったりしててなかなか寝ないし…そのうちに俺が先に落ちてる」

 

 

そう、キリトは言う。

そうなると少なくともキリトよりは睡眠時間は短いということになる。

この仮想世界で寝不足がどういう事態を招くかはよく分からない部分だが、いい事ではないのは確かである。

 

 

「もう…」

 

 

こうやって追いついて、一緒に行動するようになって。

偶然とはいえ、過去を知り、少しシグレという存在が分かったと思って。

そうなっても、まだどこか遠くに感じる、シグレという存在。

アスナやサチにとっては、自身や親しい者を守ってくれた恩人。

ストレアにとっても、きっとそうであり。

キリトにとっては、模擬戦とはいえ何度か剣を交える、好敵手であり友人。

そう思っても、誰の手も届いていないようなもどかしさを覚えながら、皆の起床を待ちつつ朝食の準備にかかるアスナだった。

 

 

 

~それぞれの日常~

 

 

 

そんなこんなで。

 

 

「おはよう、皆」

「…まだ眠い」

 

 

それから少しして、サチとストレアが部屋から出てくる。

普段通りのサチと眠そうに目元を擦るストレアを見るあたり、ストレアが起こされたであろう事は容易に想像がついた。

 

 

「ごめんねアスナ、遅くなっちゃった。何か手伝うこと…ある?」

「ありがとうサチさん。それじゃあ…」

 

 

サチがアスナのもとに向かい、一緒に朝食の準備をし。

 

 

「んー…やっぱり素振りしてた」

 

 

ストレアが窓の外を見て、シグレの姿を確認して安心したのか、椅子に腰かける。

ストレアの話しぶり、そして以前聞いた、シグレの過去の話から、これはシグレにとっての日課であることは容易に想像ができた。

 

 

「やっぱり、って…ストレアと二人の時もずっとあぁだったのか?」

「?…うん。アタシが起きたらいつも外にいるもん。寝顔見たことないよ、そういえば」

 

 

ますますもって寝不足の疑いがかかる。

とはいえ、本人を問いただしたところでどうにもならないだろう。

そう考えたキリトは、あいつが寝るのを見届けて寝るようにしよう。

そんな風に考えるのだった。

 

 

「…あ、キリト君、ストレアさん。もうすぐ朝ごはん出来るから、シグレ君呼んできてもらっていいかな?」

「あぁ、分かった」

「りょうかーい」

 

 

アスナの言葉にキリトとストレアは反対する理由がなかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

木刀の素振りをいったん止め。

 

 

「…っ」

 

 

軽く休憩なのか、腕を下ろして宙を見ながら深呼吸するシグレ。

 

 

「…よう、シグレ。朝から頑張ってるな?」

 

 

キリトが声をかけると、シグレは視線を向ける。

 

 

「……漸く起きたか」

「お前が早すぎだろ。何時から素振りしてたんだよ」

 

 

シグレの言葉にキリトは溜息。

それはストレアにとっても疑問だったが、それを言葉にはせず。

 

 

「アスナが朝ごはん出来たって。一緒に行こ?」

「…っ!?」

 

 

楽しそうにシグレの腕を引っ張るストレア。

一瞬バランスを崩しそうになりつつもすぐに立て直し、けれど振り払いもせず、木刀をしまいながら引っ張られていく。

 

 

「あいつと付き合うなら、ストレアくらいの押しの強さが必要か」

 

 

その様子に苦笑しながら、キリトは二人に続いた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そんなこんなで、朝食になり。

 

 

「「「「いただきます」」」」

「……いただきます」

 

 

キリト、アスナ、サチ、ストレアが合わせて言った後、少し遅れてシグレも言う。

そうして食事が始まるわけだが。

 

 

「ねぇねぇ、今日はみんなでどこか遊びに行かない?」

「いいな。この辺りなら釣りが割と出来るみたいだぞ。前釣り師に何人か会ったことあるし」

「うん、いいかも。天気もいいし、みんなでどこかに行きましょうか」

「なら…お弁当も用意しないと、かな」

 

 

四人は談笑しながら食事を進める。

その一方で。

 

 

「……」

 

 

シグレは一人、黙々と食事を進めていた。

実際の所、四人の会話にはそれほど意識をしていなかった。

話し始めがストレアの提案で、どこかに遊びに行く、という話題であることを認識したからだ。

シグレは楽しむならそれでいい、自分には関係ない。

そういうスタンスでいたのだが。

 

 

「…ね、シグレもそれでいい?」

「っ!?」

 

 

突然ストレアに声を掛けられ、食べ物が一瞬喉に詰まりかける。

 

 

「だ…大丈夫?」

「…大事ない。それより…何の話だ」

 

 

サチに心配され、それに返しながらストレアに先を促す。

 

 

「だから、皆でピクニックに行こうって話。キリトが釣り教えてくれるって!」

「…さっきも言ったけど、俺だってそこまで上手いわけじゃ」

「でもこの中だとキリト君しか釣りスキル持ってないじゃない」

「まぁ…そりゃそうだけど」

 

 

楽しそうに予定を話す。

流石にシグレとて、そんな空気に水を差すほど野暮でもなかったので。

 

 

「…そうだな」

 

 

たまにはいいか、と思ったところで、シグレの視界の端に通知が入る。

送り主は、シグレが何度か会った事のある情報屋だった。

緊急、の二文字のタイトルから、食事中だがシグレはメッセージを見る。

 

 

「…ど、どうしたの?」

 

 

サチに声を掛けられる。

その後少ししてメッセージを読み終えたのか、ウィンドウを操作し。

 

 

「…ピクニックにはお前たちで行けばいい」

「え?シグレ君は?」

 

 

シグレが立ち上がり、身支度を整える様子を見て慌てながらアスナが尋ねる。

 

 

「…用事が出来た。昼には戻る」

「あ、おい…」

 

 

キリトの制止虚しく、シグレは転移結晶で街に向かっていった。

 

 

「……」

 

 

ある意味、シグレを中心に集まった一行だったが、当のシグレがこの調子。

 

 

「ま、まぁ…昼には戻るって言ってたし、準備して待ってようぜ」

 

 

キリトがフォローに回り。

 

 

「そ、そうね」

「シグレのお昼ご飯だけ激辛とかどう?」

「それは…シグレって辛い物大丈夫なの?」

 

 

アスナ、ストレア、サチも立ち直る。

 

 

「全く…」

 

 

そして、キリトの溜息で1セット。

ちなみに、こんなやり取りは初めてではない。

シグレの単独行動は今に始まったことではない。

何をやってるのかも、誰にも話していない。

何のためのパーティなのかがまるで分らなかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

一方のシグレはというと。

 

 

「…」

 

 

とある層の、人通りなどまるでない路地裏。

圏内でこそあるが、日が昇っても薄暗いような細道をひたすら進んでいく。

 

 

「…来たか」

「あぁ」

 

 

シグレが向かった先で、ドラム缶のようなものに腰掛けるフードを被った男。

声で男と判別しただけでシグレは実際のところは知らない。

メッセージでのやり取りこそあるが、情報屋との関係などその程度でいい。

シグレはそう思っていたので、追及はしていなかった。

 

 

「……例の情報についてだが」

「おっと、その前に」

 

 

シグレの言葉を遮り、目の前の男は掌を差し出す。

その意図を察し、シグレは溜息を吐きながら幾らかの金を渡す。

早い話、情報料だった。

 

 

「…仕事柄だ、悪く思うなよ?」

「分かっている」

「助かる。さて…」

 

 

そこから、本格的な情報のやり取りを始める。

 

 

 

それからどのくらい時間が経っただろうか。

 

 

「…俺が掴んだ情報は以上だ」

「……感謝する」

 

 

情報屋に礼を述べ、踵を返し、その場を去ろうとするシグレ。

そんな彼に。

 

 

「また、継続して情報は調べてみる。何かあれば連絡しよう」

「……」

 

 

情報屋は声をかけたが、それにはシグレは答えなかった。

 

 

 

そうして、路地裏の細道を戻っていく。

 

 

「……」

 

 

けれど、来た道とは違う道に入る。

建物と建物の隙間があり、碁盤目状に広がる路地裏は、ある意味では迷路のようだった。

そんな複雑な道を、あえて来た道と異なる道に入った理由はといえば。

 

 

「…そろそろ、出てきたらどうだ」

 

 

溜息交じりのシグレの言葉。

どこから現れたか、数十人に上るオレンジカーソルプレイヤーが、前後から迫る。

下卑た笑みを浮かべながら武器を抜いているあたり、友好的ではないのは言うまでもなかった。

 

 

「気付かれずに後ろから切り付けて殺しちまえば終わりだと思ったんだがなぁ…」

 

 

手の甲に見覚えのある紋様をつけていた。

笑う棺桶。

アジトにストレアと二人で突入したのは割と記憶に新しかった。

 

 

「でもまぁ、一人相手にこんだけいりゃ、いくらこいつが強くても平気だろ」

「おぉ、行くぜ野郎どもぉ!!」

 

 

誰かの発破におぉ!と皆が武器を持って雪崩れ込んでくる。

その様子に、シグレは刀を抜き。

 

 

「……馬鹿か」

 

 

一閃。

振りぬいた切っ先は、先頭にいた相手の武器を跳ね上げていた。

少し遅れて、カラン、と短剣が地面に落ちた。

 

 

「…こんな狭い場所では、人数差は関係ない。まして貴様ら残党相手…相手にもなるまい」

「がぁっ!?」

 

 

話しながらも距離を詰め、武器を失った相手の懐を袈裟型に切りつける。

圏内なのでダメージこそ発生しないが、ノックバックは起きるし、防具の耐久値も減る。

狭い場所でノックバックすれば、後ろにも影響が出る。

 

 

「……まだやるか?」

 

 

無表情で尋ねる。

それが相手の癪に障ったか。

 

 

「や…やっちまえぇ!!」

 

 

結局、各々の武器を持って雪崩れ込んでくる事になった。

どうせこうなる事はわかっていたとはいえ。

 

 

「…」

 

 

目を閉じて、溜息を一つ。

落ち着いた所で目を開き。

 

 

「……来い」

 

 

刀を構える。

そんなシグレの口元には、恐怖すら覚えそうな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

それから、どれだけ時間が経っただろうか。

すっかり日が昇るどころか真上を少し過ぎていた。

 

 

「…」

 

 

圏内なので、殺しはしないし、殺せない。

けれど、そこで武器を携えて立っていたのは、シグレだけだった。

シグレだけが立ち、通路は倒れた人で埋め尽くされている。

そのほとんどが気絶していて、その場をどうやって出ようか悩んでいた。

転移結晶でもあれば楽だったのだが、今は持ち合わせがなかった。

 

 

「う、ぅ…」

 

 

積み重なった山の一部から呻き声が聞こえ、シグレはその声の元に近づく。

 

 

「……お前」

「ひっ!?」

 

 

シグレは刀を抜き、その切っ先を眼前に向ける。

 

 

「や、やめ、殺さな…!」

 

 

気絶した人の山に潰され身動きがとれず、ただ懇願しかできない状態の男は泣きそうな声で言う。

そんな相手に。

 

 

「…通行の邪魔だ。どかせ」

 

 

シグレは切っ先を近づける。

 

 

「そ、そんなこと言われても、皆気絶して…!」

 

 

一人一人起こして、撤退するにしても、全員起こすのにどれだけ時間がかかるか分からないし、まず起こすために身動きが取れない。

やるにしても、そうすぐには出来ない。

そう言おうとしたが。

 

 

「…」

 

 

シグレは容赦なく、肩にその切っ先を突き刺す。

 

 

「あ゛ああぁぁぁぁっ!!?」

 

 

断末魔の雄たけびが上がるが、シグレは表情一つ変えない。

 

 

「……やるのか?やらないのか?」

「や、やります、だから…ひぎっ!」

 

 

シグレの問いに対する答えに、シグレは刀を引き抜く。

 

 

「う、ぐっ…!」

 

 

なんとかその隙間を這い出ようとする。

けれど、腰の辺りまで出たところで動きが止まる。

 

 

「あ、あの…足が、何かに引っかかって…引っ張って、もらえませんか…?」

 

 

シグレを見上げながら手を伸ばす男。

そんな彼に、シグレは刀で答える。

 

 

「ひ、ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

腰から若干足が出ていたので、太腿を一閃し、胴体と脚を切り離す。

その激痛に、再度悲鳴が上がるが、シグレは気にも留めない。

 

 

「……」

 

 

そうして切り離した相手の首根っこを掴み、外に放り出す。

コンクリートの地面に、ずしゃ、と音を立てて崩れ落ちるのを見届け、シグレは後を追う。

 

 

「……う、ぅ…!」

 

 

呻きながらも起き上がろうとして、けれど脚がなく起き上がれない男。

 

 

「……やるのなら、早くしろ。時間の無駄だ」

 

 

そんな相手に、シグレは情け容赦なく足先で小突く。

 

 

「…ひ、ひどすぎる……!」

 

 

傍から見れば、どちらが悪党か分かったものではない。

もとよりシグレは、正義の味方になりたかったわけでもなかったので、気にしてはいなかったが。

 

 

「情け容赦なく殺しに来たお前達が、何を言う」

 

 

返り討ちとはいえ、シグレは被害者である。

その被害者が、加害者に同情する義理はなかった。

 

 

「……それで、いつになったら俺の要求は受理される?」

 

 

シグレは刀に手をかける。

もはやその動作すら、男には恐怖だった。

 

 

 

…その後、彼らがどうなったか、シグレがどうしたのか。

それを知る者は、彼らのみだった。

そうして、ようやく路地裏を抜けてくれば。

 

 

「…夕方か」

 

 

空は橙色に染まっており、人通りも疎らになっていた。

 

 

「そういえば…」

 

 

昼過ぎには戻る、と言ったはずだったが、とシグレは思う。

けれど、それ以上は考えなかった。

四人で今頃ピクニック帰りだろう、と思っていたから。

 

 

「……武器の手入れでもして帰るか」

 

 

先の戦いで、武器の耐久値はかなり落ちていた。

今後のことを考えれば、メンテナンスが必要だろう。

そう思い、リズベットの武具店へと、シグレは一人、足を向けた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そうして向かった先で。

 

 

「いらっしゃいませ、リズベット武具店へ…って、あんたか。アスナは?」

 

 

最初は営業スマイル。

けれど途中から顔見知りだからか溜息交じりになるリズベット。

 

 

「…一人だが、何か問題が?」

「別にー?…それで、今日は何の用?」

「修理を頼む」

 

 

言いながら、刀を渡す。

それをみて、ひっ!?と驚きながら。

 

 

「あんた、この前修理したばっかじゃない!どうやったら数日でここまでになるのよ!?」

「…」

 

 

さすがに笑う棺桶の残党に襲われてました、と言うのもどうかと思い、黙るシグレ。

別に言うこと自体は問題ないのだが、リズベットはアスナと仲がいいこともあり、伝わる可能性を懸念してだった。

無言は無言で疑われるのだが、それはそれ、といった感覚だった。

リズベットも追及する気はないのか、それ以上は聞かず。

 

 

「…分かったわよ。修理ね…ちょっと待ってなさい」

「あぁ」

 

 

奥の工房に入っていくリズベットを見送りながら、シグレは店内を見回す。

店内の雰囲気は変わらないとはいえ、置いてある武器の質が上がっているような気がした。

 

 

「……」

 

 

それからどれくらい時間がたっただろうか。

実際のところ、そんなに経っていないだろうが。

 

 

「…はい、できたわよ」

「助かる」

 

 

刀を受け取りながら、シグレは謝礼金を払う。

刀を受け取り、外に出ようと歩き出したところで。

 

 

「…あー…シグレ」

「?」

「なんていうか…言っても意味ないかもしれないけど。無茶はほどほどにしなさいよ?」

 

 

リズベットの言葉に、シグレは返事を返さなかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そうして22層に戻って来た頃には、日が沈んで薄暗くなってきていた。

そうして、森の方へ戻ると。

 

 

「あー!やっと戻って来た!」

 

 

聞き覚えのある声が耳に入る。

声のした方を見れば、ストレアがこちらを指さしていた。

 

 

「……」

 

 

駆け寄ってくるストレアの後ろから、小屋から出てきたのかキリト達がついてきていた。

 

 

「…もう戻っていたのか」

「?…何が?」

「ピクニックとやらに行ったのだろう」

 

 

朝そんな話をしていただろう、と思い尋ねる。

しかし。

 

 

「…まだ行ってないよ?」

 

 

何言ってるの、と言わんばかりのストレア。

シグレはそれに疑問符を浮かべていた。

 

 

「お前を待ってたんだよ」

 

 

その答えは、後から来たキリトが告げる。

 

 

「そうだよ。お昼に戻ってくるって言ってたから待ってたのに」

「…それとも、シグレにとっては今がお昼なのかな?」

 

 

アスナの不満そうな言葉と、サチの若干棘のある言葉にぐ、と言葉を詰まらせる。

逃げようにもストレアにしっかり確保されていたため、逃げられなかった。

 

 

「んじゃま、シグレも戻ってきたし、行くか!」

「「「おー!」」」

 

 

キリトの号令に、アスナ、サチ、ストレアは賛成する。

やれやれ、といった感じのシグレだったが。

 

 

「…分かった」

 

 

待たせた事に責任を感じてか、そう答えるシグレ。

 

 

「夜だけど、偶にはいいかもね」

「うん…静かに過ごせそう」

「だな。まぁ湖の近くだから、寒さには気を付けたほうがいいかもな」

「大丈夫、大丈夫!心配性だねキリトは」

「……いや、ストレアが一番心配なんだが」

「やーん、キリトのエッチ!そういうのはシグレだけだよ?」

「なんでそうなるんだ!?」

「…ストレアさん、シグレ君。ちょっとその事詳しく」

 

 

少し身の危険を感じつつ、少し遅れてシグレは四人に続いた。

こういう雰囲気も、偶になら悪くない、と思いながら。

 

 

「…ちなみに、シグレ君には別件で聞きたいことがあります」

 

 

真剣、というか若干の怒りを孕ませながらのアスナの言葉。

 

 

「…これ、どういうことかな?」

「……」

 

 

アスナは一通のメッセージを可視化しながらシグレに尋ねる。

送り主はリズベット。

だとすれば用件など知れている。

武器の耐久値を見て、告げ口をされたのだろう。

 

 

「今日は保留するけど…明日、ちゃんと聞きますから」

 

 

明日も誰かからメッセージが来ないだろうか、などと思いながら、シグレは見えない何かに思いを馳せていた。

とりあえず。

 

 

「リズベット武具店は下手に利用できないか」

 

 

そう、シグレは一つ学習していた。




おまけ:湖にて


シグレ「……釣りはやった事ないのだが」

キリト「俺だって得意じゃないけどな。まぁやってみろって」

シグレ「……(見様見真似でキリトのように釣竿を振る)」

キリト「あ、おいそんなに強く振ったら…!」

シグレ「っ…!(釣竿が手から抜けて、竿ごと湖に飛んでいく)」

ストレア「おー…ナイスショット(湖に飛んでいく釣竿を見ながら)」

アスナ・サチ「…(笑いを堪えている)」

キリト「…ぶふっ(堪えきれず吹き出す)」

シグレ「……(無言で刀を抜き、キリトに斬りかかる)」

キリト「ちょ、待て待て!なんで俺!?(剣を抜き応戦しつつ逃げる)」



おまけ2:後日、リズベット武具店にて


シグレ「…お前、なぜアスナにメッセージを送った」

リズベット「アスナと約束してたのよ。なんか怪しかったら教えるって」

シグレ「……(疲れた表情)」

リズベット「…何かあったの?」

シグレ「数時間にわたる説教、怒りと共に涙を添えて」

リズベット「わかりにくい表現やめい」

シグレ「……丸一日それだったのだが」

リズベット「…ご愁傷様」
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