最低最悪の魔王が征くのわゆ世界   作:バロックス(駄犬

1 / 29
この作品には劇場版OverQuatzer、勇者であるシリーズの著しいネタバレがあります。


01.彷徨える魂

 『将来はキミになりたい』と少年は大人を見て言う。

 『俺みたいにはなるなよ』と大人は少年を見て言う。

 

 

 未来、大衆から最低最悪と銘を打たれる、時代を変えようとした男は王となる素質を持っていた。

 未来、自らを最高最善と謳う、別の時間軸の同じ名を持つ男もまた王となる素質を持っていた。

 

 

 時代を閉塞させ、一から築き直そうとする想いと。

 時代を超越させ、これからの時代を築こうとする想いが交錯して。

 

 

 

 戦いの果てに敗北し、時代を変えることが出来ず宇宙を彷徨い続ける男が居た。

 

 

 

 

 常磐SOUGOは王となる男であった。

 しかし将来、最高最善とは程遠い、最低最悪の魔王と呼ばれるほどの。

 Quatzer(クォーツァー)と呼ばれる歴史の管理者の首領。

 またの名を、仮面ライダーバールクス。仮面ライダージオウと呼ばれる常盤ソウゴとは別の時間軸の人間だ。

 

 

 常磐SOUGOには野望があった。平成という時代をリセットし、その歴史をやり直すという野望が。

 

 

 彼にとって、平成という30年に続いた歴史は「醜い」という一言に集約される。

 

 

 

 相も変わらず人々は争いを止めない。

 資源は枯渇し、消滅への道筋を作り出しているのは自分たちと気づかないまま。

 

 ライダーの歴史もそうだった。

 

 

 突出して大きくなりすぎた世界観。

 纏まりのない物語(ストーリー)

 パワーバランスのインフレーション。

 矛盾する設定。

 腹パン、変顔、マンホールとネタに走る脚本。

 終いにはライダーを謳うオッサン芸人までもが現れた。

 

 

 多元世界を通してクォーツァーにクレームが寄せられる程。

 酷く歪で不完全で、凸凹だらけの世代、平成。

 

 

 

 SOUGOは醜く、美しくないと思った。

 昭和の次代、多くの仮面ライダーたちの想いを踏みにじるかのような平成ライダーの所業の数々に。

 怒りを抱いたSOUGOは平成の人間を一人残らず亡き者にしようと画策する。

 己が『平成』という時代の最初の男となるために。

 

 

 ダイマジーンによって平成の建造物のほとんどは破壊され、多くの人間がタイムトンネルへと吸い込まれていく。

 仮面ライダーたちの力をライドウォッチへと変換させ、自身の元へと集めさせることで平成ライダーを消滅させた。

 

 

 平成をリセットするという光景を玉座から眺めていたSOUGOの野望が成されようとしたときした時。

 

 

 一人の男が立ちはだかった。

 常磐ソウゴ、仮面ライダージオウだ。

 

 

 

 

 ジクウドライバーと、自身のライドウォッチを手に掲げた男は平成の最後の一人となったライダーの力を握りしめて、SOUGOに戦いを挑んだ。

 

 

 

 決して平成をリセットさせるものかと。

 平成ライダーの歴史を終わらせてたまるかと。

 

 

 凸凹だらけのこの時代は、瞬間瞬間を必死に生きた者たちが築いてきた素晴らしい時代だから。

 群を抜いた奇抜な個性は時に人を笑わせ、不評を買ったりもしたが確かに人々を感動させてきた。

 個性に溢れた、素晴らしい凸凹の時代だとソウゴは言った。

 一人一人が違うのなんて当たり前なのだと。

 

 

 このソウゴもまた、王としての素質を持っていた。

 SOUGOに平成ライダーの力を集めさせるための自身の代役でしかなかった男が、まさか本当に王の素質を宿していたとは、SOUGO自身も思わなかった。

 

 

 

 SOUGOとソウゴが叫ぶ。

 バールクスとジオウの拳が交差する。

 時代の歴史を懸けた戦いが始まりを告げたのだ。

 

 

 

 

 

 結果として、常盤SOUGOは敗北した。

 もう一人の、替え玉としか見ていなかった常盤ソウゴに。

 

 

 

 

 全力を尽くした。

 手を抜いたつもりはない。

 バールクスはジオウを圧倒した。

 

 揺るがない信念。

 飽くなき野望。

 ライダーとしての能力。

 

 

 全てにおいて勝るはずの彼が敗北を喫した理由はただ一つ。

 

 

 

 その時不思議なことが起こった。

 

 

 常磐ソウゴが真の魔王として覚醒し、仮面ライダージオウ・オーマフォームへと変身を遂げたのだ。

 

 

 

 

 

 心底ふざけるな、とSOUGOは言いたかった。

 こんな事があっていいののは、BLACK RXまでだと。

 

 

 魔王の力へと目覚めたオーマジオウの力は凄まじい物であった。

 時を操り、

 未来を予知し、

 腕を動かすだけでカッシーンやダイマジーンを灰燼と化していく姿はまさしく魔王。

 

 

 

 そして最終決戦。自身の持つ切り札、バイオライダーとJのライドウォッチで優位に立つも平成ライダーの力を結集させたライダーキックが液状化による無敵と巨大化を併せ持つバールクスの身体を貫いていく。

 

 

「バカな……バカなァァァァ!!!!」

 

 

 これが『平成』の力なのだと。

 SOUGOは敗北し、彼の抱いていた野望はソウゴの手によって砕かれた……ようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「ここは……どこだ?」

 

 

 虚空だけが広がる灰色の世界でSOUGOはただ一人漂っていた。

 

 

 世界は並行で果てがなく、天上は届くことなく遥かに遠い。

 

 

 

 

「俺は……死んだ筈だ…」

 

 

 もう一人の自分、常磐ソウゴと戦い、平成の力を結集させた一撃を身に受けたSOUGOの肉体は爆裂四散し、消滅したはずだ。

 いや、生きている感覚は無い。身体が宙を浮いて、どこかでふわふわとして、文字通り漂流してるような妙な感覚だった。

 

 

 人の世からは逸脱した幽世の世界。ならば、これはSOUGOが死後の世界に誘われたのだろうか。

 そんな途方もない思考が彼の脳裏で行われる。

 身体も、心も冷静だった。それは、SOUGO自身が驚いていた事であった。

 

 

 自身が死後の世界らしき場所に来たこと。

 ジオウに敗北したこと。

 平成という時代をやり直せなかったこと。

 

 

 本懐を遂げられなかった悔しさよりも、あの男―――仮面ライダージオウから与えられた敗北をSOUGO自身が受け入れていたことに。

 

 

 この世に生を受け、王となるべくして生まれ。

 歴史を管理する組織、Quatzer(クォーツァー)の首領になることすらも、生まれ持った力で世界を統べる王として君臨するはずだったSOUGO。

 王としてのプライド、勝利への固執、自身が敗北した理由の不快さを感じない理由は何故なのか。

 

 

 

(今となっては……全て無に等しい)

 

 

 

 答えを捻りだそうとして、SOUGOは考えるのを止めた。

 自分は闘い、敗北し、死んだ。それだけだ。

 

 

 例え答えを得たとしても、死んだSOUGOにとってはすべてが遅すぎたことである。

 無駄の無駄で、それならば思考というものは放棄するべきだと己の運命を受け入れようとした。

 

 

 

 その時だった。

 

 

「―――――!? な、なにッ!?」

 

 

 

 その空間で浮遊する者はSOUGOだけではなかった。

 生者が存在するには不釣り合いな灰色の世界を浮かべ流れている漂流物がSOUGOの目の前を通り過ぎていく。

 明らかに人の形をしていて、顔をよく見ればSOUGOが知っている人物だった。

 

 

「ジョウゲン!カゲン!」

 

 

 生前、SOUGOと同じQuatzer(クォーツァー)の一員として彼の手となり足となっていた者たちだ。

 細身の男、ジョウゲン。またの名を仮面ライダーザモナス。

 太り気味の男、カゲン。またの名を仮面ライダーゾンジス。

 

 

 彼らもまた仮面ライダージオウ、常盤ソウゴの仲間たちとの戦いに敗れ者達だった。

 

 

 この場所に来た者が自分だけではなく、彼らもいたという事実にSOUGOは仮面ライダージオウに敗北したのだという共通した事実を読み取る。

 川に流れる漂流物のように浮かんでいる彼らは目を閉じたまま眠っているようであった。

 SOUGOのように、意識を覚醒させるのは先の事になるだろう。

 

 

 

 

 瞬間、灰色の天井から一筋の光が溢れた。

 

 

 

 その光は真っすぐにSOUGOたちを照らし出していた。

 全身を包み込み、目を覆いたくなるような強烈な光にSOUGOは思わず目の前を腕で覆う。

 

 

 しかし、この光には覚えがある。

 

 

「これは――――」

 

 

 身体に感じるかすかな温かさ。 

 邪気を払うかのような強い光。

 スポットライトのように焦点を合わせたSOUGOたちを導くような。

 

 

 太陽。

 世界を遍く輝かせる力をもつ天の存在を感じた。

 

 

 

「!?―――――この声、なんだッ 直接脳内に……」

 

 

 鐘が鳴り響くような強振に思わず頭に手を置くSOUGO。

 不快な共鳴は脳を揺らし、不快感を露にさせ、思わず彼が一時は立つのも困難になるほどである。

 

 

 やげて、不快さは消え失せ、ラジオのチャンネルが次第に調節されるようにSOUGOに鮮明な『声』となって響き始めた。その声は確かに名乗っていたのだ。

 

 

 

 我は天の神、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――天の神。

 

 

 それはこの世界に存在する、『神』と称される自然物の概念的な存在であった。

 世を照らしだす太陽の化身。

 日本神話における天照大神。

 天上の神にて最高神。

 

 

 それが天の神である。

 

 

 

 その神は、地球に存在する人間という人種を絶滅させようとしていた。

 地球という星に自身の尖兵、その世界では星屑、バーテックスと呼ばれる異形を送り込み、人間たちを皆殺しにしようとしていた。

 

 

 しかし、人類を闇夜から照らし慈母の如き温かさで包む太陽の神がなぜ人類を滅ぼすに至ったか。

 

 

 理由は単純で、人類という種族が地球を破滅させる原因となりつつあったからだ。

 増長し、化学、呪術、あらゆる分野に技術を発展した、否、発展させすぎてしまった(・・・・・・・・・・・)人類はこの地球におけるあらゆる自然物を食い尽くそうとした。

 

 

 地球温暖化による海面上昇。

 大規模な開拓による森林伐採、自然破壊。

 オゾン層の破壊。

 土壌、海洋の汚染。

 

 

 2016年、人間の消費による地球環境の負荷は増え続けているというデータがある。

 1970年以降からの統計で約58%の自然が減少し、2018年となってもその負荷は増え続けている。

 

 天の神は我が物顔で資源を食い散らかす人間に怒りを覚えた。地球の命が悲鳴を上げている事に気付いた天の神は人類の粛清を決行した。

 

 

 

 だが人類を滅ぼす天の神に反対する神々もいた。それが土地神である。

 地球に根付く古の土地神たちは人類を滅びから守るように一時は天の神へと戦いを挑んだ。しかし、圧倒的な力を持つ天の神を前に敗れ、土地神たちは今度は人にその力の一つを与え、神の加護の元に天の神に反逆する戦士を作り出した。

 

 

 

 それが勇者、と呼ばれる者たち。

 

 

 十代そこらの少女、しかも無垢な少女という限定的な存在に与えられる少女たちは神の力を身に纏い戦いを始める。

 天の神が人類粛清を決行して三年の月日が流れてもなお、人類という種を滅ぼせなかったのは一重にこの勇者たちの決死の抵抗が大きいだろう。

 

 

 

「なるほど……死んだ筈の俺達の肉体を修復し、命を与えたのは―――、今度は人間である俺達の力を用いて人間たちを滅ぼせと。そう言いたいんだな?」

 

 

 SOUGOの言葉の通り、彼らの肉体はジオウとの戦いの果てにその全てが四散している。死んだことは明白だった。

 その魂を天の神は次元を超え、回収し、SOUGOたちに新たな肉体を与えて蘇生を図ったのだ。

 

 

 戦いを制するには敵と同じ思考を持つ必要があると感じたのだろう。

 目には目を。

 歯には歯を。

 人には人を。

 SOUGOたちは天の神が人類を滅ぼす為に召喚された駒でしかなかった。

 

 

 

 天の神からは改めて言葉にして、命令する。

 

 

 

 人類を滅ぼせ、と。それに対し、SOUGOが返す答えは。

 

 

 

「――――断る」

 

 

 

 天上の神を前に、NOという否定。協力をしないという物だった。

 

 

「天の神―――と言ったか、俺は確かに人間を滅ぼそうとした男だ。しかしそれは平成に生まれた人間だけ。

 

 貴様の言う“人類根絶”など掲げてはいない。

 時代を……平成という時代を一からやり直すことが俺の目的だからな」

 

 

 SOUGOは王としての素質を持っていた。プライドは高いほうである。

 気高き気質は死してなお失われること無く、今もこうして彼の心の根元に残る芯となっている。

 

 

 天の神は勝手だ。

 人が増長しつ続けるのはいつの時代だって同じことだというのに。

 

 

 資源を減らし、宗教をもとに、国家間においての戦争は終わらない。

 私腹を肥やし、貧富の格差が生まれ、片方が幸福を掴み、片方が不幸を掴まされる『弱者が虐げられる世界』。

 

 

 だからこそ、必要なのだ。

 その時代を、世界を統べる王が。

 民を正しき場所へと導く道しるべが。

 

 

 従わない者、反逆する者。いずれもSOUGOは己の力を持って蹴散らしていく。

 今でも、それは変わらない。きっと、これからも変わらない。

 

 

 そして、SOUGOは。神を前にしても決して臆することなく、毅然としている。

 自分が神という崇められるだけでしかない偶像の言うことを聞くなど、あってはならないのだ。

 

 

 

「肉体を与えてくれたことには感謝しよう……だが俺は既に死んだ身、人類を滅亡させるための駒が必要ならば他を当たればいい――――ッ!?」

 

 

 直後、SOUGOの身体に激痛が走った。

 

 胸を焼くような痛みが焼き鏝を押し付けられたかのような熱さを感じたSOUGOは膝をつき、自身の胸を押さえつける。

 

 

 

「ぐっ…、がッ…あぁッッ!!!」

 

 

 心臓がある左胸を握るように掴んで必死に痛みを堪えるSOUGOの顔からは絶え間なく汗が流れ始めていた。

 痛みは引くどころか更に増していき、その表情は苦痛に歪み、遂に前のめりに倒れ込む。

 

 

 自身の衣服を一部脱ぎ、痛む胸の部分を目にしてSOUGOは驚愕した。

 

 

 

「こ、これは……ッ、呪術、か……ッ」

 

 

 SOUGOの左胸に現れた覚えのない紋様。

 扇状に広がるそれはまるで太陽の姿を思わせるものだった。

 その紋様が鈍く光るたびにSOUGOの胸に激痛が走り、呼吸する事すらも困難にさせる。

 

 

 SOUGOはこれが天の神が与えた呪いなのだということを瞬時に理解した。

 恐らく、天の神が自分のいう事を聞かない相手を戒める為に用いられる呪い。少しでも反抗心を見せれば激痛を伴って発動するタチの悪い呪いだということを。 

 

 

「俺を……ッ、この痛みを以って傀儡にするつもりか…ッッ」

 

 

 鈍痛を堪えようとするSOUGOが見たのは光。

 天の神が鏡の如き表面、その中心に光をため込み始めていた。

 

 

「く……ッ」

 

 

 その光の照準がショウゲンとカゲンに合わさっていたことを察知したSOUGOの行動は早かった。

 何故そういった行動をSOUGOが取ったかは自身でも理解できない(・・・・・・・・・・)

 

 

 

『タイム・マジーン』

 

 

 突如としてショウゲンとカゲンの目の前に一台の浮遊体。

 およそ現代の技術では実現不可能な物体はSOUGOが持つ時空転移装置、『タイムマジーン』と呼ばれる代物だ。

 

 

 ベルトがあり、フィアズフォンがあり、自身の力が使えるSOUGOはこの場所に自身が所有する全ての物が揃っていると予想した。

 いわゆる『賭け』を承知での動作。

 遠隔操作によるタイム・マジーンが起動し、天の光が二人を包み込む前にマシンに回収させる。

 

 

 次は目的地だ。移動する時代を細かく指定してる時間は無い。全自動操作において重要視させる項目を『もっとも安全な時代へタイムスリップさせる』ことに設定する。

 1秒か、または2秒もかからずともタイムスリップの手順を終えたSOUGOは手を翳し、マシンへ呼び掛ける。

 

 

 

「時空転移システム……起動ッッ」

 

 

 タイムマジーンに備わっている機能の一つ、『アドヴァンスジェネレーター』が時間移動をする為の特殊な干渉波を放つ。

 目の前の空間が歪み、異なる時代を繋げる道筋、『ジェネレーションズウェイ』への侵入ゲートを開いた。

 二人を乗せたマシンは開けた空間の穴へと入り込むと、何事もなかったかのように歪んだ空間が元に戻っていく。

 

 

 ざまぁ見ろ、SOUGOはそう思った。

 

 

 二人は今頃空間跳躍を経て、別の時代に辿り着いている事だろう。

 マシンが無事にこの場からいなくなることが出来たことに何故か(・・・)安心したSOUGOだった。

 

 

 ただ一人だけ残されたSOUGOを天の神が見下ろしていた。

 善も悪も関係ない光が眼下の男を照らし出している。

 

 

「クク……天の神よ、貴様の思うような展開にはならなかったな……!!」

 

 

 未だ胸に走る激痛に耐え、SOUGOは不敵に笑って見せる。

 今はただ、目の前の神を欺けたことに満足し、優越感に浸り、自身のプライドを見せつけるということだけが彼の意識を繋ぎとめていた。

 ジクウドライバーを握りしめ、天の神を睨みながら変身ベルトを腰に巻いたSOUGOは『バールクスライドウォッチ』を手にする。

 

 ウォッチを可変させ、ドライバーにセット、ジクウドライバーのロックを解除するとその背後には懐古時計と昆虫のような翅が広がった。

 天高く掲げた右手、手の甲を自身の顔付近まで持っていくとSOUGOの顔は戦士の顔つきへと変貌した。

 

 

「―――――――変身ッッ」

 

 

【RIDER TIME】

 

 

 ドライバーが時計回りに回転し、鐘のような電子音が鳴り響く。 

 全身を包む青白い光はBRXのキングストーンフラッシュにも似ている。

 光が消えるとそこには異様な姿へと変貌を遂げたSOUGOが立っていた。

 

 

【仮面ライダーバールクス!!】

 

 

 金の装飾が施された肩、黒い装甲(ボディ)と顔には真紅(まっか)の『ライダー』という文字をした()

 最低最悪の名を手にする筈の力。仮面ライダーバールクスはジクウドライバーに手を翳し、長剣・リボルケインを顕現する。

 

 

「リボルケインッッ」

 

 

 長剣を引き抜いたバールクスは真っすぐ天へと飛び上がった。

 SOUGOが見せるは王としての矜持。それを示す為に天の神へ戦いを挑んだのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「くっ……ぐぁ……!!」

 

 

 

 どこか分からぬ大地の上で、苦痛に顔を歪める男がいる。常盤SOUGOだ。

 仮面ライダーバールクスとしての姿は解除されたSOUGOの身体には生傷が絶えない。全身に痛みが走り、立ち上がることも、指を動かすことも困難な状況。

 

 

 

 

 結果として常盤SOUGOは天の神に戦いを挑み、そして敗北した。

 

 いかなる攻撃も、手段も天上の神に通じることはなかった。

 RXのリボルケインも。

 バイオライダーの液状化も。

 ロボライダーの強固さも。

 彼の持ち得る最強の攻撃と防御手段が悉く打ち破られる。それほどまでに戦力の差は歴然だった。

 

 

 

 自らを蘇らせた天の神の意志に背き、反逆したはずなのにSOUGOは何故か生きている。理由は明白だった。

 

 

 

「なぜ、止めをささない…ッ 俺など……いつでも殺せる…そういうことかっ、天の神よっ!!」

 

 

 天の神がSOUGOを生かした理由。それは現在のSOUGOは天の神を脅かすほどの脅威と認識されなかったから。

 

 

 彼に下した評価は並みより遥かに下。しかも下の下。

 

 

 身を焼くような呪いを持ちながら勝負を挑んできた男に一途の期待を寄せたが拍子抜けした。

 SOUGOが自らの誇りをもって勝ち目のない戦いを挑んできたのだと判断した天の神はSOUGOの人間的な心の部分を折ることにしたのだ。

 

 

 

 それは敗北させた男を捕えず、殺さず、敢えて逃げさせるというもの。

 

 

「う、うぉおおおお……」

 

 

 それは結果として、SOUGOの心にダメージを与える。

 生殺与奪を余儀なくされ、満足のいく戦いを展開することもなく力に屈したSOUGOは生き恥を晒すという屈辱という沼に沈んだ。

 いっそのこと、殺してくれたらと。

 いっそのこと、あの場で跡形もなく消滅できたらと。そう思わずにはいられない。

 

 

 

 逃げさせられた場所、恐らく、彼の知る地球の森林の中で倒れるSOUGOに雨が降り注ぐ。

 屈辱と恥を孕んだ雨がSOUGOの身体を打ち付ける。

 

 

 並みの精神を持つ者ならば、この時点で心が折れ、泣き叫ぶだろう。

 あまりの屈辱に耐えられず、その場で自ら命を絶とうとするだろう。

 

 

「許さん、許さんぞ……天の神ィ……!!」

 

 

 だが、この男は誰だ。常磐SOUGOだ。

 世界に名を知らしめる、『最低最悪の魔王』だ。

 平成という時代を一度は終わらせ、やり直そうと画策した男だ。

 

 

 野望を為そうとする者たちの精神は根っこの部分が図太い。

 そして一度プライドが折れかける程の事態に陥っても、その屈辱を糧にして再び立ち上がろうとする。

 

 

 レジリエンス能力という物がある。

 人間のメンタルというのは己の不利的な状況に対しストレスを覚える。

 家庭、仕事、人間関係、大会成績などそれらが織り交ざった不安要素を与えられた状況下で適応できるようになるのがレジリエンスだ。

 

 

 一般的なレジリエンスはストレス、適応、ストレス、適応、というサイクルを繰り返してその能力を身に付けていく。一度に過大なストレスを受けてしまえば、心が不調を来たし、再起に時間が掛かる。

 

 

 今回SOUGOの心が折れなかったのは、天の神によって生かされたという屈辱よりも『怒り』があまりにも多かったからだろう。

 

 己をこのような無様な姿にした天の神に怒りを抱き。

 己がこのような無様な姿を晒したことに、自分自身に怒りを抱いた。

 

 

 怒りが屈辱を上回った結果。彼はそこに復讐心を上乗せして、心を再起させたのである。

 

 

 

「後悔するぞ……俺を倒さなかったことを……ッ、いやッ……後悔させてやるッッ」

 

 

 激痛に見舞われる肉体を起こし、立ち上がったSOUGOは雨を降らす暗雲を見上げる。

 そこに天の神は居ない。天の神も脅威と認識しなかったSOUGOのことなど、もう眼中にないかもしれない。

 

 

「必ず、この俺がッッ 貴様を……天の神を打ち滅ぼす……それまで首を洗って待っているがいいッッッ」

 

 

 それでも叫ばずにはいられなかった。

 そうでもしなければ、本当に気が惨めな気持ちを抱いたまま潰れてしまいそうだったから。

 

 

 

 怒りを叫んだ魔王となる男の体を、天から降り注ぐ雨が容赦なく打ち付ける。

 

 それは、天の神がSOUGOを嘲笑っているようにも見えた。

 西暦2017年。四国が戦場になる1年前の出来事である。

 

 

 

 

 

 




初めて特撮系に手を出しました。バロックスです。
たぶんこれも瞬瞬必生の賜物です。
ライダー超全集が手元にないから能力とか設定に誤差があったら申し訳ない。
このSOUGOはどちらかというと非道とか、外道を嫌う王道を征く感じのSOUGOなので違和感しか生まれないかもしれませんが素材が足りない……申し訳ありません、このような格好(醜態)で……。


Q:何故、ン我が魔王(常盤ソウゴ)ではない男のクロスを?
A:私にとって、彼がン我が魔王なのです。(劇場版だけのキャラにしておくにはもったいなかったなんて言えない)



次の話は四国戦争真っただ中の2018年です。前回から1年以上が経過しています。
のわゆ原作でいいますと、第十三話『落花』よりスタート。


書き溜めしてるので、修正しつつ随時投稿する予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。