『援軍……援軍だわ!やった、助かった!助かった!!』
樹海に雪崩れ込むように侵入してくる星屑たちを
勇者側達がもたらしたリプログラミングの効果により、能力を失ったバグスター達がその数を減らしていった為、戦力の差を逆転させられていたのである。
バグスター側の敗北が濃厚となった今、ここで頼れるのは自分たちを創造した天の神による援軍だけであった。そして、それが今来た。
この戦いはバグスターにとって人類殲滅の為の戦いでもあり、天の神が応援に駆け付けるまでの時間を稼ぐための戦いでもあったのだ。
【BARLCKX TIME BREAK!!】
ジェミニの背後で爆発が起きる。バールクスの必殺キックが全てのゾンビゲーマーを消滅させていた。
リプログラミングの影響で既に能力を失った彼らの前にバールクスが敗北する道理はない。
『ふん、ようやく来たか。案外遅かったな』
バールクスが星屑で埋め尽くされつつある空を見上げる。
形勢が不利になった事すらも気に留めていない様子だった。
彼もまた勇者と同じく、この状況に恐怖を感じずに立ち向かう者であった。
『フフ……残念だったわね、人間。これで我々バグスターの勝利は揺るがないモノとなった。
あの数のバーテックスを前に、お前たちが敵うわけがない』
それが虚勢だと思ったのか、ジェミニが薄い笑みを浮かべた。
『バーテックスと残りのバグスターが居ればアナタたち人間を滅ぼすには充分!
四国はこれでGAME OVER!!
勇者達の
私達が生き残り、C・Shadowの
『さて、どうだか……』
未だ勝利してもないのに興奮が最高潮に達したかのような声で高らかに勝利を叫ぶジェミニをバールクスは毅然とした態度で言い返す。
この男の言い方には含みがあった。
勇者とこの男、仮面ライダーとは徹底的な違いとでもいうのか。
勇者や、バグスターであるジェミニですら見えていないモノを彼だけは見通しているかのようだった。
『見ろ。これから面白い物が見れるぞ』
バールクスが目線を向けているのは
『おお!塩の如き白き身体を持つ者達よ!
その美しき白さこそ、我らが友の証ッ!!』
ソルティバグスターがまるで友を迎え入れるように両の手を広げて一体の星屑に近づき、その肌に触れる。
もにゅん、と不思議と柔らかい感触に気を良くしたソルティバグスターは戦意を取り戻す。
現状、バールクスの言う面白い事が起きる予兆は見受けられない。
やはりハッタリか、そう思った矢先であった。
『さぁ行こうぞ我が友よ!
塩の導きのままに、これから全ての人類を塩塗れに―――――』
セリフを言い終える時、ソルティの目の前に居た星屑がその
ヒトのような形の歯茎を剥き出しにした白い歯と大きな口はサイズ的にソルティバグスターなど口に含めるくらいに、デカい。
『え――――』
呆然と立ち尽くしているソルティバグスターの頭部を星屑の頭部が覆った。
まるでかぷっ、というような柔らかな音で相手に殺意を感じさせないような、子供のようにじゃれるような感覚で。
次の瞬間、ゴキンと。
骨が折れたような音を立てて、星屑の口がソルティバグスターの身体から離れていく。
しかしソルティバグスターの身体は
星屑は
頭部を失ったソルティバグスターは身体を直立させたまま仰向けで地面に倒れた。
結果的にはこうだ。
なんで?
どうして?
それは樹海にいるジェミニと他のバグスター達も、戦っていた勇者達ですら同時に考えたことだった。
バグスターは天の神が創造した。
故にバグスターにとって天の神とは創造主である。
そして四国を衰弱させ、機を見て増援を寄越し、共に四国を制圧するという作戦もジェミニは知っていた。
それが命令だったから従ったのだ。
だから、人類を滅ぼすまでに共闘するバーテックスとバグスターは友軍関係の筈である。
しかし、今目の前で行われた星屑によるバグスターの殺害。
あれはなんなんだ。
明らかな敵対行動。
まるで星屑がバグスターを味方として見ていないような。
もとより殺す存在だったかのような。
やっと訪れた人類攻略のチャンス。
逆転したと思っていた戦況により過剰に分泌されたアドレナリンが、ジェミニの脳に『仲間を殺された』という事実に気付かせない。
停止する思考、そんな事お構いなしに星屑たちが一斉に動き出す。
『な、なんでコイツら俺達の事狙って――――ギャッ!?』
『お、お主ら、仲間じゃ――――ガァッ!?』
仲間のバグスター達は必死になって逃げるが、星屑達は浮遊していて、その数も多いためどこに逃げても必ずどこかで追い詰められる。
リプログラミングの影響で能力を奪われていたバグスター達は星屑相手に成す術がなかった。
バイクによる高速移動を得意とするモータスバグスターはバイクを失っていて。
飛行能力で自由に空を飛べるはずのバーニアバグスターはジェット機能を失っていた。
地面を走り回るしか出来ないバグスター達が星屑に追いつかれるのは時間の問題だった。
そして追い詰められ、逃げ場を失ったバグスター達を星屑達は容赦なく捕食していく。
『ぎゃああああっ!!』
1体のバグスターに対して3体の星屑が襲い掛かった。
星屑達はその強靭な歯でバグスターの腕と足に噛みつき、へし折り、最後は噛み千切る。
動くこともままならないバグスターの腹を食い破り、引きずり出された臓物が樹海に飛び散る。
『がっ、ぎっ、ぁ…っ……あ……ぇ…』
ぐちゃ、ぐちゅと肉を口内で咀嚼しているのはバグスターの肉なのだろう。
血のような液体が星屑の口端から垂れていた。
一方的な虐殺、その光景を見ていたジェミニは呆然としていた。
今起きている現実を受け止め切れず、夢ではないかと思っていた。
『なぜ、なぜ……こんなことが……』
『教えてやろうか……バグスター』
ジェミニの背後に立つバールクスがその状況を理解していた。
星屑がバグスターを狩るその意味を。
『なぜ友軍だと思っていた星屑が、お前たちバグスターを攻撃するのか。
その答えはただ一つ……
天の神はお前たちバグスターを最初から生かすつもりなど無かったからだ』
バールクスは続ける。
『貴様はこう言ったな、バグスター。
〝私達バグスターが人類に代わり、地球を支配する〟、と。
それはつまり、この世界の人類に貴様らバグスターが成る、という事だ。
天の神は人類を滅ぼす存在。ならば、今後人類に成ろうとしている貴様らは天の神が作る世界に不要だと判断されたのだ。
要するに―――――――』
『私達は最初から捨て駒として造られたということ……?』
その命も、胸を打つ鼓動も。
全てが四国を滅ぼすためだけに造られたものだった。
ゲーム病で人類を混乱させ。
神樹の力を削ぎ。
勇者達を疲弊させる。
そして消耗した勇者とバグスターの両方を食い殺して人類殲滅を完了させる。
それが天の神の本当の作戦。
バグスターが造られた真実。
『お前たちの人生は全て、神である
生かすも自由。
殺すも自由。
天の神がバグスターを創造した理由とは。
バグスター達は天の神にとって都合の良い戦いの駒とする為であった。
ジェミニの視線の先には抵抗も虚しく、数に圧倒され無残にも捕食されていく仲間を見て、唇を噛み締めた。
自身の口を切りかねないほどに力を込めながら。
『私達の命を勝手に生み出して……勝手に捨てるっていうの?……ふざけないでよ!!』
怒りの叫びとともにジェミニが大鎌を手に飛び出した。
そこには背後のバールクスへの警戒などなく、彼女の思考は仲間を救うための戦いへとシフトしていたのだ。
『どけぇぇぇええ!!!』
邪気を孕んだ大鎌の刃がジェミニの目下、仲間のバグスターに群がる星屑の集団に振り下ろされる。
風を斬るような音とともに、瞬時に真っ二つにされた星屑は奇妙な呻き声をあげてその場に倒れ込んだ。
『大丈夫!?すぐ逃げる……わ、よ――――』
すぐさま襲われていたバグスターへ駆け寄って、ジェミニは目を見開いた。
見なければよかったと。
見てしまったことを途轍もなく後悔した。
そこにあったのは凄惨な仲間の姿だった。
仰向けになって倒れているのはゲーム・『ジューシーバーガー』のバグスター『バガモン』。
ハンバーガーのパン生地の身体と頭部は所々食い破られ、腕と足は繋がっているのもやっとの状態だ。
既に息はない。
『バガモン……』
人に寄生し、悪意をもって存在力を奪うバグスターとは異なり、バガモンはバグスターの中では珍しく優しい心を持ったバグスターであった。
自分を作ってくれた製作者をゲーム病に感染させたこと以外は、自ら悪役を買ってエグゼイドに倒されようとして感染者を救おうとしたバグスターだった。
ジェミニは人間なんて生物を庇うバガモンの事を嫌ってはいたが、そのバガモンが持つ『心の優しさ』自体は嫌いにはなれなかった。
だからこの戦いで人類を攻略したら自分の目の届かない場所でバグスター達にハンバーガーを好きなだけ振舞えるようにしてやりたいと、そう思っていたのに。
『うぁ……ぁぁぁ!』
不意に胸の内に宿った黒い炎が、ジェミニの手に持つ大鎌の柄を強く握った。
遠くの彼方、群体を形成する星屑達に憎悪の視線を向けながら。
『ああああああッッ!!!』
ジェミニが叫び、駆ける。
迫りくる白の暴力に対して臆することなく2メートルに届くのではないかと言うサイズの大鎌を軽々と振い、群がる星屑を撃破していく。
パズルゲーマのバフに頼らず、自らの力と怒りのみで振るわれるジェミニの大鎌の太刀筋は粗い。
だが、その粗さ故に力任せに振るわれた一撃は星屑をまとめて数十という数を屠る威力を見せる。
『ハアアアッッ!!!』
樹海に響くのはジェミニの慟哭。
大事な仲間を奪われた。
生きるための世界を奪われた。
創造主である天の神に存在を否定された。
一方的な理不尽。
裏切られ、奪われて、否定されて。
ならば、自分たちは一体なんの為に生まれてきたんだろうか。
湧き上がる怒りをぶつけるように、ジェミニは大鎌を振い星屑を切り伏せ続けていく。
しかし、悪鬼羅刹の如き戦いを繰り広げていたジェミニだったが、その動きが突如としてピタリと止まった。
『が、ぁ……ッ!』
ジェミニの灰色の肌に棘のようなものが生えていた。
その棘はジェミニの肩を貫いていたのだ。
数キロ先の丘、棘を纏ったバーテックスの進化体が陣を取っていた。
恐らく、今ジェミニに刺さっている棘はその進化体が発射したものだろう。
肩にある棘を抜こうとしたジェミニだったが、その余裕も
丘の上で陣取る進化体が再び棘を飛ばしてきたのだ。
空へ放たれた棘はゆうに30を超える。
弧を描き、棘はまるで雨のようにジェミニの元へ降り注いでいく。
まわりの星屑を巻き込むなどお構いなしだ。
バーテックスや、星屑の代わりなどいくらでもいる。
だからこうした捨て身の足止めによる強引な戦略を組み立てることが出来るのである。
『――――ッッ!!』
砂塵が舞う中、視界も確認できないジェミニであったが確かに感じる音があった。
それはずっしりと重い鉄のような塊の棘が、自分の身体に何本も突き刺さる音である。
ぶちゅ、ずぶ、ぐちゅ、と肉を抉られた痛みにジェミニが地面を転がった。
砂塵が煙幕の役割を果たしたか、致命傷をかろうじて避けたジェミニはいまだ生存している。
だが、その身体はボロボロだった。
灰色の身体は傷付き、左腕は肘から先を失い、脇は抉られたかのように穴が開いていた。
正直、立っているのがやっとだ。
だけどまだ生きている。
生き抜くことが最優先だと、ジェミニは地面を這いつくばるように移動する。
移動するって、どこへ?
ここは戦闘結界、樹海の中だ。
現実世界に戻るには樹海が解除されないと戻れないし、壁の外に出ようにもそこには天の神の勢力がうじゃうじゃいる。
『し、にたく……ない、しにたく、ないッ!』
負傷したこの身で数による一斉攻撃を仕掛けられたら一溜まりもない。
それでも、ジェミニは必死に『死にたくない』と口にして、『生きたい』と願っていた。
『あ―――――』
絶望が容赦なく、ジェミニの視界を覆った。
浮遊していた星屑がジェミニの存在を感知し、襲ってきたのだ。
3体の星屑がそれぞれ別の方向から近づくと、大口を開けてジェミニの身体に噛り付く。
『あぁッ!!い、いだい、い゛ッ』
巨大な歯を突きたてたのは腕を失った左の肩。
ごりっ、という音を立てて歯が食い込み、骨を砕いた痛みにジェミニが顔を苦痛に歪める。
そして星屑はジェミニの肩を咥えたまま、食い破ろうとはせず、敢えて噛みついたまま離そうとはしなかった。
その間に、残りの2体がゆっくりと近づいてい来る。
それは相手を確実に仕留めるために星屑の戦法だった。
片方が獲物を逃さないようにして、動きを封じ、残りの仲間で殺すため。
『うあああああッ!この、このッ……はなれ、ろッ!!はなれろッ!!』
大鎌の刃を肩に噛みつく星屑に突き立てるが、星屑は怯まない。
充分に力を伝えていない大鎌の攻撃は星屑を撃破するには威力が足りなかった。
そして眼前、『死』が口を開けていた。
星屑の口がジェミニの頭目掛けて食らわんと飛び掛かってきていた。
死を覚悟したジェミニ、その絶望に至るまでの刹那、太陽の如き光剣が駆け抜ける。
『ハァッ!!』
その星屑は背後から強襲を仕掛けたバールクスによるリボルケインの一刀で切り伏せられた。
呆気なく絶命した星屑が地面に倒れたことに目もくれず、バールクスが左手に持つ『ボルティックシューター』のトリガーを絞り、ジェミニの肩に噛みついている星屑を打ち抜く。
光子線によって頭部を貫かれた星屑は言葉を発さぬまま口を開き、そのまま動かなくなった。
『……チッ、ロボライダーもここまでか。
やってくれたな、ゾンビどもめ』
バールクスが何か異変に気付いた。
左手にもっていたボルティックシューターがショートしたように火花を散らしていたからだ。
やがてボルティックシューターは銃としての形を失うと、ライドウォッチの形態へと変化する。
ひび割れ、劣化したような色合いのウォッチは何度可変させてもボルティックシューターへと変化することが出来なかった。
ゾンビゲーマーとの戦いの最中、彼らの持つ能力である『相手の装備を腐敗させる力』により、ライドウォッチがダメージを負っていたのだ。
その後も使用を続けていたが、先ほど放った一発が最後の一発だったのだろう。
スコーピオン戦では『バイオライダー』。
ゾンビゲーマー戦では『ロボライダー』。
これでバールクスは自身が持つ力を二つも失ってしまった事になる。
残るライドウォッチは『RX』と『BLACK』のみ。
『アナタ……どうして』
助けたのか、そう問おうとするジェミニをバールクスが見つめ、リボルケインを向けた。
『立て』
エネルギーを纏う剣の光と共にバールクスがそう言い放つ。
ふと、ジェミニは違和感を覚えた。
敵であるジェミニを倒すことが目的ならば、例え傷付いている状態であろうと問答無用で追撃を仕掛けてくるはずだ。
なのに、バールクスはそれをしない。
その意図がまったく分からなかったからだ。
『……なんのつもり?私を殺すなら今が絶好のチャンスだっていうのに』
『そうだ。今がお前を殺す時だ』
はっ、とジェミニが鼻で嗤った。
『なら好きにしなさい……私の負けよ。
悔しいけど、今の私達バグスターの力じゃ天の神の下っ端にすら敵わない。
統率者である私ですらこのザマ……所詮捨て駒の人生、私達に生まれてきた意味なんて……無かった』
ジェミニの身体から熱が引いていく。
それは仲間を殺され、報復に走った時に生まれた熱だった。
身体全体を焼く様に駆り立てていた情熱が、今のジェミニには無くなっていた。
生きようという気力が消えかけていたのだ。
失意の瞳を向けるジェミニにバールクスが口を開く。
『
『誇り?なんのこと?』
『
バグスターとして、ゲームの敵キャラとして。
『C・Shadow』というゲームの主人公であり、ボスキャラとして。
人類を攻略するウィルスとして。
人ならざる立場でありながら、人以上に『生』を望んだ存在として。
それら全てが、ジェミニバグスターの誇り。
『悪くはなかった。人類を滅ぼす作戦の手際の良さは』
ふ、とバールクスが仮面の下で笑った気がした。
『どういう手段を使ったか知らないが、壁を越えて神樹の索敵に感知されずに四国に侵入し、人々をゲーム病に感染させた。
大社と、医療機関、勇者、そして神樹すらも疲弊させる長期戦は甚大なダメージを与えていた。
あと一週間も長期戦が長引いていたら……壁が崩壊し、間違いなく貴様らバグスターが勝利していたことだろう……バーテックス側の裏切りが無ければの話だったが』
ジェミニは奇妙な気分になった。
この男、バールクスは曲がりなりにも『仮面ライダー』で、肩書は一応『正義の味方』だが人を切り捨てる残虐性を持ち合わせていて、『ジェミニを倒す敵』だと認識している筈だ。
なのに、彼から掛けられる言葉は正義の味方が敵を打倒す前口上ではなく、
『多種多様なバグスター達を率いた物量作戦、完全体ゾンビゲーマーという死なない兵士。
まさか奴ら如きにライドウォッチを破壊されるとは思ってもいなかった……これはかなりの痛手だ。
ジェミニバグスターよ。
理由は違えど、同じく人類を滅ぼそうとした存在としてお前に賞賛を贈る』
だから、とバールクスは付け加えて。
『そんな情けない姿で逝こうとするな。
無意味な死を享受するな。
悪は悪らしく。
敵のボスキャラならばボスキャラらしく。
高らかに笑って見せろ。
命ある限り、己の望むままに進んで見せろ。
主人公として。
敵として。
バグスターとしての誇りを取り戻せ。
ボスキャラとして誇りを抱いて戦い、死んでいけ。
〝C・Shadow〟は俺がこの手で
長ったらしい言葉の裏に、「戦え」と。
そう言われているような気がした。
『アナタ、何を言い出すかと思ったら……やっぱり気に食わない男ね。
要は〝諦めずに最後まで戦え〟ってことでしょ?
〝死を前に逃げ出すな〟って。
〝生きることを投げ出すな〟って。
〝俺がこのゲームをクリアしてやる〟って……そんなの、そんなの――――』
敵から贈られたその言葉に不思議と共感を覚え、引いていた熱が再び身体に宿るのを感じる。
『―――心が躍るしかないじゃない!!』
笑みを以って、ジェミニは立ち上がった。
どんなゲームキャラだって、プレイヤーにプレイされるために生み出された。
良ゲーと呼ばれる分類は幅広く普及するが、鬱ゲー、クソゲーと呼ばれる手の出しづらいゲームはプレイされること無くどこかへ消えていく。
ゲームキャラであるバグスターは攻略するプレイヤーが存在することで、己の存在価値を見出せるのだ。
バールクスは『C・Shadow』というゲームをクリアすると言った。
それはこのゲームを
ゲームが攻略する
それに応えない理由はない。
このプレイヤーのためなら、自分はまだ全力で戦える。
このプレイヤーになら、倒されたっていい。
片腕ながらも大鎌を構えたジェミニは迷うことなくバールクスに戦いを挑んだ。
相対したバールクスもリボルケインを構え、ジェミニを迎え撃つ。
勝負は一瞬だった。
片腕で、負傷しているジェミニにバールクスが遅れを取るはずがない。
立つのがやっとのジェミニの肉体はズタボロで、いつ消滅しても可笑しく無かったのだ。
【FINISH TIME!! RX!!】
本来なら、半分の力も出す必要がない相手にバールクスが取った攻撃は一つ。全力だ。
左手に持つ『RXライドウォッチ』をドライバーの左側スロットにセットする。
ドライバーを回転させ、剣に宿る光が一際強く輝いた。
【REVOL TIME CRUSH!!】
エネルギーを纏う剣がジェミニの腹部を貫いた。
RXの持つリボルケイン。
その実態は、『剣』ではなくキングストーンから生成される光子の『杖』である。
RXがそれを敵に用いるときは敵が最期を迎える時。
『ライダーキック』が前座で『リボルケイン』が本命。
敵怪人確殺の名を欲しいままにしたRXの必殺技。
それは、プレイヤーであるバールクスがボスであるジェミニに送る最大級の賛辞だった。
『ふふ……やっぱ、勝てなかったか』
腹部に差し込まれたリボルケインが膨大なエネルギーをジェミニの体内へ流し込む。
蓄積されたエネルギーが怪人の体内で発生するオーバーフローが引き起こす爆発で敵を倒すのがRXの武器、リボルケインだ。
もうすぐ肉体が膨張するエネルギーの負荷に耐えきれず爆発するというのに。
『死』がすぐそこに迫っているというのに。
死ぬ前とは思えない穏やかな笑みを、ジェミニは浮かべていた。
『悲観するな、ジェミニバグスター……お前は良くやった』
『ええ、そうね。良くやったと思うわ……。
ゲームの敵キャラとして、プレイヤーの前に立ちはだかる……己の使命を全うする事も忘れていたなんて。
例え神が創造した命であっても、使い捨ての駒であっても『私が私』であることには変わらない。
満たされた気持ちだった。
そこに苦痛はない。
敗北した事すらも清々しいくらいに思えた。
身体が限界を超える。
肉体がいよいよと爆発する三秒前。
『C・Shadowは―――――』
バールクスが言った。
『――――俺が命を懸けてプレイする価値のあるゲームだった……楽しかったぞ』
リボルケインが引き抜かれ、バールクスは背を向けた。
そしてジェミニが爆発する一秒前、バールクスは言葉を聞く。
『ありがとう』
耳にジェミニの感謝の言葉を。
直後、黒緑の甲冑はジェミニがオーバーフローによって引き起こした爆風をその背に受けた。
装甲を通して伝わる熱を気に留めないまま、後方にさっきまで存在していた者へ向けてバールクスは呟く。
『許せ――――そして、眠れ』
破滅だけの
天の神に運命を翻弄された少女の安らかな眠りを、常磐SOUGOは祈った。
倒すべき敵を倒した。
バグスターもバーテックスも、粗方その数を減らしたこの状況で勇者と仮面ライダーの勝利は決まったかのように見えた。
だが、実際は違った。
敵はまだ居たのである。
『―――!!あれは……』
否、それは居たのではなく、
ソレは天の神が常磐SOUGOの記憶から辿り、ライダーという歴史から再現された存在だった。
人類を滅ぼす為に駄目押しの一手として、四国を覆う神樹の結界を、堂々と真正面から踏み込んできた。
人から見れば、それは巨人に見えた。
他の勇者が豆粒に感じるくらいに、果てしなく大きな体躯を持つ者。
黒い鎧を纏った人型の異形は天高く聳え立ち、樹海の大地を踏み鳴らすたびに小規模な地鳴りを発生させる。
バーテックスでも、バグスターでもない存在に勇者達は息を呑んだ。
しかし、バールクスであるSOUGOだけが
『あれは……まさかキングダーク!?
ライダー世界の敵が、なぜこの世界に……』
暗黒組織『GOD』の最高幹部、『キングダーク』襲来。
機械巨人の血の色のような赤き双眸が、戦場となった樹海を見下ろしていた。
そしてこの時、SOUGOはキングダークに気を取られて気付いていなかった。
樹海の空に、誰かが入り込んできたような
天の神
「キミの運命は最初から……私の、この、手の上で……転がされているんだよッッ ハァーハッハッハァ――――ブゥンッッ」
C・Shadow、ノーマルエンドです。
RXのフィニッシュタイムは完全なオリジナルですが、映画だとウォッチ起動するだけで効果発動してたので、ちゃんとスロットに挿せば威力ヤベーやつに成るんじゃないかと想像した結果です。賛否両論、どんとこい。
そしてさよなら、ロボライダー。
・REVOL TIME CRUSH
バールクスがジクウドライバーのスロットにちゃんとウォッチをセットして行うRXの必殺技、リボルクラッシュ。切り裂くだけのサーベルがこの時だけは敵にエネルギーを流し込むRXのリボルケイン本来の力へと変化する。
要するに、相手は死ぬ。