私の所にはコラボキャラは実装されていないみたいですね、とじともコラボキャラが全く来ませんよ。不具合ですかね(無償恵み排出率0.5%)
樹海化。
それは、土地神の集合体である神樹が展開する四国を守護する為の防御結界。
土地、空、建物を異空間へと変化させるこの結界は四国の人々が直接敵の攻撃に晒されないようにする為のものでもある。
勇者達が人ならざる者を相手取る間に、結界は展開されるのだ。
しかし、その防御は完璧に非ず、時間が経過するとともに現実の世界に悪影響を与えてしまう謂わば『諸刃の守り』。
戦いが長引けば長引くほど被害は火災、爆発、突発的な事故などの『自然現象』によって人々に危害を加える。
故に樹海化が起きたのならば、『敵群は神速を以って殲滅すべし』が定石なのである。
そんな人々が知らない、そんな人々を守る戦いが今まさに、四国で起きていた。
「神々の尖兵達よ、この生太刀の錆となれ!」
冥府の刀・生太刀を振るう一人の少女が樹海化した四国の地を駆ける。
地面を蹴れば、たん、という軽い羽根のような柔らかさで舞い上がれば稲穂の如き金色の長髪が揺れる。
勇者のリーダーである、乃木若葉だ。
『イーッ!』
『イーッ!』
『イーッ!』
若葉の目前には奇妙な軍団が居た。
明らかに胡散臭さマックスの、奇声をあげながら手にナイフを構えた全身黒タイツの者達。
タイツに白のラインが走るサソリの模様をしたこの変人達はショッカー戦闘員にもよく似た存在、『デストロン戦闘員』である。
天の神がライダーの歴史を元に作り出した、バーテックス製のデストロン戦闘員だ。
ショッカー戦闘員とデストロン戦闘員の違いが分からない?いいや、よく見てほしい。
前述したとおり戦闘服は骨っぽいラインとサソリのようなラインで差別をつけることが出来る。
悪の組織ショッカーよりも後に生まれた組織の戦闘員であることもあり、デストロン戦闘員はショッカー戦闘員よりも遥かに強い。
具体的には普通の人間の5倍は強い。
『イーッ!』
『イーッ!』
『イーッ!』
戦闘員が飛び上がる。
先ほど説明した通り、彼らは通常の人間よりも5倍の身体能力を発揮することが出来て、約6mの跳躍が可能だ。
「くっ……いつ見ても面妖な奴らよ!」
『イーッ!』
『イーッ!』
『イーッ!』
「それしか言えないのかお前らは!」
『イーッ!』
『イーッ!』
『イーッ!』
とある事情で、彼らが発せる言語は限られているらしいが、普通にイーッ以外にも喋れる。
そもそも戦闘員同士の会話もこの「イーッ」で統一されているのも理由があり、組織の情報漏洩を防ぐ目的のものとも考えられているが、定かではない。
だが、若葉が憤りをこの場で感じているのは神々の尖兵と呼ぶにはあまりにも間抜けたデザインの敵だということであった。
若葉が生太刀を振るい、戦闘員が成す術なくぶった切られる。
戦闘力が通常の人間の5倍発揮できるとしても、
大岩を容易に砕き、自らの何倍ものサイズを持つ大型バーテックスを普段から相手取っている若葉たち勇者が、デストロン戦闘員如きに遅れを取るわけがなかった。
『イーッ!』
『イーッ!』
『イーッ!』
「やられる時もそれか!」
デストロン戦闘員は魂の叫びとともに爆裂四散した。
彼ら戦闘員の肉体にはショッカー時代からの名残からか、自爆機能が搭載されている。
戦闘員は元々は男性の肉体が薬品投与や洗脳・改造によって作られた者達である。そんな彼らの行く末は決まっており、不要な戦闘員は処刑される、実験台にされる悲しい運命を背負った者達なのだ。
「敵の勢いもだいぶ無くなってきたようだが……
脅威を切り伏せた若葉は戦況を見渡しながら、息を整える。
神託によって備えていた今回の戦いは小規模であることからこちらの戦力の分析を行う、斥候という可能性があった。
目視で確認できる戦力でも星屑クラスの群体が200程度と今しがた倒した戦闘員が300程度、そして―――、
「にしてもやけにデカい蟹だな」
遠くからでもはっきりと目に映ったのは、十メートルはあるであろう巨大な蟹だ。
背中の甲羅にはフジツボが付いていて、口からは地面を泡状の溶解液を吐き出している。
SOUGO達の話によると、とあるライダー世界の敵である物の怪、『
魔化魍の中でもこのバケガニはその巨体からは想像できないような機敏な動きと溶解液のせいもあってか、仮面ライダーであっても苦戦する敵である。
その一体のバケガニが数十体ほど存在するのが四国の戦況だが、若葉は大して動揺している様子も、すぐに動いて迎撃しようとは思わなかった。
なぜなら、
いかに仮面ライダー響鬼を窮地に追い込んだ巨大なバケガニである彼らにとっても、今回は流石に
『潰すッッ』
Jライドウォッチによって40メートル級の巨人化を果たしたゾンジスが相撲で四股を踏むかのように足を持ち上げて、真下のバケガニ目掛けて振り下ろす。
ゴシャ、グシャ、というゾンジスの踏み付けはバケガニの強靭な甲羅をものともせず、いとも簡単に割り砕いていた。
ハサミ攻撃も足には届くが、大したダメージにならないし、ゾンジスの顔や重要な部分には届かない。
サイズ差がありすぎた、ただそれだけの事だ。
それでもバケガニは決死の抵抗を続け、溶解液を吐き続ける。
足ならば、溶解液の効果が届くはずだと、ゾンジスの脚部を狙って泡を噴射するも、その泡は真横から吹き荒れた炎の風に遮られた。
土居球子の降ろした、精霊・輪入道による炎の風だ。
「カゲン!もうちょっと地面への攻撃は優しくしろって!巨人のお前が暴れたら多少なりとも樹海化した地面には影響あるんだぞー!」
『潰すッ!』
「それしか言わないなァお前ェ!あんず!」
「うん!……凍れぇ!」
伊予島杏の降ろした精霊・雪女郎の吹雪がゾンジスの足元に蔓延るバケガニを凍り付かせる。
全身に氷が張り付いたバケガニはその場で身動きが出来なくなっていた。
炎の風がゾンジスを襲う全ての攻撃を遮る。
凍てつく風が敵の足を止める。
巨大化したゾンジスは圧倒的な攻撃力を持つ分、そのサイズから死角が存在する為、防御が疎かになりがちだ。
星屑サイズや足元の敵からの被弾はなるべくカバーをしなければならないと考えた勇者たちは巨大化したゾンジスを護衛する勇者を配置すべきと考えた。
最初は誰がやるのだと、議論になったが僅か数秒で勇者側から名乗りが出た。
それが土居球子と伊予島杏だった。
「カニの動きは止めたのでゆっくり潰してもらっても大丈夫ですよー!」
「地球に優しく!大地に優しくだ!」
『……フン』
ゾンジスの巨大な足がバケガニを捉え、踏みつける。
しかし、先ほどとは違って、動けないバケガニの甲羅部分に足を一度乗せてからじっくりと自重で踏み割っていく。
樹海化した地面にはさほど負荷は掛からない、どちらかと優しい踏みつけだ。
ゾンジスも杏と球子の意図を理解したのだろうか、次からは慣れように凍ったバケガニを足で処理していく。
ゾンジスは凍ったバケガニを手に持つと、両の手に力を込めて甲羅をぱかっ、と煎餅のように割り砕く。
割った部分を手にもったまま、それを輪入道の上にいる杏に何故か差し出した。
「え、ちょっ、これをどうしろと……ま、まさか食えってことですかぁ!?この場で!?」
『蟹はウマい……伊予島、食え』
「ひえぇ……やっぱりぃ…」
「というか、コイツの肉って食えるのか?」
冷気によって凍った蟹肉の断面図をじっと二人は見つめていた。
これは恐らくだが、あまりいい味はしないと考えている。
バーテックスを元に作られているこの生物たちならば、そんなに良い味はしないはずなのだ。
一度星屑の肉を食ったことのある若葉にしか分からない事だ。
「上手くやっているようだ……あちらの方は大丈夫だろう」
ならば、と若葉は振り返る。
先ほどから自身に向けられている殺気に。
これまで若葉を襲ってきた敵にも殺気を放つ者はいたが、今感じているのはその全てを凌駕するレベルだ。
しかし、皆が戦場で奮起している中で臆する訳にはいかない。
だから若葉は丘の上にいる者に向けて声を飛ばしたのだ。
「そこに居るのは分かっているぞ、姿を見せよ!」
『フフ……流石は勇ゥウ者、女とて侮れないという訳だな』
男の声。
若葉は丘の上に現れた者を見て、思わず目を疑った。
姿を現したその声の主は異形であったのだ。
全身が刺々しい青の甲殻で覆われ、悪の組織の如き赤のマントがよく目立つ。
海の生物、顔面両頬に蟹のような触覚、しかしながら頭部にはサソリの尾。
右手には巨大な斧を左手には金色の盾を持つ異形は高らかにその名を叫んだ。
「俺の名は……カニレーザー!」
「カニ……え?蟹?蟹なのか!?サソリではないのか!?」
『
この世界に蘇り、人類を征服するために力を手に入れた〝新生カニレーザー〟だ!』
大斧を持つ腕を軽く振るうだけで、風圧による衝撃が大地を駆ける。
どう見ても、第一印象でカニよりもサソリだと思われてしまうこの男、カニレーザーの正体は悪の組織『デストロン』の大幹部ドクトル・
仮面ライダーV3こと、風見志郎の前に幾度となく立ちはだかり、最後は古の儀式による力を以ってV3に戦いを挑み、敗北した機械合成怪人だ。
その勇猛果敢な戦いぶりは、デストロン首領に『デストロン軍最強の勇者』と讃えられたほど。
『この樹海の地を、貴様の墓場にしてやろう!!』
カニレーザーが丘の上から飛び上がる。地力を用いたジャンプ力で。
機械合成怪人ならばその重量は容易に3桁を超えるのではないかと予想してしまうがとんでもない。意外にも、カニレーザーの重量は僅か51kgだ。
これはドクトルGがカニレーザーに変身するよりも重量が
彼は空中であるにも関わらず、大斧を振り上げた。
「――ッ!!」
そして振り下ろす。刃が目指したのは若葉の脳天。
肉体を縦からかち割らんと言わんばかりに唸りを上げた大斧の刃に、若葉は咄嗟に後方へと飛び跳ねた。
直後、斧が大地を抉り、破砕させ、カニレーザーの周囲の地面を陥没させる地鳴りが響く。
(なんというパワーだ……!!もし、刀で受け止めていようものなら間違いなく、折られていた!!)
凄まじい破壊力だった。
高所からの勢いも利用した一撃を受けていたら、間違いなく若葉は死んでいた。
回避の直前、真っ向からの刀による防御を考えたのも数瞬だった。
純粋な力勝負ではカニレーザーの方が上手であるという事を悟った若葉の直感が、己の命を救ったのだ。
「……反撃だ!!」
地面に着地した若葉が、前へと跳ねた。
風の如く速度を上げ、カニレーザーがいるクレーターの中心へと突進する。
身を最小限に、刀を前に、刺突の態勢。狙うはカニレーザーの青白い鎧を貫き通すものではなく、関節部分だ。
甲殻類を自称するならば、あの身体を覆う鎧のような体は若葉の一太刀では切り裂くことは容易ではないだろう。
だが、殆どの生物に存在する関節部分には鎧は纏えない筈だ。
「四国勇者・乃木若葉……推して参る!!勝負だカニレーザー!!」
直線的な動きをより鋭く、迅く。
さながら自らを一本の槍のように例えて、その刃をカニレーザーの身体に突き刺そうとした次の瞬間だった。
若葉の刀の軌道が変わった。
『甘い』
「なッ――――」
カニレーザーは予見していたのか、左手に持つ黄金の盾を前に構えるとその角度を僅かに変えていた。
若葉の刀の先端を真正面から受けることなく、盾をずらした方向に若葉を流す。
そして、丁度若葉の無防備な真横を位置取ったカニレーザーの右手は既に斧を振り上げている。
盾を持つ戦士の戦い方は多彩だ。
正面から受け、片方の武器で敵を刺したりする方法もあれば、直接盾で殴打し、投擲する攻撃方法も存在する。
今のように敵の攻撃を敢えて受け流し、大きな隙を生じさせる戦い方もその一つだ。
『ダァバァラァァア!!!死ねェ勇ゥウ者!!』
二度目となる大斧の一撃が若葉に迫る。
驚愕に染まった若葉の瞳は自分の胴体を分断する為に輝く刃を確かに目にしていた。
だが、若葉がとった次の行動は更に〝速度を上げ、駆け抜ける〟事だった。
(来い……義経!)
大斧は若葉の肉体を分断することはかなわなかった。
その代わり、刃を躱し切れなかった稲穂の如き長い金髪の一部が切り裂かれ、カニレーザーの周囲に舞い上がる。
砕け散った身の丈ほどの大地の破片が宙を舞う一方で、若葉は内に宿る『精霊の力』を開放する。
己の身を白の装束へと変え、精霊・義経の力を顕現しながら若葉の次の行動は回避から、攻撃へと転じたのである。
瞬間、カニレーザーは刃の嵐に見舞われた。
『――ムゥッ!?』
風を切る音共に金属を打ったような打撃音が響くいて、どこからともなく、カニレーザーの全方位から斬撃が飛んでくる。
一発一発が重く、重く、体重51キログラム程度のカニレーザーの身体が大きくよろめく。
「――オオッ!!」
武将、義経が残した『八双飛び』の伝説が若葉に与える力は迅さ。
大地を蹴れば蹴るほど、若葉の速度は上がり続け、八度目の加速以降は神速の域に到達する。
見えない。
カニレーザーは加速した乃木若葉の姿を追うことが出来ない。
カニレーザーは目視出来ない為、理解が出来ない。
若葉を仕留めるために地面を砕いた斧の一撃、それによって宙を舞う大地の欠片を足場に加速し続けていたことを。
敵を仕留めるには常軌を逸した攻撃方法が必要だった。
若葉は義経の速度を上げるために、敵の攻撃すらも自分の攻め手として利用する。
常人ならば、まず無理だろう。人間離れした力を持つ勇者であっても、武道を嗜んでいる高嶋友奈でも不可能だろう。
乃木若葉という少女が例外なのだ。
戦闘の最中でもどれが最適な動きなのか、理解し、それを実行する。
天より授かれた才能が、それを可能にする。
(精霊の力を使っても、コイツの装甲を突破することは難しいか……ならば!!)
身体能力が底上げされる精霊の力を以てしても、カニレーザーの鎧のような体を断つのは容易ではないと打ち込んだ手応えで判断した若葉は作戦を変更。
大地に舞い上がった石の欠片が全て落ち切る前に蹴り限界まで速度を上げる。
敵に呼吸する暇も与えない。
反撃の機会すらも与えない。
どこにいるのかも察知させない。
―――早く、速く、迅く。
決して、刃の檻から敵を逃さない。
貴様はここで必ず仕留めるという強い意志。
『グゥ……!お、おのれぇ……!!!』
「見えたッ 勝機ッ!!」
全身をハンマーで打たれ続けるような衝撃に晒され続けたカニレーザーが盾を動かそうとした瞬間を若葉は見逃さなかった。
残り少ない宙に浮かんだ石を足場にして、再度跳躍、カニレーザー左手にある盾を生太刀で打ち据える。
鉛がぶち当たったかのような衝撃にカニレーザーの左腕と盾が大きく揺らめいた。
若葉はカニレーザーの背後を取り、再度跳躍して、目標を見据える。
狙うのは盾ではなく、その盾をもつ左腕の最も防御力の薄い箇所、関節部分。
『ぐおおおおっ!?』
カニレーザーの盾が左腕ごと地面へと落ちる。
限界まで引き上げた速度から放たれたその一太刀は見事にカニレーザーの左腕を分断させることに成功した。
防御手段を失ったカニレーザーに若葉は更なる追撃を加える。
左腕を落とした後、即反転、最後の足場となる石を蹴り、残ったカニレーザーの右腕を関節から分断する。
狂うことのない白銀の一閃がさく裂し、大地にカニレーザーの斧と腕が突き刺さる。
カニレーザーが地面を叩き割ってから破片が全て落ちるまでの一瞬の出来事であった。
『ぐぬぬぬ……まさか、これほどとは……勇ゥウ者の力を侮っていたか……』
「どうやら、ここが貴様の墓場のようだなカニレーザー」
『フフ、風見志郎と似たようなセリフを……忌々しいな、勇ゥウ者……』
両腕を失ったカニレーザーに、若葉が刃を向ける。
どこからどう見ても、カニレーザーの負けで、若葉の勝ちだ。
武器も抵抗する手段も失ったカニレーザーには、もう逆転の芽などないようにも見える。
それは、誰が見ても思う事だろう。
だが、カニレーザーは不敵に笑っていた。
『だが、俺にもデストロン幹部としての意地がある!乃木若葉……!!貴様だけは、貴様だけは仕留めて見せる!!』
カニレーザーの頭部が青白く輝く。
最初から何のためにあるのかよく分からない、アンテナのようなソレの役割を、若葉は遅れながら理解する。
『――くたばれェ!』
頭部から放たれる極太光線、それがカニレーザーの必殺兵器だ。
その一撃は山すらも破壊すると言われている。
カニレーザーは勝った!と心底そう思ったに違いない。
何故なら、亜音速を超えるこの光線を不意打ちに近い状態で躱すことは不可能だからだ。
カニレーザーの命はあと少しだ。
あと数十秒と掛からずに、ダメージを負いすぎたこの身体は活動を停止し、デストロン時代からの名残である脳内爆破チップが作動してしまう。
デストロン復活の陽の目を目の当たりに出来ないのは残念だが、敵の勇者を一人道連れに出来るのならば、本望だ。
本来カニレーザーが持つ、騎士道精神をかなぐり捨てた最後の一撃。
仮面ライダーV3には一発も当たらなかったカニレーザーの必殺兵器、異世界で遂にその威力を発揮できるか。
『な、なにィ―――!?』
だが、驚愕の声を上げたのはカニレーザーだった。
己の光線で焼き殺したと思った乃木若葉は、あろうことかその手に持つ刀、生太刀の刀身にその光線を浴びせ、受け止めていたからだ。
冥府に由来する力を宿す『生太刀』の刀身が鈍い青色の光を放つ。
古の地の神の王が手にしていた、神器としての光。その輝きは敵であるカニレーザーですら美しさを感じるものだった。
「この程度で私を殺れると思うな!デストロン!」
気合と共に生大刀を振るうと、刀身に纏っていたカニレーザーのエネルギー光線が四方へ分散し、爆発音を奏でる。
その光景は、仮面ライダーBLACKRXがクライシス幹部・ガテゾーンの死に際のエネルギー光線を不意打ちにも関わらずリボルケインで打ち返した瞬間と酷似していた。
『初見殺しなんだから、鼬の最後っ屁なんだから、せめて食らってやれ』という、視聴者の声が聞こえてくる。
カニレーザーは理解した。
最後の不意打ちすらも、正面から防ぎ切った乃木若葉に、自分は負けたことを。
彼は悪魔の精霊の儀式で得たカニレーザーの姿から、科学者・ドクトルGの姿へ戻っていた。
「フフフ……俺の負けだな、乃木若葉。だが、この程度で勝ったつもりでいるなよ。
既に四国の内部には蘇ったデストロン幹部が侵入し、四国のどこかに身を潜め、人類征服の一手を打っていることだろう!」
「なに!?」
「日本全滅……いや、〝四国全滅作戦〟が発動する日こそが、貴様ら人類最後の日だ!震えて待つがいい!」
掲げる両腕を失ったドクトルGは死を前にした者とは思えない清々しい顔をしていた。
彼は天を見上げ、その表情を不敵な笑みへと変えていく。
「さらばだぁ……四国の勇ゥウ者ァ……デストロンに、栄光あれ!!」
次の瞬間、ドクトルGは盛大な高笑いと共に自爆した。
脳内に埋め込まれていた機密保持の爆破装置が作動したのだ。
爆風が若葉を襲うが、距離も離れているためかダメージを与えることも叶わない。
「敵が自ら作戦名をバラしてしまうのはお約束なのか、なんなのか……しかし、〝四国全滅作戦〟……か。SOUGOさんに相談しなくては。しかし――――」
カニレーザーが自爆した場所を見ながら若葉は四国に迫りつつある、未曽有の危機について思考を巡らせた。
「自らの死を前にあの余裕……悪の組織デストロン、奴らの力の底が知れない」
樹海の大地に突き刺さる盾と大斧を見つめながら、若葉はそう呟くのだった。
「なるほど、敵のカニレーザーがそんな事を言っていたか」
「はい」
大社の地下研究施設に若葉とSOUGO達は居た。
あの後戦いは無事、四国勇者と仮面ライダー達の勝利に終わった。
犠牲もなければ、怪我人一人もいない。巨大モンスターたちをゾンジスが潰してくれているお陰で他の勇者達は負担ゼロになっている事が大きいのか。
他の勇者たちを休ませるべく、若葉は皆を樹海化解除後すぐに帰って休むように伝えて、彼女は今日の戦いで敵のカニレーザーが口にしていた作戦の事をSOUGO達へと報告をしていたのである。
「カニレーザーが言っていたのは恐らく〝日本全滅作戦〟の事だろうな。かつて俺達のいるライダーの世界で存在していたデストロンが実行した悪魔の作戦だ」
『日本全滅作戦』。
悪の組織デストロン軍に、ドクトルG、ブラック将軍、地獄大使、死神博士、ゾル大佐という歴代のショッカー大幹部が結束して決行された作戦。
日本中に『ギラードガンマ』という特殊な毒ガスを散布することで多くの人間を毒殺するというものだ。
「もし、奴の言っていたことが本当ならば相当厄介なことになるぞ。ギラードガンマ……そいつは通常の毒ガスとは違って、〝防毒マスクでは防ぐことが出来ない〟代物だ」
「え!?」
若葉は思わず驚愕する。
勇者達も身体能力が神樹の力によって向上しているとはいえ、肉体は生身だ。
サソリ型バーテックスの攻撃を受けた球子や杏が毒に侵されたように、勇者といえど、毒などの攻撃は効果を受けるのである。
「当然、この毒ガスの治療薬は開発されていない。仮面ライダーV3の世界の人々も、有名な医大の人間が解析し、解毒剤を開発していた。
だから必ず、解毒剤が開発されるまでの間の犠牲は覚悟しなければならないだろう」
「防げない、殺人ガス……そんなものを撃ち込まれたりすれば四国は―――」
「だが安心しろ乃木。こういう大規模な作戦程、奴らは思わぬ所から尻尾を出しやすいんだ」
フフ、とSOUGOが笑うと直後、研究室の扉が開かれて何者かが慌てた様子で入ってきた。高嶋友奈だ。
「SOUGOさん!若葉ちゃん!た、大変!」
「ゆ、友奈!部屋に帰って休めと言っただろう!」
「ごめん!若葉ちゃんから借りてたバットとボールを返そうと思って部屋に行ったらこんなものが!」
「……それは葉書か、見せろ」
友奈の手に握られていた一通の葉書を手にし、その文面を見たSOUGOは「やはりな」と一言だけ口にして、その葉書を若葉へと手渡す。
「ほうら、見ろ乃木」
「こ、これは……」
――乃木若葉
ドクトルGを破ったようだな。
だが、貴様を含めた全ての勇者と四国の人間たちは必ず殺す。
デストロンを代表してここに宣言しよう。首を洗って待っているがいい。
ヨロイ元帥
「敵陣に堂々と手紙を送るとは……これは我々に対する宣戦布告か!おのれ、ヨロイ元帥!」
「違う、乃木、そこじゃない」
「え?」
怒りで葉書を握りつぶしそうになった手を止めると、SOUOGの指が何かを示すようにその文面へと伸ばされる。
「ここ、よく見ろ」
「ん?んん!?」
彼に導かれるように文面を追い、やがて止まった一文を目にして若葉は瞳を瞬きして見せた。
何かの見間違いだろうと、2,3度は見直したし、目を擦ったりもした。
曲がりなりにも、日本征服を企む悪の組織の筈だろう。
人類を超越する超技術をいくつも持っている得体の知れない連中の筈だろう。
そんな彼らがまさか、
「こ、この葉書……
なぜ自身の現在地を明かすようなヘマをしてしまったのだろうか。
「か、書かれているぞ!確かに!県名から番地までしっかりと!しかも達筆だ!馬鹿か!馬鹿なのか!こいつら馬鹿なのか!?」
「世界が変わっても、過ちは繰り返すという訳だ……ジョウゲン、カゲン、準備をしろ」
赤い外套を翻したSOUGOの言葉に呼応するように、ベルト作りをしているジョウゲンとカゲンが作業を止めて振り返る。
「へぇ、やるんだ。デストロンと」
「ああ」
「いいねぇ……カゲン、どうする?」
「潰す」
「では行くぞ。デストロンという組織がこの世界で日の目を見ることは無い」
この後、突如現れた仮面ライダー達によってギラードガンマ製造工場は潰され、残りの幹部も軒並み打倒された悪の組織デストロンは完全に壊滅したのであった。
昭和の怪人大好き侍
・ドクトルG 登場作品(仮面ライダーV3)
身長:185cm 体重:65kg 出身地:ドイツ
悪魔の頭脳を持つ男と呼ばれるデストロン生え抜きの大幹部。元・ナチスの軍人。自身の『顔』以外の肉体を改造しているそうだ。
独自の騎士道精神と哲学を持ち、『戦闘と破壊こそが進歩を生む』という倫理観が行動原理。戦闘能力が通常怪人の3倍なので、生身の状態でも仮面ライダーV3と戦える。また、彼が持つ斧・盾・剣・短剣・鎧などの武具にそれぞれ特殊な細工が施されている。
仮面ライダーV3の事を「仮面ラァーイダV3」と呼ぶ。
劇中終盤、仮面ライダーによって数々の作戦も失敗し、せかく蘇らせた五大幹部を死なせてしまった事から『デストロン首領に何度呼び掛けても無視される』程に信頼を失い、悪魔戦士精霊の儀式の力でカニレーザーとなり、V3と最後の決戦に挑む。最後はV3きりもみ反転キックを受けて敗北し、自らの負けを認め、爆死した。
斧 :刃には毒が塗られていて、触れられれば敵を倒せる……が若葉には触れさえも出来なかった。電磁誘導装置が仕込まれていて、投げると200m先の標的に命中させれる。
盾 :V3キックを弾ける。また盾からは毒の煙を噴射できる。
剣 :竜の血で鍛えた家宝。50万ボルトの電流を放つ。
短剣:投げられる。
鎧 :表面に電流が流れていて呪文を唱えるとより丈夫な体になる。兜のサソリは命令することで敵を襲わせることが出来る。
・カニレーザー/新生カニレーザー 登場作品(仮面ライダーV3/仮面ライダー轟音)
身長:176cm 体重:51kg 出身地:ドイツ
ドクトルGが悪魔の戦士の精霊の儀式を経て変身する怪人体。
仮面ライダーV3と戦い、互角に戦う実力を持つ。必殺技は斧による攻撃と頭部から発射されるレーザー。
ドクトルGが明らかにサソリなのに、怪人体がカニの姿をしていたことは放送当時からクレームが寄せられていたらしい。
天の神の力によって蘇った再生怪人としての新しい名前を新生カニレーザーと自ら呼称する。見た目はほとんど変わらない。