謎の巫女追加、ならばこれからのゆゆゆいは巫女同士での未来予知合戦ですな。
それに痺れを切らした薙刀を持ったヒナタ様が遂に巫女組を率いて本陣に乗り込み巫女同士で直接リアルファイトする……次のきらめきの章はそういう話になるでしょう(すっとぼけ)
「ここが……ふむ、我が魔王の特別な居城」
大社の神官服に身を包み、仮面をした男がある場所を訪れている。ウォズだ。
そこは大社の地下で、常磐SOUGOとその関係者たちが使用している研究施設だ。
とある研究の為に大社の人脈を使って、この場所を貸してほしいと、常磐SOUGOに頼まれたのがつい先月の事である。
「この地下施設で我が魔王はまたしてもベルト作りに勤しんでいるという訳ですか……こうしてる間にも、天の神の勢力は着々と決戦の準備を始めているというのに」
ここ最近はバーテックスが攻め込んでくる事は少ない。
それもそのはずだ、今神樹の結界の外では活発にバーテックスが融合繰り返して、巨大な個体を製造しているのだから。
神託では、これが四国の命運を分ける西暦最後の戦いだという。
それが間近に迫ってきているのだ。
ウォズは研究室を通り過ぎては腕を組み、思考を巡らせる。
その内容は勿論、この先で待っている戦いに関する懸念事項だ。
「チッ……私の想像よりも、シナリオに変化が生じている。勇者の数、敵の戦力の増強……この変化は私の見る未来には無いものだ」
ウォズは自身が予見した未来と現在の状況の変化に戸惑いを隠せないでいた。
まず、現段階で残っている勇者の数が違うのである。
本来なら本土遠征から帰還した戦いで、勇者の二人が死亡するはずだった。
そして、もう一人の勇者が精霊の穢れによって精神に異常を来し、仲間を襲い、最後は力を失い、乃木若葉を庇い戦死する。
決戦前なら、残る勇者は二人だけのはずだ。
なのに、勇者5人の生存。本来ならば喜ばしい希望であるが、ウォズにとっては不安要素であった。
ウォズの見た四国の未来が確かなら、この戦いで西暦は確実に生き残る。四国防衛を果たし、神に巫女を生贄として奉火祭を行い、壁の中から出ないという条件で天の神と停戦を結び、300年に続く平和を勝ち取る。
そして、300年後の四国で再び大きな戦いが起こり、そこで勇者が天の神を打倒し、世界に真の平和がもたらされるという筋書きだ。
その筋書きすらも、今は崩壊しつつある。
未来を見る者、ウォズは確定された未来が変わらなければ心配は杞憂に終わるが、この事態を引き起こした要因として大きく関わっているのが、仮面ライダーである。
「やはり、全ての元凶は仮面ライダーか」
彼ら仮面ライダーが来てからこのシナリオに変化が生じた。そう言っても過言ではないだろう。
強力な力が手元にあることを良いことに神樹も大きくは言わないが、その存在を危険視していることは確かだ。
常磐SOUGOを中心とした仮面ライダーの介入によって、ウォズや大社の思惑とは違う未来に繋がる事をウォズは良しとしない。
この世界を、確実に300年後の未来まで存続させることこそ、
「このままでは確実に予定していたよりも人類とバーテックスの戦いが長引いてしまう……これ以上のバーテックスの進化は危険だ」
勇者達が戦うバーテックスは単調な攻撃を繰り返す生物ではない。
勇者達の攻撃を学習し、対応できる形態へと自ら変化し、同一個体との融合を果たし新たな力を手に入れることが出来る。
本来あらゆる生命が数万年かけて行ってきた進化の過程を僅か数分で遂げることが出来る規格外の生命体なのだ。
Jライドウォッチによる巨大化戦術、それに対応する敵戦力の強化は常軌を逸したものになるだろう。
現時点で人類側の最大攻撃力が巨大化できるゾンジスである以上、彼がもし破られるようなことがあれば、残った勇者達にそれを防ぐ程の力はない。
人類の敗北は決定したも同然だ。
だからこそ、ウォズや大社たちは最終決戦で戦える勇者達の数を減らし、限界ギリギリの接戦を行うことで天の神側にもう戦う余力を残していない事をアピールしなければならない。
人類側のリーダーである乃木若葉に降伏宣言を行わせること、そして壁の外から決して外に出ないという誓約を結ぶことこそが人類生存への第一歩なのだ。
親しく、愛おしく、尊い者達の犠牲によって守られ続ける平和。
そして犠牲を繋ぎ続けた先に完結するハッピーエンド。この世界の物語の結末だ。
そのエンディングへと導くのが自分の役目。
――――本当に、それがお前のやりたいことなのか?
「―――ッッ、くッ、ま、またか……!!」
脳内を揺さぶるノイズのような違和感にウォズは頭を咄嗟に抑えた。
誰かが、自分の知らない誰かが自分に向かって呼び掛けるようなものが僅かに声となって聞こえてくる。
ここ数日、更に起きる頻度が多くなってきたこの現象にウォズは悩まされていた。
「――クッ!忌々しい!」
思わず大社の壁を殴りつける。
雑音を痛みで掻き消そうとするように。
拳が少しだけ軋んで痛みが走るが、脳内に鳴り響くノイズは止んだ。
「本当にやりたいことだと……?私を誑かすのはやめてもらおうか、どこの誰かも知らぬ悪魔め……」
壁にめり込んでいた拳から一筋の赤い液体が壁を伝った。
「私は崇高なるこの世界の神、神樹様の使徒……!
人類を救済する組織、大社の歯車の一つ……!
私が見据える未来は……!私が為すことは、神樹様の意志と同じ!誰にも止めることは出来ないッッ!」
普段の自分からでは到底考えられないような消耗の仕方。
額から、そして背筋を伝って汗が流れているのが嫌というほど分かる。
忌々しくて、煩わしくて、怒りすら感じる。そのはずなのに。
なぜ、自分はこの得体の知れない主の声に『懐かしさ』を感じてしまっているのだろうか。
「あ、あの……もしかして…三好さん、ですか?」
「おっと、これはこれは高嶋友奈様。こんなところで出会うとは、珍しいこともあるようですね」
声がした方向へ顔を向けると勇者である高嶋友奈がそこにいた。
ウォズはいつものような冷静な口調を取り戻す。魔王に仕える家臣、『ウォズ』から大社の歯車である『三好』に切り替える。
「しかし高嶋様、大社神官の者達は皆この仮面をしているというのに私個人を特定することが出来るとは、素直に驚きました」
「はい!いつもSOUGOさんの隣にいる神官さんですよね!いつもSOUGOさんが『タンスから煮干が溢れてきたぞ、いいかげんにしろ三好』って言っているのが聞こえたので!」
「その時の私の声を聴いて覚え、今特定したと?いやはや、勇者様の記憶力と聴力には恐れ入ります……ですが、出来れば皆の前で私の名前を呼ぶのは控えるようにお願いしたいものです」
「どうしてですか?」
「我々の仮面がどのような意味を持っているかをあまり考えたことがないでしょうが、ちゃんと意味があるのですよ?」
ウォズは一息。
「大社の仮面は神樹様に仕える事の証……その身を神へと捧げる事の覚悟の現れ。
神を前に一個人など存在しない、といったところですか。簡単に説明いたしますと」
「な、ナルホド……た、高嶋友奈、なんとなくわかった気がします!」
分かったのか、分かっていないのか、恐らく後者であろうと彼女の反応から察したウォズだがここで会話を切るには充分だろう。
自分はどちらかと特別な位置にある者の一人だが、大社の中で勇者と一個人として接している職員がいると周りから変な噂立てをされて目立ってしまうのはウォズの望むところではない。
すると友奈の視線がウォズの右手へと移って、彼女の血相が変わった。
先ほど壁を殴った際に出来た拳の傷を見て友奈は慌て出す。
「あ、三好さん待ってください!手から血が!」
「ん?ああ、さっき壁にぶつかった際に切ってしまわれたようです。大した事はないのでお気になさらず」
「だ、だめです!ちょっと待ってください!」
ウォズが制するより友奈の行動は早く、ポケットから取り出したハンカチを手早くウォズの傷ついた拳に巻き付ける。
「……」
「あ、あの……これ、痛くないですか?」
じんわり、と白いハンカチを滲ませるウォズの血を見て、友奈は悲痛そうな表情を浮かべている。
自身のケガではないというのに、まるで他者の痛みを自分が負ったような。
だから、誰かが傷ついた時、傷ついている時に何も出来ないのが嫌で、何かをせずには居られない。
ウォズの血が少し自分の手に付着したとしても彼女は嫌な顔一つすらしていない。
己の身を顧みない、他者を労わる優しい心を持つ少女、それが高嶋友奈だ。
気に病んでしまっては困る、その一心でウォズは仮面の下で笑みを浮かべて見せる。
「ええ、大丈夫ですよ高嶋様。やはり、高嶋様は清らかな心の持ち主のようです……神樹様も貴女の美しい心に感銘を受けている事でしょう」
「そんな……私は頭で考えて動けないから……咄嗟に行動しちゃうだけで、こんな事しか出来ないから……」
友奈は少しだけ俯いて見せる。
「私は若葉ちゃんのように、キリッとしてて、強くはないし。
ぐんちゃんのように自分を持ってない。
アンちゃんのように、作戦とかみんなに提案出来ないし。
タマちゃんみたいな、ムードメーカーでもない。
SOUGOさんみたいな、誰かのピンチを救う力も特別持っているわけじゃなくて……こんな私でも、できる事って言ったら戦うくらいだから……何も出来ないのは、怖くて嫌で、本当は臆病で―――」
誰しもが、自分に無い物を他者に見た時、それを羨ましく思う。
それを嫉妬と取るか、憧れと取るかは自由だが、確かに言えることは高嶋友奈という少女は他の勇者達と比べて自分は酷く劣っている存在だと思っているらしい。
そんなことは無い、断じてだ。ウォズはそう思っている。
彼女が、高嶋友奈が居なければ今日まで他の勇者達は生存できていなかった。
彼女が、臆病と思いながらも振り絞ってきた勇気は確かに他の勇者達の生存へと繋がっていた。
彼女の存在が、他の勇者達との間を取り成す潤滑剤になっている。勇者達の笑顔の中心には間違いなく、高嶋友奈がいるのだ。
常磐SOUGOでは、それは成し得なかったことだろう。
高嶋友奈にしか出来ないことだ。
(このマイナス思考は高嶋友奈本来の気質の可能性もあるが……それを増長させているのは間違いなく、度重なる切り札の使用……最強精霊である酒呑童子の影響、か)
勇者が戦闘で用いる『切り札』には精霊という不確定要素を人間の身体に宿すという事で瘴気が溜まる。
それは本来人間にとって「よくないもの」であり、使用者本人の身体に悪影響を及ぼすことが最近の研究で分かった。
悪影響のパターンは複数あり、負の感情を増加、全ての事を悲観的に考えるようになる、マイナス思考などが確認されている。
加えて、高嶋友奈が操るのは最強精霊の一つ、酒呑童子である。
身体に掛かる負荷は他の勇者達のものとは比べ物にならない上に、最前線で戦い続ける彼女は一番ダメージを負いやすく、精霊の影響を受けやすい。
それでも今尚、この程度の負荷で済んでいるのは高嶋友奈の持つ精神力が尋常では考えられない程に強靭だからだろう。
(ふむ、それでも相当な精神の負荷が窺える……少しでも軽減できるか分からないが)
負荷を抱えすぎた精神とは張り詰めていた糸のようなもので、ある日突然にプツン、と切れるものだ。
そうなってしまったら最後、戦いに復帰することは容易ではないかもしれない。
最終決戦で、高嶋友奈がそうなってしまっては困る。
それはウォズにとっても、大社や神樹を含めて望んではいない展開だ。
ならば、大社の神官としてウォズが出来ることは一つだ。
「高嶋様、貴女は臆病者でもない。そして決して力のない、何も出来ない者ではありません」
「え?」
戸惑いを隠せず、不安な表情を浮かべる友奈へ、ウォズは続ける。
「高嶋様は気付いていないかもしれませんが、高嶋様のお陰で勇者様達は普段から笑顔でいることが出来ます。
貴女の笑顔は他の勇者様にとっては日常の象徴。貴女無くして、これまでの勇者達の戦果はありえない」
「そう、なんですか……?」
ええ、とウォズは一息。
「それに、酒呑童子の力にはまだ伸びしろがあります。それも、乃木若葉様や郡千景様の精霊を遥かに凌ぐ力が。
そして、人々を救うことが出来る力があります……貴女自身に」
「私自身に?」
「はい。今はまだ分からないかもしれません。
ですが貴女の力は必ず、この四国を……いいえ、人類を救う力になります。
それまでは、どうかその清き心をお持ちください……高嶋友奈様こそが、我々にとっての希望であることをお忘れなく」
「私が……希望?希望、かぁ……そっかぁ…素敵な事、なのかな。
若葉ちゃんもぐんちゃんもアンちゃんもタマちゃんもヒナちゃんも……それにSOUGOさんたちにとっての希望になれるのかな」
「ええ、間違いなく。誰もが幸福を抱ける優しい未来を高嶋様は齎してくれます。その先の未来で、お友達の皆様も幸せに暮らしている事でしょう」
「そっか、それなら……うん、良かった。私、出来る事がちゃんとあるんだ……」
そう呟いた友奈はまたしても多くを理解していないようであったが、その表情は先ほどよりはやや明るいものになっていた。
また少しすれば精霊の影響を受けてしまうかもしれないが、この時だけでもその呪縛から解き放つことが出来たのであれば十分だ。
暫くして、友奈は帰っていった。
ほんとに何をしに来たか分からない。
ただ帰る時も最後まで、彼女はウォズの負傷した手の事を気に掛けていた。
やはり、高嶋友奈の心は美しい。
自分を蔑ろにしてでも他者を救おうとする自己犠牲。
人々はその姿を尊く想い、神ですらも自らを投げ打つ姿に愛おしさを感じる。
彼女は、最後まで必ず守り切らなければならない。
友奈が去り、誰もいなくなった大社の廊下をウォズはゆっくりと歩きだす。
その通りの奥、闇のような暗い空間を目指して。
「そう、高嶋友奈様。貴女こそが人類の最初にして最後の希望……未来の為に捧げられる神の生贄なのですから」
その身が、闇に溶けるように消えゆく間際、ウォズは一言だけそう呟いていた。
多分誰も幸福にならない。
喜ぶとすればただ一つ、ロリコン糞ウッド定期。
高嶋さんはこのお話の間に蘇ってきた怪人新生ザリガーナという金色のザリガニも精霊ナシの単騎で倒せるくらいにはレベルアップしているので。
目指せ、ゴールデンウィーク中に最終決戦突入。