誤字脱字報告してくださってる読者の方々、いつもほんとにありがとうございます。
高嶋友奈は幼いころから考えて行動することが少しだけ苦手だった。
恐らく、『少し』とかではなく、『かなり』なのだろう。
算数なら計算式を組んで足し算をするより、実際に物量を集めて数えていく方が分かりやすいかもしれない。
とにかく、身体を動かす事が単純明快で分かりやすいのは確かだ。
バレーボールとか、野球とか、サッカーとか屋外の神社と隠れんぼしたりする方が楽しくかった。
頭よりも体を動かす事が、自分にできる事だと友奈は幼いころから理解していた。
だから、天災が起きた時に勇者としての力を神から与えられた友奈は逃げ惑う人々を守るために迷うことなく戦うことが出来た。
周りの人が怖がってる。
同い年の子供が泣いている。
たくさんの人が傷ついている。
自分だって、同じくらいに怖い。
だけど、あの化け物たちに立ち向かえるのは自分だけなのだと自らに言い聞かせて、友奈は戦ってきた。
どんなにボロボロになったって構わない。
幼馴染に「無理な戦いはしちゃいけない」と言われたけど、友奈は「わかったよ」と言った数分後には襲い掛かってきた化け物を追い払うべく立ち向かっていた。
周りの人からはバトルジャンキーだと、呆れられてしまうかもしれない。
だけど、それでも構わないと友奈は思っている。
いつだって、自分が傷つくことよりも誰かが傷ついている姿を見るのが辛いから。
それを見ていて何も出来ない自分が途轍もなくもどかしさを感じるから。
だから、これから先も友奈は多分この心の根っこの部分は変わらない。
誰かを守るための強さを、彼女は求め続けるだろう。
四国、本日の天気快晴。
気温が上昇する午後を迎えようとした頃、岩場に囲まれた大地の上に二つの人の姿がある。
「ゾンジスさん!行きますよ!」
『来い、高嶋』
片方、桜を模した勇者装束を身に纏う高嶋友奈が構えると気合を込める。
その対面、緑色の装甲を身に纏う大柄な男、仮面ライダーゾンジスが合図を送り、自らもファイティングポーズを取った。
見合った数秒も経たず、まず友奈が大地を蹴り上げる。
桜の長髪を靡かせて、中学生の少女とは思えない速度を維持したまま、真っすぐゾンジスを目指す。
「勇者ァァァ……パァァァンチッッ!!!」
華奢な右腕は唸りを上げて突き出される。
今更ながら、ただのパンチではない。文字通り、岩など容易に破壊する力を持った勇者の拳だ。
『ウオオオオオオッッ!!!』
その威力を理解していないゾンジスではない。
矢のような速さで加速した友奈を視界に収めると、タイミングを見計い同じように拳を突き出す。
バールクスやザモナスよりも、純粋なパワーならば彼らより秀でているのゾンジスの方だ。
拳と拳が衝突し、直後鳴り響いた轟音とともに大地が揺れる。
凄まじい衝撃は二人の周囲で爆発でも起きたかのように舞う砂塵と遠くで崩れ始める崖の表面が、その衝撃を表していた。
「かッ―――!!」
『ムゥッッ!!』
やや押され気味に友奈が吹き飛ばされ、ゾンジスも数歩後ずさる。
現段階では友奈の方が若干ゾンジスに力負けする印象があった。
しかし、友奈は即座に態勢を立て直すと視界が悪くなった砂塵の中に紛れてこちらの姿を失っているゾンジスの上空へ飛び上がる。
足の力は腕の三倍だ。友奈は必殺のキックの威力を更に高めるべく、空中で己の身体をドリルの如くスピンさせる。
体を捻ることで生まれる捻転力を力に変え、蓄積された回転エネルギーを足先へと移動させ、それを相手へとぶつける勇者・高嶋友奈が生み出した必殺技。
「勇者ァ!きりもみキーック!!」
『なにッ――ぐぉっ!?』
漸く友奈を視界に捕えたゾンジスだったが視界不良を逆手に取られてしまい完全に反応が遅れた。
片腕を翳して防御には成功したものの、その超威力のキックを防ぐことが出来ずにガードごとゾンジスの身体が地面に接したまま数メートル移動する。
『……』
「ふっ……!!」
キック後の余波で反転した友奈は鮮やかに地面に着地を決める。
ゾンジスは倒れるまでのダメージを負っていなかったものの、キックを受けた右腕からは未だに痺れが残っていたのか小刻みに震えていた。
その威力はかつて、自分たちの世界で対峙した常磐ソウゴの仲間である仮面ライダーゲイツや仮面ライダーウォズの必殺キックに等しい威力だと彼は感じて、
『強くなったな、高嶋』
仮面の下で確かに笑みを浮かべていた。
「そこまで!訓練は終了だ!」
傍で見守っていた勇者達の面々で切りが良い展開だと思ったか、乃木若葉の訓練終了の声が響く。
ゾンジスは震える右手でジクウドライバーに装着されているライドウォッチを外し、変身を解除した。
友奈も変身を解除してジャージ姿へと戻る。
「ありがとうございました!カゲンさん!」
「――フン、いい」
友奈に訓練に付き合ってくれたお礼を言われ、少し素っ気無い感じのカゲンの返しだが、その表情からは満更でも無さそうな感じが見て取れる。
最初はぶっきらぼうで言葉足らず故か他の勇者達から誤解されがちなカゲンであったが、今となっては大分良くなった方だろう。
殆どの返しに「潰すッ」と言っていた時期が懐かしい。
「おおぅ、凄いな友奈……二人してパンチしたときの威力にタマもおっタマげたが、最後のキックはもっとおっタマげたぞ!アレはなんだ!?」
ヒーローを見るような瞳を輝かせる球子。
友奈は千景から受け取ったスポーツドリンクを一口飲みこんで息を整えながら答える。
「えへへ、前にSOUGOさんたちからもらった昔のライダーの映像見てたらね、これがカッコよくて真似したら出来ちゃったんだ!」
「ほうほう……そんな代物をアイツらが持ってるとは……なぁ友奈、今度タマにも見せてもらえるようにSOUGO達に頼んでくれよ!タマも参考にしたい!」
「それなら私が今持ってるの貸すよ!SOUGOさんが〝たいむ・まじーん〟?で映像をDVDで焼いてくれたらしいから。
私はもう〝V3〟まで観たから、タマちゃんは仮面ライダー1作目から見れるよ!やったねタマちゃん!」
「おお!やったぞ友奈!」
お互いに手をがしっと掴みあう。
何が〝やった〟と思っているのかは不明だが。
常磐SOUGOの仲間であるジョウゲンやカゲンが持ってきたタイム・マジーンには過去の時代を自由に行き来することが出来る『時空転移システム』を内蔵しており、その機体にはあらゆる時代のライダーの活躍が内蔵されていた。SOUGOが平成の時代をリセットする際に全てのライダーの歴史を学ぶべく、昭和から平成の時代までの全てのデータが記録されているらしい。
タイム・マジーンは友奈達がいる世界とは別の世界の、未来の産物だ。
それ故に、内部がオーパーツ過ぎて中身を見せることはSOUGO達から禁じられているものの、せめて訓練に活用してほしい、と戦闘映像を提供してくれてたのだ。
ちなみに映像はDVDとして焼かれるだけでなく、わざわざ既製品のパッケージも自作で再現したためか、歴代のライダーを見れた友奈はそれをかなり気に入ったらしい。
「どうだ、カゲン。友奈と戦ってみて」
訓練を見ていた常磐SOUGOの言葉にカゲンは小さく頷いて見せる。
「――強く、なっている。確実に……」
「……実物がない以上、タイム・マジーンのデータ映像を元にアイツに見せてみたが、想像以上の成果を上げたようだ。
まさか、ライダーの必殺技まで習得するようになるとは……」
先ほどの友奈の『勇者きりもみキック』はもともとは仮面ライダーV3の必殺技である『V3きりもみキック』を元に作られたものである。
技の1号と力の2号の能力を受け継いだ仮面ライダーV3の変身者、風見志郎は歴代仮面ライダーの中では『特訓』を元に自身の能力を引き上げていった。
彼女、高嶋友奈もまた努力によって能力を開花していく気質を持ち合わせているという事なのだろうか。
このまま特訓を続けていけば、数々のライダーの必殺技を習得していくかもしれない。可能性を感じさせる少女である。
「もしかしたらフォーゼの必殺技真似して、ほんとに宇宙までジャンプしちゃうかもねェ……」
「流石にソレは無理だろう……そもそも、勇者が宇宙空間で活動は不可能だ……現在の勇者システムを改良すれば、
暑さから団扇で涼んでいたジョウゲンの一言にSOUGOは苦笑する。
現在使用されている勇者システムは勇者達の身体能力を向上させる程度であって、絶対防御という加護は存在しない。
SOUGOは最近、勇者システムの更なる開発を乃木若葉や上里ひなたに提案している。
既存の勇者システムではこれから進化し続けるバーテックス相手ではその力に対応できない可能性が高く、基礎能力など根本的な設計から見直す必要があると考えたからだ。
また、切り札乱用による精神の汚染というデメリットは野放しに出来ない。
システムの改善の際には、この『精霊』をノーリスクで活用出来るような仕組みを考えている。千景などの例を出さない為だ。
基礎能力の向上、精霊、これらを克服すれば勇者達の生存率は飛躍的に向上するはずである。だが――――、
「何年先の事になるのだろうな」
SOUGOは遥か遠くの空を眺めながら呟く。
神樹という得体の知れない存在からの力を勇者システムと、それに対応した四国の結界など、それらを作り出した大社の技術力はこの世界ではかなりの最先端のものだろう。
神々の勝手な判断で力を奪われないようにしたり、ハイリスクの精霊を身に宿して迎撃するというのが今の人間が施せる人類の限界だ。
最終決戦までは確実に間に合わない。
多く見積もっても、数年、いや集中的に行っても十年以上はかかるだろう。
それまでこの四国は、勇者達は進化し続ける敵と戦い続けていくことが出来るのだろうか。
未来への不安が過った時、SOUGOの身体がふらり、と揺れる。
「SOUGO、どうした」
「ふふ、何でもない。こう太陽の下で照らされ続けていたせいか、眩暈がしただけだ……悪いが、俺は先に戻る」
「……無茶すんなよ、リーダー」
ジョウゲンとカゲンの言葉になんでもない、とSOUGOは口にしてその場を後にした。
その足取りは重く、息が既に上がってしまっている。
天の神の祟りによる影響はSOUGOの肉体を蝕み続けていた。
最近では体力低下だけでなく、食欲も不振だ。飯は口に入れては嘔吐して戻すことが多い。
戦闘でも、普段のSOUGOならば力負けしないであろう怪人に力負けするようになった。
変身してからの活動限界も長くて数十分というのが、今のバールクスのスペックだろう。
「未来が……こんなにも遠く、見えないものだったとは……」
SOUGOの見据える未来は暗い。
まるで先が闇に包まれたかのように、何も見えないようだった。
ある日の午後、丸亀城を気分転換にうろついていたSOUGOは横目で教室内で勇者達の姿を見た。
「座学の時間か……?にしては、何やら古い資料のようなものを見ているようだが……」
彼女たちはいかに勇者と言われていても勉学をする義務がある。
だからこの勇者を育成するべく改修された丸亀城でも、学年は変わらずとも通常の座学を行っていることはSOUGO自身も聞かされていた。
しかし、彼女たちが向き合っているのは机の上に山のように積み上げられた資料のようなものだ。
物によってはかなり古い状態のものが多く、ボロボロである。
座学をしている事には間違いない。だが、古文を学ぶにしてもあの量は異常だ。
「どうかされましたか、我が魔王」
「!!――ウォズか……」
教室を覗いていたSOUGOの背後からの声に振り向くと、そこには仮面を外したウォズが居た。
音もなく現れた彼はまるでその場所から生えて出てきたかのように、不気味である。
そう言えば前裏切ったウォズの奴もとにかくいきなり高い所に現れ始めるのが好きだったような……そんな事を思い出しながら、SOUGOは尋ねる。
「勇者達は何をやっている?ただの座学には見えないが」
「流石我が魔王、一目でこの訓練の真意を理解することが出来るとは……そう、これはただの座学に非ず、勇者様達が行っているのは自らの精霊の出力を上げる訓練です」
「精霊の出力を上げる?」
ええ、とウォズは続ける。
「勇者システムは本人の戦う意志や、肉体・精神疲労によっては変身や切り札の使用に影響を及ぼす可能性があります。
しかし、それらは裏を返せば、ある程度は人間の努力でコントロールが可能という訳です……従来の力を超えた出力を叩き出すことも」
一息。
「勇者様方にはここ数日、自らの切り札となる精霊について勉強してもらっているのです。
切り札の使用は、自身の肉体に得体の知れないモノを身に宿そうという降霊術、呪術の類。
古来より〝得体の知れない〟存在を扱うことを人は恐れる……未知とは恐怖の対象ですから
だが、未知を克服してきたからこそ人の歴史は発展を遂げてきた。
そして、未知とは既知の中にある」
知らなけらば、知る必要がある。
「精霊の出自を、その名前に由来する伝承・論文・物語。
自らの使役する精霊を本質的に〝理解〟することで精霊の力を最大限引き出す事が可能だと、我々は考えました」
「なるほど」
SOUGOは教室の中を覗く。勇者達が机の上で広げている資料は妖怪絵巻のような画面だったりしているのも納得だし、
彼女たちの机の上に並べられた資料もそれぞれの精霊の由来となっている資料の名前が見て取れる。
「実際に精霊を使用して訓練するよりも、ノーリスクではあるが……高嶋や土居は燃え尽きているぞ」
若葉や杏、そして千景が集中して資料を分析している一方で球子は涎を垂らしながら爆睡中だ。
友奈の方も眠りこそしていないものの資料を開いたまま虚ろな瞳がオールを漕ぐように揺れ動いている。あれはもうアウトではないだろうか。
だが、教室内の教卓前に居た監視役であろう上里ひなたが笑顔で口を開いた。
『たーまーこさーん、ゆーなさーん?まだ始まって5分ですよー……吊るされたいですかぁ?』
『八ッ!? ね、寝てないです!寝てないであります!!上里軍曹!!』
『そ、そうだぞッ!!タマもちょこーっと、欠伸してただけで居眠りなんてしてないからな!!』
『これから皆さんが眠りにつく度に学食の夕飯からおかずを一つずつ若葉ちゃんに贈呈しますので』
『なッ!ただでさえ頭動かしたらお腹が空くのにエネルギー元のおかずまで取るやつがあるか!!ひなたの鬼!若葉の悪魔!!』
『そうだよ!酷いよ若葉ちゃん!』
『友奈!怒りの矛先が私だけになってるぞ!?』
『……乃木さん、あなたって人は!!』
『ち、千景!?』
『あぁ、もう、比較的に私静かに読んでるのに……』
教室にぽつんと五人しかいないというのに、この騒がしさは何なのだろうか。
やかましさだけならば、彼女たちだけで20人分には相当するのではないかと、SOUGOは呆れ顔になる。
その後徹底して授業の崩壊に瀕するも、監視役であるひなたが上手くまとめ上げて教室内は平穏を取り戻した。
「上里様がいれば、大丈夫でしょう」
「そのようだな」
ふと教室内からひなたの視線がSOUGOの視線と合わさる。
彼女は朗らかな笑みを浮かべながら、SOUGOに対して小さく会釈をして見せた。挨拶のつもりだろうか。
SOUGOは教室内の勇者達に悟られないくらいに抑えめの咳をコホン、としてその場を立ち去った。ウォズもその後に続く。
その道中、ウォズが笑みを浮かべながら、
「我が魔王。例え上里様が聡明で美人で、大人びた風貌を持っていたとしても手を出せば犯罪行為に当たりますよ」
「ウォズ、貴様……もう一度背後からリボルケインされたいようだな」
「ふむ、時折我が魔王と私の記憶では過大な齟齬があるようですね……私にそのような記憶はありませんが」
当然だ。
この記憶は常磐SOUGOが持つ、元居た世界の記憶。
彼を裏切って常磐ソウゴ側に付いたウォズに行った制裁だ。
彼が知らないのも無理はないのである。
指を意味深に動かしながらウォズはふふ、と続ける。
「安心してください我が魔王。遠い未来、貴方の元に多くの女性が集まることになります。
四国に名を馳せた大女優も。
マンホールを片手に振るうストロングな女性も。
銃さえあれば怪人と変身しなくてもやり合える女戦士も。
全てが我が魔王の思うがまま……まさに選り取り見取りだ」
「碌な女しかいないんだが……」
見覚えのある問題しか起こさない女しか出てこないのは何故だろう。
ライダーの歴史に登場するヒロインや女性キャラは一癖も二癖もあるのは今に始まった事ではないのだが。
「精霊の件、確かに上手くいけば勇者達の力の底上げは可能だ……ウォズ、見事だ」
「光栄です……我が魔王。
我が魔王の王道の為、そしてこの四国の未来の為、更なる邁進を志していく所存です」
大社の為に人類存続を願う『三好』、とSOUGOの王道を支える家臣としての『ウォズ』。
人類とSOUGOへの想いは確かに本気であるのは間違いないだろう。
彼は優秀な人材だ。これからこの世界を守るためにあたって、彼の力が必要になることは間違いない。
最終決戦を共にする仲間のハズなのに、何故だろうか。
「お前の目指す未来は……お前自身の願う未来か?」
「……」
ウォズは急に押し黙った。
「精霊の出力が上がっても、結局使用者はあの勇者達だ……その負担を一斉に担うのも、だ」
文献を解読し、精霊の力を最大限に引き出す事、それは人の身の肉体を更なる人外の領域へと近づくことを意味する。
巨大すぎる力には代償が付き物なのをSOUGOは理解しているつもりだ。
「力は時として人を狂わせる……俺はライダーの歴史でその大きな力によって
仮面ライダー鎧武/葛葉鉱太は、ある日を境に未知の力、仮面ライダーの力を手に入れた。
その世界の人々も同じく、ライダーの力を手に入れた。
その力が原因で力を持った者の間に争いが起こり、やがてその争いは一つの特別な果実、『黄金の果実』を中心に繰り広げられていく。
弱さを受け入れた者と弱さを拒んだ者達の意志のぶつかり合いがあった。
彼らの織り成す物語は時として希望を抱かせ、絶望を見せた。
心優しい人も居たけれど、戦う中でその優しさを次第に見失って行った。
そして、優しい人から先に命を散らしていった。
葛葉鉱太も、力を求めた。
誰かを守るため、自分の信じる道を進むために。
その力と力、意志と意志の戦いの末に彼は人の肉体を逸脱し、神へとなった。
今訓練をしている勇者達に同じような事が起きないとも言い切れないのだ。
精霊という力の代償の後に、この戦いの後に、彼女たち勇者は
「私の目指す未来は貴方と同じ未来です……我が魔王。
最善を尽くしたその先にある、神樹様による加護、そして我が魔王の導きによって齎される安寧の未来ですよ」
その答えは明らかに何かを自らの真意を隠すものだった。
その時の顔だけは頭を垂れて、SOUGOに対して意図的に背けていたように見えた。
夢の中の私は大きな山で遊んでいました。
遊び相手は私以外にもたくさんいて、みんな頭に角が生えていました。
でも、みんなとってもいい子たちでした。
みんな得意なことがあって、火を口から吹いたり、雷を鳴らしたり、
私じゃ壊せないような大きな岩も素手で壊してました。
私はなんにもできない、って情けなくなるんだけど周りの子たちは、
「鍛えれば大丈夫だよ!」、「お姉ちゃんも鍛えよう!」って励ましてくれました。
そのあと、一番大きな子が出てきて、「キミはまっすぐだね」って言ってくれました。
何が?って思ったけれど、その後大きな子は手を差し出して
「力を貸すよ、キミの願いが叶うように。でも、キミはキミのままでいてね」って言ってました。
目が覚めたら、自分の部屋にいました。
角の子供たちはいなくなってたんだけど、私の右手がちょっとだけ大きくなってました。
痛くもなくて多分夢だと思ってたので、目を擦ったら元の大きさに戻ってました。
あれは何だったのか今でも良く分かりません。
酒呑童子の事をいっぱい勉強してたからかな。
もしかしたら、あの時の私の手は鬼みたいな手になってたのかも。
ちょっと怖いけど特訓の成果が出てるんだなって、それはとても良い事なんだって思いました。
西暦二〇一九年八月
高嶋友奈記
酒呑童子さんの「鬼に横道なし」ってセリフ、自分好きっス。