令和元年
皆様は、どう御過ごしでしょうか?
私“__”は
異世界にて、使える知識を総動員し、
生き延びる事を優先し、
毎日を過ごしています。
第一話
『この年になって、
詠唱は恥ずかしい。』
「はぁ。」
溜息ばかり増える今日この頃
“__”は、今日も家路につく
「明日から休みなのは救いだな。」
職場で幾つもの問題が発生し
転職をしようにも“別な資格”でも
取得しない限り転職は厳しい
「・・・帰るか。」
自転車を漕ぎ出す
“信号は青だ”
一つ目、二つ目、三つ目
あれ?
この信号ってあったっけ?
記憶にあるこの信号は
“LED”に切り替わっている筈だ
辺りは暗く、人影も無い
「まじかよ。」
目の前には6差路の交差点
「これのどれかが正解ってか。」
迷うが行かねば解決しない
「行くか、帰れればよし、
マシな場所に着く事を祈るか。」
▽
「あちゃぁ、これは不味いね。」
辺りは森林
振り返っても道路や信号は無い
「はずれ、か。」
手早くスマホを確認し、
圏外だと確認、電源を落とす。
「・・・もぅ、使えないか。」
防寒着、普段着(作業着)、安全靴
財布、車のカギ、家カギ、おにぎり3つ
お茶、水のペットボトル3本、
おやつの羊羹3本、
温めないと食べれない弁当一つ。
「自転車は・・・置いて行こう。」
8年近く頑張ってくれた自転車は
根っこだらけの森林ではただの重荷だ。
「カギ・・・掛けて行くか。」
何時もの様にカギを掛け、
「メット、かぶるか。」
現場御用達の
電気工事用安全ヘルメットをかぶり
少しでも明るい方へ歩き出した。
▽
「これは。」
目の前には
赤赤と燃え盛る村?が広がっていた。
(不味いぞ、
どう足掻いても巻き込まれフラグだな)
逃げ惑う人々、
“襲い掛かる巨人”
(・・・オークって所か、
俺が出張っても、
何か出来る物じゃない)
幾人か剣を振りかざしオークへ戦いを挑むが
振り回す棍棒の様な物で弾き飛ばされ
“動かなくなった”
(ははっ、
やっぱ壊れてるんだな、俺)
動かなくなった“人間らしき者”を見ても、
吐き気、嫌悪感、罪悪感など、
欠片も出てこなかった。
(・・・4年は、俺が壊れるのに、
十分な年月だったって事か)
兎に角、大木の裏に身を隠し、
オークと思われる奴に見つからない様にする。
▽
息を殺し、兎に角静かに
静かに
まだ、村は燃えている
オークはいつの間にか立ち去っていた
日持ちしないおにぎりを先にほおばる
(異常だよな、
死体だらけの脇で、
おにぎり食ってる時点で)
月らしき星が上に昇る
(月、うん、暫定“月”にしよう)
月灯りが照らす森林に浮かび上がる
“燃え尽きる寸前の村”と
「・・・敗戦国の村だったのか。」
未だ燃え盛る“城壁都市”が
この目に映し出された。
お茶を二口飲み、おにぎりを流し込む
(さて、
昼間の方が動きやすいのか、
夜の方が動きやすいのか、
どちらも安心できないと言うのか)
防寒着の両脇にペットボトルを一本ずつ入れ
一本は手に持つ
おにぎりは後二つ、持って二日、
羊羹は半年は行けるが、開けなければの話だ
(弁当は捨てよう、
半日しか持たないし、
温めずに食べて
腹を壊して動けない方が問題だ)
▽
くすぶる建物を避けつつ、村を抜ける
(死臭、これでやっと吐き気が出る、か)
戻しかけたが、飲み込み直す
(酷い、で片づけられる光景でも無いか)
四肢を裂かれた変死体やら、
妙に変形した死体もあった。
(定番のオークの繁殖方法か、
“人間の女性を孕ませて数を増やす”
まぁ、男の立場では羨ましいかな?
って、人間の考えでは言っちゃ不味いな)
(行こう、
せめてこの国のマシな場所へ)
「まてっ!!」
あ、騎士甲冑のグループだ
「貴様、なぜこんな所に居る!!」
「こっちが聞きたいんだけど。」
「なんだと?」
(おっと、これは助かる?
言葉が普通に通じるのは良いけど)
「どう言う言い伝えか知らないけど、
“異世界人”って言う単語はありますか?」
何やら話し込んでいる
「貴様は、如何様にしてこの場所に?」
「えっと、ですね。」
説明出来る範囲で話せる事を話すと?
「すまん、異界の人よ、
これらは全て魔人の仕業なのだ、
我が国も、その軍勢に襲われ、
今しがた、押し返す事に成功したばかりなのだ。」
「そうでしたか、
では、この村?には。」
「うむ、被害の確認と生存者の捜索だ、
貴殿は“客人”として、我が国
“ヴァルトベルンシュタイン”へ招こう。」
(願ったり叶ったりだが・・・)
「その心は?」
(あ、顔をしかめたぞ?)
「出来るなら、捜索の手伝いと、
“我が軍に入って欲しい”」
(素直に言ってくれた、
せめて、捜索ぐらいはするか)
「捜索は手伝います、けど、
“身の安全の保障”を、
ヴァルトベルンシュタイン国内で、
確実にして欲しいですね。」
「・・・臨時補佐官の役職でなら、
よろしいかな?
先の戦闘で、補佐官がやられたのだ。」
(・・・ぁ~ぁ、これじゃぁ逃げられないし、
衣・食・住の確保も兼ねたら、
断れない、か)
「わかりました、
ですが、大した力も無ければ、
この世界の知識が皆無の異界人です、
お手柔らかにお願いしますね。」
▽
結局、村?の生存者はゼロ、
集められるだけの死体と、
“破片”を集め、一か所に埋める。
「貴殿は平気なのか?」
「いえ、結構精神面に来てますよ?」
「よく言う、
ちっとも表情が変わらぬではないか。」
(あぁ、“モノ”を集めるていで、
切り変えてたから、
仕事モードになってたのか)
「隊長殿、
これは私の癖の様な物です、
仕事に集中してしまうと、
表情を忘れがちになっちゃうんですよ。」
「恐ろしいな、
他の部下を見てみろ、
吐き散らかしたり、
うずくまって、動かぬ者さえ居る。」
(確かに居る、
だけど、それが普通なんだろうな)
「戦争に、卑怯も正義もありませんからね、
“生き延びる為に冷酷になれ”とか、
“情を捨て、機械の様に動け”とか。」
「確かに、しかし、
情を捨てては人間とは言えん。」
「・・・そうですね、
4年務めた仕事のせいで、
だいぶ壊された私は、
“人間”としては、壊れてるのでしょうね。」
「・・・行こう、
国までは3日は掛かる、
気を引き締めて行かねばな。」
▽
その道中は恐ろしく何もなく、
昼食、晩食には、“豆のスープ”が
辛うじて提供された
(隊長さんに、
羊羹をあげたら)
「なんて高級品を俺に喰わせたんだっ!?」
って、怒られた。
砂糖もそうだが、“小豆”は、
栽培が難しく、年一回の祭りに
“国王と貴族”が食べれるかどうかの
シロモノなんだそうだ。
「まぁ、いっか。」
俺も一つ食べる。
これで、あと一つしかない。
(・・・どうする?
知っている知識を総動員して、
底上げして、そのまま居つくか?)
城壁の一室で考えていると
「おい、居るか?」
隊長さんだ
「はい、いますよ。」
「すまんな、
また魔人の軍勢が攻めて来たんだ、
城壁からで構わん、
迎撃に参加してくれないか?」
(怖い、確かに怖い筈なのだ)
「いいですよ?
弓矢ぐらいありますよね?」
(なぜだろう?ひどく落ち着いている)
「あぁ、だが、無理する事は。」
「一人でも多い方が良い、
それに、これに勝たねば、
“死ぬのは自分”です、
そう言う事でしょう?」
「・・・すまん、
こっちの階段から上に上がってくれ、
弓兵には俺の補佐官の話はしてあるから。」
▽
「弓兵さん、隊長さんから言われた者です、
弓矢を貸して貰えますか?」
「え?異界の方がっ!?
よろしいのですかっ!?」
「はい、勝たねば、
生き残れないし、
“誰しも死にたくはないでしょう?”」
(使った事ないけど、
弓道の真似事すれば
ある程度できるだろ、たぶん)
▽
隊長さんは下で隊列を組み、
最前線で魔人の軍勢と切り合っている。
「射程距離は?」
「精々、30ラァールです、
ここからだと、右手に見える監視塔までです。」
(ほぅ、勝手に解釈させて貰えば、
30mか、そこそこの材料もあるし)
「少し改良しても?」
「え?構いませんが?」
弓兵から弓を借り、
中央部分に、“C”の形で、枝を紐で括り付け
また、少し照準をつけやすくするために、
折れた矢の一部を括り付ける。
「こっ、これは?」
「俺は右手で弓矢を引くので、
継ぎ足す時に、
射る姿勢を取りやすくし、
真っすぐ飛ばす為の指標を取り付けたんです、
後、“砂を盛り上げて貰えますか?”」
「砂を?」
「はい、その砂に、“矢”を刺し、
連射に備えて下さい。」
「は?!はぃっ!!」
▽
「なんだっ!?
物凄い命中させている弓兵が居るぞ!!」
(おかしい、
昨日今日でこんな練度が上がるなんて)
「伝令っ!!
落下する敵ワイバーン隊に注意されたしっ!!」
「なっ1?」
見上げると、既に何体か落ちてきている
「城壁に向かって退避っ!!」
素早く指示を出し、被害を抑える。
▽
「次の連射用意!!」
「はいっ!!」
これ一つだけならこんな戦果は出ない
周りが見様見真似で
改良、より効率的に矢を集中出来るようになった。
「監視を厳にせよっ!!
各隊、5人態勢を崩すなっ!!
卑怯などと概念を捨て、
一心不乱に射れっ!!
ワイバーンを確実に減らし、
敵に恐怖を植え付けるのだっ!!」
5人の弓兵に対し、矢の補充に3人、
矢の保管庫から追加の矢を運搬に6人
一人20本で構わない、
途切れさえしなければ良い
「来るぞっ!!
左上方!!構えっ!!
監視塔側1、2、3中隊は、連射待機!!
4、5、6中隊は、斉射合わせ!!
用意、撃てぇっ!!」
▽
「隊長っ!!
ワイバーンがどんどん数を減らしています!!」
(なんてこった、
あの異界人がどんどん指示をだして
今までにない戦果をあげてやがる)
「好機だっ!!
墜ちたワイバーンを盾に、
陣地形成!!
負傷兵と予備兵を入れ替えるチャンスだっ!!」
▽
「ちっ、1、2、3中隊!!
正面地上侵攻軍に向かって連射開始!!
地上軍の陣地形成と、
部隊入れ替えの援護を!!」
「はっ!!
1、2、3中隊構え!!
連射始めっ!!」
▽
「なにぃ?ワイバーンを盾に陣地形成され、
ワイバーン隊が既に半数墜ちただとっ!?」
「は、地上軍にも被害が増えております、
このままでは、
人間に与えた被害より、
こちらの被害が上回ってしまいます!!」
「うぬぬぬ。」
「緊急っ!!」
「なんだっ!!」
「人間の軍に、
“異界人”がいますっ!!」
「なんだとっ!?
それは本当なのかっ!?」
「間違いありません!!
“異質な魔力”を確認しました、
それに、かの異人が加わってから、
ワイバーンの被害が増えておりますっ!!」
「ぐぅ、撤退だ、
異界人の情報が無い以上、
このままでは被害が増えるだけだ、
全軍撤退!!
魔人王様に、緊急の文を出してくれ!!」
「はっ!!」
▽
(・・・終った?
いや、まだだ、間者(スパイ)が必ず来る、
隊長さんに、警戒して貰わなきゃ)
「おぃ!!奴は居るのかっ!!」
「あぁ、隊長さん、ご無事でしたか。」
「き、貴様が大丈夫ではないだろうっ!!」
返り血だろうか?
血みどろになりながらも、
敗走する軍勢を睨みつけ、
弓矢を射る。
「よせっ!!
敗走する兵を撃つなんて!!」
「駄目ですよ、
“反撃の力を残すなんて”
以ての外です、
潰すんです、徹底的に、
全隊、矢を残すな、
連射用意、
どうした?連射用意だ。」
まぁ、いい、とにかく、ここにあるだけでも
撃ち尽くす。
「もっ、もう良いんだっ!!
もういいっ!!」
(なぜ?
まだ山なりに撃てば届くし、
少しでも減らさなきゃ、
次も通用するなんて甘くないんでしょ?
なら、この事実を知る奴らを、
一人でも殺さなきゃ)
「よさんかっ!!」
(あぁ、弓が壊れてしまった)
「・・・次も
この策が上手くいくとは
あり得ません、
もっと別な策を考えなきゃ。」
「もう、敵は撤退したんだ、
もう、休め。」
(なぜ?抱きしめられた)
「すまなかった、
戦場に立たせるべきでは無かった、
本当にすまなかった。」
(あぁ、腹へったなぁ)
▽
「腹減った。」
開口一番、ソレだった
「誰かいますか?」
あ、扉が開いた
「はい、何でしょうか?御主人様。」
はぃ?御主人様?
「誰が?」
「はい、異界人様、
貴方様のお世話を仰せつかった、
“アッシェ”と言います。」
「・・・あぁ、よろしく、
俺は・・・瑛士だ。」
「え・・・エージ様、で、
よろしいでしょうか?」
「・・・構わないよ、
アッシェさん、一度煮沸消毒して
水と、なにか食べる物をくれないか?」
「は、少々お待ちください。」
▽
アッシェさんから聞いた話によると、
魔人の軍勢は、世界中で、
“退却”を始めているらしい、
今まで圧倒的だったにもかかわらず、
苦労して手に入れ、
改良中だった砦すら放棄しているそうだ。
「一体、何が起こったのやら。」
「失礼ながら御主人様、
貴方様の存在が、
魔人の軍勢にとって
一番の強敵であると
判断されたからかと。」
「なんでさ?」
「・・・言い伝えによると、
“異界人現れし時
世界は変革を迫られ
生き延びるか、死を選ぶか
その選択一つで
滅びを選ぶであろう”と。」
(うわぉ、俺が原因ですか)
「エージ様、どうか、
この国を滅ぼさないで
貰えないでしょうか?」
(ちょい、まてや)
「なぜに服を脱ぎだすのかな?」
「この身を差し上げます、
ですから、せめて、せめて、
この国だけでもお救い下さいませ。」
「アッシェ、
命令だ、服を直せ、
それに、まだ朝食中だ、
アッシェには、
ちゃんと好きな人がいるのだろう?」
「なっ、なぜ、そのような事を?」
「・・・感だ、
それと、朝からそう言う行為は、
俺も、ちゃんと好きな人とはしたいが、
そうでない人とはしたくないし、
強制されても嫌だ。」
「・・・では、自害致します。」
「それもダメだ、命令だ、
たとえ王の勅命だろうと、
自害は許さない、
アッシェの思い人と子を成し、
子孫を残し続けろ、いいな?」
「・・・も、勿体無きお言葉、
感謝・・・いたし、ます。」
(ぁ~、泣かれてしまった
てか、命令しちゃったけど、
良いのかなぁ?)
「アッシェ、さん?
俺、命令とか言っちゃったけど、
色々大丈夫なのかな?」
「ぇ?」
「いや、法律とか、
そもそも俺、異世界人だけど、
そう言う身分の人間でも無いし、
メイドさんも、普通の家庭には居ないし。」
「そうなのですかっ!?」
(あ、なんか言われてたから、
あぁ言う姿勢で来てたのかな?)
「で、ですが、異世界人様を、
国賓として扱うのは、
“どの国でも共通の法律なのです”」
(なんですと?)
「国賓?ほんとに?」
「ご存知無いのですか?」
「うん、ない。」
「・・・メイド長、恨みますよ。」
(うん、ボソッて、言わないで?
結構怖いから)
「ぁ、アッシェさん、
アッシェさんの思い人を連れて来て貰えますか?」
「はぃ?!」
「え?ダメですか?」
「い、いえ、大丈夫かと。」
「なら、ここで待ってるから、
“今直ぐ”ね?」
「はぃいっ!!」
▽
「し、失礼します!」
「お、お待たせしました、
・・・エージ様、
私の思い人で、
名を“エシュ”といいます。」
「え、エシュです、
エージ様、先の防衛戦での迅速なる采配、
今後の教訓に生かしたい物でありました!!」
「あぁ、弓兵の弓を貸してくれた人か、
なら安心かな?」
「あ、安心でありますか?」
「あぁ、
お節介だろうけど、
“今ここに宣言する”」
「「っ!?」」
「二人を夫婦(めおと)とし、
如何なる法だろうと
妨害だろうと、
この婚姻を害するものは、
“異界人であるエージ”の
害する者とし、
全力で排除する、
そして、空いた時間で、
俺の世話も頼めるかな?」
「あ、ありがたき幸せ。」
「エージさま・・・なんとお礼を申せばいいのか。」
「で、どこまでを想定してらしたんですか?」
扉が開き、
隊長さんと?
「いやはや、
気づかれていたのか、
異界人殿は達人か何かかな?」
「へっ!?陛下っ!?」
「こ、国王陛下、な、なぜこちらにっ!?」
「いやぁ~、
陛下がさ、直々に恩赦と謝礼を渡したいって、
聞かなくてさぁ。」
「世は、ベルンシュタイン11世テルツォ、
気軽にテルツォとでも呼んでくれると、
気が楽なんだ。」
「テルツォ陛下、それは出来ません、
幾ら国賓待遇でも、
国の長に対して、
それは不敬に当たる筈ですが?」
「・・・鋭いねぇ、
あ、そうそう、
エージ君が改良した弓ね、
正式採用したから、いいよね?」
「え?」
「いやぁ~、正直、あの発想は無かったんだよ、
矢筒、弓を背負って階段を上り下り、
非効率だったんだ、
足の速い人間に、20本ずつ運ばせ、
常に途切れさせなければ、
降り注ぎ続ける矢は
恐怖以外何者でもないからね。」
「まぁ、構いませんけど、
今後も魔人の軍勢は攻めてきますよね、
その時はまた?」
「出来るならそうして欲しい、
それは本音だよ、
でも、異界人である君は、
帰りたい、そうは思わないのかい?」
「・・・確かに、未練は欠片程度にはありますけど、
“帰る方法なんて無い”
陛下、その癖、直さないと、
嘘がすぐばれますよ?」
「・・・怖いねぇ、
国賓待遇は変えない、
でも、この国に深く関わって行く、
それで良いのかな?」
「あれだけ軍事に関わって
終わったからさよならは、
出来ないと、覚悟してましたから。」
「じゃぁ
家に入ってくれるかい?」
「外に近衛兵を待機さてるのに
逃げがあると?」
「ぁ~、なんでバレちゃうの?」
「甲冑の擦れる音、
籠る呼吸音、
そして、隊長さんがキョロキョロと、
落ち着けない状態、
国王陛下の立場でありながら、
“異世界人”の前に無防備に立つ、
下準備してから来る、
そこの二人には言って無かった、
だからですかね?」
「はぁ、降参だ、
レイド、俺達の負けだ、
どっか屋敷余ってたっけ?」
「陛下、確か十日前の襲撃で、
当主と、
その親族が途絶えた屋敷が
丁度一つありますね。」
「え?」
「じゃぁ、暫くそこに住んでて、
必要な書類やら、
連絡は追ってするから
2、3日はゆっくりしててよ。」
「ちょ、陛下?
俺に屋敷なんて。」
「ばか、国賓待遇でいて、
軍事に関わるなら、
屋敷ぐらい持ってなきゃダメなんだよ、
ま、諦めな。」
「隊長さ、レイド隊長!!」
▽
「屋敷、ねぇ。」
貰ったは良いが、如何せん広い
(構造は簡素なんだろうけど、
造りが同じ過ぎて迷うぞ?)
「ん?」
女の子?誰だろう?
「!?」
あ、逃げた。
「あ、エージ様、ここにいらしたんですか?」
「アッシェさん
エシュさんとはどうですか?」
「もぅ///今は仕事中です、
でも、正直助かりました、
エシュの叔父が大反対していたので、
婚姻は諦めていたのです。」
「・・・そうか、
あ、そうだ、
アッシェさん?
この屋敷の関係者に
“女の子”っているのかな?」
「女の子ですか?
・・・恐らく、亡くなった当主様と、親族様、
どちらかの“ご子息かと”」
「あれ?
レイド隊長は
確か、途切れたって。」
「・・・まだ3、4歳の幼子に、
家督は継げませんし、
ましてや女子、
当主にはなれません。」
(そうか、昔の日本の様に、
家督を継ぐのは男なのか)
「・・・アッシェさん
養子を取る書類をお願いします。」
「まさか、引き取るおつもりで?」
「教養に関してはお任せします、
せめて令嬢足る最低限の事、
それに、
“幼子には親が必要です”
せめてもの償いです。」
「わかりました、
ですが、それ相応のお覚悟を。」
(わかってるよ、
貴族がらみに首を突っ込むんだからね)
▽
おとうさま、おじさま、
どうして亡くなってしまったのですか?
おかあさまも、おばさまも、
すでにいないのですよ?
わたしはひとりぼっちなのですよ?
「っと、今日はここか。」
「!?」
(あ、逃げられた)
あの異界人様が
このお屋敷のあたらしいあるじ様
そう、そこのメイドが教えてくれた
令嬢足る者、教養をおろそかにしてはいけないと、
家事の合間に字を教えられ、
その男の従者には、
弓兵の基礎を教わった
あの異界人様は
なぜか怖い
「おろ?」
「ひっ!?」
どうしてっ!?
なんで隠れる先々にこの方はいらっしゃるのっ!?
「っ!?」
足がっ!?
「危ないっ!!」
いとも簡単に抱え上げられました
「急に走って、
階段から転げ落ちたら
怪我だけじゃすまない事もあるんだぞ?」
「ご、ごめんなさい。」
「っと、レディを抱えたままでは失礼だね、
俺はエージ、
一輪の花のレディのお名前は?」
(なんつぅ事口走ってんだ俺は?)
「アリエ シュレイアー、ですわ。」
「アリエお嬢様か、
良い名前だ、少し、話せるかな?」
「・・・異界人様のお願いを断れないのを
知っていて言うのですね。」
「まぁ、そうだね、
アリエを養子として俺の家族になった事も
こうして伝えられたし、
今後の事も話したいからね。」
「え?」
(養子?私が?
シュレイアー家を残せるの?)
▽
「アッシェさんありがとう。」
「いえ、これが仕事ですから。」
(とは言え、
まだ4歳の幼子を養子とは、
シュレイアー家を残してあげたいから?
甘いですね、エージ様、
貴族に関わると、
ろくでもないとわかっているのに)
「あの。」
「アリエ、まずは勝手に養子にした事を謝罪する。」
深々と頭を下げる。
「ちょっ!?おやめくださいっ!!」
「わりぃ、俺なりのケジメだ、
アリエ、
シュレイアー家を残したい思いはあるか?」
「・・・勿論ですわ、
ですが、既に当主、叔父様も無き今、
臨時でエージ様が当主、
この状況を
良くは思わない他の貴族から、
執拗な嫌がらせ、実力行使が
今後、起こりうるかと。」
「アリエ、
シュレイアー家の詳しい領地や、
収支のリスト、片っ端から集めてくれ。」
「え?」
「エージ様?」
「アッシェさん、アリエと共に、
資料を集めてくれ、
エシュにも声を掛けて、
後、陛下の近衛兵を何人か借りよう、
3人の護衛として。」
「ちょっ!?エージ様!!
何をなさるおつもりですか?」
「改革と、
どの貴族にも負けない自力を付ける、
陛下には“好きにしていい”と、
この“捺印付き書面”を貰っている。」
▽
アリエですわ
エージ様、やはり貴方様は怖いです
十日掛けて集めた資料を僅か半日で読み上げ、
“領地内循環道路計画”を打ち出され、
耕作地帯の灌漑(かんがい)設備の新規整備
契約工房、それ以外の個人経営工房にも発注したり
税収にもテコを入れられ、
100ラエルに5ラエルの税金、
その内訳を“領民に公開”
領民の不安を減らす事に尽力成されました
そのおかげで、
前年の収益を、僅か三月半(みつきはん)で、上回り
区画整理における転居住人には、
転居費用の全額負担にて快諾して貰い
王都と、耕作地帯を結ぶ循環道路は、
着々と工事が進んでいますわ
陛下からも“国庫支援”を受け、
六月(むつき)目には、循環道路が完成し、
そこを行き来する“循環馬車鉄道”も開業されました
どの停留所で乗り、どの停留所で降りても、
一律50ラエル(内5ラエルは税収)にて、
“誰でも使用できる”
これには陛下も驚いていましたが、
常に集金を見込め、
維持費を引いても、
二月(ふたつき)分の税収を賄えました
そして、“ぽいんとかーど”なる物を作成
生鮮食品には変わりないのだけど
“あまりにも不揃いな物は”廃棄されてしまう
その不揃い品を、“ぽいんとかーど”の、
ぽいんとを使い、不揃い品を格安で
購入出来ると言う新法案をお創りになりました
「不揃いでも、味に問題は無いんだろ?
高くて買えない“生鮮食品”より、
不揃いでも
“安くて同じ味の生鮮食品”を買える、
これは使うべきだろ?」
しかも、この“ぽいんとかーど”は、
エージ様が各店主を面接し、
信頼できると判断した店舗のみ許可しているので、
“不正品の抑制”につながったのです
シュレイアー家の家紋と、エージ様の
“血印”付きの書面です、
これを裏切る、つまり、
“国賓を裏切り、国王陛下も裏切る”事に直結するのです
悲しい事に、何件か、それにより潰れた店舗がありました
陛下も死罪では厳しいと判断し、
“国外追放”の形を取って下さいました
どちらにせよ、厳しいですけどね
そんなこんなで、はや2年を経過しましたが、
どう言う訳か“魔人の軍勢”は攻めてきません
エージ様も、おかしいと毎日のように言っておられます
陛下と協力なさって“軍備”も進めているそうです
その内容に関しては常にはぐらかされてしまい、
エシュに聞いても
「し、知らない方が良いよ。」
アッシェも
「子供達には教えられないわね。」と、
いつの間にか子供を作っていて、
双子の赤ちゃんと毎日を過ごしている、
正直、その世話に私を駆り出さないで欲しい
いずれの“練習”にはなるけど、
胸をまさぐられるのは勘弁して欲しい
日に日に他の貴族達がやつれて行くのは、
気のせいなんだろうか?
▽
「どうだ?」
「エージ様、これはいくら何でも。」
「非道?」
「ぇ、あ、ぁの。」
「構わないさ、戦争の為の兵器は、
そう言う物さ、
“発案し、作り上げる人間が一番非道”さ。」
「ですが!!」
「もう、2年、いや、3年前になるか、
あの時の防衛戦で、
ワイバーン諸共、
“騎乗兵”も殺しているんだ、
罪人と変わらないよ、
特に、俺はね。」
「エージ様。」
「兎に角、これで大抵の国が攻めて来ても、
“人的損失で押し返せる”だろうよ。」
▽
私が7歳になる前日に、
国境付近に魔人の軍勢が現れた
数こそ3年前より多いが、
このヴァルトベルンシュタイン国は、
姿を見間違えるほどに変貌した
「将軍、
あれは
ヴァルトベルンシュタイン国なのでしょうか?」
「う、うむ、
確かにあの国の筈なのだが。」
▽
「敵さん、動揺しまくってるな。」
「レイド隊長、
この3年で出来るだけの手を打ったんですから、
文句言わないで下さいよ?」
「あほ、こんな要塞、
誰が相手したいなんて思うんだよ。」
「エージ、
勝てるのか?」
「陛下、勝てるのか?
じゃなくて、
勝って“殲滅しなきゃ”
こうして何度も攻めて来るんです、
そのたんびに非常事態宣言なんてしてたら、
“この国は大丈夫なのか?”って
国民から不安と不評を突き付けられますよ?」
「・・・好きにしていいなんて、
言わなきゃよかったな。」
「しょうがないですよ陛下、
俺も、コイツを向かい入れた責任がありますわ、
陛下だけのせいじゃないですよ。」
「レイド隊長、
回避訓練追加して良いんですか?」
「勘弁してくれぇっ!!」
(あ、逃げた)
「では、陛下。」
「あぁ、
すまないな、エージ、
だが遠慮はするな、
“持てる力を使って”
敵を殲滅してくれ。」
「・・・またですか、その
“髪を弄る癖”
いい加減にしないと、
“女性国王だってバレますよ?”」
「・・・すまん。」
「誰を残したいんですか?」
「大将一人、
それだけでいい。」
「・・・魔人になった、“元国王”ですか。」
「・・・うん。」
「なんとかします。」
▽
「ま、隊列組んで攻めて来るよな、
“少し未来の戦争”
見せてやるよ。」
《伝声管員、状況送れ》
《東監視塔、準備完了》
《北監視塔、同じく》
《西監視塔、いつでも》
《南監視塔、エージ様、
全軍、いつでも》
《こちら中央塔、了解、
最大射程圏内に入り次第、
“魔術展開”
ピンポイントロックにて、
中隊長をまずコロセ、
小隊長は自ずと采配が上手い奴が目立つ、
発見次第コロセ、
大隊長一人に、何万の魔人を指揮は出来まい、
勝てるか?ではない、
“殲滅するまで”終わらないのだ、
さぁ、“戦争を始めよう”》
▽
酷いモノだ
そのモノは、鋼鉄並みの強度を持った矢が、
1000では効かない
1万の矢が、
1万の命を一瞬で奪って行った
盾を上に構え防ごうにも、
盾ごと貫かれ死んでいった
城壁に穴が増えた
誰かが城壁に張り付いたのか?
否
そこから“魔術が展開され”
巨大な火球が、何十発と撃ちだされたのだ
コチラも魔術で対処しようとするも
打ち出す前に、
鋼鉄の矢に貫かれ減って行く
前に進めなくなり
「撤退っ!!」
そう、戻れば、また来れる筈だった
「大将っ!!道がっ!!
道が無くなっておりますっ!!」
確かに後ろにあった道が
無くなっており、
巨大な谷が口を開けて待っていた
城壁からは、追撃部隊だろうか?
“妙な騎士甲冑”を身にまとった兵士達が、
ガシャガシャと音を立てながら迫って来る
左右を見渡すと
“撃ち墜とされたワイバーンが道を塞いでいた”
「挟まれた・・・。」
その瞬間、何かに殴られた感覚に襲われ
気づいたら何処かの一室に拘束されいた