たぶん、短編集?   作:扶桑畝傍

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ifブーゲンヴィル島空戦

「ヤマモトの機を撃墜しろ」

 

昭和18年

 

4月18日

 

「長官、あと、

 十分ほどで、

 ブ島に着きます。」

 

うん

 

うなずいて、返事をする。

(一つでも多く、

 “現場へ”行かねば)

「ナゼ、

 ジャップノ

 “ヤマモト”ハ、

 コンナコトヲ・・・。」

「二番機、

 ドウシタ?」

「イイエ、

 ナゼ、ヤマモトハ、

 コンナ最前線ヘ、

 来タンデショウ?」

「ボヤイテル暇ガ

 アルナラ、索敵シロ。」

「・・・イエッサー。」

 

 

「長官は後どれくらいで、

 ブ島に着くんだ?」

「順調なら、

 そろそろですね。」

「二式水戦・・・

 こいつらでけでも、

 護衛に就ければ。」

「しかし、

 我々の司令官は、

 趣味が多彩で、

 よかったですね?」

「だが、

 燃料も、今回で最後だ、

 これで・・・。」

「隊長?

 そんな事言ってると・・・

 ・・・あれは・・・

 

 “P-38”サンパチだっ!!」

 

 

「ん?

 隊長!!

 1500から敵機!!」

「くっ!?

 全機!!突撃!

 長官をお守りしろ!!」

「長官!!

 零戦がっ!!」

「そうか。」

(・・・内通?

 いや、読まれていたのか)

 

 

「“ジーク”!!」

「半数ハ、

 ジークヲ引キ離セ!」

「アイサー!!」

「ジーク如キ、

 ライトニングノ、

 敵デハナイ!!」

 

「行くぞ!!」

「急降下!!」

「なんだっ!?」

 

「ノォーーーっ!?」

 

ライトニングを貫く一撃

 

20mm機関銃

7.7mm機関銃

 

わずか3機の

“二式水上戦闘機”

ブ島上空を

さらに混乱させるには

十分な“戦力”だった。

 

 

「っしゃ!!一機!!」

 

『ジャップメ!!』

 

「___!!後ろだ!!」

「なめんなっ!!」

 

軽快に旋回して、

逆に後ろに回り込む。

 

『シッ!?』

 

しかし、

双発エンジンから

繰り出される上昇力に、

追従できない。

 

「はぇえっ!!」

「次だ!!

 長官機の周りを

 うろうろして、

 絶対に、射線に入れるな!!」

「あいよ!!」

「隊長!!

 二式水戦がっ!!」

「!!

 好機だ!!

 一式陸攻を退避させる

 時間が稼げる!!」

「なに?

 二式水戦が?」

「はっ!

 3機ですが、

 直援に就いてます!!」

 

(まったく、

 どこの馬鹿だ?)

 

 

どっかの馬鹿

 

「へっくしっ!?」

「司令?

 噂、長官ですかね?」

「ん~・・・

 さぁな・・・。」

「撤退したら、

 大目玉ですよ?」

「ん~・・・

 ここに住むか?」

「漁師ですか?

 フロートを船に改造しますか?」

「だな。」

 

「ちゃんと、

 帰ってこいよ?」

 

 

「二番機被弾!!」

「くそっ!?」

 

『一番ダッ!!

 一番機ヲ狙エッ!!』

 

「ちくしょうっ!?」

「長官!!二番機がっ!?」

「宇垣君・・・。」

 

「二番機!

 海上に不時着!!」

 

「急げっ!!

 後少しなんだ!!」

 

 

遂に火を噴く

 

「左発動機被弾!!」

「急降下します!!」

 

 

がたがたと揺れる機体。

そこに。

 

「!?

 敵機直上!!」

 

『グッバイ!

 ヤマ』

 

何かが砕け、墜ちて行く。

 

「水戦がっ!?」

「これ以上!!

 長官機に

 近づけさせるなぁああっ!!」

 

零戦が吠える。

 

20mm

7.7mm

焼き付けも構わないと、

吠え続ける。

 

「にゃろうっ!!」

 

水戦には時間がなかった。

 

航続距離だ。

 

この場所に着くまで、

全速力。

増槽は既に無い。

 

帰る燃料さえ、

危うかった。

 

 

零戦一一型ベースの

二式水戦

 

水戦に改造するに至って

航続距離の低下は

避ける事ができなかった

 

それはフロートだ

 

水に浮く

腐食対策

どうしても重くなる

 

しかし・・・

 

万が一

 

万が一

 

“外す時があれば?”

 

「水戦がフロートを

 外しました!!」

「なにっ!?」

 

思わず立ち上がり、

外を見てしまう。

 

(あれでは帰れない・・・

 なんと言う事を・・・)

 

「うっひょ~!?」

 

“軽い二式水戦”

 

いや、

零戦一一型

本来の機動性だった。

 

『ナンダアノ機体ハッ!?』

 

『機動性ガ格段ニ

 早クナッタッ!?』

 

 

もって十分から十五分

 

翼内タンクの残量は

 

もう、底を尽く寸前だった

 

 

既に三十分、

 

全力戦闘を続けている。

 

『クソッ!

 アノ二機ガ邪魔ダ!!

 半数ハアノ二機ヲ

 “撃墜”シロ!!』

 

 

「ん?おわっ!?」

 

急旋回で回避する。

 

「やっこさん、

 やっと分かったな?」

「どうする?」

「受けて立つ!!

 お前は長官を!!」

「まてっ!?」

「や~だよ!

 

 それに、

 もう

 

 帰れないんよ・・・。」

 

太ももに受けた銃弾。

 

止血はした。

 

「もう、

 あかんのぉ・・・。」

 

視界が霞みだす。

 

「だがのぉお!!」

 

機体を翻し。

 

「ここで!!」

 

吠える機銃。

 

「長官を!!」

 

なかなか墜ちない。

 

「墜とされちゃ!!

 たまらんのやぁああ!!」

 

また一機。

 

 

16機のライトニング

 

6機の零戦

 

2機の一一型

 

半身不随の一式陸攻

 

どうなるか

 

だれも予想できなかった

 

 

バラレ

 

一機でも飛び立とうと

 

必死に走る

 

あの馬鹿者から

 

“発、水戦司令”

“宛、バラレ航空隊”

 

“長官ヲ守ラレタシ”

 

“最後ノ燃料ヲモッテ”

 

“三機ノ水戦ヲ差シ向ケタリ”

 

“我ニ残ナシ”

 

“クリカエス”

 

 

『(マズイゾ・・・)』

 

バラレまで、

目と鼻の先まで迫っていた。

 

ライトニング隊も、

 

零戦も、

 

水戦も、

 

これ以上とどまっていられない。

 

『全機!!

 一斉突撃ダッ!!』

 

16機全機が、

一斉に群がる。

 

やらせるかと、

 

零戦、水戦が、立ちはだかる。

 

 

「撃てぇええ!!」

 

新たな6機の零戦の、

機銃が吠える。

 

しかし、

火を噴いたのは、

 

“一式陸攻だった”

 

「長官っ!?」

 

「長官っ!!」

 

「そんなっ!?」

 

「まだやっ!!

 舵は生きてる!!

 そのままや!!」

 

水戦が、バンクを振る。

 

滑空しながら滑走路へ向かう。

 

足は・・・出た!!

 

「よっしゃ!!

 いけぇえええ!!」

 

再び翻し、

ライトニング隊へ向かう水戦。

 

零戦、12機が、

ライトニング隊15機を

止めに入る。

 

「ちっ!?

 後一機!!

 どこやっ!?」

 

 

『ココダッ!!』

 

一機のライトニングが、

 

急降下する。

 

『今度コソ!!

 グッバイ!

 ヤマモト!!』

 

「ぉおおおおおっ!!!」

 

射線正面から、

 

ライトニングに突っ込んだ。

 

飛び交う破片。

 

「ぁあああああっ!!」

 

『ォオオオオオオッ!!』

 

 

空戦報告書

 

二式水戦3機 撃墜

 

一式陸攻2機 撃墜

 

“P-38”3機 撃墜

 

宇垣参謀長生還

 

されど

 

されど

 

長官は重傷

 

本土へ、緊急搬送となった。

 

 

昭和20年

 

4月7日

 

「桜か。」

「はい、咲きましたね。」

「あの水戦、

 どこの隊か分かったか?」

「いいえ。」

「そうか。」

「生きていれば、

 酒でも飲みたいなぁ。」

「駄目です、

 医者から自粛してと、

 再三言われてます!」

 

「なら、花札「駄目です」」

 

(まったく、

 ただのじじぃになったは

 良かったが・・・)

 

 

「日本は強いなぁ。」

「そうですね、

 いつか・・・

 アメリカも超えると

 思っていますよ?

 長官。」

「よせ、

 もう、

 ただのじじぃだ。」

 

こんこん

 

「ん?誰だ?」

「はい、

 今日は、どうしても

 

 “長官に会いたい”

 

 と、言う人がいらしてます。」

 

「そうか!!」

 

その夜

 

老け込んだ老人と

 

その付き人

 

来客二名

 

夜が明けても

 

話し声は絶えなかった

 

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