窓と扉に手をかける   作:もけ

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後半に個人的な宗教観が出てきますが、特定の宗教を批判するものではなく、あくまでも宗教の自由が認められている日本でのそれも一個人の考えですので、そういう考えの人もいるというレベルで納得していただければと思います。


なのはとはやてが小学校に入学

 何を当たり前のことをと言われるかもしれないけど、僕を始め孤児院のみんなは当然の様に公立の小学校や中学校に通っている。

 

 僕は捨てられた時にニケ以外の所持品が何もなかったから論外なんだけど、親が事故死などして親戚がいなかった事から預けられた子にはそれ相当の財産があるわけなんだけど、孤児院を出た後の進学にかかる費用や部屋を借りる際の頭金、将来まとまった金額が必要になった時のために無駄使いせず貯めておくというのが園長先生の方針だ。

 

 かくいう僕もパフォーマンスで稼いだお金をちびちび貯め込んでいる。

 

 お金と言うものはそれだけで幸せにはなれないけど、幸せになるために必要な場合が多々あるものだからね。

 

 さて、なんでこんな話をするかと言うと、はやての進学の話に繋がる。

 

 はやてが孤児院に来た当初はみんなと同じ様に公立の小学校に行かせる予定だったんだけど、足の麻痺が悪化し車椅子の生活を余儀なくされた事によってそれは事実上不可能になった。

 

 車椅子に乗るはやてにとって絶対条件となるバリアフリーが公立の学校ではまだ進んでいなかったからだ。

 

 それじゃあとこの近辺でバリアフリー設備のある学校を探してみるとヒットしたのは一件だけ。

 

 私立聖祥大附属小学校しかなかった。

 

 選択肢が他になかった事もあるけど、後見人のグレアムさんがお金の心配はするなと言ってくれ、加えてなのはちゃんも元々同じ所を受験する事になっていた事がはやての不安を取り除く後押しをした。

 

 そして二人とも見事合格。

 

 膝下まである白いロングのワンピースに同じ色のミニ丈のジャケットを重ねた可愛らしい制服を着て、四月から仲良く一緒に通っている。

 

 最初の一週間は車椅子の事ではやてがからかわれたりイジメられたりしないかと不安だったけど、それは僕の杞憂に終わった。

 

 はやての明るい性格となのはちゃんのサポートもあって問題なく馴染めたらしい。

 

 もしそんな事になっていたら殴り込みに、いや、魔法を使う事も辞さない覚悟だったから、色んな意味で良かったと思う。

 

 結界魔法と転移のレアスキル『世界の扉』を使えば完全犯罪とか余裕ですよ?

 

 まぁそうは言ってもそんなに酷い事はしません。

 

 むしろ考えようによっては喜ばれるかもしれない。

 

 夕日の沈むグランドキャニオンに1時間放置とか、普段着のままで南極のペンギンに会いに行くとか……。

 

 自然の素晴らしさを知るのは情操教育に良いって言いますよね。

 

 まぁそんな黒い話はさておき、というか黒くないですし、当然ですよ。

 

 身内と他人なら100%身内を優先します。

 

 家族と世界ならノータイムで家族を取りますが何か?

 

 ん? 結局黒いのか?

 

 まぁいいや、話を進めよう。

 

 孤児院や魔法の練習の合間に二人から学校での事を聞いていると、出てくるトピックスは大まかに言って三つ。

 

 ①はやて談、なのはちゃんについて。

 

「なのはちゃん、自己紹介から凄い人気でな。真お兄ちゃんとの大道芸を見て顔覚えてた子がいっぱいいたみたいでな。なのはちゃん可愛いし、あれは何年かしたら絶対ファンクラブとか出来るわ。今から写真撮っといて、お宝写真として売り出せば……」

 

 はやて、その歳でもう商魂たくましいのは関西弁のせいか?

 

 でもおまえって生まれも育ちもこっちが地元のエセ関西人だよな。

 

 親御さんが商売でもしてたか?

 

 さておき、その話を聞いた次の日になのはちゃんをその事で称賛したら、全力で謙遜して両手をパタパタ振りながら真っ赤になってとても恥ずかしそうにしていた。

 

 パフォーマーとしてはぜひパフォーマンスで評価してもらいたい所だけど、それも見てもらわなければ始まらないわけで、だから顔と名前が売れるのは良い事だ。

 

 だけどファンクラブまではいいとして、ストーカー紛いのが出てこない事を祈ろう。

 

 ちなみに祈るのは、ストーカーの命に対してだけどね。

 

 家族を大事にしているのは僕だけじゃないって事だ。

 

 ②なのはちゃん談、友達。

 

「―――― 友達? ―――― できました♪アリサちゃんとすずかちゃん。アリサちゃんは綺麗な金髪のカッコイイ子で、私が教室で質問責めにあってる所を助けてくれたの。それでアリサちゃんも私のことを見たことあるらしくって「また見せてね」って言ってくれて。すずかちゃんははやてちゃんが先に仲良くなった子で、紫がかった不思議な色の髪をした落ち着いた大人っぽい子なの。はやてちゃんが図書室で本を探してる時に、手の届かない本を取ってくれたのがきっかけなんだって教えてくれたの。ちょっと運命的で羨ましいかも。 ―――― え? ―――― そう言われてみると確かにアリサちゃんは私にとって王子様……なのかな?でもそんなこと言ってらきっと怒られちゃう」

 

 うん、流れはちょっと違うけど、前世の知識通りにあの二人と友達になったみたいで安心した。

 

 でもこれってどう判断したらいいんだろう。

 

 創作物であった前世の『魔法少女リリカルなのは』と、僕たちが今を生きる現実との齟齬。

 

 僕のせいだって言うのは簡単だけど、それでも出会い、友達になった4人。

 

 運命って言葉で納得するべきなのかな。

 

 ちょっと違うけど、前世からの導きによりとか……電波過ぎるか。

 

 でも僕に前世の記憶があるのは証明は難しいけど僕の中の真実ではあるわけで、それを考えたら運命とか奇跡とかもあながち間違いじゃないかもしれない。

 

 とりあえず、末永くその友情が続きますように……。

 

 ③二人より、クラスメイトやその周辺について。

 

「男子はゲームとかアニメの話、後は校庭でサッカーとかしてるな」

 

「そうだね。あんまり話す機会ないよね」

 

「そんで女子はテレビの話とか休みの日に家族でどこ行ったとかの話が中心やな」

 

「新しく始まったドラマの話とか盛り上がってるよね」

 

「後は完璧超人の話やな」

 

「はやてちゃん、完璧超人って……」

 

「名前なんやったっけ」

 

「とりあえず隣りのクラスの子なの」

 

「そうそう、何回かうちのクラスにも顔出してたけど、あの外見は反則やわ」

 

「髪も肌も白くて、眼が赤くって、」

 

「ああいう色が薄い人をアルビノって言うんやって。生まれつきの体質らしいわ。目立つのが嫌な性格やったら可哀想やな。私もそういう所ちょっと分かるし」

 

「はやてちゃん……」

 

「そんな目で見んと、大丈夫や。私にはなのはちゃんにすずかちゃん、アリサちゃんもおるし心配あらへんよ」

 

「うん」

 

「話戻すけど、あの子、男子と一緒にサッカーしてたみたいやし、女子はアイドル扱いで仲良くなりたいみたいやし、そんな心配はいらへんのかもな」

 

「そうだね。運動も勉強も優秀だって言ってたもんね」

 

「そんで爽やかイケメンときてる。まさに完璧超人やな」

 

「はやてちゃん、そのあだ名気に入ってるの?」

 

「ちょっとな」

 

「もう」

 

「いや、一応褒め言葉やで」

 

「一応って言ったの」

 

「遠目から見る分にはいいけど、近くにいたいとは思わへんもん」

 

「あ、それは私もなの」

 

「何て言うか、嘘っこいっていうか、爽やか過ぎんねん」

 

「やっぱり無理してるのかな」

 

「そうかもしれんな。あの外見で暗かったりしたら間違いなくイジメられるやろうし」

 

「ちょっと可哀想だね」

 

「まぁ、そうと決まったわけやないけどな。自分大好きナルシストの可能性もあるし」

 

「そ、それは」

 

「ないと思う?」

 

「う、う~~ん、どうだろう」

 

「まぁ、まだ名前も知らんわけやし、とりあえずは保留やな」

 

「賛成なの」

 

 この話を聞いた時、少し引っかかるものがあったんだけど、二人に倣って保留にしておいた。

 

 特にはやて達に実害がある様子じゃないし、アルビノという先天性異常は実際にあるわけだから、前世の知識にあるトンデモ設定と結びつけるよりは常識の範疇に落ち着けた方が現実的だと思ったからだ。

 

 いくら僕に前世の記憶があって、次元世界なんてSFと魔法なんてファンタジーが実在したとしても、神様はないよ。

 

 いや、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も仏教もその他数多ある宗教も否定する気はないし、信じたい人は信じればいいと思うけど、現代日本人の僕としてはそれは難しいと言わざるを得ない。

 

 現代日本は科学という名の宗教が一般的だからね。

 

 どのくらい浸透してるかと言うと、科学は万能だと言う言葉に疑問を抱かないくらいに。

 

 科学の定義は再現可能な法則を指すけど、物凄く根幹的な所で、実は法則の仕組みが解明されていない。

 

 例えば、万有引力がなぜ働くかとかね。

 

 同じ工程を繰り返し、同じ結果が出たから、これはそういう法則の基に成り立っているんだという客観性のある経験則であって、当てはめた数式がこじつけである可能性は捨てきれない。

 

 実は見えない妖精さんが頑張ってるかもっ!!

 

 なんてのは冗談だけど。

 

 僕の結論としては、見たこともない神様を信じるくらいなら、ブラックボックスがあるけれど目に見えて結果の出る科学を信じるよ。

 

 だから前世で読んでいた二次創作のようなテンプレの神様転生なんてものはない。

 

 よって、二人の話に出てきた彼は、僕と同じように現実の今を生きる一人の人間だ。

 

 僕の前世の記憶がある事については、リンカーコアという実体のないものが存在している事から、魂だってあって不思議はないだろうと仮定して、僕以外にも前世の記憶を持っている人がいる事実を考えればギリギリ納得できる。

 

 法則を表す数式にだって必ず例外となる特別解があるんだから、記憶を引き継ぐ魂にそれを当てはめてもいいだろう。

 

 …………必死になって自分を誤魔化している自覚はちょっとはあるけど、自覚したからって答えは変わらない。

 

 お決まりになってきた台詞だけど、未来は不確定だ。

 

 その都度、その場で対処する。

 

 味方なら協力するし、敵なら妥協点を探すか排除する。

 

 一般人なら被害が及ばないようにする。

 

 そんな所だね。

 

 




ちょっとした疑問なんですが、人間で白蛇みたいなレベルの色素異常ってあるんですかね?

白人でならいそうかな?

ちなみに彼は踏み台転生者や魔導師として敵や味方になったりはしませんのであしからず。

じゃあ何で出したって言われそうですが、それは次話にて……。

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