窓と扉に手をかける   作:もけ

15 / 20
書いては書き直し、書いては書き直し、なかなか決まらなかったフェイトとのファーストコンタクト。
奇襲で鎮圧して拘束、バルディッシュを人質にとっての尋問と脅迫なんて考えたんですけど、こんな感じに落ち着きました。


フェイト、ファーストコンタクト

 暴走の可能性が高く、単体で次元震を引き起こす程のエネルギーを内包したロストロギア『ジュエルシード』。

 

 その捜索を今まで訓練に当てていた時間で行うにあたって、その相談と危険性を事前にみんなに説明しようと暴走体を封印した翌朝になのはちゃんと話し合い、放課後に月村邸に集まってもらった。

 

「ジュエルシードねぇ~?」

 

 魔法の存在は既知であり、目の前でフェレットが喋り、本体である青い結晶を見せられても、やはりどこか半信半疑な一同を代表してアリサちゃんが懐疑的な声を漏らす。

 

「これが暴走すると地球どころか次元そのものが崩壊するって言われても、いまいちピンと来ないわね」

 

「で、でもアリサちゃんっ」

 

「あ~あ~分かってるわよ、なのは。 何もそこの喋るフェレット、ユーノだっけ? の言う事を疑ってるわけじゃないの。 ただ実感がわかないって言うか想像がつかないってだけよ」

 

「うん、私も正直……」

 

「いきなり地球滅亡の危機言われてもなぁ?」

 

 いや、はやて。オマエがそれ言っちゃ駄目だろ。

 

「実際問題として、なのは、その暴走体とやらと戦ってみてどうだったんだ? 怪我は特にしてないようだが」

 

「うん。楽勝だったよ」

 

「楽勝って」

 

「真君、詳しく」

 

「実際見て貰った方が早いですね。ニケ」

 

『Yes Master』

 

 みんなに見えるように空間ディスプレイを出す。

 

「「「……」」」

 

 そして繰り広げられるなのはちゃんの自然破壊とワンサイドゲームに一同唖然。

 

「なのは」

 

「なに? アリサちゃん」

 

「あんたの方がジュエルシードなんかより百倍危険よっ!!」

 

「えぇぇぇぇっ!?」

 

 予想だにしない指摘に絶叫するなのはちゃんだが、あの映像を見てフォローしようとする者はいなかった。

 

「なぁ、真兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「私ももしかしたらなのはちゃんにあんなんや(殺?)られるんやろか」

 

「…………はやて」

 

 怯えるはやての肩に優しく手を置き、はやての表情に安堵が広がる瞬間

 

「あれ以上だ」

 

「いややぁぁぁぁっ!!」

 

 こちらも絶叫。

 

 すずかちゃんは仲裁に忙しそうだし、恭也さんと忍さんは呆れて二人の世界に旅立った。

 

 何て言うか、カオスと言うか、いつも通りと言うか……。

 

「なぁ、フェレット擬き君」

 

「えっと、はい」

 

「緊張感なくて悪いね」

 

「ははは……」

 

 まぁ実際には危険はないわけだから許して欲しい。

 

 そんな感じで和気あいあいと進められた話し合いの結論は、封印はなのはちゃん頼り。

 

 ジュエルシードの暴走が感知された場合は、魔法使いの近くならば各個に対処。

 

 離れている場合は、なのはちゃんは所定の位置で待機し、ユーノが転移魔法で回収しながら現場へ向かう。

 

 捜索は手の空いている時に必ず二人以上で行い、発見しても手に取らずなのはちゃんを呼ぶ。

 

 そんな感じに決まった。

 

 僕? 僕は良く言えば遊撃隊。

 

 結局の所、封印はなのはちゃんにしか出来ないし、転移と結界のサポートは一人でいい。

 

 だから僕は別行動で先に到着した時の時間稼ぎが主な役割。

 

 まぁ影でこそこそ動くわけだし、その方が都合がいい。

 

 そうして始まったジュエルシード探索だけど、なのはちゃんが暴走体を圧倒的な力量差で蹂躙した映像が思いのほか効いたらしく当初から捜索に緊張感はあまりなかった。

 

 そのおかげで僕も自由に姿をくらませられたわけなんだけど、暴走もしなければ探せど探せど一個も見つからない現状が一週間も続くと、もはや捜索は散歩気分で、ユーノですらここ周辺にはないのではと疑い出す始末。

 

 諦めるのは早いにしても探し方に方向転換は必要だろうと、明日は作戦会議を兼ねたお茶会を開こうという話になって解散したというメールが金曜日の夜に届いた。

 

 そして明けて土曜日の朝、起き抜けにベットの上で日課となっている『世界の窓』を展開すると

 

「…………っ!? ようやくお出ましか」

 

 昨夜までは「存在は感じられるけど居場所はただ漠然としか分からない」という結果だったフェイトとアルフの反応が、今は近くに感じられる。

 

 でもこれは海鳴から外れてる?

 

 とりあえず方角くらいは分かるし、朝ご飯食べたらさっそく行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『世界の窓』と探査魔法を駆使して無防備に空を飛んでいる金髪ツインテールの少女、フェイト・テスタロッサを見付けたのはいいんだけど、何て言うか、うん、知ってた。 知ってたよ? 知ってたんだけどさ。 知っててなお格好がアレだ。

 

 黒いレオタードに同色のニーハイソックスで対照的に雪の様な真っ白い肌の絶対領域を強調、革製の太めのベルトに白いスカートの様な布地が付いているがなぜか前面が空いていて丸見え、そこに唯一魔法使いらしい黒色のマントを羽織り、デバイスは身長よりも高い黒い杖。

 

 何かのコスプレなのかとツッコミたい。

 

 恥ずかしくないんだろうか?

 

 なんて思いながら近付いて行ったら声をかける前からバリバリに警戒されてデバイス向けられた。

 

 「誘拐とか心配だし、知らない人に対して警戒するのは良い事だよね」と自分に言い聞かせて何とか平常心を保つのが精一杯ですよ。

 

 いや、こういうのは最初が肝心だ。

 

 なるべくフレンドリーに行こう。

 

「はじめまして、異国か異界のお嬢さん。ようこそ海鳴市へ」

 

「…………」

 

「僕は加藤真。海鳴生まれの海鳴育ち。この辺だと数名しかいない魔法使いの内の一人だよ。よろしくね」

 

「…………」

 

「良かったら名前と、ここに立ち寄った理由を教えてもらいたいんだけど」

 

「…………」

 

 沈黙が痛いです。

 

 最近では防犯のために電話の対応も「はい、○○ですけど」とは言わず、ただ「はい、もしもし」て出るのが良いらしいんだけど、せめて名前はいいから挨拶だけでも返して欲しい。

 

 仕方ないからこっちから話題を振ろう。

 

「もしかしてだけど、この前降ってきた魔力結晶体と何か関係があったり――――――」

 

「もし持っているならジュエルシードをこちらに渡してください」

 

 食い付いてきたーーっ!!

 

 言い切る前に食い付いてきたーーっ!!

 

 しかもデバイスから金色の刃が出て死神の鎌みたくなったよ。

 

 この少女、好戦的過ぎる。

 

「『返して』じゃなく『渡して』て言うくらいだからアレは君の物ではない。なのに一方的に渡せと」

 

「…………」

 

 おぉ、ツッコんだらさらに表情が険しくなった。

 

 デバイスを握る手にも力が入っている模様。

 

 ちょっと怖い。

 

「そ、そうだな。こっちのお願いを二つ聞いてくれたら確保してる結晶体を一つあげる。条件によってはその後の協力もOK。どうかな」

 

「交渉の余地はありません。大人しく渡してもらえないのなら力ずくで奪うだけです」

 

 問答無用かよっ!!

 

 この歳で強盗行為に躊躇がなさ過ぎるとか、どうなのよ。

 

「仕方ない。こうなったら――――――」

 

 少女の雰囲気が張りつめる。

 

「逃げる」

 

「…………………………えっ?」

 

 少女が戸惑ってる隙に転移魔法の連続ショートジャンプで距離を稼ぎ、死角に逃げ込んでから改めて月村邸の訓練場に転移する。

 

 そのまま周囲を警戒して、10秒、20秒、

 

「ふぅ~~」

 

 1分が過ぎた所で緊張を解いてホッと一息。

 

 うん、あれは無理だ。

 

 できたら協力者として彼女の母親、プレシアさんに紹介して欲しかったんだけど、あそこまで盲目的で視野狭窄に陥ってるのを軟化させるのは正直難しい。

 

 まぁ顔も声も確認できたし、プレシアさんに報告に戻る所を『世界の窓』で尾行すればいいか。

 

 少女をストーキング…………犯罪臭がプンプンするな。

 

 しかしここは――――――――

 

「汚名をかぶる勇気っ!!」

 

 語尾に『勇気』と付けるだけで、本当はそんな事したくないのにやむにやまれぬ事情があって仕方なくストーキングをしている様に聞こえる。

 

 本当はただ少女をストーキングしているだけなのにっ!!

 

 ……いや、本当はちゃんとした理由があるからね?

 

 ジュエルシードこっそり集めたのだってそのためなんだから。

 

 でも次善の策も考えとかないとな。

 

 もしフェイトが…………。

 

「あ、真さん。おはようございます」

 

「ん? あぁ、すずかちゃん。おはよう」

 

 おっと、自分の世界に入り過ぎてたな。

 

 声かけられるまで気付かないとは……気配とか消してないよね?

 

 すずかちゃんならあり得るから怖い。

 

 て言うか、不法侵入だな、僕。

 

「どうしたんですか、こんなに早く。お茶会は2時からですよ?」

 

「すずかちゃんはトレーニングかい?」

 

「はい、最近動いてなかったから一汗流そうかなって」

 

「そうだね。ここ一週間は探索ばっかりだったからね」

 

「真さんもバリアジャケット着てるって事は一緒ですか?」

 

 おぉ、解除するの忘れてた。

 

「あ、あぁ、そうだね。良かったら一緒にどうだい」

 

「はい、お手柔らかにお願いします」

 

「いやいやいや、こっちの台詞だから」

 

 アスレチックのタイムトライアルでも組手でも負けまくりですから。

 

「でも、私相手に魔法使わないじゃないですか」

 

「そりゃあフェアじゃないし、そもそも地力を上げないと意味ないし」

 

 基本的に身体強化の魔法は恭也さんと美由希さんとの組手の時にしか使わない。

 

「でもそれって真さんの能力全部使った全力じゃないって事ですよね?」

 

「ま、まぁ」

 

「私は全力なのに手加減されてる気がして、所詮妹のはやてちゃんの友達としか見られていない気がしてちょっと寂しいです」

 

 え、ちょっ、そんな事言って俯かないでよ。

 

 うわ、何だこれ。

 

 僕が苛めてるみたいじゃないか。

 

「す、すずかちゃん。あのさ、えっと、そういうんじゃなくて、魔法抜きなのはむしろ同じ土俵で競いたいって言うか、対等な関係って言うか」

 

「ちゃんと一人の女の子として見てくれてますか?」

 

「うん、うん、もちろん見てるよ」

 

「ちゃんと恋愛対象として見てくれてますか?」

 

「そりゃあもう、すずかちゃんみたいに可愛い子ならこっちからお願いしたいくら――――――」

 

「「「えぇぇぇぇぇぇっ!!」」」

 

「うわっ!?」

 

 背後からの急な絶叫に振り返ると

 

「ちょっとアンタ、すずかに手出したらタダじゃおかないわよっ!!」

 

「玉の輿とはやるな~~真兄ちゃん」

 

「ま、真さんとすずかちゃんって、そ、そうだったんだ」

 

 怒って詰め寄ってくるアリサちゃん、夢のない事を言ってサムズアップのはやて、顔を赤くしてアワアワするなのはちゃんがいた。

 

「えっと、いや、どうして」

 

「みんな考える事は一緒って事です」

 

 さっきまでの雰囲気はどこへやら、ケロッとしているすずかちゃん。

 

 くっ、ハメられた。

 

 こうなったら――――――

 

「逃げる」

 

 本日二回目の連続ショートジャンプ。

 

「あっ、こら、待ちなさーーーーい!!」

 

 アリサちゃんの声をフェードアウトさせながら屋敷の中に避難した。

 

「ふぅ~~」

 

 これも二度目。

 

 さっきのアレは、この前の朝食の仕返しなのかな?

 

 小六の僕だってそういうのはまだよく分からないのに、あっちはまだ小三だしな。

 

 冗談か背伸び、どっちにしろお遊びだよね。

 

 でも、

 

 お金持ちアリサちゃん。

 

 魔法使いなのはちゃん。

 

 まだ覚醒はしていないが同じく魔法使いでありながら、両親を早くに亡くし、しかも車椅子のハンデを持つはやて。

 

 同じく両親を早くに亡くし、お金持ちではあるが遺伝的に他人に言えないハンデを持つすずかちゃん。

 

 前二人はまだしも後ろ二人は早熟なのにも納得なんだよね。

 

 まぁ自分も大概だけど。

 

 さておき、とりあえず避難も兼ねてファリンさんにお茶でもお願いしようかな。

 

 お茶会までに考えときたい事もいっぱいあるし。

 




はやての感覚は完璧に兄妹で、なのはも兄の様に慕っている。
アリサは友達の兄ってだけで、すずかは……さて、どうなのでしょう?
でも主人公とすずかが結婚したら、アリサ以外の三人は義理の姉妹になるんですよね。
ちょっと面白い。
あっ、フェイト忘れてた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。