窓と扉に手をかける   作:もけ

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新年あけましておめでとうございます。
昨年末の話ですが、冬コミ3日目行ってきました。
混んでたけど、やっぱりコミケって楽しいですね。
漫画が書けたら自分も参加したりしてたのかなってちょっと思います。
まぁ、買う側の方が気楽ですがw
さておき、
本編ではようやくプレシアさんの登場です。
いやぁ、ここまで長かった。
無印はジュエルシードが集まっちゃってる関係で、区切りはアリシア復活を目安にと考えています。
まぁ、そのままA'sに突入しちゃうんですけどね。
さておき、さておき、
それではどうぞ。


プレシア in 時の庭園

 時の庭園、大広間。

 

 フェイトが先に話を通しに行き、後から呼ばれる形でプレシアの前に通されたわけなんだけど、

 

「御託はいいわ。命が惜しかったらさっさとジュエルシードをこちらに渡しなさい」

 

 いきなり杖を突き付けられました、まる。

 

 って、作文してる場合じゃないよっ!!

 

 フェイトさーーん、いったいどういう説明したらこうなるんですかっ!?

 

 助けを求めてフェイトに視線を向けると、当のフェイトはお母様の乱心に綺麗なお目々と可愛いお口を真ん丸に開けて絶賛フリーズ中。

 

 くっ、自分の力だけで切り抜けるしかないか。

 

 て言うか、これ、完璧にナメられてるよね?

 

 まぁ、確かに? あっちは59、こっちは12でざっくり5倍の人生経験があるわけだけど、交渉する上でイニシアチブを取られる所か、聞く耳持たずはさすがに論外。

 

 ここは一つ、態度だけでも張り合える様に横柄に、パフォーマンスで鍛えた演技力を発揮するしかないっ!!

 

 まずは軽くジャブから

 

「ふん、フェイトと行動パターンが一緒だな。さすが親子と言った所か」

「どうやら死にたい様ね」

 

 ちょっ!? 短気過ぎるよ、プレシアさんっ!!

 

 フォローする間もなく、プレシアの杖から容赦のない電撃魔法が放たれる――――――が、

 

「ワールドドア」

 

 なのはちゃんとの訓練の賜物、とっさの反応で自分の前に右手をかざして入口を開き、出口をプレシアに向けて反射に見せかけて打ち返す。

 

「なっ!? くっ」

 

 慌ててプロテクションを張って防ぐプレシア。

 

「ふっ、そんなものか」

 

 前に突き出した右手を戻し、髪をかき上げ、相手を見下す。

 

 でも内心は背中に冷や汗をかきながら、反応できた自分に心の中でガッツポーズ。

 

「か、母さん」

「何をしているの、フェイト。あなたも手伝いなさい」

「で、でも」

 

 プレシアは戸惑いを見せるフェイトに舌打ち一つで見切りを付け、再度杖をこちらに向けてくる。

 

「フェイトよ」

「な、なに、マコト。って、それよりその話し方」

 

 そこはスルーしてください。

 

「我が主『白い悪魔』の教えに『話を聞くのはぶっ飛ばしてから』というものがある」

 

 それでこその魔砲少女(誤字にあらず)。

 

「ジュエルシードはこちらが抑えている。そして力でも適わないと分かれば、後はこちらの話に乗るしかあるまい。我が計画とお前の協力があれば必ずプレシアの、ひいてはテスタロッサ家の幸せが得られる。だから今は我に任せて離れているがいい」

「…………うんっ」

「合い言葉は」

「「テスタロッサのために」」

 

 よし、決まった♪

 

 事前に合い言葉決めて軽く練習しといて良かった。

 

 こういうのは仕込みが大事だよね。

 

「茶番はもうお終いかしら」

 

 フェイトが部屋から出たタイミングで声がかかる。

 

「わざわざ待っているとは随分と余裕を見せてくれるではないか。その大物振り、恥の上塗りになるぞ?」

「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」

「先に断っておくが、俺は正義を気取る気など毛の先程もないのでな。どんな卑怯な手段を使ってで――――――」

「消えなさい」

 

 最後まで言わせてくれよっ!!

 

 僕の嘆きも虚しく10を越える光の矢が杖の一振りで一斉に襲いかかって来る――――――が、

 

「ワールドドア」

 

 その直後、プレシアの左後方で爆発音が鳴り響く。

 

「っ!? ア、アリシアっ」

 

 プレシアは振り返ると血相を変え、先程までの余裕な態度などかなぐり捨てて破壊された扉の中に飛び込む。

 

 その後を追って部屋の入口から中を覗くと、プレシアがフェイトを幾分幼くした少女が浮かぶ巨大ポッドにすがりついていた。

 

 よし、精神攻撃は成功だな。

 

 後は言葉で誘導して――――――

 

「どうした、プレシア。戦いは始まったばかりだぞ。さぁ、続きをしようじゃないか」

 

 こちらの声に反応し、とっさに杖を向けてくるが、

 

「いいのか? その魔法を撃てば次は貴様が大事に大事に守っている後ろの少女に間違って当たってしまうかもしれないぞ」

 

 遠距離魔法を封じる。

 

「アリシアに、アリシアに手を出す事は許さないっ!!」

 

 叫ぶと同時に一瞬にして視界からプレシアが消えるが、その動きは想定内だ。

 

 消えたと同時に背後にワールドドアを開き、後ろに回り込んで来たプレシアをポッドの前に出す。

 

「っ!?」

 

 目の前の相手が変わっている事に気付き、慌てて振り下ろそうとした杖を止めるプレシアだが勢いを殺しきれず、杖と接触したポッドがカツンと高い音を響かせる。

 

「驚いたな。今、自分の手でアリシアの入ったポッドを叩き割ろうとしたのか」

「ち、違っ、何を言って」

「何が違うと言うのだ。その手に持った杖が何よりの証拠だろう」

「違うっ!! 違うのよ、アリシア。母さん、そんなつもりじゃ」

 

 チャ~~ンス♪

 

 待機状態に戻したのか持っていた杖が消え、ポッドの中で静かにたゆたう少女に対して弁解しようとこちらから視線が逸れた機を見逃さず、隠し持っていた改造スタンガンをワールドドアを通して首筋に押し当て

 

「あ゛っ」

 

 意識を刈り取る。

 

 四肢の力が抜け、そのまま倒れ伏すプレシア。

 

「さてと」

 

 一応警戒してスタンガンを押し当てながら近付き、反応がない事を確認してからニケに教えてもらってデバイスを回収。

 

 身体強化魔法をかけてプレシアを大広間まで担いで行き、椅子に座らせてから両手両足を別々に犯人拘束用の結束バンドで固定する。

 

「終わったぞ」

「母さんっ!?」

 

 扉越しに念話を送るとフェイトが飛び込んできた。

 

「心配するな。電気ショックで気絶させただけだ」

「そう、良かった」

 

 仮にも女性の肌だし、火傷は後で回復魔法かけておこう。

 

「アンタ凄いね。あの鬼婆に勝っちまうなんて」

 

 フェイトの後からアルフも部屋に入ってくる。

 

「俺にとっては雑作もない事だ」

「謙遜する事ないよ。いったいどうやったんだい」

「人質を利用して、後は誘導して罠に嵌めた。簡単だったぞ」

「「……」」

「なんだ」

「いや、えっと」

「涼しい顔してやる事がえげつないねぇ」

「命がかかってる以上、勝つためには手段は選ばん。当然だろう」

「ハハハ……」

「まぁ、そうだけどさ」

 

 呆れられようと、直接戦闘に向かない僕にとって取れる選択肢は多くない。

 

 殺人が許容できるならやりようもあるけど、僕には誰かを殺す覚悟はないし、そんな覚悟持ちたいとも思わない。

 

 自分か大事な人の命が今まさに窮地に立たされているって絶体絶命な状況なら殺れるかもしれないけど、それ以外はちょっと無理。

 

 と言うか、絶対無理。

 

 前世に続き二代に渡って平和ボケした筋金入りの日本人の僕に、そんな高いハードルは飛べません。

 

 前世の僕にとって死と言うものは身近なものだったけど、だからこそより忌避する対象で、自分の手でそれを目の前の相手に与える事に大きな抵抗を感じると言うのもあるのかもしれない。

 

 テレビの中で知らない人が何人死のうが何も感じないのにおかしな話だと思う。

 

 現実感とかじゃなくて、基本的に自分と大事な人たち以外はどうでもいいと思ってるのかもしれない。

 

 …………うん、思ってるな。

 

 僕の中で優先順位ははっきりしている。

 

 その点、プレシアとは分かり合えそうだ。

 

 さておき、

 

「フェイト、プレシアが意識を取り戻したら話し合いを始めるられる様にテーブルと椅子、ティーセットを用意してくれ」

「うん、分かった。アルフ」

「あいよ」

 

 さて、じゃあ僕はプレシアの火傷の治療でもしておきますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ううん…………はっ、アリシアっ」

「第一声がそれか。親馬鹿が」

「まったくだね」

「ふ、二人とも」

 

 食堂から運ばれたテーブルに着き、紅茶を飲んでプレシアの復活を待っていた僕たち。

 

 ちなみに僕とプレシア、フェイトとアルフが対面だ。

 

 フェイトが10分に1度くらいの割合でプレシアの拘束を解いて欲しいとお願いしてきたが全て却下しておいた。

 

「まだ自己紹介もしていなかったな。我が名はダークフレイムマ、ではなく、マコトだ」

 

 うっかり演技の元ネタが。

 

「まずは、これを見ろ」

 

 懐からグリップの先端にボタンが付いた物を取り出す。

 

「これはアリシアの入っている生体ポッドに取り付けた爆弾の起爆スイッチだ」

「なっ」

「デバイスは取り上げてあるが、おかしなマネはするなよ? 押すつもりはないが、うっかりと言う事もあるかもしれん」

「…………」

「返事がないな」

「くっ、分かったわ」

 

 いや、脅しといて何だけど、爆弾なんてただのハッタリですよ?

 

 一応それっぽいギミックは貼り付けておいたけど。

 

「では脅迫、もとい交渉を始めよう」

「アンタ、本音が漏れてるよ」

「気のせいだ」

「くっくっくっ、そうかい」

 

 アルフはプレシアがやり込められているのが楽しくて仕方がない様子だ。

 

「俺とフェイトはある目的のために手を組んだ。その目的は、俺の妹の命を守る事と」

「私の遺伝子親でもあるお姉ちゃん、アリシア・テスタロッサの復活」

「なんですって」

 

 こちらをずっと睨んでいたプレシアの視線がフェイトに向かう。

 

「母さんにとって、私はアリシアの遺伝子から作られたアリシアの失敗作だって事は知っています」

「そうよ。アナタはアリシアの失敗作。慰み物のお人形。アリシアはもっと」

「でもっ!!」

 

 フェイトは大声でプレシアの言葉を遮る。

 

「私はアリシアを蘇らせて『お姉ちゃん』て呼びたい。母さんがお腹を痛めて生んでくれたわけじゃないけど、私が母さんに生み出された事は変わらない。そして遺伝子が同じなアリシアは一卵性双生児の私のお姉ちゃん」

「そんな暴論」

「もちろん母さんにも娘として認めて欲しいけど、私を妹と呼んでくれるかどうかはアリシアが決める事で母さんには関係ない」

 

 こんな強気なフェイトを見た事がないのか、絶句するプレシア。

 

「私の願いはテスタロッサ家の幸せ。私は母さんとアリシアとアルフとみんなで一緒に幸せになりたい」

 

 フェイトの熱のこもった視線に、プレシアは視線を逸らす事しか出来ない。

 

 このまま放って置くのも一興だけど、話を進めよう。

 

「さて、俺の方の目的だが、俺の妹はロストロギア『闇の書』の現マスターでな」

「闇の書?」

 

 話を逸らしたいのか、すぐ食い付いてきた。

 

「あぁ、知っているのか?」

「えぇ、転生システムに興味があって調べた事があるわ」

「それなら話が早い。このままだと書に魔力を吸い尽くされて妹は遠くない未来、命を落とすだろう。それを助ける手伝いを頼みたい」

「頼む? ふん、これは脅迫なのでしょう?」

「その代わりに俺もアリシア復活に手を貸そう」

「いらないわ」

「強がるのはよせ。無様に拘束されたお前にジュエルシードを手にする事は出来ない」

「なら、他の手段を探すまでよ」

「お前にそれだけの時間が残されているのならな」

「なんですって」

 

 ワールドウインドウ応用編その1、直接触れる事で対象の情報を調べる事が出来る。

 

 でも、調べられたのは病巣の有無まで。

 

 知識のない僕にはそれを評価する事が出来なかった。

 

 でも、この反応はどうやら当たりの様だね。

 

「治らないんだろう? そしてタイムリミットは目の前だ」

「なぜそれを」

「お前が気絶している間に何もしていなかったと思うとは随分とおめでたい様だな」

「くっ」

「母さん…………本当、なの」

 

 だが、この話はプレシアよりフェイトの方にダメージが大きかった。

 

「アナタには関係ないわ」

「あるよっ!! 私は母さんの」

「アナタはただのお人形っ!! アリシアの失敗作っ」

「なら、アリシアはどうするのっ」

「それはっ!! それは……」

「管理局を辞めて、違法研究に手を染めて、輸送船まで襲って、管理外世界に魔導師の私を送り込んで、そこまでして出来ませんでしたで諦めるのっ」

「知ったような口をっ」

「知らないよっ!! だって母さん、何も話してくれないじゃないっ!! それなのに分かるわけないよっ!! 教えてよ、母さんの事。母さんはどうしたいの。教えてくれたら私、手伝うから。頑張って手伝うからっ」

「アナタ……」

「母さんが死んじゃうのは嫌。アリシアに会えないのも嫌。このまま終わるのは絶対に嫌だっ!!」

 

 フェイトの瞳には涙があふれていた。

 

 アルフがテーブルを回り込み、フェイトの肩に手を置くと、緊張が切れたのかアルフに抱きつき声を殺して泣き出した。

 

 それを一瞥してから視線を下げ、考え込む様に瞳を閉じたプレシア。

 

 そのまま誰も声を発しない時間が流れ、

 

「マコトと言ったわね」

 

 沈黙を破ったのはプレシア。

 

 その声にピクッとフェイトの肩が上がる。

 

「あぁ」

「アリシアの事、アナタの妹の事、具体的にどうするつもりなのか詳細を話しなさい。協力するかどうかはそれからよ」

「母さんっ」

「勘違いしないで頂戴。私はただアリシアを生き返らせたいだけ。それを優先させるだけの事よ」

「うん、うん」

「ふんっ」

 

 そっぽを向くプレシアと、涙目のままだが頷きながら嬉しそうに笑みを浮かべるフェイト。

 

 とりあえず、無事に説得完了だね。

 

 無性に「ツンデレですね。分かります」とか言いたくなるけど、ここは我慢しておこう。

 

 てか、59歳でツンデレって誰得なんだろう。

 




新年一発目、どうだったでしょう。
バトルは基本こんな感じです。
正面からとか戦いませんよ?
転移のレアスキルでどうにかするのが本作バトルの基本骨子なんで。
そして質量兵器バンザイです。
攻撃魔法? あぁ、この前コンビニで売ってました。298円で。
ファミマ見た? ネタ、分かりますかね?
フェイトはかなり印象を変えてみました。
こういう素直な感情の発露がフェイトにもプレシアにも必要だったんじゃないかなと。
次こそはジュエルシードを使おう。
それとも使った後の描写からスタートかな。
それではまた次回。

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