窓と扉に手をかける   作:もけ

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何か前半は設定の説明みたいになっちゃいました。

一応、原作トレースのつもりなんですが、違う所があるかもしれません。



魔法について

 さてと、闇の書とヴォルケンリッターの話は終わったから、後は魔法についてだな。

 

 この話をしないとなのはちゃんを呼んだ意味がないからね。

 

 僕のインテリジェントデバイス『ニケ』によると前世の知識通り彼女の潜在的な魔力値はアホみたいに大きいらしい。

 

 魔力値はSSS・SS・S・AAA・AA・A・B・C・D・E・Fのクラスがあって、細分化する場合は+・-を付けて表し、体の成長や訓練によって多少伸びる余地はあるけど、基本的には先天的な才能に依存している。

 

 目安としてはAあれば士官クラスで、Sオーバーは全体の1%もおらず、SSSに至っては理論値であり該当者はいない。

 

 ちなみに士官ていうのは階級だと三尉以上を指して…………って言っても分からないだろうから、上から言っていくと、元帥・大中少将・一二三佐・一二三尉・准尉・曹長・曹・一二三士・研修生となっている。

 

 んで、なのはちゃんの魔力値はなんと推定AAAランク。

 

 魔法の存在しない世界でこんな高魔力値を持って生まれてくるなんて皮肉というか、それはもう突然変異レベルだろう。

 

 別に化物扱いするつもりはないけど、先天的な能力という事は、それは遺伝に依るという事で、普通は魔力のない親から魔力のある子供は生まれない。

 

 だからって浮気や何やというわけではなくて、問題をややこしくする要因なんだけど、魔法を使えるかどうかは体内にリンカーコアを持っているかどうかに完璧に依存していて、でもこのリンカーコアは臓器というわけではなくて、実体がない。

 

 観測するにしても放出されている魔力を観測できているだけであり、感覚としても何となく心臓の辺りに丸い感じのものがあるくらいの認識でしかなく、その情報は遺伝子にもない。

 

 そのくせ遺伝にはある程度の法則を持って現れていて、そうかと言うとなのはちゃんみたいなイレギュラーな現れ方もする。

 

 まぁ程度の差こそあれ、僕もそのイレギュラーなんだけどね。

 

 ちなみに僕の魔力値は、魔法の訓練を始めた頃はB-だったけど、4年経った今はB+ってところ。

 

 ニケによるとまだ伸びて行ってるらしいからA、できたらAAまでいけたらいいななんて夢見てるけど、まともに使えるのが結界魔法と回復魔法しかないからあまり意味はないかもしれない。

 

 どうも魔法には適正ってものがあって、飛行を始め砲撃や幻術なんかは使える使えないがはっきりしているらしい。

 

 そう考えると、早く飛べなくても飛行魔法の適正があって良かったと思う。

 

 やっぱり魔法のイメージって、空を自由に飛ぶ姿だと思うんだよね。

 

 適正ついては他にも少し思う所があって、多分その人の願望やあり方が関係してるんじゃないかと僕は考えてる。

 

 まぁ鶏が先か卵が先かの話なような気もするけど、僕の場合は結界に回復、それと飛行。

 

 これらはおそらく前世の状況が色濃く反映されてる。

 

 病気によって隔絶された空間で過ごし、回復を望み、飛び立つ事を夢見る。

 

 病室での生活が心象風景として一番強く、切実な願いとしての回復、そして信じきれなかった夢。

 

 探査の『世界の窓』と転移の『世界の扉』も同じ理屈だろう。

 

 窓の外の世界に思いを馳せて、扉を開けて知らない世界に行きたかった。

 

 裏返して射撃や防御魔法がうまく使えないのは、斬ったり撃ったり守ったりなんて戦いはお話の中だけで、自分に当てはめるなんて出来なかったからじゃないかな。

 

 それは妄想するだけで、現状に対するもろ刃の刃だったから…………。

 

 前世の僕と今の僕は違う人間だけど、記憶がある以上やっぱりアイデンティティはどこか似通ってしまう。

 

 まぁ外の世界に行きたいという願望は、中学を卒業したら孤児院を出て行く僕にとっては好都合ではあるんだけどね。

 

 『孤独に負けない力になるっ!!』

 

 なんてキャッチフレーズみたいだけど、物心ついてからずっと孤児院暮らしで、大人数の中で生活してたから1人だけって状況にやっぱり不安と寂しさを感じるわけで…………。

 

 まだ先の話だけどね。

 

 と言っても、後6年しかないけど。

 

 これが『も』なのか『しか』なのかは難しい所で、判断する時のメンタル次第。

 

 ちなみに今はちょっと『しか』の方に傾いてるかな。

 

 はやての事で家族を強く意識してるせいかも。

 

 まぁ、なるようにしかならないから焦っても仕方ないとは分かっているんだけど、気持ちは理屈じゃないからそれこそ仕方がない。

 

「真お兄ちゃん? どないしたん?」

 

「ん?」

 

 はやての声で我に返る。

 

 取り留めもない事を考えながらぼ~~っとしていたら、流れではやての事を見つめていたらしい。

 

「もしかして、私の美貌に見蕩れていたん?」

 

 明らかに冗談と分かるドヤ顔をするはやて。

 

 こいつのこういう所が面白くて楽しくて、そして可愛らしい。

 

 うん、どうやら僕の兄バカモードは絶賛継続中みたいだな。

 

「はやて」

 

「なんや?」

 

 僕の優しい声色に、ボケに乗って来ないのかと切り替えたはやてだけど

 

「可愛いよ」

 

「なっ!?」

 

 不意打ちで返され、驚いた後に真っ赤になって大慌て。

 

「ななななにいきなり言うとるんっ!! アホちゃうかっ!!」

 

 うん、こういうリアクションも可愛いけど、このくらいの返しを受け流せないとはまだまだだな。

 

「良かったね。はやてちゃん」

 

「なにがっ!? 何も良い事なんかないわっ!!」

 

 追い打ちをかけるなのはちゃんに絶叫で返すはやて。

 

 なのはちゃん、さっきもだけど意外と乗っかって来るよね。

 

 素なのかワザとなのか判断に迷う。

 

 まぁ、雑談もこの辺にして、そろそろ魔法の話に移ろうかな。

 

「さて、なのはちゃん。はやてが可愛いのは世界中が認めてるからいいとして、魔法について話したいんだけどいいかな?」

 

「は、はい。お願いします」

 

 はやての「私そんなワールドワイドなんっ!?」というボケかツッコミか分からない発言は無視する。

 

「これだけ話してたら流れで想像ついてるかもしれないけど、なのはちゃんも魔法の才能があるんだ。それも僕なんか比べ物にならないくらいの大きな才能が」

 

「本当ですかっ!!」

 

 身を乗り出す勢いのなのはちゃん。

 

 昨日から魔法への食い付きが良過ぎるな。

 

 まぁ小学校に上がる前の女の子にしてみたらこれが普通なのかな。

 

 最近の魔法少女ってプリキュアだっけ?

 

 初代はやけに肉弾戦してたパワフルなイメージだけど、最新のはどうなんだろ?

 

「うん、魔法使いの中でもトップクラスの才能があるよ。それで、」

 

 一度言葉を切って真面目な表情を作り

 

「その力を僕とはやてに貸して欲しいんだ」

 

 昨日なのはちゃんの気持ちは聞いているけど、改めてお願いする。

 

「はい。はやてちゃんの足を治すのに協力させてください」

 

 それに元気いっぱいの返事を返してくれたなのはちゃんに嬉しくなり

 

「ありがとう」

 

 お礼と一緒に握手をすると、そこにもう一つの手が重なる。

 

「なのはちゃん、ありがとうな」

 

「ううん、友達のためだもん。当たり前だよ」

 

「私もなのはちゃんが何か困った事あったら全力で助けるからな」

 

「うん、その時はよろしくね」

 

「任しときっ!!」

 

 二人の友情に眩しいものを感じ、目を細める。

 

 状況によるんだろうけど、僕にはこういう友達いないな。

 

 いや、友達がいないわけじゃなくて、テンションが違うっていうか、まだ小3の男子って本当に子供っていうか、僕も同い年なわけなんだけどそこは前世の記憶のせいで一人だけ精神年齢が高くてある意味で付いて行けないっていうか、まぁこんな非日常な状況がまず有り得ないから比べる事がそもそも間違いなんだろうけど、正直ちょっと羨ましい。

 

 でも男同士でこれだと暑苦しいかな。

 

 さておき、話を戻そう。

 

「じゃあ、なのはちゃんにはこれから魔法の訓練をしていってもらうね。ちなみに先生は僕じゃなくて彼女が担当する」

 

 そう言って首から認識票を外し、なのはちゃんの前に置く。

 

「これ?」

 

『初めまして、なのは』

 

「にゃっ!?」

 

「しゃべったっ!?」

 

 驚くなのはちゃんとはやて。

 

 まぁ無機物がいきなりしゃべったら普通そうなるよね。

 

「彼女はニケ。魔法を使う際に補助してくれる機械をデバイスって言うんだけど、その中でも人工知能、AIを積んだものをインテリジェントデバイスって言うんだ。見た目は人とは違うけど、ちゃんと個人としての人格があるから普通に接してくれると有り難いな。ちなみに僕の魔法の先生でもある」

 

 「へぇ~~」「ほぉ~~」と感心した二人は、思い出したかのように揃って自己紹介。

 

「えっと、高町なのはです。よろしくお願いします」

 

「八神はやてです。よろしくお願いします」

 

『こちらこそ、よろしくお願いします。気軽にニケとお呼びください』

 

 ニケはやや機械的ではあるけど、丁寧で従者タイプのスタンスをしている。

 

 一番近いイメージはメイドさんかな。

 

 いや、実際に会話したことないけど、そんな感じという事で。

 

「ニケ、一旦君をなのはちゃんに預けるからゲスト登録して練習見てあげてくれるかな」

 

『YES、マスター』

 

「いいんですかっ!?」

 

 驚くなのはちゃんだけど、その表情に歓喜の色が窺える。

 

 はやての事を抜きにしても魔法に興味津々なんだな。

 

 まぁ、いいんだけどね。

 

「うん、僕は学校が終わってからなのはちゃんと合流して訓練するから、なのはちゃんがニケと一緒にいた方が効率的だからね」

 

「じゃ、じゃあ」

 

 なのはちゃんは大きな期待とちょっとの不安が入り混じった表情で認識票に手を伸ばし、ぎこちない動作で首にかける。

 

「よろしくね、ニケ」

 

『YES、よろしくお願いします、なのは』

 

 そしてニケの返事にほころぶ様な笑顔を浮かべた。

 

「なぁ、真お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「私にも何か出来る事ないか?」

 

「あ~~~~っと」

 

 なのはちゃんとニケを見て、自分の事なのに他人任せなのが心苦しいだろうはやてだけど、

 

「残念な事に魔法関連だとないな。むしろはやてが魔法を使おうとすると多分予定より早く書が覚醒して取り返しのつかない事になる」

 

「そうか…………」

 

 期待はずれな答えにしょんぼりしてしまった。

 

 それが見ていられなくて、

 

「はやて」

 

「なんや?」

 

「月並みかもしれないけど、貰った優しさの分、はやてが周りに優しく出来るようになればいいと思うよ」

 

 はやては言われた言葉を噛み締める様に数瞬視線を下げてから

 

「うん、ありがとう。真お兄ちゃん」

 

 もうちょっと気の利いた事が言えたら良かったんだけど、それでも少しだけ笑ってくれた。

 

 よし、もう一押ししよう。

 

「とりあえず今分かってるのは、はやてには今まで辛い思いをしてきた守護騎士たちに家族の温もりを教えてあげるっていう重大な任務があるって事かな」

 

 少しおどけて言うと

 

「そっちはバッチリや。家族としてウザがられるくらい大事にしたる」

 

「いや、ウザがられちゃ駄目だろ」

 

「そんな事あらへん。家族っていうのはそのくらいが丁度いいんや」

 

「そうなのか?」

 

 孤児院育ちの僕にはその辺のさじ加減はよく分からないですよ。

 

 まぁはやてに元気が出たから良しとするかな。

 

 なのはちゃんはなのはちゃんでニケと魔法の事や訓練の事を楽しそうに話してるし、後はまったり過ごすか。

 

「はやて、ゲーム機ってある?」

 

「あるで。勝負するか?」

 

「おぅ、兄の偉大さを見してやるぜ」

 

「ふん、返り討ちにしたる」

 

 結果、格ゲーでは僅差で負けたけど、落ちもの系では圧勝しましたとさ。

 

 

 




結局、あんまりなのはと魔法の話はしませんでしたね。

文字数的に足りたので練習風景も書かなかったし。

後書きで予告とかするもんじゃないな。

と言いつつ、次話はやっとなのは達が小学校に入学します。

いきなり小三まで飛ばす事はしませんが、小一小二はあんまり書くこと思い付いてないんですよね。

なにせ、主人公が違う学校ですから。

そして主人公の一人称視点は崩さない方針なので。

まぁ、何とかしてみます。

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